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第十八節「策士笑えど 光衣身に纏いて 全てが収束せん」
~恋心晒せし 繋がり紡ぎ継ぎたりて世界~
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勇達が日本に戻り三日が過ぎた。
しとしとと小雨が降るその日、心輝が勇の家に訪れ……二人が勇の部屋の中央に座り込み話し合う姿があった。
その日、仕事のある両親は元より、茶奈も体の最終検査を行う為に魔特隊事務所へと呼ばれていた為……二人だけの会合。
「んで、大事な相談ってなんなんだよ?」
心輝が差し入れたであろうコケッコーラを口に含み、勇がそう呟くと……心輝は言いづらそうに真っ赤に染まった頬を掻きながら口をパクパクと動かしていた。
「あぁ、その、んと……あれだ……なんつーか……」
相談をしたいと申し出たのは当然心輝ではあるが……妙にソワソワしており話が進まない。
「言いたい事が有るならはっきり言えよ……つか、事務所じゃダメなのかよ?」
「事務所は色々問題があるからダメだッ!!」
何か思う事が有るのだろう、即座に否定するも……その続きが上手く発せられない心輝に勇の苛立ちが募る。
「あー……じゃあもう帰れよ……これいつまで続くかわからないだろ……」
「んなっ……じゃあ今飲んだコケッコーラ返せ、今すぐ返せ」
「どうしてそうなるんだよ……んじゃあ早く言えよ!」
「うぐっ……わ、わかった……言うぜ……言ってやんよ!!」
あぐらをかいた心輝の両膝に両手が力強く圧し掛かり……勇を睨み付けるかの様に視線を向けると、勇もごくりと唾を飲んだ。
「……俺、レン姐さんに恋しちまった」
「……はぁ……!?」
途端、心輝がその両手ですぐさま恥ずかしさと共に顔を覆い隠した。
「あの人ヤベェ……今でも思い出すと鼓動が高鳴ってヤベェー!!」
まるで乙女の様に顔を左右に振る心輝を前に、驚いていた勇の顔が徐々に青ざめていく。
「俺はどうすればいい、あの人に想いを告げるにはどうしたらいい?」
「……なんでそうなったかキッカケはわからないけどさ。 それ、俺に聞くか普通?」
突然のカミングアウトもさることながら、まさかの相談内容に勇は茶を濁すかの様に対応する。
だが心輝はゆっくりと首を振り勇が思っている事を代弁し始めた。
「確かに、その疑問はわかる……けどよ、まずセリ、あいつはダメだ。 俺がそんな感情持ったって事知ったら絶対面白がる」
「まぁ確かに。 簡単にばらしはしないと思うけどな」
瀬玲が高笑いする姿が目に浮かぶ様だ。
考えてみればそういう点では二人は似た者同士なのかもしれない。
そう思うと、「同族嫌悪」程では無いが好きになれないのは無理もないのだろう。
恋バナで語り合った事もあり……勇にはなんとなくそれが理解出来ていた。
「あずと茶奈ちゃんは論外。 福留さんは忙しすぎるから相談し辛い、カプロはダメだろ? アージとマヴォはまず奥手だろ、ジョゾウさんはあの性格だぜ? 笠本さんと平野さんは独身……つか接点少ないから相談しにくいし、剣聖さんはアレだし、ラクアンツェさんは今いねぇじゃん」
「さりげなくジョゾウさんけなすなよ」
マトモに考えたら確かに相談出来る人物なんてレンネィくらいしか居ない。
そのレンネィが対象なのだからおのずと相談相手は絞られてしまう。
「かといって、俺も言う程恋愛事情詳しくないんだけど……むしろ疎いっていうか」
「お前しか居ないんだよぉ~!! 俺の気持ちを相談出来る奴はお前しか居ないんだってばよぉー!!」
となると結局結果はこうなる訳で。
「茶奈ちゃんと和解出来た話術を俺に伝授してくれっ!!」
「どんな話術だよ!?」
「そりゃもうあれよ、茶奈ちゃんを手籠めにした話術」
「手籠めにしてねぇよ!!」
「してないのかよッ!?」
例え人と分かり合う事が出来ても、こうやって次から次へと無作為に生まれてくる誤解は防ぎようがない。
