659 / 1,197
第二十四節「密林包囲網 切望した過去 闇に紛れ蠢きて」
~話~
しおりを挟む
出撃指令が出始めてからおおよそ3時間後。
各拠点を出発した魔特隊の面々は各地で見られた不可思議な状況を前に戸惑っていた。
彼等が訪れた集落のいずれも、人一人居なかったのだ。
静けさに次ぐ静けさ……まるでオッファノ族など居なかったのではないかと思われる程に。
『こちらAはん てきえい なし どうぞ』
『そちらにも居ませんか……一体どういう事なのでしょうかねぇ……全くわかりません』
福留も航空写真や衛星写真などを駆使して調べ回っていたが、一切その情報ではわからずじまい。
敵影を感じない以上、作戦を続行するのも難しいと言えよう。
『王様が食中毒で死んだとかそんなんじゃねぇの?』
『そんな訳ないでしょ……』
マヴォが捕まえたヘデーノ族は未だ健在……現在もなお気絶中であるが。
王が死んだのであれば、彼も消えるはず……そうでないのであれば、死んだとは考えにくい。
『と、とりあえず……またもう少し進軍して様子を―――』
「まて」
するとその時……通信をしていたアージが何かに気が付き声を制止する。
途端、通信に流れる仲間達の声が止まり……緊張が訪れた。
ガサリ……
彼の正面に有る茂みが蠢き、そこからゆっくりと……人影が一人姿を現す。
「われわれ てきい ない」
「オッファノ族か……」
アージの前に姿を現したのは……なんとウロンドであった。
「敵意が無いとは……一体どういう事だ」
「こういうことだ」
突然、ウロンドが手に持っていた袋をおもむろに開き、逆さに振る。
するとその中から何かが落ち、「ボトリ」と音を立てて転がった。
そこに転がっていたのは……ヘデーノ族の王、ディビーの頭であった。
「こっ、これは……!?」
「こいつ われわれだました どうほうをころした つみびと そして つみをつぐなわせた」
「まさか……こやつがお前達を操り我々に攻撃をさせていたと?」
「そうだ」
急なウロンドの登場、そして策士と思われる者の晒し首。
あまりにも突然過ぎる展開に、アージは戸惑いを見せながらも疑いの目を向けていた。
「どういうつもりだ……例えそれが本当だとして、お前達が戦う理由が無い訳ではないハズだ!! これが策略である可能性も捨てきれぬぞ!?」
声を高々と上げてウロンドへ反論するが……そんな彼の足元へ再びウロンドが何かを放り投げる。
それはあずーの持っていた二本のエスカルオール。
彼女が攻撃を受けた時に落とした物だ。
魔剣を放る……それはつまり、敵意が無い事を示す。
『あちら側』の者であればその意味合いはなおさら強いと言える。
それを前にして、彼はなお表情を崩す事無く答えを返した。
「かんたんなこと われわれ もともとたたかい すきではない。 そしてしった おまえたちも たたかい すきではない おなじだ」
「ヌゥ……」
そう言い切った事に彼の核心を突いた答えを感じ取ったアージは、思わず魔剣を降ろす。
そんな彼の態度を見た途端、ウロンドはニコリと笑顔を浮かべた。
「みたてどおりだった やはり せいかい しんようして」
「何……?」
「りようさせてもらった おまえたちのうごき たたかい。 ヘデーノ族 われわれ さいしょからあやしい かんじていた」
「……つまり我々は一杯食わされたという訳か……フハハ……フハハハハッ!!」
思わずアージが腰を取って笑いを上げ始めた。
それもそうだろう……今までの戦いは彼等の掌の上で踊っていただけに過ぎないと公言されたのだから。
信ぴょう性など定かではない。
だが、それをハッキリと、面と向かって、敵だった者に言い切るのだ……その気概を前に笑わずにはいられなかったのだろう。
するとアージはインカムに手を充て、通信をオンにし……話し始めた。
「福留殿 たたかいはおわった すべてな ひきあげよう」
『おや……どういう事でしょうか?』
アージは福留にそう問われると、彼が表現出来る範囲で全てを語ったのだった。
オッファノ族達の対応……それは余りにも突然過ぎた戦いの終焉を意味する。
ウロンドは魔特隊、ひいてはブラジル政府との対話を望んだのだ。
彼と対話を行う事に是を決めた福留は、アージへと指示を送る。
共に車両へ乗り込み拠点へ戻る様にと。
こうして、長続きすると思われた密林の戦いは突然の終わりを告げ……戦士達は車両で揺られながら、ゆっくりと帰路へ就いたのだった。
それから一日が過ぎた。
C班の拠点、東の建屋。
そこで福留や魔特隊の面々、ブラジル政府の官僚を含めた多くの人々を交えての対話が始められる事となる。
だがそこに勇の姿は無い。
彼はなお眠ったままのあずーと共に一足早く帰国の為にこの地を去っていた。
間も無く……国連と魔特隊が間に入り、オッファノ族達の代表であるウロンドとアマゾン盆地を有するブラジル政府との対話が始まろうとしていた。
各拠点を出発した魔特隊の面々は各地で見られた不可思議な状況を前に戸惑っていた。
彼等が訪れた集落のいずれも、人一人居なかったのだ。
静けさに次ぐ静けさ……まるでオッファノ族など居なかったのではないかと思われる程に。
『こちらAはん てきえい なし どうぞ』
『そちらにも居ませんか……一体どういう事なのでしょうかねぇ……全くわかりません』
福留も航空写真や衛星写真などを駆使して調べ回っていたが、一切その情報ではわからずじまい。
