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第二十二節「戦列の条件 託されし絆の真実 目覚めの胎動」
~優しさに触れた心はバーニンチーク~
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瀬玲が目を覚ましたのは、戦いが終えてから二日後の事。
まだ安静にしなければならない状況ともあり、アージとマヴォとのお目通りを軽く済ませると……イシュライトの願いもあり、彼女はそのままその日を寝たままゆっくりと過ごした。
モンゴルの気候はイ・ドゥール族にとっても厳しい様で……夜ともなれば木で造られた窓を閉じ、布を隙間に詰めて冷気の侵入を防いでいた。
それでもなおひんやりとした空気がどこからか入り込み、彼等の肌を刺していく。
厚手の布団を被った彼女にも、それが及ばない顔へ冷たい冷気がふわりと撫でて嫌気を誘う。
「……さむ……」
冷気と冷めやらぬ緊張で目を覚まし、静かな空間に彼女の声が不意に漏れた。
「おや、お目覚めですか……?」
突然のイシュライトの声に驚き……薄っすらと開いた目を横へと向けると、彼の姿が映りこんだ。
ずっと彼女を看病していたのだろう……先程と打って変わらぬ場所へと座り彼女を見つめている。
長でもあり祖父でもあるウィグルイの命とはいえ、ここまで献身的な様を見せつけられれば逆に彼の心配を考えてしまうのが瀬玲である。
「……貴方は寒くないの?」
「えぇ……私は鍛えられております故」
彼もまたアージとマヴォとの戦いで激戦を繰り広げたのにも拘らず、彼等同様翌日ともなれば何事も無かったかの様に動き回っていた。
もちろん無傷であった訳ではなく……今もまだその時に負った傷は完治してはいない。
だが、彼がそういった事に対して慣れているという事と、意識せずとも耐えられる程の精神力を有しているからこそ……彼は平然とその場に居られるのだ。
「……まるで私が弱いみたい……ダッサ……」
「フンッ」と一息鼻を荒げる瀬玲を前にイシュライトは軽く笑い、そんな彼女へそっと言葉を返した。
「そんな事はありませんよ……ウィグルイ様と戦い、これ程の傷を負いながらもあの方をひれ伏させた貴女を弱いと思う者は居ませぬ。 少なくともこのイシュライト、貴女の様な強き女性に心惹かれんばかりです」
「あはは……冗談は顔だけにしておいて……」
面食いの彼女にとっては彼等イ・ドゥール族の様な人間と掛け離れた顔付きの者には美観を感じていない。
彼女が魔者だと知って受け入れられるとしたら、ギオの様な人間に近い顔付きを持った美形のみであろう。
だがそんな嫌味を放つ彼女に嫌な顔一つせず、彼はそっと彼女の鼻の先を指で小さく突いた。
「では、冗談をここに付けておきましょう……貴女がいつでも見られ、違和感が無くなる様に」
優しい笑みを浮かべたイシュライトはそっと立ち上がると、部屋に灯った命力珠へと手を伸ばしておもむろに手に取る。
そして自身の体に力を篭めると……その小さな命力珠は力を吸い込み始め、強く温かい光を放ち始めた。
「強めの力を篭めておきました。 これでこの部屋は比較的暖かくなるでしょう……セリ、もしまだ寒さを感じるようであれば言ってください」
「う、うん……」
その一連の彼の優しさがどこか彼女の心を突いたのだろうか……瀬玲が急にしおらしくなる。
彼女の様子が大人しくなった気付いたのか否か……表情を変える事無く、彼はそっと傍にある机へと光を放つ命力珠を置いた。
「少し眩しいかもしれません。 必要であれば布を目に被せますので言ってくださいね」
「ん……大丈夫、ありがと……」
体の自由が利かない瀬玲への思いやりが彼女の心に響き……僅かな鼓動へと変える。
それがどうにも落ち着かないのか……静かになったその空間で、天井を見上げながら彼女が小さく呟いた。
「……優しいのも、悪くない……」
「ん? 何か言いましたか?」
「ううん、何も……フフ……」
