時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
771 / 1,197
第二十八節「疑念の都 真実を求め空へ 崩日凋落」

~SIDE勇-06 明かされた真実~

しおりを挟む
 現在時刻 日本時間16:47......
 北米、カリフォルニア州時間24:47......

「ミシェルさん、ご要望の服を持ってまいりました。 それと……その格好で外は冷えたでしょう、ホットミルクを仕立てましたのでどうぞ召し上がってください。 きっと体が温まりますよ」

 緊張感のある会話の合間を縫って現れたのは店主。
 折りたたんだ服と飲み物を乗せたプレートを片手づつに器用に携えて三人の前に現れた。

 季節は夏前だが、緯度が日本よりも僅かに高いこの地の夜は冷える。
 それを知っている現地人だからこその親切心なのだろう。

 服をそっと茶奈の腰元の椅子の上へ、飲み物を机の上へと丁寧に置くと……店主は一礼し、再びカウンターの奥へと歩き戻っていく。

「あ、ありがとうございます!」

 茶奈がハッとした面持ちで遅れて礼を返すと、店主はニコリとした笑顔を向けて応えていた。

 置かれた服を手に取ると、無造作に広げて見せる。
 彼女が着るには少し大きめのサイズのワイシャツとジーンズ。
 そしてそれを見越していたのか、服の合間にはベルトが挟んでおり、店主の心遣いに思わず茶奈の笑顔が零れた。

「茶奈、店の奥を貸してもらって着替えてきな?」

 勇が気遣いを向けるが……それに対して茶奈は首を横に振って応える。

「いえ、大事な話の最中ですから着替えながら聴きます。 時間もありませんし」

 彼女はそう言いながらおもむろにボロボロの服を脱ぎだした。
 目のやり場に困った勇が顔をミシェルの方へ向けると、そんな二人のやりとりに笑う彼女の笑顔が映り込む。
 先程の緊張感はどこへ行ったのやら……。

 だが、茶奈の気持ちを汲んだミシェルは再び笑顔を殺すと……話の続きを淡々と続けた。

「恐らく今、貴方達は日本が安全な国だと思っていますね? そう……【救世同盟】をテロリストとして認定し、否定し続けている唯一の国だと」

 ミシェルの言う通り、日本では【東京事変】以降で【救世】及び【救世同盟】の目立った活動は起きていない。
 小さな小競り合いなどで逮捕者が出る事はあったが、海外と比べれば断然マシだった。
 海外では常にどこかで戦争の様な戦いが起きている……そうテレビなどで放送されていたから。
 特にヨーロッパは酷いもので、近東に近い地域は元々の宗教的な観点での争いも交えての凄惨な戦いが日頃起きているという事が一般に知れ渡っている。

「実際に【救世同盟】絡みの大事件はし、テロリスト認定した国の中では治安が守られていると言っても過言ではないでしょうね……、でしょうが」

 重なる意味深な発言を前に勇達は口を挟む事も出来ず、ただ声に耳を傾ける。
 しかしそんな彼等の持つを……彼女の連ねた言葉はいとも簡単に打ち砕く。
 


「……ですが事実は異なります。 日本は既に、【救世同盟】によって支配されている状態にあるのです」



 その瞬間……勇達の体が止まり、目が見開いていった。

「そ、そんな馬鹿な……ッ!?」

 信じられるはずも無かった。
 この二年間の日常において、【救世同盟】の名などほとんど出ないに等しかったのだから。

 驚愕を隠せない二人を前に、なおミシェルはにわかにも信じられない様な内容を更に連ねた。

「知らないのも無理はありません……何故ならその情報のほとんどは民間に出回らないよう、政府が巧みにコントロールしているから。 そう……政府の官僚の半数は今や【救世同盟】の息が掛かった者達で締められているのです」

 情報操作。
 インターネットが情報の主流である今、その操作を行うのは決して困難な事ではない。
 日本だけでなく、閉鎖的な国はどこも似た様な操作を行っているのは周知の事実である。

 日本もまた……隠していたのだ。
 【救世同盟】に関する全ての情報を。
 カモフラージュとなる小さな事案を残して。

「【東京事変】が何故起きてしまったのか……貴方達は考えた事がありますか? 本当にデュゼロー氏達だけが起こした事件なのか……と」

「それは……まさか……!!」

「そう……日本は既に侵食されていたのです。 【救世同盟】の基礎体である【救世】によって、ね……」

 すると、先程引いたUSBメモリが、ミシェルの手に引きずられながら再び勇の前へと運ばれていく。
 USBメモリへ注目していた視線を再びミシェルへと戻すと……前のめりになって大きく見える彼女の姿が視界に映り込んだ。



 互いの視線が合い、緊張が高まった時……とうとうミシェルが核心に触れる。





「現総理大臣 小嶋由子……彼女は【救世】、そして【救世同盟】の一員なのです」


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

処理中です...