時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
891 / 1,197
第三十二節「熱き地の再会 真実は今ここに 目覚めよ創世」

~弱者に送る洗礼の唄~

しおりを挟む
『ハンティングスタート!!』



 途端、画面が切り替わり、軽快な声が響き渡る。
 ゲーム本番の始まりを告げる一声だ。
 たちまち画面に彩りが生まれ……周囲一面を緑が覆い尽くした。

「森ステージだ!!」

 突如渡部の声が響き渡る。

 そう、このモンランというゲーム……モンスターの種類は選べるが、ステージはランダム。
 つまり、始まるまでどこで戦うかわからないという仕様なのである。
 
 しかし、始まった途端の心輝達の行動は凄まじく速かった。

 全員のスタート地点は同じだ。
 だが突然、声一つ上がる事無く……心輝、茶奈、前田、渡部のアバターはスタート地点から一瞬にして姿を消したのだった。

「え、あれ……皆どこ行ったんだ!?」

 周囲は木々が立ち並ぶ、視界の悪い森の中。
 画面を前に勇達がキョロキョロと視線を動かすが……もはや彼等の姿は影も形も残ってはいなかった。

「勇君、このゲームはまずモンスターを探すのが基本なのさ。 こんな森の中だと特にね」

 勇の背後から聞こえるのは獅堂の声。
 彼もまた経験者なのだろう……こんな時だけは例え彼であっても頼もしいに尽きる。

 画面操作もおぼつかない勇ではあるが……コントローラーに備えられたジョイコンレバーを操作し、辛うじてアバターを動かし始めた。

「お、おお……」

 簡単な操作ではあるが、滅多にゲームをしない勇にとっては驚きの連続だ。
 想像以上に滑らかな動き、微操作を受け付ける操作性……彼の経験した事の無いゲーム性に、思わず感心の声が漏れ出ていた。
 それは当然、マヴォやイシュライトも同じだ。
 ナターシャに関しては当ゲームをやった事が無いだけで、手馴れた様に動かしてはいるが。

 敵が居なくても攻撃動作は出来るし、一通りの操作は可能だ。
 勇が選んだのは初心者向けの武器である片手剣。
 攻撃力は低いが小盾もセットで付いてガードも出来る万能装備だ。
 彼にとっても使い慣れている馴染みのタイプだからこそ、選ぶに至ったのだろう。

 ガチャガチャと不慣れに操作を行いつつ、コントローラーの配置を確かめる。
 気付けばコントローラー自体を眺める様に……ボタンの配置を確認し始めていた。



 だがその時突然……心輝の声が響き渡る。



「勇ッ!! 後ろだあッ!!!!!」



 その瞬間……勇は電光石火の如き反応を示した。

 客観的思考に乏しくとも、戦いにおける反応速度は常人のそれを超えている。
 例え相手がゲームの敵だろうと、その力はなんら変わる事は……無い。



「ちいッ!?」



 そして勇はまさに雷光が如き反応速度で……へと振り向いたのだった。



『デッドエーンド!!』

 途端、虚しい音声が響き渡る。
 それに気付いた勇が振り返り、画面を見ると……既に自分用の画面は暗転し、『DEAD END』の文字だけが表示されていた。

「いや、無理だろ……」

「「「無理じゃねぇよ!!!!!」」」

 叫びとも足る心輝達の総ツッコミが個室スペース中に響き渡る。

 開幕おおよそ二分程度。
 勇の初プレイ生存時間は……たったそれだけだった。
 数多とも言えるモンラン経験者達の中にすら滅多に遭った者はいない程の悲惨な数字である。

 何が起きたかというと……簡単に言えば、勇のアバターの背後から討伐対象モンスターが現れた、それだけだ。
 ただ前進し、その足を踏み出した先に勇のアバターが居ただけに過ぎない。
 つまり、戦闘すら始まっていなかったという訳だ。

 これにはさすがの福留も頭を抱えずにはいられない。

「勇君……君は御老人なんですか……?」

「え、ええ……!?」

 真に老人の福留がそう口に出してしまうのも無理は無い。
 勇が示した反応こそ、時代に順応出来ていない年寄りが初めてゲームやパソコン操作を行うのと同じだったのだから。
 それはまさに、自分が知らない事に対する反応そのもの。

 そして心輝の言った事に対する誤認も合わせれば……彼の欠点がこうして浮き彫りとなる。





 そう……勇はゲームが大の苦手なのである。





 これは彼が小さい頃から認識している事。
 実は彼が人生で初めてゲームをした時から、このは存在していた。

 元々、彼は直動的動作に対しては凄く強いのだが……対して流動型動作には疎い。
 簡単に言うと、ゲーム内の物体やボールなど、自分の意思とは無関係に動く物の操作がとても苦手なのだ。
 直感的に動かせるゲームなら出来るのだが……例えば敵や障害物といったものが絡むとその時点で詰む。
 なんせ敵は単調なノンプレイヤーキャラクター……動きが読めず、誤操作を誘発してしまう事に。

 それが元で……子供の頃にゲームを買ってもらって友人と一緒にプレイした時も散々たる結果となり、それ以来ゲームをほとんどやらなくなってしまったという訳だ。
 いわゆるトラウマである。

 ちなみにそのゲーム機が……フララジカ開始直後、暇潰しとして剣聖にあげた【ジョイステージ】だ。
 
 そんな事もあり、勇はスマートフォンを得た後もソーシャルゲームソシャゲすら触る事が無かった。
 その様な彼が今、最新ゲームを触っても……こんな結果になるのは目に見えてわかっていた事だったのかもしれない。



 こんなゲーム音痴な勇は果たして……熟練者すら唸る難易度のモンランことモンスターランサーを無事攻略する事が出来るのであろうか。



 どう考えても無事では済まないこの企画に……一つ陰りが生まれた瞬間であった。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...