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第十五節「戦士達の道標 巡る想い 集いし絆」
~問答、その者愚者か悪者か~
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ペチペチ……
心輝の真っ暗な意識の中に、何かを叩く音が響く。
それはあずーが心輝の頬を叩く音だった。
「……んお……何……してンだよぉ……」
意識を取り戻した心輝があずーの手を掴み止めると、あずーは「ハァ」と溜息をして立ち上がった。
それに合わせる様に心輝も立ち上がろうとするが……受けた2発のダメージが相当重かったのだろう、伸ばした脚はガクガクと震えおぼつかない様子を見せていた。
しかしその間も魔者は特に攻撃する意思も見せず、ただ彼等を見守っていただけであった。
「ンナァオメら……本当になんなんだァ……?」
「へ、へへ……『知らんがな』……」
心輝がズキズキと痛む顎に我慢しながらニヤァと笑みを浮かべてそう応える。
そんな応えに……魔者もポカンとした表情を浮かべ唖然とするのみ。
「……カァー参った参った、俺の負けだぁ……クッソォ、お前らのじぃじ超つえーな!!」
魔者の子供達に向けて心輝がそう言い放つと、子供達もそれに負けじと幼い声を掻き鳴らした。
「そうだー!! じぃじはつよいんだぞ!!」
「おまえなんかにまけるわけないんだぞ!!」
そう言われた時、心輝の表情には先程同様……片笑窪が浮かびあがっていた。
「よっしゃ……あず、戻るぞ。 ここには何も無かった」
「え、ええ!?」
戸惑うあずーを他所に……心輝は彼女が抱えるグワイヴと「殴る者」を無造作に掴み取り、部屋の外へと一歩を踏み出す。
あずーは納得のいかない口をすぼめた表情も浮かべるも……彼に付いて行く様に魔者達を背にした。
その時、不意に彼等の背後から大声が飛ぶ。
「ちょい待ちィ!!」
その声を聞き立ち止まる二人。
声の主は当然先程の魔者だ。
二人は共に上半身だけで振り返り、視線を移す。
その先に居たのは、顎を抱え視線を逸らして悩む魔者の姿があった。
「……王ってなぁなんのこったか判らねが……もしかすっとぉ……」
「んお……?」
―――
青空の下、静かに風の音だけが響く。
風に揺らされ、青々とした葉が「サラサラ」と音を立てて静寂を誤魔化していた。
そんな時間が1時間も経てば勇達の心配も積もり積もるもので。
『シンから連絡来た?』
「いや、来ないな。 通信が届かない事は無いと思うんだが」
勇が退屈そうにインカムをツンツンと突きながらじっと待機する。
定時連絡どころか音沙汰も無いと、さすがに不安も隠せない。
一方で……彼等の出発地点である丘の上には二人の人影が。
茶奈もいい加減に疲れ……丘の上に戻り、一人大きなおにぎりを頬張っていた。
隣に立つ瀬玲もまた命力の余力を残す為か、既に撃ち尽くした矢を補充する事無く……今や青空を乱す物は何一つ残っていない。
「大丈夫でしょうか、お二人共……」
大きなおにぎりが彼女の口の中に勢いよく吸い込まれて行き、もっちゃもっちゃと噛み締められた内包物はそのままゴクリと飲み込まれた。
その細い首からどう通っていたのか判らない程に大きかったおにぎりはもはや跡形も無い。
「ま、大丈夫……なんだかんだで引き際くらいは分かるでしょ。 あ、茶奈、口元に米ついてる」
『プッ……』
その時不意に雑音の様な噴き出し音が聞こえ、瀬玲が咄嗟にインカムに手を充てる。
どうやら常時通話モードに切り替わっていたようで……彼女の口から思わず「あっ」と声が漏れ出た。
だがそれよりも……その噴き出しの後から来る笑い声に、待機組が揃って気付く。
『お前等、俺達が必死になってる間に何ノンビリしてんだよぉ……』
