時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
490 / 1,197
第十七節「厳しき現実 触れ合える心 本心大爆発」

~リアリングフルパッケージモデル~

しおりを挟む
 食事を済ませ……取り巻きが増えて上機嫌のレンネィを筆頭に、4人が再び買い物の続きへと戻る。
 仲間達の協力もあってか……多くの購入品を一度に持つ事ができ、買い物が捗っていく。

 心輝達三人の手に掴まれる袋が次々と数を増していく。
 気付けば三人が抱えられるギリギリの量に至るまでに荷物が増えていた。

 車へと戻り、荷物を放り込めば……購入品が後部座席一杯に押し込められた異様な様を見せつける。

「ゼェ―……ゼェ―……こ、これで終わりですかね……レンネィさん……」
「イテテ……シンなんでそんなケロっと出来るんだよォ……」

 当然二人は普通の人間である。
 両手一杯に大荷物を抱え続け、両腕の筋肉が悲鳴を上げていた。
 そんな二人が、同様に荷物を持っていた筈の心輝に対して不思議そうな視線を送る。

 荷物持ちを肩代わりしてもらった事で余裕なレンネィはさておき……命力が付くようになって久しい心輝はついうっかりと自然に命力を使って荷物を運んでいたのだ。

 途端心輝はそれに気付き、持ち前の演技力(?)で疲れた様なていを取り誤魔化し始めた。

「二人共ありがとうねぇ……大丈夫かしら?」
「平気ッス!!」
「超余裕ッス!!」

 笑う膝と肘をひたすら必死に抑え込む中、レンネィの優しい声に励まされ笑みを浮かべる。
 そんな虚勢を張る二人を……心輝がニヤニヤさせた口元を車越しで見えないように隠しながら見つめていた。

「あらそう? じゃあもう一周お願い出来るかしらっ!?」

 それは心輝の予感した通りの一言。
 レンネィが二人の言葉を受けて喜ぶ様に万遍の笑顔で声を上げ……それを聞いた二人が顔を引きつらせていく。

 『あちら側』の者達は基本「裏表」が無い。
 二人にとってはいわゆる「リップサービス」の様なモノであったのだろうが……そんな事など知る由も無いレンネィは遠慮なくそれを肯定的に受け止めてしまうのだ。

「す、すいませんレンネィさん、俺達そろそろ用事があるんで!!」
「お手伝い出来て光栄でした!!」

 途端、二人は「バヒュン!!」と音が鳴りそうな程に素早い動きと切り返しで駐車場に停まる車の間を縫う様に走り去っていってしまった。
 「そういやアレ・・について何も聞いてねぇなぁ~」と心に思いながらも……「ニシシ」と笑い二人を見送る心輝であった。

「あらら残念……仕方ないわね、じゃあシンに付き合ってもらおうかしら」
「つったって車にもう入らねーじゃねーっすか……」

 改めて車内を見ると……後部座席は既に一杯ぎっちり。
 トランク内はと言えば……ふとレンネィが扉に手を掛けるも、ピクリと細い指が動いた途端にその動きが止まる。
 いかがわしい物でも入っているのだろうか……結局扉すら開ける事も無く、顔を振り腕を組んで悩み始めた。

「うーん、仕方ないわねぇ。 それじゃ買い物はここまでにしておきますか」
「お、じゃあ俺はこれで」
「まぁ待ちなさいな……付き合ってくれたお礼に何か買ってあげてもいいわよ?」

 思わぬご褒美タイム……と思われたが、心輝の顔は未だ浮かない。 
 それもそのハズ……既に魔特隊として戦いで稼いだ報酬で懐が困る事は無い。

 だが向こう見ずな心輝であっても、さすがにそんな誘いを無下むげに出来る訳も無く。

「……まぁ買ってもらわなくてもいいですけど、ちょっと寄りたい所はあるっすねぇ」



 折角だからと彼が提案する場所、そこは―――



―――



 このショッピングモールは複数階構造となっており、階によって店舗の方向性が異なる。
 1Fは主に女性衣類、小物類、スーパー。
 2Fは男性衣類、家具、鞄等の身の回りの道具類。
 3Fは主に趣味道具などを扱っている。

