時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
600 / 1,197
第二十二節「戦列の条件 託されし絆の真実 目覚めの胎動」

~猛り昂るその姿はバーサーカー~

しおりを挟む
 ウィグルイが目の当たりにした瀬玲の猛り、昂る姿はまさに『狂戦士バーサーカー』そのもの。



 だがウィグルイの口は脅えるどころか深々と笑窪を張り上げ、光悦なまでに笑顔を浮かべる様を見せる。

「フハハーーーッ!! それでよいッ!! それでこそ戦士ッ!! そうでなくてはなあッ!! もし足を舐めようものなら、そのまま頭を吹き飛ばそうと思っていた所よォ!!」

 ウィグルイもまた、不自由な右腕を震わせながら構え……自身に籠る命力をこれでもかという程に昂らせた。

 そんな彼の言葉など耳にも入れず、瀬玲が飛び込む。

 手に持ったカッデレータの弓身の上下が途端に握り側へとスライドすると、その弓身がまるで弩弓ボウガンの様に変形し、小さくなった身なりから無数の小さな矢弾が放たれた。

 細かく小さい矢弾がウィグルイへと襲い掛かるが、それに怯む事無くその不自由な右腕を盾に直撃を避けながら彼もまた瀬玲へ向けて突撃していく。

 無数故に、幾つもの細かい矢弾が彼の身体へと突き刺さりながらも、再び面と向かって対峙する二人。
 僅かに次の攻撃は素早いウィグルイの方が先……残された左拳の一撃が彼女の腹部へと襲い掛かった。

「コォオオオオッ!!」



 ドッゴォーーーー!!



 彼女の腹部へと突き当てられるウィグルイの左拳……だが、そこで苦悶の顔を浮かべたのは彼の方であった。
 
「ヌゥオオオアアアアッ!?」

 突如怯みを見せた彼の頬へ、途端突き刺さる彼女の一撃。



パァーンッ!!



 それはどうにも浅く、軽い音が鳴り響いたが……当のウィグルイの顎が大きく逸らした。
 堪らず離れていくウィグルイ……その左拳から流れ出る血液が事を物語っていた。



 瀬玲は自身の腹部から針の一撃を『実践してみた』のだ。



 そして漏れなく成功した。
 それはすなわち、彼女が魔剣を持たぬ普通の相手に対して『無敵』と成った事を示唆していた。

 まるでそれは『針鼠』の様に、堅く、鋭い絶対的なカウンターを有する防御能力。

 ウィグルイが言い放った『鼠』という言葉は適切だったのかもしれない。
 だがそれは決して弱者という意味では無く……『針鼠』……小さかろうと絶対的な反撃の意思を持つ存在という意味でである。



「まさか貴公の技法がこれほどまでとは……ッ!! ククク……なれば詫びねばならん……先程までの仕打ち、非礼を詫びよう……だがッ!!―――」

 その時……おもむろにウィグルイが自身の羽織る服を破り裂く様に脱ぎ捨てた。
 そこに現れたのは……無数の傷を持つ鍛えられし肉体。

「これより本当の死闘であるッ!! 互いに死力を尽くそうでは無いかあッ!!」
「ごちゃごちゃうるせぇって言ってんだよォーーー!! アアアアアーーーーッ!!」

 

 瀬玲の体が光り輝き、魔装から惹かれた光がカッデレータへと繋がると……アレムグランダが展開され、彼女の体に力を与える。
 引き絞られた矢弾が何重にも光を重ね、大きな光の槍へと構築されると……間も無く撃ち放たれて空を裂いた。



 その瞬間、幾多にも分裂する光の槍……弧を描き全周囲からウィグルイへと襲い掛かる。



「オオオオッ!?」



 そのいずれもが一撃で四肢を千切る事が可能な程に強烈なもの。
 そして自身の心のありのままを曝け出した彼女の力が生んだ矢弾は……先程よりも格段に速く鋭かった。

「カァアアアアアアッ!!!」

 ウィグルイが傷付き自由の効かない腕を命力により無理矢理動かして矢弾を弾きながら躱していく。
 一発一発に全てを篭め、異音が絶えず鳴り響く中……瀬玲が彼の後ろから突撃していった。

「死ねぇええええ!!!」
「遅しッ!!」

 魔剣を掴んだ拳による渾身の一撃は、ウィグルイが咄嗟に宙へと跳ぶ事で躱されてしまう。
 そして宙でぐるりと縦に回りながら、その視線を彼女の背後へと向け……反撃の拳を彼女の背中へ見舞う。

「があッ!!」

 反撃の針が間に合わず、思わず前面へと突き飛ばされる瀬玲。
 そんな彼女へ、着地したウィグルイが更に追撃を掛けた。

「けぁああああああ!!」

 途端不意に彼の後ろから閃光の槍が飛び込み、咄嗟にその体を逸らして躱す。



 だが背を向けた瀬玲が手を伸ばし……その光の槍を掴み取り―――



「アアアアアアッ!!」

 軸足を支えに、背中を殴られた勢いを回転力に換え……掴み取った光の槍を思い切りウィグルイの脚へと突き立てたのだった。



「オオオオオオオッ!?」



 連続攻撃に次ぐ反撃……予想だにしない攻撃の嵐にウィグルイが叫び声を上げる。
 だがそれは怯みではなく雄叫び……ズタボロになった自身の体を奮い起こし、本来動かないはずの槍を突き立てられた脚を踏ん張っては瀬玲の腰へと回し蹴りを見舞った。



 ドッゴォ!!



 「ぎはっ!?」



 「ビキキッ」という音が瀬玲の体に響き、同時に蹴られた拍子に彼女の体ごと弾き飛ばされていく。



ザザザッ!!



 だが瀬玲はそれすらも怯む事無く魔剣を構え引き絞る。
 魔剣に篭められた光は先程と同じ散弾の光。

 それに気付いたウィグルイが発射する間を与えず飛び込んだ。



ギィーーーーーンッ!!



 魔剣を盾に、その一撃を防ぐ瀬玲。
 だがそれは彼にとっては布石の一つ。

 間も無くその直下から襲い掛かる突き上げの蹴り。



パキィーーーーンッ!!



 腹部へと突き刺さるはずだったその蹴撃は針の壁により遮られ、突き出された足から大量の血が噴き出した。

「ルゥウオオオオオッ!!」

 だがそれすらも一つの布石……狙いは、彼女の死角となった頭部。
 彼の硬い頭部が彼女の頭目掛けて真っ直ぐに打ち下ろされた。



コォーーーーーーーンッ!!



「ああぐっ!?」
「ぐはぁ!!」

 相打ち……針の壁の完全な形成が遅れたのだろう、その一撃が届く事無く彼の頭部を傷つけるだけに留まり、強い衝撃が瀬玲の頭にも届いていた。

 瀬玲が仰け反りウィグルイが弾かれ大地へと跪く……。



 互いに満身創痍状態……だが互いの眼からは闘争心の炎は未だ絶える事なく燃え続けていた。



「コォォォォォーーーーーー……」

 ウィグルイの口から深く息が吐き出され……再び引き締まった表情を浮かべる。
 本来であれば死んでもおかしくないと思われる程の傷を負い、動くはずの無い腕を命力によって無理矢理動かし……ゆるりと腕を引き回し再び構えを取った。

 瀬玲もまた……命力を昂らせ、自身に残る全ての力を肉体に篭めさせる。
 彼女の体も至る所が動くはずの無い傷を負っていたのにも拘らず……今までに無い程の命力が駆け巡り、その体を揺り動かしていた。



 二人は実感していた……その先に在る結末を……次が最後の攻撃である事を。



 ただ静かに……睨み合いながらその一瞬の為に……命力を体へ巡らせるのであった。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

処理中です...