「じゃあ俺は誰に相談したらいいんだァー!!」
「そもそもそれは相談する事じゃないだろ……」
そんなバカみたいなやり取りを行っていると……不意に勇のスマートフォンが振動し電話が掛かってきた事を伝える。
それをおもむろに手に取ると、画面には「福留さん」と描かれた文字が大きく浮かび上がっていた。
通話ボタンを押し、そっと耳に充てると……福留の声が聞こえてくる。
『おぉ、勇君……今平気でしょうか?』
「はい、どうしましたか?」
頭を抱え悩み続ける心輝を前に勇が通話を続ける。
『帰って来たばかりで申し訳ないのですが……先方からの依頼で勇君に出っ張って頂きたくて……』
「そうですか……翠星剣の力はまだ残っていますし、多分平気ですよ」
『申し訳ありませんねぇ……作戦開始は二日後になります。 編成は勇君プラスCチームを予定していますのでよろしくお願い致します』
そう答えると電話が途切れ……それに気付いた勇はそっと耳からスマートフォンを離した。
「今の福留さんか?」
「よくわかったな……その通り、二日後Cチーム出撃だってよ」
「二日後かよ!? まぁた急だなぁ福留さぁん……」
「まぁ仕方ないさ。 俺も行く事になったからよろしく頼むな」
勇が普段あまり見せない「ニカッ」とした笑顔を見せると、心輝も同じく歯を見せて笑顔を返す。
男の親友同士だからこそのやり取り……二人だけの時は大概こんな感じだ。
「しゃあねぇ……レン姐さんへの告白はもう少し考えてからにするぜ」
「そん時は俺を巻き込むなよォ?」
お互いが部屋で大笑いし、談笑にふける。
いつかはそんな日々も日常であったが、今となってはそれも希有な彼等の非日常。
多くの仲間達が己の想いを交錯させ、絆を深めていく。
これは仲間達だけでなく、出会った多くの人々とも繋ぎ、紡がれ、継がれていく。
勇と茶奈、二人の一本の絆から始まった繋がりは、複雑に絡み合い、ほつれもするだろう。
だがそれも、修復する事はなんら造作もない。
人は想いを交わす生き物だからこそ……彼等は何が有ろうと、なお紡ぎ続けるのだ。
ほつれた事すら忘れ、真っ直ぐとなった布地を作り出す様に。
第十八節 完
しとしとと小雨が降るその日、心輝が勇の家に訪れ……二人が勇の部屋の中央に座り込み話し合う姿があった。
その日、仕事のある両親は元より、茶奈も体の最終検査を行う為に魔特隊事務所へと呼ばれていた為……二人だけの会合。
「んで、大事な相談ってなんなんだよ?」
心輝が差し入れたであろうコケッコーラを口に含み、勇がそう呟くと……心輝は言いづらそうに真っ赤に染まった頬を掻きながら口をパクパクと動かしていた。
「あぁ、その、んと……あれだ……なんつーか……」
相談をしたいと申し出たのは当然心輝ではあるが……妙にソワソワしており話が進まない。
「言いたい事が有るならはっきり言えよ……つか、事務所じゃダメなのかよ?」
「事務所は色々問題があるからダメだッ!!」
何か思う事が有るのだろう、即座に否定するも……その続きが上手く発せられない心輝に勇の苛立ちが募る。
「あー……じゃあもう帰れよ……これいつまで続くかわからないだろ……」
「んなっ……じゃあ今飲んだコケッコーラ返せ、今すぐ返せ」
「どうしてそうなるんだよ……んじゃあ早く言えよ!」
「うぐっ……わ、わかった……言うぜ……言ってやんよ!!」
あぐらをかいた心輝の両膝に両手が力強く圧し掛かり……勇を睨み付けるかの様に視線を向けると、勇もごくりと唾を飲んだ。
「……俺、レン姐さんに恋しちまった」
「……はぁ……!?」
途端、心輝がその両手ですぐさま恥ずかしさと共に顔を覆い隠した。
「あの人ヤベェ……今でも思い出すと鼓動が高鳴ってヤベェー!!」
まるで乙女の様に顔を左右に振る心輝を前に、驚いていた勇の顔が徐々に青ざめていく。
「俺はどうすればいい、あの人に想いを告げるにはどうしたらいい?」
「……なんでそうなったかキッカケはわからないけどさ。 それ、俺に聞くか普通?」
突然のカミングアウトもさることながら、まさかの相談内容に勇は茶を濁すかの様に対応する。
だが心輝はゆっくりと首を振り勇が思っている事を代弁し始めた。
「確かに、その疑問はわかる……けどよ、まずセリ、あいつはダメだ。 俺がそんな感情持ったって事知ったら絶対面白がる」
「まぁ確かに。 簡単にばらしはしないと思うけどな」
瀬玲が高笑いする姿が目に浮かぶ様だ。
考えてみればそういう点では二人は似た者同士なのかもしれない。
そう思うと、「同族嫌悪」程では無いが好きになれないのは無理もないのだろう。
恋バナで語り合った事もあり……勇にはなんとなくそれが理解出来ていた。
「あずと茶奈ちゃんは論外。 福留さんは忙しすぎるから相談し辛い、カプロはダメだろ? アージとマヴォはまず奥手だろ、ジョゾウさんはあの性格だぜ? 笠本さんと平野さんは独身……つか接点少ないから相談しにくいし、剣聖さんはアレだし、ラクアンツェさんは今いねぇじゃん」
「さりげなくジョゾウさんけなすなよ」
マトモに考えたら確かに相談出来る人物なんてレンネィくらいしか居ない。
そのレンネィが対象なのだからおのずと相談相手は絞られてしまう。
「かといって、俺も言う程恋愛事情詳しくないんだけど……むしろ疎いっていうか」
「お前しか居ないんだよぉ~!! 俺の気持ちを相談出来る奴はお前しか居ないんだってばよぉー!!」
となると結局結果はこうなる訳で。
「茶奈ちゃんと和解出来た話術を俺に伝授してくれっ!!」
「どんな話術だよ!?」
「そりゃもうあれよ、茶奈ちゃんを手籠めにした話術」
「手籠めにしてねぇよ!!」
「してないのかよッ!?」
例え人と分かり合う事が出来ても、こうやって次から次へと無作為に生まれてくる誤解は防ぎようがない。
「じゃあ俺は誰に相談したらいいんだァー!!」
「そもそもそれは相談する事じゃないだろ……」
そんなバカみたいなやり取りを行っていると……不意に勇のスマートフォンが振動し電話が掛かってきた事を伝える。
それをおもむろに手に取ると、画面には「福留さん」と描かれた文字が大きく浮かび上がっていた。
通話ボタンを押し、そっと耳に充てると……福留の声が聞こえてくる。
『おぉ、勇君……今平気でしょうか?』
「はい、どうしましたか?」
頭を抱え悩み続ける心輝を前に勇が通話を続ける。
『帰って来たばかりで申し訳ないのですが……先方からの依頼で勇君に出っ張って頂きたくて……』
「そうですか……翠星剣の力はまだ残っていますし、多分平気ですよ」
『申し訳ありませんねぇ……作戦開始は二日後になります。 編成は勇君プラスCチームを予定していますのでよろしくお願い致します』
そう答えると電話が途切れ……それに気付いた勇はそっと耳からスマートフォンを離した。
「今の福留さんか?」
「よくわかったな……その通り、二日後Cチーム出撃だってよ」
「二日後かよ!? まぁた急だなぁ福留さぁん……」
「まぁ仕方ないさ。 俺も行く事になったからよろしく頼むな」
勇が普段あまり見せない「ニカッ」とした笑顔を見せると、心輝も同じく歯を見せて笑顔を返す。
男の親友同士だからこそのやり取り……二人だけの時は大概こんな感じだ。
「しゃあねぇ……レン姐さんへの告白はもう少し考えてからにするぜ」
「そん時は俺を巻き込むなよォ?」
お互いが部屋で大笑いし、談笑にふける。
いつかはそんな日々も日常であったが、今となってはそれも希有な彼等の非日常。
多くの仲間達が己の想いを交錯させ、絆を深めていく。
これは仲間達だけでなく、出会った多くの人々とも繋ぎ、紡がれ、継がれていく。
勇と茶奈、二人の一本の絆から始まった繋がりは、複雑に絡み合い、ほつれもするだろう。
だがそれも、修復する事はなんら造作もない。
人は想いを交わす生き物だからこそ……彼等は何が有ろうと、なお紡ぎ続けるのだ。
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