時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第三十二節「熱き地の再会 真実は今ここに 目覚めよ創世」

~獣の少年と箱庭の唄~

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「勇、お父さん達今凄い人に会ったぞお!!」

『え、凄い人って……?』

 そこは洋上。
 勇の両親は剣聖を連れ、陸とアルクトゥーンを繋ぐ為にチャーターされたクルーザーに乗っていた。
 高速で洋上を突き抜ける中、勇の両親がスマートフォンを耳に充てて声を上げる。
 通話相手は当然、アルクトゥーン内に居る勇だ。

「剣聖さんだよ、剣聖さん! 今、一緒にアルクトゥーンへ向かってるんだ! 出来れば受け入れ準備頼む」
『えっ!? わ、わかった、急いで昇降エレベーターを降ろす!!』

 波しぶきが舞い散り、潮風がその身を煽る。
 そんな中でも、彼等の視界には上空に浮かぶアルクトゥーンの姿がハッキリと映しだされていた。

「あれが元空島だったとはなぁ……驚きだぜ」

 剣聖が船の揺れにも怯む事無く直立し、空を見上げる。
 彼にも知らぬ事はまだまだ多い……目の前の事実に、思わず顎髭を「わしゃり」と撫で上げていた。
 
 その後、勇と茶奈の二人が剣聖達を迎え入れる。
 懐かしい再会の挨拶も淡泊に、彼等を乗せた昇降エレベーターはアルクトゥーンへと戻っていった。
 




「ほぉ~……随分と内装はしっかりしてるじゃねぇか」

 アルクトゥーン本体へと到達した途端、剣聖の感心の声が上がる。
 全体的に飾る事の無い、暖かみを感じる滑らかな質感を持った白の内壁は、彼をも堪らず唸らせていた。

「カプロや国連の人達が時間を掛けて改造しましたからね。 ここは今、俺達の家みたいなもんなんですよ」

「ほぉん……しっかし、こういう事に関しちゃお前等の方が一枚も二枚も上手だな。 毎度ながら飽きやしねぇ」

 嫌味も無く「ガハハ」と笑い、素直な答えを彼等に返す。
 相も変わらぬ彼の在り方に、勇達は懐かしさを感じずにはいられない。



 【東京事変】が起きる直前に彼は勇達の前から忽然と姿を消した。
 それからずっと何をしていたのだろうか。
 そう思われても仕方ない程に……彼等の存在は世界の影に隠れていたのだ。

 だが、ここに居ると知って訪れたから……まさかこうも早く再会出来るとは、誰しも夢にも思わなかっただろう。



 そう、まさか彼がこうして自分から来るなど……考えもしなかった事なのだから。



「それにしても何故アルクトゥーンに?」

 疑問になる程の彼の行動。
 それがどうにも気になって。
 気付けばそうやって訊いていた。

 居住区を横切って歩く中……剣聖は惜しげも無く答えを返す。

「おう、あの毛むくじゃらの小僧ならここに居るんじゃねぇかなぁって思ってよ」

「けむくじゃら……カプロさんでしょうか」

「おう、そいつだそいつ」

 剣聖にとっても、アルクトゥーンはそう連想させてしまう程に異質だったのだろう。
 ここにカプロが居るという確証は無かっただろうが……そこはさすがの剣聖、見事な推測と言える。
 だがそれよりも、勇は別の事に気を取られてしょうがなかった。

 それは、何故剣聖がカプロを求めたのか、という事。

 剣聖とカプロの接点はほぼ無いに等しい。
 せいぜいカプロの持つ【グゥの日誌】が剣聖にとっての【終わりト始まりノ書】……つまり剣聖達三剣魔が三百年余戦う事となった礎だという事だけだ。

 それが疑問に浮かぶも……勇は近くに備えてあった艦内コンソールへと歩み寄り、連絡を取り始めた。
 相手は当然……

「―――という訳で、ちょっとカプロ来てもらえるか?」
「おぉ、それならよ、あんだろ工房? そこがいいぜ!」

 連絡する勇の背後から「ヌイッ」と現れた剣聖が横槍を入れる。
 押し潰さんばかりの巨体から生まれた影が勇の全身を覆い、彼の驚きを誘う中で。

 こうして剣聖は勇達に連れられ、アルクトゥーン後部、カプロの工房へと向かうのだった。










 アルクトゥーンの後部には格納庫を始め、修繕室、機械加工室、部品倉庫といった技術目的の役目を果たす為のフロアが存在する。
 民間の出入りは禁止、勇達関係者だけが立ち入れる場所だ。

 そこには当然、カプロの工房も存在する。
 とはいえ、彼用の工房というよりも……そこは言うなれば、【魔導技術開発ルーム】。
 カプロや彼の教えを受けた技術班が使う、小型の工場である。
 カプロの工房はそこの一角に存在するだけに過ぎない。

 しかしそこで一つ疑問が出る事だろう。
 それはカプロが一体どうやって管制室と工房を行き来しているのか。
 今まで即座に現れては仕事場へと消えるなど、動きが曖昧にも見えたのではないだろうか。

 管制室と工房との距離はおおよそ五百メートル。
 急いで走っても相当な時間が掛かる距離だ。
 その間を走って行き来するのは余りにも非効率。

 という訳で……カプロ、とある物を予め用意していた。
 アルクトゥーンはいわばカプロの思い通りに改造した器の様なものだ。
 彼が望む物は全て備えてあると言っても過言ではない。

 管制室から後部までを繋ぐアルクトゥーンメインストリートの地下に、実はとある別通路が存在する。

 それは管制室-工房直結の高速電磁搬送機リニアテーブル
 座ったままでの移動が可能な、椅子を搭載した搬送機構である。
 おおよそ三十秒でその間が移動可能という結構な代物だ。
 
 カプロは毎度、一言声が掛かるとそれを使って移動している。
 それは共用ではあるが……もはや彼専用と言っても過言ではない。



 そんな事もあって。
 勇が剣聖を連れて工房へ現れた時、管制室に居たはずのカプロが迎えたのは……言うまでもないだろう。


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