『シンか!!』
突然の心輝の連絡に勇が声を上げた。
『おうよ!! んでよ勇、判ったぜ』
『ん、何がだ……?』
暫くの会話の後、心輝の報告を受けた勇が一人ゆっくりと立ち上がると……「フゥ」と一つ息を付き……ゆっくりとその一歩を踏み出した。
その手に翠星剣を掴み、ゆらりと刀身を揺らしながら……視線は、その先に在るもう一つの丘へと向けられたのだった。
―――
その頃、とある一つの穴蔵……。
そこ蠢くのは一人の人影。
「……ソロソォロ……飽きて帰った頃かナァ……」
他のボノゴ族と大して変わらない背丈の一人の魔者が座る姿があった。
暗く小さいその内部は他の穴に比べ目立たず、そして離れた場所に存在していた。
「ダンナダンナ、魔剣使い共、けぇったようやで」
そんな彼の背後……穴蔵の奥から別の魔者が姿を現す。
その者が姿を現して判るのは、最初から居た魔者の背丈だ。
大きな態度とは裏腹に、その体付きは小柄。
だが新たに現れた者がかしずく様から、その魔者は彼等の上位者なのだろう。
「お、さいか……んにゃらもうええか」
そう応えるとゆっくりその太い足を地につけ立ち上がる。
ダンナと呼ばれた魔者は手下であろうその報告者に振り向き呟いた。
「まったく、ヤツラァ間抜けよなァ……ちょちょい人間突けばこう来るもんやけど、直ぐどっかァいっちまう」
腰に手を充て、ケラケラと高らかな笑い声を上げる。
下品に笑うその口元からは唾が無造作に飛び散っていった。
だがその時……その背後、空の光差す穴蔵の入り口。
そこに、すらりとした体型の人影が影を落としながら姿を現した。
途端、ダンナなど構う事無く……報告者は脅え逃げ惑う様に穴の奥へと消え去っていく。
逃げた部下に気付く事も無く高笑いを続けるダンナの背後から、人影がゆっくりとその足を踏み出した。
「こんな所に穴があったのか……」
その声を聞いた瞬間、ダンナの体が硬直する。
「ギギギ……」と錆び固まった機械の様な動きで首を回すと……その視界に、日光を背に受けて影を纏う勇の姿が映り込んだ。
「ンギョオーーーーーーッ!?」
ダンナが言葉に成らぬ叫び声を上げて硬直する。
天敵とも言える魔剣使いが目の前に現れれば恐怖を感じるのは当然だ。
「お前が……統率者か……」
その表情は冷たく、冷酷なまでの鋭い目付きをダンナに向ける。
口を震わせ答え渋るダンナを前に、勇はその冷たい表情を徐々にしかめていく。
「あ、えっと……ちが……」
キィン!!
「イヒィ!?」
甲高い音が鳴り響き、ダンナが恐れの余り尻餅をついた。
今の音は地面に覗く岩を翠星剣で突いた音。
岩に刺さった刀身は、バターに突き刺さったナイフの様にヒビ一つ作る事無くそそり立つ。
「お前は統率者かと……聞いている……!」
「あ、ひゃ、ひゃい……」
勇は岩から翠星剣を引き抜くと、徐々にダンナへと近づきながら問答を続けた。
「何故人を襲う様に仕向けた?」
「あ……ええと……反応が面白かったから……です……」
その答えを聞くや否や、勇の目が更に細くなる。
目尻は上がり、感情の高揚すら感じ取られる程に……鋭さを増していた。
「どうしてそこまでやろうとした?」
「……『ボノノ団』の団長になったんでェ……偉い気に成った気がして……ヘ、ヘヘ……」
「ボノノ団」……それは彼等ボノゴ族の若者の集まりだと彼は言う。
若者達が作り自分達のコミュニティを形成したイタズラ好きの集団、いわゆるチームやギャングの様な存在。
その事は既に心輝を通して勇もまたその存在を把握していた。
「お前達がやっている事は人だけでは無く、同じ種族の者達にすら危害を加える事だって事が分かってやっているのか……!?」
「ヒッ!? そ、そんな事は……わ、わかりまっ」
キィーーーン!!
