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第三十二節「熱き地の再会 真実は今ここに 目覚めよ創世」
~思慮足りぬ者への唄~
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タイ王国、滞在二日目。
タイ政府より、アルクトゥーンの滞留許可が無事降りた。
こうしてグランディーヴァはタイ近海から離れる必要が無くなり……タイから離れるまで、街並みを眺めながら過ごす事が出来る様になったのだった。
そんな最中……居住区地下、多目的エリアにある会議室。
そこに勇達主要メンバーが勢揃いしていた。
壇上に立つのは福留。
その横に並ぶ机にはミシェルや龍、莉那も。
彼等の前に座るのは勇達戦闘員達だ。
しかしどちらかといえば勇だけが福留の前に座り、他の者達はオマケと言わんばかりに離れて座っている。
そして勇当人はと言えば……どこか緊張の面持ちを浮かべ、脚に手を乗せて背を伸ばした姿勢で座り込んでいた。
「さて、皆さん集まったので……早速ですが話題に入るとしましょうか」
福留のいつものゆるりとした一言で場の空気が静まり返る。
当然声の先に居るのは勇だけだ。
こうして突如、会議が始まりを告げる。
その内容は福留の背後にある電子ボードにでかでかと表示されていた。
そこに描かれていたのは……「藤咲勇の思考論理 改善対策」という文字。
事の発端は先日のアルディとの対話だ。
アルディから情報を聞き出そうとしたのは良いが、勇が彼に振り回されっぱなしだったという事実。
それを重く受け止めた福留が、本腰を上げて改善を打ち立てたのである。
「勇君の力も精神も、既に常人の域を超えたと言っても過言ではないでしょう。 それ程までに成長したのを多少なりに寄与する事ができ、私も誇らしくあります」
途端入るのはべた褒めとも言える一言。
だが。
だからこそ。
その後に続く言葉が勇には恐ろしくてしょうがなかったのだ。
「ですが……勇君、貴方には決定的に足りない事が一つあります。 それは客観的思考能力です!」
その一言が打ち上げられた途端、勇の肩が大きく沈み込む。
まるで「ズズン!」と圧し掛かる重圧が彼の体を押し潰すかのよう。
命力も使えない福留の、彼との絆があるからこそ成し得る【闘域】の如き威圧。
その一撃を前に、勇は開幕からギブアップ寸前だ。
「福留さん、【闘域】使えるのね、笑える」
「多分今の勇さんにはそれ以上のプレッシャーが掛かってるんじゃないでしょうか」
外野が聞こえない程の小さな声で囁かれる。
彼女達の心の笑いは勇には届かない。
例え届いても、惨めにしかなりはしない。
「以前から幾度と無く思ってまいりましたが、今回の事で改善するべきだとハッキリ理解しました。 確かに貴方は卓越する事で洞察力にも優れ、相手の行動に対して先回りすら可能な程に瞬発力が高いでしょう。 しかしそれはあくまで肉体的思考に過ぎません」
この言葉を聞いて思い出せるだろうか。
勇が今までに何度も人と関わり、心を交わしてきたか。
だがその中に……決定的なまでの過ちが幾つも存在した事を。
茶奈をトレーニング中に置き去りにしたり。
茶奈をトレーニング中に放置したり。
茶奈を無茶なトレーニングに付き合わせたり。
彼女がひたむきでなければキレられていてもおかしくない案件ばかりだ。
そう、彼に足りないのは―――
「貴方が足りないのは配慮……他人への同調力です。 簡単に言えば、貴方の人を想う力はとても強いですが、人からの想いには非常に疎い!! 直感力が優れているから素直な相手に対しては通用もするでしょう。 ですが、相手がアルディ氏の様に思考を重ねる人間ならばそうはいきません!!」
途端、演説台の上に乗せられたお茶のペットボトルを掴み取り、思いっきりその口へと突っ込む。
既に蓋は開けっ放し、荒々しい飲みっぷりは水しぶきならぬお茶しぶきを周囲へと撒き散らす程。
飲み終えたと同時に叩きつけるが如くペットボトルが台に打ち付けられ、激しく荒ぶる様を見せつけた。
今までに無い激しさを前に、勇はもう何一つ言える訳も無く。
「我々の当面の敵は皆、知恵も知識も人並み外れた現代の怪物達です。 彼等に論理的思考で勝てなければ、例え国を亡ぼす様な力を持ってたとしても太刀打ちは出来ないでしょう。 だからこそ、貴方には今すぐ訓練が必要です。 そう、他の人の思考を読み取り、何をしようとしているのかを自然と理解出来る様になる為に」
僅かにトーンダウンが見られるが……その意思は強いまま。
福留の確固たる意思が衰える事無く、勇へとぶつけられる。
「福留さん、ちょっと質問いいすか? それって相手の勉強をするって事ですかね?」
そんな中突如声を上げたのは……あろう事か心輝。
まさかの自己中二号のからのアプローチに、福留も思わず眉をピクリと動かさせた。
「そこに知識は必要ありません。 必要なのは相手の思考を読み取る事だけです」
心輝に関しては福留ももはや何を思う事も無い。
それは福留が心輝を見捨てた訳では無く、彼は彼なりに筋を通しているからだ。
空気は読めなくとも彼らしい配慮はあるからこそ、そういった訓練は必要無いと判断したのだろう。
それこそ、今の勇なら嫉妬しかねない程の茶奈への配慮も数多く。
「だからほんの少し……勇君には皆さんとちょっとした特殊なコミュニケーションを取ってもらおうかと思っておりまして。 それは会話を介さずに相手の気持ちを動作で読み取るゲームの様な訓練を予定しています」
こんな会議を開くのだから、福留が何の準備もしていない訳はないだろう。
先程の荒ぶる姿はいつの間にか消え失せ、にこやかで得意気な様子へと移り変わっていた。
だが……そんな彼を想定外の出来事が襲う。
ゲームと言って彼が動かないはずは無かったのだ。
「おぉーーーとぉ!! それなら福留さん、俺に提案があるぜ!!」
「え、えぇ!?」
まるでこの瞬間を待っていたかの如く。
心輝が天を突かんばかりにその手を突き上げて存在をアピールする。
もしかしたら最初から彼はこれを狙っていたのかもしれない。
そう思える程に……介入するタイミングがバッチリ過ぎたのだから。
突如として福留の提案は心輝によって歪められ……肝心の勇の改善計画は思わぬ形へと成り替わるのだった。
タイ政府より、アルクトゥーンの滞留許可が無事降りた。
こうしてグランディーヴァはタイ近海から離れる必要が無くなり……タイから離れるまで、街並みを眺めながら過ごす事が出来る様になったのだった。
そんな最中……居住区地下、多目的エリアにある会議室。
そこに勇達主要メンバーが勢揃いしていた。
壇上に立つのは福留。
その横に並ぶ机にはミシェルや龍、莉那も。
彼等の前に座るのは勇達戦闘員達だ。
しかしどちらかといえば勇だけが福留の前に座り、他の者達はオマケと言わんばかりに離れて座っている。
そして勇当人はと言えば……どこか緊張の面持ちを浮かべ、脚に手を乗せて背を伸ばした姿勢で座り込んでいた。
「さて、皆さん集まったので……早速ですが話題に入るとしましょうか」
福留のいつものゆるりとした一言で場の空気が静まり返る。
当然声の先に居るのは勇だけだ。
こうして突如、会議が始まりを告げる。
その内容は福留の背後にある電子ボードにでかでかと表示されていた。
そこに描かれていたのは……「藤咲勇の思考論理 改善対策」という文字。
事の発端は先日のアルディとの対話だ。
アルディから情報を聞き出そうとしたのは良いが、勇が彼に振り回されっぱなしだったという事実。
それを重く受け止めた福留が、本腰を上げて改善を打ち立てたのである。
「勇君の力も精神も、既に常人の域を超えたと言っても過言ではないでしょう。 それ程までに成長したのを多少なりに寄与する事ができ、私も誇らしくあります」
途端入るのはべた褒めとも言える一言。
だが。
だからこそ。
その後に続く言葉が勇には恐ろしくてしょうがなかったのだ。
「ですが……勇君、貴方には決定的に足りない事が一つあります。 それは客観的思考能力です!」
その一言が打ち上げられた途端、勇の肩が大きく沈み込む。
まるで「ズズン!」と圧し掛かる重圧が彼の体を押し潰すかのよう。
命力も使えない福留の、彼との絆があるからこそ成し得る【闘域】の如き威圧。
その一撃を前に、勇は開幕からギブアップ寸前だ。
「福留さん、【闘域】使えるのね、笑える」
「多分今の勇さんにはそれ以上のプレッシャーが掛かってるんじゃないでしょうか」
外野が聞こえない程の小さな声で囁かれる。
彼女達の心の笑いは勇には届かない。
例え届いても、惨めにしかなりはしない。
「以前から幾度と無く思ってまいりましたが、今回の事で改善するべきだとハッキリ理解しました。 確かに貴方は卓越する事で洞察力にも優れ、相手の行動に対して先回りすら可能な程に瞬発力が高いでしょう。 しかしそれはあくまで肉体的思考に過ぎません」
この言葉を聞いて思い出せるだろうか。
勇が今までに何度も人と関わり、心を交わしてきたか。
だがその中に……決定的なまでの過ちが幾つも存在した事を。
茶奈をトレーニング中に置き去りにしたり。
茶奈をトレーニング中に放置したり。
茶奈を無茶なトレーニングに付き合わせたり。
彼女がひたむきでなければキレられていてもおかしくない案件ばかりだ。
そう、彼に足りないのは―――
「貴方が足りないのは配慮……他人への同調力です。 簡単に言えば、貴方の人を想う力はとても強いですが、人からの想いには非常に疎い!! 直感力が優れているから素直な相手に対しては通用もするでしょう。 ですが、相手がアルディ氏の様に思考を重ねる人間ならばそうはいきません!!」
途端、演説台の上に乗せられたお茶のペットボトルを掴み取り、思いっきりその口へと突っ込む。
既に蓋は開けっ放し、荒々しい飲みっぷりは水しぶきならぬお茶しぶきを周囲へと撒き散らす程。
飲み終えたと同時に叩きつけるが如くペットボトルが台に打ち付けられ、激しく荒ぶる様を見せつけた。
今までに無い激しさを前に、勇はもう何一つ言える訳も無く。
「我々の当面の敵は皆、知恵も知識も人並み外れた現代の怪物達です。 彼等に論理的思考で勝てなければ、例え国を亡ぼす様な力を持ってたとしても太刀打ちは出来ないでしょう。 だからこそ、貴方には今すぐ訓練が必要です。 そう、他の人の思考を読み取り、何をしようとしているのかを自然と理解出来る様になる為に」
僅かにトーンダウンが見られるが……その意思は強いまま。
福留の確固たる意思が衰える事無く、勇へとぶつけられる。
「福留さん、ちょっと質問いいすか? それって相手の勉強をするって事ですかね?」
そんな中突如声を上げたのは……あろう事か心輝。
まさかの自己中二号のからのアプローチに、福留も思わず眉をピクリと動かさせた。
「そこに知識は必要ありません。 必要なのは相手の思考を読み取る事だけです」
心輝に関しては福留ももはや何を思う事も無い。
それは福留が心輝を見捨てた訳では無く、彼は彼なりに筋を通しているからだ。
空気は読めなくとも彼らしい配慮はあるからこそ、そういった訓練は必要無いと判断したのだろう。
それこそ、今の勇なら嫉妬しかねない程の茶奈への配慮も数多く。
「だからほんの少し……勇君には皆さんとちょっとした特殊なコミュニケーションを取ってもらおうかと思っておりまして。 それは会話を介さずに相手の気持ちを動作で読み取るゲームの様な訓練を予定しています」
こんな会議を開くのだから、福留が何の準備もしていない訳はないだろう。
先程の荒ぶる姿はいつの間にか消え失せ、にこやかで得意気な様子へと移り変わっていた。
だが……そんな彼を想定外の出来事が襲う。
ゲームと言って彼が動かないはずは無かったのだ。
「おぉーーーとぉ!! それなら福留さん、俺に提案があるぜ!!」
「え、えぇ!?」
まるでこの瞬間を待っていたかの如く。
心輝が天を突かんばかりにその手を突き上げて存在をアピールする。
もしかしたら最初から彼はこれを狙っていたのかもしれない。
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