時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第三十二節「熱き地の再会 真実は今ここに 目覚めよ創世」

~襲い掛かりし獣の唄~

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 遂に始まった、ゲーム【モンスターランサー】の本番戦闘。
 早速の勇当人のリタイアではあるが、他の参加者も居るという事もあって戦いは続けられた。

 当然、勇を含めた訓練対象者が生き残って倒すまで、次のモンスター挑戦に進む事は出来ない。
 その目標が達せられるまでは……最初のモンスターである【ブンブラドン】だけをひたすら倒し続けなけれなならないのだ。
 ちなみに【ブンブラドン】は全長五十メートル程もある、四足歩行のトカゲ型モンスターだ。
 丸々太った巨体、森林にもよく混ざる青々とした体表、そして巨木の様な手足。
 当然潰されれば一撃即死は免れないが……動きは最も鈍く、初心者でも二回目ともなれば簡単に攻撃を躱す事が出来る様になると言われている。

 だが、勇達にその常識は通用しなかった。

 そう、勇だけではない。
 マヴォやイシュライトもまたゲームそのものに慣れていないからこそ……散々な結果が待ち受けていたのである。



「待て!! 違う!! そうじゃない!! 隙だらけじゃないかあッ!!」

 マヴォが画面に映る自身のアバターに怒声を浴びせる虚しい姿があった。

 マヴォがアバター用武器に選んだのは当然、斧だ。
 人並みの大きさを誇る大斧を振り回すという、攻撃力に特化した武器である。
 だが、それが彼を苦しめる事になるとは思っても見なかった様だ。

 それも当然か……ゲームでは武器によってモーションこそ異なるが、動き方は決まっている。
 決まった動きの中で自分に合った装備を探し、適した戦いを行うのがこのゲームの醍醐味。
 しかしマヴォはそんな事を知りはしない。
 そして彼が達人だからこそ……アバターの動きに納得がいかなかったのだ。
 本当の戦いにおいて隙は死に繋がる。
 武を嗜む者にとって隙を見せずに戦う事は当然であり、美徳でもあるからこそ……隙だらけなアバターの動きにどうにも不満を隠せないマヴォなのであった。

 もちろんその後、彼のアバターが再起不能デッドエンドしたのは言うまでもない。



 イシュライトは何とか操作を憶え、動く事に関してはどうやら問題無く。
 そんな彼が迫りくる【ブンブラドン】相手に余裕の表情を浮かべて対峙する。

「一度動かし方さえわかってしまえばこの様な遊び、造作も無い事でしょう」

 目の前に居るのは素人ですら遅いと思わせる程の鈍い怪物。
 未だ操作はぎこちないが、武芸の達人として洞察力に優れた彼にとってはその動きなど止まって見える様なものだ。

「フッ……その程度の動きで、この私が捉えられるハズもないでしょうッ!!」

ズズゥン!!

『デッドエーンド!!』

「何故だああああああ!!!! 今のは避けられるハズだああああああ!!!!!」

 確かにイシュライトは武芸の達人、例え実際に【ブンブラドン】と対峙しても一人で倒すなど容易い事なのかもしれない。
 だが戦うのは画面の中に居るアバターであり、イシュライトではない。
 ゲームの世界でも常人に近い能力しか無いアバターがイシュライトの様に動くなど無理な話なのである。

 普段見せた事の無い彼の荒ぶれっぷりに、後ろで観ていた瀬玲達の笑いが止まらない。





 そんなこんなで戦い続ける事、なんと五時間……ようやく来たるべき時が訪れた。

 勇達訓練者勢がとうとう【ブンブラドン】を相手に生存して討伐完了したのである。
 その途端、周囲から喝采が沸き起こった。
 それほどまでに皆、同じ相手に飽き飽きしていたのだ。
 