「ヒュエッ!?」
途端、勇の握る翠星剣が光り輝き、命力の籠る鳴音が穴蔵に響き渡る。
迸る光は穴蔵の暗闇を斬り裂き、二人の体に彩りをもたらした。
そしてその輝きはその彩りすら押し退け、白で塗り潰していく。
「何故そんな事が判らない……何故そんな事を考える事をしない……だからお前の様な奴は……!!」
「イヒイイイイ!?」
勇の握る翠星剣は高々と、狭い穴蔵一杯に振り上げられた。
長い刀身が壁を削り、天井を裂くが……振り上げる勢いは止まる事無く光を瞬かせ続ける。
魔剣に籠る力は……既に魔者一人を葬る事など造作も無い程に強く激しい。
「ももももうしわけありませんでしたあああ!! もう、もうしません、お願いですからぁあ!!」
「そう言って……忘れた頃に……同じ事を繰り返すのが……愚者何だろうがッ!!」
そして一閃―――
ゴゴゴゴ……!!
光の壁とも言える薄く輝く閃光が立ち上り、穴蔵を裂いて大地を突き抜け地上へと噴出した。
地上に残る茶奈達が、中央部の穴蔵から顔を覗かせたボノゴ族達が……その光景を前に、ただ静かに見守る。
天を衝く程に高く吹き上がる光の壁は轟々と空気を揺さぶる音を立て、その荒々しい力の存在を誇示し続けたのだった。
ズズズ……
徐々に光の放出が収まり、噴出された光が煌めく粒子状へと姿を変えると……波を作る様に揺らめき、その流れの元にある大地へと向けて吸い込まれていった。
今の影響で穴蔵の一部が崩落したのだろう、彼等の周囲に地響きが響き渡る。
茶奈達はそれに怯む事無く……その状況に安堵の表情さえ浮かべていた。
光の発生源のコントラストがゆっくりと元へ戻っていくと……そこには天井が崩壊し、太陽の光に照らされた勇の姿が晒されていく。
そしてその傍には……命力の奔流によって生まれた裂け目の横で脅え固まるダンナの姿があった。
「あ……あァ……」
怯えて腰砕け動く事が出来ぬダンナに対し、勇が強い口調の言葉を向ける。
「もう二度とするな。 そして元の場所に戻れ。 願いがあるなら堂々と人間に頼め。 そうすれば……聞き届ける。 聞き届けてもらえないのなら……俺がそいつらに聞かせてやる。 わかったな?」
「へ、へい……」
そう言い残し……勇はその場を後にした。
残るのは……ただ茫然としたままへたり込んだダンナ、そしてその様子を通路の奥からじっと見守っていた部下達だった。
心輝の真っ暗な意識の中に、何かを叩く音が響く。
それはあずーが心輝の頬を叩く音だった。
「……んお……何……してンだよぉ……」
意識を取り戻した心輝があずーの手を掴み止めると、あずーは「ハァ」と溜息をして立ち上がった。
それに合わせる様に心輝も立ち上がろうとするが……受けた2発のダメージが相当重かったのだろう、伸ばした脚はガクガクと震えおぼつかない様子を見せていた。
しかしその間も魔者は特に攻撃する意思も見せず、ただ彼等を見守っていただけであった。
「ンナァオメら……本当になんなんだァ……?」
「へ、へへ……『知らんがな』……」
心輝がズキズキと痛む顎に我慢しながらニヤァと笑みを浮かべてそう応える。
そんな応えに……魔者もポカンとした表情を浮かべ唖然とするのみ。
「……カァー参った参った、俺の負けだぁ……クッソォ、お前らのじぃじ超つえーな!!」
魔者の子供達に向けて心輝がそう言い放つと、子供達もそれに負けじと幼い声を掻き鳴らした。
「そうだー!! じぃじはつよいんだぞ!!」
「おまえなんかにまけるわけないんだぞ!!」
そう言われた時、心輝の表情には先程同様……片笑窪が浮かびあがっていた。
「よっしゃ……あず、戻るぞ。 ここには何も無かった」
「え、ええ!?」
戸惑うあずーを他所に……心輝は彼女が抱えるグワイヴと「殴る者」を無造作に掴み取り、部屋の外へと一歩を踏み出す。
あずーは納得のいかない口をすぼめた表情も浮かべるも……彼に付いて行く様に魔者達を背にした。
その時、不意に彼等の背後から大声が飛ぶ。
「ちょい待ちィ!!」
その声を聞き立ち止まる二人。
声の主は当然先程の魔者だ。
二人は共に上半身だけで振り返り、視線を移す。
その先に居たのは、顎を抱え視線を逸らして悩む魔者の姿があった。