 とりわけ心輝は3Fの趣味フロアを利用する事が多く、そこだけであれば店舗の内容はほぼ把握しているレベルだ。



 その中でも心輝が推して進む先……そこは「ホビーショップ南陽堂」と書かれた店舗であった。

「やっぱ俺が来るっつったらここしかねぇだろ!!」
「へぇ、シンはこういう所が好きなのねぇ」

 フィギュア、プラモデル、ラジコン、グッズ、カードゲーム、子供向けの玩具……その大きなフロアに設けられた専用空間には所狭しとそれらが並び、サブカルチャー好きの少年少女や大きな大人達までもがそこの店に出入りしていた。

 レンネィはアニメや漫画など見る事は殆ど無いが……勇達が魔者に対して何の偏見も持たない様に、彼女もそれらに対して何の偏見も持たず普通に接していた。

 勿論彼女にそういう知識は無い為、立ち寄った時それが何であるかわからずスルーしたのだろう……彼女の買い物ルートには当然含まれていない。

 心輝がズカズカと店内に入っていくと、レンネィもそれに付いて回る。
 ふと目に付くのはヒーローやヒロインのフィギュア、ロボのプラモデル……明らかな心輝の領域テリトリーとも言えるコーナー。
 そこに歩み入るレンネィの麗しい姿はあからさまに不自然そのもの。
 陳列された商品が何なのかは相変わらず分からずじまいではあるが……少なくとも煌びやかな衣装を纏うそれらの人形が、心輝が好きな雰囲気だという事だけは理解出来ていた。

「ふぅん、あの子が好きなのはこういう衣装を纏って戦う事なのかしらね。 そうなら魔特隊のジャケットはちょっと地味ねぇ~」

 言い得て妙な反応ではあるが……あながち間違いでは無いのだろう。



 その時、不意に心輝の声が轟いた。



「うおお、マジかよ!?」



 いつの間にか遠くへ行っていた心輝の元へ歩み寄るレンネィ。
 そこには震える様に佇む彼の姿があった。

「1/100スケール リアリングフルパッケージモデル・ダイジェンディーだとぉ……こんなものが出てるなんてぇッ!!」

 1/100とプラモデルいうと聞こえはいいが、その手に取った箱は異様に大きく……価格を見ると17980円という驚くべき値札が貼られていた。

「アイツラ……これの事言ってやがッたのかッ!!」

 心輝がアニメや漫画好きなのは仲間内では有名な事ではある。
 特に先程の二人はいわゆる「オタク仲間」であり、趣味は共有されている。

 それ故に……彼等の言う「アレ」は心輝の的を的確に捉えていたのである。

 心輝の愛する作品「浪漫機甲ダイジェンディ―」主人公ギュー・ジェインの乗る主人公機「ウェイカー・ダイジェンディ―」は彼の中でもトップクラスの位置に居座る程の入れ込み具合だ。

 何を証拠に……それを手に取った心輝の顔は妙に線が細かく入った達観顔に変化しており、照明の光が彼の顔を反射し眩しく輝かせていた。

「いただこうッ!!」

 それを迷う事無くレジに持っていった心輝は手持ちが無かった為、躊躇する事無く黒いカードを突き出す。
 そのカードを見て目を丸くする店員ではあったが……まるで「ダイジェンディ―」の主人公の渋い顔を体現するが如き真剣な顔付きの心輝を前に、焦りを隠せないまま包装し始めた。

「ま、毎度有難う御座います……!!」

 商品を受け取り店を後にした心輝の顔は、しばらくそんな様相ではあったが……心なしか喜んでいると思える程に、口角が微妙に上がっていたという。



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...