時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第十七節「厳しき現実 触れ合える心 本心大爆発」

~オカイモノ~

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 一台の車が、降りしきる雨に遮られながらもどこか見た事のある景色を通り抜ける。
 しばらく走ると、二人の視界に大きなショッピングモールが見え始めた。

 駐車場へと車を切り返し……そのまま進むとその道筋を屋内駐車場ルートへと向ける。

 日曜だからか、多くの車が雨であるにも関わらず停まっている。
 この場所が地域の生活空間として根付いている証拠であろう。

「寄りにもよってなんでココなんすかぁ……」
「仕方ないじゃない……ここが大型店舗を構える中で通り道にあって一番近いのよ」

 そこは勇達の家が近くにあるショッピングモール……心輝にとっても馴染みのある場所である。
 それ故に物珍しいモノがある訳でも無く……心輝のテンションは駄々下がりだ。

 屋内駐車場にある一角に偶然スペースを見つけ……そこにバックで上手く停める。
 その手馴れた様子に心輝も驚きの顔を浮かべていた。

「やるもんだなぁ~」
「でしょう?」

 やはりそこは魔剣使い……戦いの経験と命力の強化による動体視力と肉体操作が卓越している彼女にとってはその程度など造作もない。

「買い物の時まで魔剣持っていくんすか?」
「当然よ、魔剣使いたる者―――」
「ハイハイ、御託はいいですって、聞き飽きましたよぉ~……」
「むぅ……」

 レンネィが車外に出てくると、それに合わせて心輝も車外へ躍り出る。
 彼女の肩に背負うのは、誰が見ても凶器だとわからない様にシャラルワールが仕舞われた大きな鞄であった。

 立体駐車場を抜け、モール内の建物へと踏み入れる為に自動ドアを開くと……気圧差で一瞬風が吹き荒れ彼女達の髪を靡かせる。
 エスカレーターに乗り、下の階へと降りていくと……二人にとっては見慣れた光景、場内に広がる多くの店舗が立ち並ぶ様相が目に映り込んだ。

「やっぱりここはいつ見てもワクワクするわぁ~」



 彼女はつい最近までは戦いに明け暮れる日々を過ごしてきた。

 そんな彼女が夢にも思わなかった平穏な日々が映すこの光景は、現代の人間ではほぼ感じる事など出来ないであろう些細な感動。
 そんなどこにでも居そうな女性の姿を惜しげも無く晒す彼女を前に、心輝もどこか嬉しそうに笑顔を浮かべていた。



 レンネィが女性だからと、服などに興味を持つものかと思いきや……彼女の目的はそこには無かった。

 場内に入りまず最初に向かうのは……ちょっとしたインテリア用の小物を扱う店だ。

 小さなマグカップや食器等を扱うシックな雰囲気の店内で、一回りする様に動き店内を見渡す。
 端には人形も置いてあり、それを見た心輝は「少し商品の方向性に統一感が無いな」などと心に思う。

 その次に訪れたのは小型家具店……良質の材木をふんだんに使用した家具ともあり、値段が見張るものもあるが何れもしっかりとした作りの商品。

 そんな彼女の行く先々が心輝にとっては殆ど縁のない店なのだろう……いつも見る様で見た事の無い景色を当人も興味本位で見始めていた。


―――


 気付けば昼も過ぎ2時程に差し掛かる時間……。

 少し最初から飛ばし過ぎてしまったと反省したレンネィは心輝と共に3階にあるフードコートへと足を踏み入れていた。
 人が多い為、食べる物の調達はレンネィが進んで行い、心輝は席の確保を行っていた。

 丁度良い席を見つけ……心輝は一人机に座り、おもむろにスマートフォンを弄る。



 画面に目を移した矢先……聞き慣れた声が耳に入ってきた。



「あれ、シンじゃん?」
「お、ほんとだ」

 それに気付いた心輝が声の聞こえる方へ振り向くと……そこにはかつてのクラスメイトで仲の良かった二人の男子が立っていた。

「おっ、お前等久しぶりじゃん」
「おう、久しぶり!! シンなんだよ、お前一人かよ」
「カーッ寂しい奴だなぁ~!!」

 突然の再会に挨拶代わりの会話を交わすと……二人が心輝の確保した席へと座り込む。

「勝手に一人にすんなっての」
「なんだ、連れ居るのか……あれか、相沢か妹?」
「まさかあの時の子じゃねぇだろうな?」

 あの時の子……つまりは茶奈の事。
 数回彼等の前に姿を見せた事のある茶奈を、二人はまだ覚えてる様子。
 よほど印象深かったのだろう。

「お前が居るって事は……やっぱアレ・・目当てかよ?」
「……んお? アレってなんだよ」
「え、お前が知らないってどういう事だよ……」
「最近忙しいからな~……なかなか自由が無いんだよなぁ」

 気付けば訓練で疲れて、帰り、寝る……そんな日々を過ごす毎日。
 心輝は魔特隊で働き始めてからというものの、最近のサブカルチャー事情に疎くなっていた。
 仕方ないとはいえ、彼がそう愚痴を零すのは無理も無い。



 すると―――



「あら、シンのお友達?」



 そんな彼等の背後から現れたのは、料理を乗せたお盆を掴み立つレンネィであった。
 彼女の姿を見た途端、男二人が驚愕の顔を見せつける。

「んなぁーーー!?」
「うぉぉ!? シン、これ一体どういう事だよ!?」

 一般的に見れば彼女の容姿は単に美しいと言っても過言ではない。
 見た目の抜群なスタイルと物腰は男達を興奮の渦へと流し込む。
 
 彼等とて……例外では無い。

 とはいえ、既に見慣れた心輝と言えば……なんて事の無いしらけた顔を浮かべていた。

「どういうってほら、これよ、買い物付き合わされてる系」
「はぁい、シンがいつもお世話になってます、会社の上司のレンネィでーす」

 開いた口の塞がらない二人。
 小さく手を振る彼女を前に、茫然としながらもついつい手を可愛く振り返してしまう。



 そして……我に返った二人は心輝へと振り返り―――



「どどどどういうことだよ!? 聞いてねぇぞ!?」
「いや……言う必要ねぇだろ!?」
「いやいや、これは絶対言うべき。 お前だけ美味しい思いしてるんじゃねぇ!!」

 二人が理不尽な言葉を突きつけ己達の無念さをひたぶつける。
 だが当の心輝と言えば……「めんどくせぇ~」と思いながらしかめっ面を浮かべて左から右へと受け流していた。
 そんな3人のやり取りが妙に面白かったのだろう、レンネィが「フフッ」と笑みを零しながら眺め観る。
 
 上機嫌にも見える彼女の様子を前に、二人はここぞとばかりににやけ顔を浮かべて力強く見上げた。

「レンネィさん、良かったら俺達も買い物に付きあいますよ!」
「何でも言ってください!! 何でもやります!!」
「アラ本当? 助かるわぁ~」
「じゃあ俺帰りますわ」
「シンは強制連行な」
「勘弁してくれよォ~……」

 心輝の気苦労はまだまだ続く。


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