「……王ってなぁなんのこったか判らねが……もしかすっとぉ……」
「んお……?」
―――
青空の下、静かに風の音だけが響く。
風に揺らされ、青々とした葉が「サラサラ」と音を立てて静寂を誤魔化していた。
そんな時間が1時間も経てば勇達の心配も積もり積もるもので。
『シンから連絡来た?』
「いや、来ないな。 通信が届かない事は無いと思うんだが」
勇が退屈そうにインカムをツンツンと突きながらじっと待機する。
定時連絡どころか音沙汰も無いと、さすがに不安も隠せない。
一方で……彼等の出発地点である丘の上には二人の人影が。
茶奈もいい加減に疲れ……丘の上に戻り、一人大きなおにぎりを頬張っていた。
隣に立つ瀬玲もまた命力の余力を残す為か、既に撃ち尽くした矢を補充する事無く……今や青空を乱す物は何一つ残っていない。
「大丈夫でしょうか、お二人共……」
大きなおにぎりが彼女の口の中に勢いよく吸い込まれて行き、もっちゃもっちゃと噛み締められた内包物はそのままゴクリと飲み込まれた。
その細い首からどう通っていたのか判らない程に大きかったおにぎりはもはや跡形も無い。
「ま、大丈夫……なんだかんだで引き際くらいは分かるでしょ。 あ、茶奈、口元に米ついてる」
『プッ……』
その時不意に雑音の様な噴き出し音が聞こえ、瀬玲が咄嗟にインカムに手を充てる。
どうやら常時通話モードに切り替わっていたようで……彼女の口から思わず「あっ」と声が漏れ出た。
だがそれよりも……その噴き出しの後から来る笑い声に、待機組が揃って気付く。
『お前等、俺達が必死になってる間に何ノンビリしてんだよぉ……』
『シンか!!』
突然の心輝の連絡に勇が声を上げた。
『おうよ!! んでよ勇、判ったぜ』
『ん、何がだ……?』
暫くの会話の後、心輝の報告を受けた勇が一人ゆっくりと立ち上がると……「フゥ」と一つ息を付き……ゆっくりとその一歩を踏み出した。
その手に翠星剣を掴み、ゆらりと刀身を揺らしながら……視線は、その先に在るもう一つの丘へと向けられたのだった。
―――
その頃、とある一つの穴蔵……。
そこ蠢くのは一人の人影。
「……ソロソォロ……飽きて帰った頃かナァ……」
他のボノゴ族と大して変わらない背丈の一人の魔者が座る姿があった。
暗く小さいその内部は他の穴に比べ目立たず、そして離れた場所に存在していた。
「ダンナダンナ、魔剣使い共、けぇったようやで」
そんな彼の背後……穴蔵の奥から別の魔者が姿を現す。
その者が姿を現して判るのは、最初から居た魔者の背丈だ。
大きな態度とは裏腹に、その体付きは小柄。
だが新たに現れた者がかしずく様から、その魔者は彼等の上位者なのだろう。
「お、さいか……んにゃらもうええか」
そう応えるとゆっくりその太い足を地につけ立ち上がる。
ダンナと呼ばれた魔者は手下であろうその報告者に振り向き呟いた。
「まったく、ヤツラァ間抜けよなァ……ちょちょい人間突けばこう来るもんやけど、直ぐどっかァいっちまう」
腰に手を充て、ケラケラと高らかな笑い声を上げる。
下品に笑うその口元からは唾が無造作に飛び散っていった。
だがその時……その背後、空の光差す穴蔵の入り口。
そこに、すらりとした体型の人影が影を落としながら姿を現した。
途端、ダンナなど構う事無く……報告者は脅え逃げ惑う様に穴の奥へと消え去っていく。
逃げた部下に気付く事も無く高笑いを続けるダンナの背後から、人影がゆっくりとその足を踏み出した。
「こんな所に穴があったのか……」
その声を聞いた瞬間、ダンナの体が硬直する。
「ギギギ……」と錆び固まった機械の様な動きで首を回すと……その視界に、日光を背に受けて影を纏う勇の姿が映り込んだ。
「ンギョオーーーーーーッ!?」
ダンナが言葉に成らぬ叫び声を上げて硬直する。
天敵とも言える魔剣使いが目の前に現れれば恐怖を感じるのは当然だ。
「お前が……統率者か……」
その表情は冷たく、冷酷なまでの鋭い目付きをダンナに向ける。
口を震わせ答え渋るダンナを前に、勇はその冷たい表情を徐々にしかめていく。
「あ、えっと……ちが……」
キィン!!
「イヒィ!?」
甲高い音が鳴り響き、ダンナが恐れの余り尻餅をついた。
今の音は地面に覗く岩を翠星剣で突いた音。
岩に刺さった刀身は、バターに突き刺さったナイフの様にヒビ一つ作る事無くそそり立つ。
「お前は統率者かと……聞いている……!」
「あ、ひゃ、ひゃい……」
勇は岩から翠星剣を引き抜くと、徐々にダンナへと近づきながら問答を続けた。
「何故人を襲う様に仕向けた?」
「あ……ええと……反応が面白かったから……です……」
その答えを聞くや否や、勇の目が更に細くなる。
目尻は上がり、感情の高揚すら感じ取られる程に……鋭さを増していた。
「どうしてそこまでやろうとした?」
「……『ボノノ団』の団長になったんでェ……偉い気に成った気がして……ヘ、ヘヘ……」
「ボノノ団」……それは彼等ボノゴ族の若者の集まりだと彼は言う。
若者達が作り自分達のコミュニティを形成したイタズラ好きの集団、いわゆるチームやギャングの様な存在。
その事は既に心輝を通して勇もまたその存在を把握していた。
「お前達がやっている事は人だけでは無く、同じ種族の者達にすら危害を加える事だって事が分かってやっているのか……!?」
「ヒッ!? そ、そんな事は……わ、わかりまっ」
キィーーーン!!
「ヒュエッ!?」
途端、勇の握る翠星剣が光り輝き、命力の籠る鳴音が穴蔵に響き渡る。
迸る光は穴蔵の暗闇を斬り裂き、二人の体に彩りをもたらした。
そしてその輝きはその彩りすら押し退け、白で塗り潰していく。
「何故そんな事が判らない……何故そんな事を考える事をしない……だからお前の様な奴は……!!」
「イヒイイイイ!?」
勇の握る翠星剣は高々と、狭い穴蔵一杯に振り上げられた。
長い刀身が壁を削り、天井を裂くが……振り上げる勢いは止まる事無く光を瞬かせ続ける。
魔剣に籠る力は……既に魔者一人を葬る事など造作も無い程に強く激しい。
「ももももうしわけありませんでしたあああ!! もう、もうしません、お願いですからぁあ!!」
「そう言って……忘れた頃に……同じ事を繰り返すのが……愚者何だろうがッ!!」
そして一閃―――
ゴゴゴゴ……!!
光の壁とも言える薄く輝く閃光が立ち上り、穴蔵を裂いて大地を突き抜け地上へと噴出した。
地上に残る茶奈達が、中央部の穴蔵から顔を覗かせたボノゴ族達が……その光景を前に、ただ静かに見守る。
天を衝く程に高く吹き上がる光の壁は轟々と空気を揺さぶる音を立て、その荒々しい力の存在を誇示し続けたのだった。
ズズズ……
徐々に光の放出が収まり、噴出された光が煌めく粒子状へと姿を変えると……波を作る様に揺らめき、その流れの元にある大地へと向けて吸い込まれていった。
今の影響で穴蔵の一部が崩落したのだろう、彼等の周囲に地響きが響き渡る。
茶奈達はそれに怯む事無く……その状況に安堵の表情さえ浮かべていた。
光の発生源のコントラストがゆっくりと元へ戻っていくと……そこには天井が崩壊し、太陽の光に照らされた勇の姿が晒されていく。
そしてその傍には……命力の奔流によって生まれた裂け目の横で脅え固まるダンナの姿があった。
「あ……あァ……」
怯えて腰砕け動く事が出来ぬダンナに対し、勇が強い口調の言葉を向ける。
「もう二度とするな。 そして元の場所に戻れ。 願いがあるなら堂々と人間に頼め。 そうすれば……聞き届ける。 聞き届けてもらえないのなら……俺がそいつらに聞かせてやる。 わかったな?」
「へ、へい……」
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