時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第十六節「銀乙女強襲 世界の真実 長き道に惚けて」

~同じ釜の飯を食らえば皆家族~

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 魔特隊本部移設は、仰々しいイベント経て終わりを告げた。

 勇達は出勤地が自宅から近くなったという事もあり……その日の内に帰宅。
 レンネィもまた福留と共に、自宅のある都心中央部へと帰っていった。



 そして翌日、朝。



 本部住み込みとなるカプロ、アージ、マヴォ、ジョゾウ、アンディ、ナターシャは一同揃い、本部建屋に備わる食堂へと姿を現していた。

「今日からアタシがあんたらのご飯の面倒を見る事になったからネェ、これからよろしく頼むよォ!!」

 そこにある厨房に立つのは、とても大柄……特に横腹が大柄な女性。
 お洒落など無縁も無縁な、パーマの掛かった黒髪の短髪を小刻みに揺らし……その図体に似つかわしい大声を張り上げ、ニカッとした笑顔を送る。

「ヌゥ……朝からなかなかの勢い、相当のツワモノと見たぞ……!!」

 アージもたじろぐ程の勢いで厨房内を我が物顔で暴れまわるその女性……彼等住み込み組の為に雇われた『安居やすい トモコ』さん……一般の女性である。



 勿論ただの一般人ではない……と思われたが―――



 実は内容を伏せた上で公募し、福留の選考の末に決まった一般人枠。
 当然内部で在った事は極秘である。
 内部事情漏洩を行わないと信頼出来る相手を選び、長きに渡る審査の結果……彼女が見事合格したという訳である。

「ほぅら、あーだこーだ言ってる間に出来ちまったネェ~!! 早く取りにきな!!」
「お、応……」

 安居料理長が太い腕を奮い、朝食であるにも関わらずふんだんに食材を使って次々と調理していく。



ドンッ!
ドンドンッ!!



 カウンターに次々に乗せられていく皿には、沢山の唐揚げ、卵の小松菜炒め、酢豚といった、朝食とは思えぬ重さを醸し出す料理が乗せられていった。

 それを自身達の席の机へと運ぶと……そのとんでもない量のオカズ、大きな茶碗に盛られた白米、そして豚汁がありありと彼等の前に姿を晒した。

「あんたら相当お腹空くっていうからネェ、たーんとおあがりよ!!」
「こ、これ全部食べていいのか……!?」
「当たり前だいネェ、何の為に作ったと思ってるんだい!!」

 さすがのアンディも昨日の今日で状況が整理できていないのか……ナターシャに話は聞いているものの、現実を受け止め切れていない様だ。

「まずは『いただきます』からさネェ!!」
「い、いただきます……」

 先日では生意気に拍車が掛かっていたアンディとナターシャも、安居料理長の大柄な態度にはタジタジ。
 慣れぬ手つきで箸を使い、恐る恐る唐揚げに手を出す。
 そっと揚げたての唐揚げを口に入れると……じゅわぁと鶏の脂の独特の甘みと旨味が口に広がり……はむはむと口を動かしながらその顔をにんまりと惚けさせてじっくりと味わっていた。

 まるで二人の周囲にお花畑が見えるよう。

 それを見たアージやマヴォもまた堪らず唐揚げを口に運ぶと―――

「こ、これは……何だと……オォ!!」
「う、うおお……脂が、肉の繊維がッ!!」

 大男二人が声を揃えて叫ぶ。
 カプロもそれに続き喜びの顔を浮かべ堪能していた。

 だがそんな中……ジョゾウ一人その形を見て疑いの視線を飛ばす。

「して、この茶色き塊、何が食材に御座ろうか?」
「鶏の胸肉だよ!!」
「ヌゥ!! なれば拙僧口に入れる事はばからぬ!!」

 鳥型魔者であるからだろうか、やたらとそういった所が気になる様で。

「あんたは鳩でしょうがネェ……」
「『ハト』とはどういったものか存ぜぬが……拙僧らカラクラが一族、たもとを分かつた同胞を食す事を良きとは思わぬ故、なにとぞご容赦を!!」

 頑なに手を突き出し拒否する姿勢を示すジョゾウだったが……初めての味に興奮冷めやらぬアージとマヴォが追い打ちをかける。

「だがなジョゾウ、これは一度食べれば病みつきだぞ!! 食ってみろ!!」
「ヌゥ!? アージ殿、これは『はらすめんとう行為』に御座るぞ!?」

 目の前に突き出された唐揚げが上下に揺れ、ジョゾウはそれを不服そうに目頭を立てた目で追っていた。





「美味である!!」

 唐揚げを次々と貪るジョゾウ。
 先程の抵抗はなんだったのか。

「ジョゾウさん、アンタお調子者って言われねッスか?」
「ヌゥ……カプロ殿、それは身痛き言葉ぞ……されど、掟は里の掟……『にっぽんご』には『GOにいらずんばGOにしたがへ』という言葉があると聞き申した。 拙僧は其れに従ったまでよ」

 ジョゾウは御託を並べながら再び唐揚げを口へ運ぶ。
 味の誘惑には勝てず……誰しもがその場で出された食事を味わい楽しみ合っていた。



 そんな些細な幸福から始まるその日……不安募る新天地での出発は、彼等にとって良い始まりとなった様だ。


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