敵影を感じない以上、作戦を続行するのも難しいと言えよう。
『王様が食中毒で死んだとかそんなんじゃねぇの?』
『そんな訳ないでしょ……』
マヴォが捕まえたヘデーノ族は未だ健在……現在もなお気絶中であるが。
王が死んだのであれば、彼も消えるはず……そうでないのであれば、死んだとは考えにくい。
『と、とりあえず……またもう少し進軍して様子を―――』
「まて」
するとその時……通信をしていたアージが何かに気が付き声を制止する。
途端、通信に流れる仲間達の声が止まり……緊張が訪れた。
ガサリ……
彼の正面に有る茂みが蠢き、そこからゆっくりと……人影が一人姿を現す。
「われわれ てきい ない」
「オッファノ族か……」
アージの前に姿を現したのは……なんとウロンドであった。
「敵意が無いとは……一体どういう事だ」
「こういうことだ」
突然、ウロンドが手に持っていた袋をおもむろに開き、逆さに振る。
するとその中から何かが落ち、「ボトリ」と音を立てて転がった。
そこに転がっていたのは……ヘデーノ族の王、ディビーの頭であった。
「こっ、これは……!?」
「こいつ われわれだました どうほうをころした つみびと そして つみをつぐなわせた」
「まさか……こやつがお前達を操り我々に攻撃をさせていたと?」
「そうだ」
急なウロンドの登場、そして策士と思われる者の晒し首。
あまりにも突然過ぎる展開に、アージは戸惑いを見せながらも疑いの目を向けていた。
「どういうつもりだ……例えそれが本当だとして、お前達が戦う理由が無い訳ではないハズだ!! これが策略である可能性も捨てきれぬぞ!?」
声を高々と上げてウロンドへ反論するが……そんな彼の足元へ再びウロンドが何かを放り投げる。
それはあずーの持っていた二本のエスカルオール。
彼女が攻撃を受けた時に落とした物だ。
魔剣を放る……それはつまり、敵意が無い事を示す。
『あちら側』の者であればその意味合いはなおさら強いと言える。
それを前にして、彼はなお表情を崩す事無く答えを返した。
「かんたんなこと われわれ もともとたたかい すきではない。 そしてしった おまえたちも たたかい すきではない おなじだ」
「ヌゥ……」
そう言い切った事に彼の核心を突いた答えを感じ取ったアージは、思わず魔剣を降ろす。
そんな彼の態度を見た途端、ウロンドはニコリと笑顔を浮かべた。
「みたてどおりだった やはり せいかい しんようして」
「何……?」
「りようさせてもらった おまえたちのうごき たたかい。 ヘデーノ族 われわれ さいしょからあやしい かんじていた」
「……つまり我々は一杯食わされたという訳か……フハハ……フハハハハッ!!」
思わずアージが腰を取って笑いを上げ始めた。
それもそうだろう……今までの戦いは彼等の掌の上で踊っていただけに過ぎないと公言されたのだから。
信ぴょう性など定かではない。
だが、それをハッキリと、面と向かって、敵だった者に言い切るのだ……その気概を前に笑わずにはいられなかったのだろう。
するとアージはインカムに手を充て、通信をオンにし……話し始めた。
「福留殿 たたかいはおわった すべてな ひきあげよう」
『おや……どういう事でしょうか?』
アージは福留にそう問われると、彼が表現出来る範囲で全てを語ったのだった。
オッファノ族達の対応……それは余りにも突然過ぎた戦いの終焉を意味する。
ウロンドは魔特隊、ひいてはブラジル政府との対話を望んだのだ。
彼と対話を行う事に是を決めた福留は、アージへと指示を送る。
共に車両へ乗り込み拠点へ戻る様にと。
こうして、長続きすると思われた密林の戦いは突然の終わりを告げ……戦士達は車両で揺られながら、ゆっくりと帰路へ就いたのだった。
それから一日が過ぎた。
C班の拠点、東の建屋。
そこで福留や魔特隊の面々、ブラジル政府の官僚を含めた多くの人々を交えての対話が始められる事となる。
だがそこに勇の姿は無い。
彼はなお眠ったままのあずーと共に一足早く帰国の為にこの地を去っていた。
間も無く……国連と魔特隊が間に入り、オッファノ族達の代表であるウロンドとアマゾン盆地を有するブラジル政府との対話が始まろうとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常
ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」
帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。
さて。
「とりあえず──妹と家族は救わないと」
あと金持ちになって、ニート三昧だな。
こっちは地球と環境が違いすぎるし。
やりたい事が多いな。
「さ、お別れの時間だ」
これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。
※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。
※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。
ゆっくり投稿です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる