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第二十二節「戦列の条件 託されし絆の真実 目覚めの胎動」
~若者が想いしは外界へのロンギング~
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瀬玲がウィグルイと激戦を繰り広げている頃……アージとマヴォもまたイシュライトとの激戦を繰り広げていた。
魔剣は大地に投げ捨てられ、戦いは拳と拳がぶつかりただの殴り合い。
それは、素早く動き一撃必殺を繰り出してくるイシュライト相手には魔剣はただの重りに過ぎない事……また二対一という彼にとって不利であろう状況を受け入れた事に対し、限りなく『フェア』であろうとした二人の意向でもあった。
その戦いも既に終盤……三人共に息も絶え絶えの満身創痍状態。
イシュライトの強さは相当のもの……アージとマヴォとの二対一の戦いにも拘わらず彼等に引けを取らぬ戦いを繰り広げていた。
だが既に拮抗は崩れ……遂にその決着が着こうとしていた。
「オオオオオオオッ!!」
「カァァァァァッ!!」
アージとイシュライト……突撃し合う者同士が己の拳に命力を篭め、互いに突き出し合う。
ドッゴォーーーーーッ!!
「げぅふッ!?」
アージの渾身の拳がイシュライトの腹部へと突き刺さり、突き上げられた拳が彼の体を高く舞い上がらせた。
多くの彼の部下が慌てふためく中……イシュライトの体が大地へと落下し、力無くその場に倒れ込んだのだった。
「ハァッ!! ハァッ!! どうだあッ!!」
猛るアージ。
立つのもやっとな状態で、彼へと渾身の一撃を加えた事に手ごたえを感じて雄叫びにも近い声を上げる。
それに対し微動だにしないイシュライト。
大の字で倒れ込んだ彼の衣服は既に原形を留めていない事から、彼への攻撃が相当な激しさだった事を物語っていた。
彼等より少し離れた場所では最早体の自由の効かないマヴォが倒れ込み、彼等の行く末を半開きの眼で見守る中……静寂が支配するその林の中で、小さな声が彼等の耳に響いてきた。
「ハハ……私の負けです……カハッ……さすが名乗りを……上げるだけの事は……ある……見事な強さでした……」
「言うな……我等とて二人でなければ……勝ち目など無かった……貴公は強い……間違い無くな」
互いを称え合う姿は戦友とも言える程に穏やかであり……潔いものであった。
そんな彼等を見届けた兵達もまた三人の戦いに涙を浮かべる程に心内震わせていた。
「まさかイシュライト様が敗れるなど……思いもせん事よ……」
決着が着いた事を機に……アージがボロボロの体を引きずる様に足を踏み出し、瀬玲の居る山頂へと向けて歩みを始めた。
マヴォもまた己に残る力を振り絞って立ち上がると……兄に合わせる様にゆっくりと足を踏み出していく。
その時……山頂で大きな力が沸き上がり、彼等を取り巻く空気を変えた。
「なっ、なんだあの力はッ!?」
「オオッ……あれは……」
「あれが師父の力ですよ……あの方の力は私をも遥かに凌駕しています」
山頂に立ち上る命力の光は、日中であるにも関わらず目立つ程に轟々と揺らめき上がっていた。
「……だがなんだ……力が……二つ!?」
「まさかあの命力……セリの奴だっていうのかよォ……!?」
二人が驚くのも無理は無い……彼女の命力が低いというのは二人も知る事実。
それがここまで高らかに成るはずなど無い……そう思っていたからだ。
「……なるほど……あなた方の司令官もまた強者であったか……師父があれほどの力を見せるとは……もしかしたらもしやするかもしれませんね」
「彼女は我々の司令官では……いやだが……そんな事はどうでもいい、行くぞマヴォ」
「あぁ……こうしてはいられないな……俺達は行くぜ」
ゆっくりと歩を進ませ戻ろうとする二人……だがそこを兵達が立ち塞がる。
「ヌウ!?」