 ここまでに一体何匹の【ブンブラドン】が犠牲になった事か、言うに堪えない。

 だがまだたった一種類だけだ。
 この先にまだ十九種類の、しかも更に強いモンスターが控えているのだから。

 それを聴いた途端、勇達訓練者勢の表情が凍り付く。
 最弱モンスターでさえこれだけ苦戦したのだ。
 この先どうなってしまうのか……もはや誰も予想など付きはしない。



 しかしここで勇達のモンラン訓練は軌道に乗り……ようやく光明が見え始めて来た。
 無数の【ブンブラドン】が犠牲になったおかげか、勇達訓練者勢の操作が慣れて動きが安定してきたのだ。
 
 次の相手は翼獣【ランバルドン】。
 全長百メートルを超す、超巨大翼竜型モンスターだ。
 今までの二倍の大きさともあり、勇達の衝撃は計り知れない。
 しかもおまけに空を飛び、なかなか攻撃が当たらないという強敵っぷり。
 これもまた悩ましい程に苦戦し……彼等に空中の敵の恐ろしさを存分に知らしめさせた。

 とはいえ、一度戦い方を憶えれば……結末は早かった。

 戦い始めてからおおよそ二時間後、【ランバルドン】は地に堕ちた。
 勇がここにきてようやく、心輝や茶奈の指示に気付き始めて来たのだ。
 今までは気付かず突貫し、そのまま帰ってこなかったデッドエンドなのだから大きな成長である。
 そうなると比較的安定して戦えるようになり、耐久力の低い【ランバルドン】を伏せるに足る動きを見せたのだった。

 とはいえ、気付けば十時間連続戦闘……仲間達の疲労は重なるばかり。
 ついでにギャラリーも既にその場から消え、勇達プレイ組だけとなっていた。





 それからどれだけの時が経っただろうか。
 勇達は寝る間も惜しんで戦い続けていた。
 時には人員不足での戦いの時もあった。
 寝落ちしそうになり、叩き起こされた事もあった。
 疲労が重なり、ミスを誘発し、効率さえ下げさせる。
 だがそれでも彼等は諦めず、ただひたむきにゲームに打ち込み続けたのだった。

 



 そして翌日、朝。

「や……った……やっと……【デュラダンドン】を倒した……ぞ……!!」

 【デュラダンドン】……それは約十種類目のモンスターの名。
 勇はそこでようやく、折り返し地点へと辿り着いたのだった。

 もう既に仲間達は満身創痍だ。
 元気の塊である心輝すら既に空いた机に突っ伏して寝ている。
 茶奈は勇に負けじと戦い続けた所為で疲労困憊し、血走った目を見開いたまま気絶している。
 前田と渡部は一旦帰宅した為、この場には居ない。
 瀬玲がこの場に居るはずも無い。
 ナターシャは竜星と共に朝早くから参戦し、割と元気気味。
 ディックや獅堂は夜間、勇と付きっきりで既に眠気も限界突破へ。
 カプロもイアンさんも仕事があるのでだいぶ前に帰還済みである。

 キッピーが空いたコントローラーを齧っているが、微塵も助けになる訳は無く。

 勇もマヴォもイシュライトも、後半にはもはや意地と根性でプレイを止めず……仲間のレスポンスが低下した中でも善戦し続けた。
 その成果がようやく今、こうして身になったのであった。

「お、おぉ……なんか結構進んでるじゃねぇか……」

 そこでようやく心輝が目を覚まし、寝起きながら状況の好転に思わぬ驚きを見せる。
 
「これでようやく半分だな……だが……まだ……」

ガタン……

 そこで緊張の糸が切れたのだろう……勇が机に頭を打ち付け、気を失う。
 マヴォとイシュライトも、彼の意思が途切れた事に気付いた途端に崩れ落ちたのだった。

「まぁ……急ぐ必要もねえもんな。 みたいなもんだから」

 場の解散の雰囲気を感じ取った心輝が不吉な言葉を残してその場を去る。
 崩れ落ちた仲間達の介抱もせず、勇ましく戦った事への敬意だけ払いながら。

 そう……彼等の戦いはこれからが正念場だったのだ。

 今までのは通常種と呼ばれる、恒常的に現れるという設定のモンスター達。
 しかしこれから現れるのは別格とも言える超常種……自然災害級のモンスター達なのである。


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