そんなイシュライトもさすがに眠気には勝てなかったのだろう、ウトウトとしていた為か瀬玲の言葉を聞き逃した様であった。
闇に包まれた空間に眩く輝く小さな珠が存在感を露わにするその間。
誰しもが寝静まり、寝息を立てる。
彼女達もまた、夜に紛れて寝息を立てる。
深い闇は、間も無く、彼方から来る光に照らされ晴れるだろう……。
晴れる前に、彼女が再び目を覚ます。
未だ暗闇に包まれた中……彼女の顔が引きつり、脂汗を浮かべさせていた。
「ヤバイ……ヤバイ……」
思わず漏れる声……口をパクパクとさせ、彼女が焦りの顔を浮かべる。
彼女は今、催したのだ。
だが体は動かない。
少しでも動けば良いが、激痛が走るばかりでどうしようもない。
その痛みで、限界を迎えかねない。
彼女も人間である……催さないはずが無いのだ。
だが彼女はふと気付く。
何故今まで平気だったのか、と。
別の意味での焦りを生む瀬玲。
そんな彼女に再び気付き、イシュライトが目を覚ました。
「おや……どうしましたか?」
「あ……う……」
―――言えるワケ無いでしょ!!―――
理性と本能が葛藤し脳内で戦いを繰り広げる。
羞恥心が彼女を支配し、口を紡がせていた。
だが……そんな彼女を前に、イシュライトが「おや……」と漏らし何かに気が付いた。
「ああ、催したのですね……わかりました、少々お待ちを」
彼女の体調に気付いたのだ。
気付いてしまったのだ。
なお平然と優しい笑顔を浮かべたままの彼はそう述べるとそっと立ち上がる。
「お、お待ちって何をお待ち……!?」
慌てふためく瀬玲……そんな彼女に恥ずかしげも無くイシュライトが笑顔で答えた。
「下のお世話です。 寝ている間もしていましたから問題ありませんので安心してください」
その瞬間……彼女の羞恥心が音を立てて崩れ去った。
「あは……あはは……」
寝てる間に知らぬ男に体を弄られていた現実を前に、彼女はただ茫然とするしかなかった。
その後、彼女の意識があったまま処置が行われたのは言うまでもない。
決して疚しい行為では無かったが……彼女の自尊心を折るには十分過ぎる程の破壊力を有していた。
ウィグルイとの戦いで残り僅かとなっていた自尊心は、ここで全て音を立ててへし折れたのであった。
まだ安静にしなければならない状況ともあり、アージとマヴォとのお目通りを軽く済ませると……イシュライトの願いもあり、彼女はそのままその日を寝たままゆっくりと過ごした。
モンゴルの気候はイ・ドゥール族にとっても厳しい様で……夜ともなれば木で造られた窓を閉じ、布を隙間に詰めて冷気の侵入を防いでいた。
それでもなおひんやりとした空気がどこからか入り込み、彼等の肌を刺していく。
厚手の布団を被った彼女にも、それが及ばない顔へ冷たい冷気がふわりと撫でて嫌気を誘う。
「……さむ……」
冷気と冷めやらぬ緊張で目を覚まし、静かな空間に彼女の声が不意に漏れた。
「おや、お目覚めですか……?」
突然のイシュライトの声に驚き……薄っすらと開いた目を横へと向けると、彼の姿が映りこんだ。
ずっと彼女を看病していたのだろう……先程と打って変わらぬ場所へと座り彼女を見つめている。
長でもあり祖父でもあるウィグルイの命とはいえ、ここまで献身的な様を見せつけられれば逆に彼の心配を考えてしまうのが瀬玲である。
「……貴方は寒くないの?」
「えぇ……私は鍛えられております故」
彼もまたアージとマヴォとの戦いで激戦を繰り広げたのにも拘らず、彼等同様翌日ともなれば何事も無かったかの様に動き回っていた。
もちろん無傷であった訳ではなく……今もまだその時に負った傷は完治してはいない。
だが、彼がそういった事に対して慣れているという事と、意識せずとも耐えられる程の精神力を有しているからこそ……彼は平然とその場に居られるのだ。
「……まるで私が弱いみたい……ダッサ……」
「フンッ」と一息鼻を荒げる瀬玲を前にイシュライトは軽く笑い、そんな彼女へそっと言葉を返した。
「そんな事はありませんよ……ウィグルイ様と戦い、これ程の傷を負いながらもあの方をひれ伏させた貴女を弱いと思う者は居ませぬ。 少なくともこのイシュライト、貴女の様な強き女性に心惹かれんばかりです」