あくまでも掟の為……彼等はそれに徹し、満身創痍となった二人を立ち止まらせたのだ。
全ては師父と呼ばれしウィグルイの為に。
だがその時……イシュライトが声を上げた。
「……彼等を行かしてさしあげなさい」
「なっ!?」
突然の彼の意向に戸惑いを見せる兵士達。
そんな彼等を前に、再び彼が言葉を連ねた。
「彼等は勝者だ……そして敗北した私の従者としての君達に命じるよ……イシュライト=ルヴェ=イドゥールの名において、彼等を行かせてあげて欲しい。 これは私の我儘だ……」
「イシュライト様……」
その言葉を受け……兵達がそっと二人が行く道を開き、歩き去る二人の背中を見守る。
「……恩に着る」
そう一言、アージからの声が上がり……二人は林の向こう、山頂へと向けて戻っていったのだった。
「よろしかったのですか?」
「あぁ……彼等は信頼に値する戦士達だ……私が保証しよう……」
二人は武人。
だからこそ、例え間に合ったとしても瀬玲とウィグルイの決着を茶化すような真似はしない……そう感じたのだろう。
清々しい表情を浮かべ、空を見上げるイシュライト。
そんな彼を見守る様に兵達が彼等を囲い座る。
「それよりも……もう一つ、私の望みを言ってもいいかな……?」
「イシュライト様の仰る事であれば如何様とも」
「フッ……なら、今行った彼等に肩を貸してあげて欲しい……そして、師父の行く様を見届けて欲しい」
その願いを聞き、兵達が驚きの表情を浮かべる。
だが、そう言い放った本人はなお穏やかな表情を作ったまま。
それが冗談でも世迷い事でも無い事を理解させた。
「……その願い、聞き届けました」
「ありがとう……もしかしたらイ・ドゥールの長い歴史に初めて……異例が生まれる瞬間かもしれない……君達にはそれを見届けて頂きたいんだ」
「御意。 行く末はともかく、必ずや師父を連れて帰ります」
「ああ……頼んだよ」
そう交わすと……六人の兵達が揃い、アージとマヴォの通った跡を辿る様に走り去っていった。
残った兵達とイシュライトはゆっくりと山頂を見定め、ウィグルイと瀬玲の行く末をじっと見守る。
「師父よ……貴方の望みは叶えられようか……私は十分叶えられましたよ……」
一切の嫌みの無い、満足そうな笑みを浮かべ……小さく呟く。
「あぁ、外の世界にはこの様な戦士達が居る……これが憂いを呼ばずして何が戦士か……」
「イシュライト様……」
「機会があるのなら……是非とも……外の世界に赴きたいものだ……とても……興味を惹かれてならない……よ……」
その言葉を最後に……彼は深い眠りに就いた。
しかし死んだ訳ではない……疲れを癒す為に、ただ深く深く……体を休める為に。
いつか彼が、興味を以って外の世界へと飛び出す日を迎える為に。
六人の兵達に支えられ、アージとマヴォが行く。
仲間達に託されて守ると誓った瀬玲の行く末を見届ける為に。
守れなかったからこそ……自分達の最低限の責任を果たす為に。
兵達がイシュライトの代わりにウィグルイを見届ける為に。
新時代が来るかもしれないという、彼の残した言葉を見届ける為に。
各々の想いを胸に戦士達は急ぎ……山頂へとひた走っていくのだった……。
魔剣は大地に投げ捨てられ、戦いは拳と拳がぶつかりただの殴り合い。
それは、素早く動き一撃必殺を繰り出してくるイシュライト相手には魔剣はただの重りに過ぎない事……また二対一という彼にとって不利であろう状況を受け入れた事に対し、限りなく『フェア』であろうとした二人の意向でもあった。
その戦いも既に終盤……三人共に息も絶え絶えの満身創痍状態。
イシュライトの強さは相当のもの……アージとマヴォとの二対一の戦いにも拘わらず彼等に引けを取らぬ戦いを繰り広げていた。
だが既に拮抗は崩れ……遂にその決着が着こうとしていた。
「オオオオオオオッ!!」
「カァァァァァッ!!」
アージとイシュライト……突撃し合う者同士が己の拳に命力を篭め、互いに突き出し合う。
ドッゴォーーーーーッ!!
「げぅふッ!?」
アージの渾身の拳がイシュライトの腹部へと突き刺さり、突き上げられた拳が彼の体を高く舞い上がらせた。
多くの彼の部下が慌てふためく中……イシュライトの体が大地へと落下し、力無くその場に倒れ込んだのだった。
「ハァッ!! ハァッ!! どうだあッ!!」
猛るアージ。
立つのもやっとな状態で、彼へと渾身の一撃を加えた事に手ごたえを感じて雄叫びにも近い声を上げる。
それに対し微動だにしないイシュライト。
大の字で倒れ込んだ彼の衣服は既に原形を留めていない事から、彼への攻撃が相当な激しさだった事を物語っていた。
彼等より少し離れた場所では最早体の自由の効かないマヴォが倒れ込み、彼等の行く末を半開きの眼で見守る中……静寂が支配するその林の中で、小さな声が彼等の耳に響いてきた。
「ハハ……私の負けです……カハッ……さすが名乗りを……上げるだけの事は……ある……見事な強さでした……」
「言うな……我等とて二人でなければ……勝ち目など無かった……貴公は強い……間違い無くな」
互いを称え合う姿は戦友とも言える程に穏やかであり……潔いものであった。
そんな彼等を見届けた兵達もまた三人の戦いに涙を浮かべる程に心内震わせていた。
「まさかイシュライト様が敗れるなど……思いもせん事よ……」
決着が着いた事を機に……アージがボロボロの体を引きずる様に足を踏み出し、瀬玲の居る山頂へと向けて歩みを始めた。
マヴォもまた己に残る力を振り絞って立ち上がると……兄に合わせる様にゆっくりと足を踏み出していく。
その時……山頂で大きな力が沸き上がり、彼等を取り巻く空気を変えた。
「なっ、なんだあの力はッ!?」
「オオッ……あれは……」
「あれが師父の力ですよ……あの方の力は私をも遥かに凌駕しています」
山頂に立ち上る命力の光は、日中であるにも関わらず目立つ程に轟々と揺らめき上がっていた。
「……だがなんだ……力が……二つ!?」
「まさかあの命力……セリの奴だっていうのかよォ……!?」
二人が驚くのも無理は無い……彼女の命力が低いというのは二人も知る事実。
それがここまで高らかに成るはずなど無い……そう思っていたからだ。
「……なるほど……あなた方の司令官もまた強者であったか……師父があれほどの力を見せるとは……もしかしたらもしやするかもしれませんね」
「彼女は我々の司令官では……いやだが……そんな事はどうでもいい、行くぞマヴォ」
「あぁ……こうしてはいられないな……俺達は行くぜ」
ゆっくりと歩を進ませ戻ろうとする二人……だがそこを兵達が立ち塞がる。
「ヌウ!?」
あくまでも掟の為……彼等はそれに徹し、満身創痍となった二人を立ち止まらせたのだ。
全ては師父と呼ばれしウィグルイの為に。
だがその時……イシュライトが声を上げた。
「……彼等を行かしてさしあげなさい」
「なっ!?」
突然の彼の意向に戸惑いを見せる兵士達。
そんな彼等を前に、再び彼が言葉を連ねた。
「彼等は勝者だ……そして敗北した私の従者としての君達に命じるよ……イシュライト=ルヴェ=イドゥールの名において、彼等を行かせてあげて欲しい。 これは私の我儘だ……」
「イシュライト様……」
その言葉を受け……兵達がそっと二人が行く道を開き、歩き去る二人の背中を見守る。
「……恩に着る」
そう一言、アージからの声が上がり……二人は林の向こう、山頂へと向けて戻っていったのだった。
「よろしかったのですか?」
「あぁ……彼等は信頼に値する戦士達だ……私が保証しよう……」
二人は武人。
だからこそ、例え間に合ったとしても瀬玲とウィグルイの決着を茶化すような真似はしない……そう感じたのだろう。
清々しい表情を浮かべ、空を見上げるイシュライト。
そんな彼を見守る様に兵達が彼等を囲い座る。
「それよりも……もう一つ、私の望みを言ってもいいかな……?」
「イシュライト様の仰る事であれば如何様とも」
「フッ……なら、今行った彼等に肩を貸してあげて欲しい……そして、師父の行く様を見届けて欲しい」
その願いを聞き、兵達が驚きの表情を浮かべる。
だが、そう言い放った本人はなお穏やかな表情を作ったまま。
それが冗談でも世迷い事でも無い事を理解させた。
「……その願い、聞き届けました」
「ありがとう……もしかしたらイ・ドゥールの長い歴史に初めて……異例が生まれる瞬間かもしれない……君達にはそれを見届けて頂きたいんだ」
「御意。 行く末はともかく、必ずや師父を連れて帰ります」
「ああ……頼んだよ」
そう交わすと……六人の兵達が揃い、アージとマヴォの通った跡を辿る様に走り去っていった。
残った兵達とイシュライトはゆっくりと山頂を見定め、ウィグルイと瀬玲の行く末をじっと見守る。
「師父よ……貴方の望みは叶えられようか……私は十分叶えられましたよ……」
一切の嫌みの無い、満足そうな笑みを浮かべ……小さく呟く。
「あぁ、外の世界にはこの様な戦士達が居る……これが憂いを呼ばずして何が戦士か……」
「イシュライト様……」
「機会があるのなら……是非とも……外の世界に赴きたいものだ……とても……興味を惹かれてならない……よ……」
その言葉を最後に……彼は深い眠りに就いた。
しかし死んだ訳ではない……疲れを癒す為に、ただ深く深く……体を休める為に。
いつか彼が、興味を以って外の世界へと飛び出す日を迎える為に。
六人の兵達に支えられ、アージとマヴォが行く。
仲間達に託されて守ると誓った瀬玲の行く末を見届ける為に。
守れなかったからこそ……自分達の最低限の責任を果たす為に。
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