「あはは……冗談は顔だけにしておいて……」
面食いの彼女にとっては彼等イ・ドゥール族の様な人間と掛け離れた顔付きの者には美観を感じていない。
彼女が魔者だと知って受け入れられるとしたら、ギオの様な人間に近い顔付きを持った美形のみであろう。
だがそんな嫌味を放つ彼女に嫌な顔一つせず、彼はそっと彼女の鼻の先を指で小さく突いた。
「では、冗談をここに付けておきましょう……貴女がいつでも見られ、違和感が無くなる様に」
優しい笑みを浮かべたイシュライトはそっと立ち上がると、部屋に灯った命力珠へと手を伸ばしておもむろに手に取る。
そして自身の体に力を篭めると……その小さな命力珠は力を吸い込み始め、強く温かい光を放ち始めた。
「強めの力を篭めておきました。 これでこの部屋は比較的暖かくなるでしょう……セリ、もしまだ寒さを感じるようであれば言ってください」
「う、うん……」
その一連の彼の優しさがどこか彼女の心を突いたのだろうか……瀬玲が急にしおらしくなる。
彼女の様子が大人しくなった気付いたのか否か……表情を変える事無く、彼はそっと傍にある机へと光を放つ命力珠を置いた。
「少し眩しいかもしれません。 必要であれば布を目に被せますので言ってくださいね」
「ん……大丈夫、ありがと……」
体の自由が利かない瀬玲への思いやりが彼女の心に響き……僅かな鼓動へと変える。
それがどうにも落ち着かないのか……静かになったその空間で、天井を見上げながら彼女が小さく呟いた。
「……優しいのも、悪くない……」
「ん? 何か言いましたか?」
「ううん、何も……フフ……」
そんなイシュライトもさすがに眠気には勝てなかったのだろう、ウトウトとしていた為か瀬玲の言葉を聞き逃した様であった。
闇に包まれた空間に眩く輝く小さな珠が存在感を露わにするその間。
誰しもが寝静まり、寝息を立てる。
彼女達もまた、夜に紛れて寝息を立てる。
深い闇は、間も無く、彼方から来る光に照らされ晴れるだろう……。
晴れる前に、彼女が再び目を覚ます。
未だ暗闇に包まれた中……彼女の顔が引きつり、脂汗を浮かべさせていた。
「ヤバイ……ヤバイ……」
思わず漏れる声……口をパクパクとさせ、彼女が焦りの顔を浮かべる。
彼女は今、催したのだ。
だが体は動かない。
少しでも動けば良いが、激痛が走るばかりでどうしようもない。
その痛みで、限界を迎えかねない。
彼女も人間である……催さないはずが無いのだ。
だが彼女はふと気付く。
何故今まで平気だったのか、と。
別の意味での焦りを生む瀬玲。
そんな彼女に再び気付き、イシュライトが目を覚ました。
「おや……どうしましたか?」
「あ……う……」
―――言えるワケ無いでしょ!!―――
理性と本能が葛藤し脳内で戦いを繰り広げる。
羞恥心が彼女を支配し、口を紡がせていた。
だが……そんな彼女を前に、イシュライトが「おや……」と漏らし何かに気が付いた。
「ああ、催したのですね……わかりました、少々お待ちを」
彼女の体調に気付いたのだ。
気付いてしまったのだ。
なお平然と優しい笑顔を浮かべたままの彼はそう述べるとそっと立ち上がる。
「お、お待ちって何をお待ち……!?」
慌てふためく瀬玲……そんな彼女に恥ずかしげも無くイシュライトが笑顔で答えた。
「下のお世話です。 寝ている間もしていましたから問題ありませんので安心してください」
その瞬間……彼女の羞恥心が音を立てて崩れ去った。
「あは……あはは……」
寝てる間に知らぬ男に体を弄られていた現実を前に、彼女はただ茫然とするしかなかった。
その後、彼女の意識があったまま処置が行われたのは言うまでもない。
決して疚しい行為では無かったが……彼女の自尊心を折るには十分過ぎる程の破壊力を有していた。
ウィグルイとの戦いで残り僅かとなっていた自尊心は、ここで全て音を立ててへし折れたのであった。
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