時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

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第三十五節「消失の大地 革新の地にて 相反する二つの意思」

~至急調査して欲しい事がある~

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 憩いの時間を享受していたのも束の間、勇達に召集指令が掛かる。
 それは当然勇や瀬玲だけでなく他のメンバー達にもだ。
 丁度シャワーを浴びていた茶奈も、レンネィと共に遊びに講じる心輝も。
 訓練中のイシュライト達もが揃って取り急ぎ管制室へと向けて駆け抜けていった。



「ご、ごめんなさいっ!! 遅れましたっ!!」

 最後に訪れたのはやはり茶奈。
 彼女が訪れた途端、管制室に甘い香りが漂い始め。
 慌ててやってきたのだろう、服装は乱れて髪も湿気を伴っていて。

 それに気付けば何をしていたかなど察せる訳で、誰しもが「仕方ない」と頷きを見せる。

 たった一人、騒がしいちびっ子を除いては。

「貴様、何故こんな時に湯浴みなどしているのだ!! それ程フジサキユウを誘いたいのか!!」
「リッダちゃん何を言ってるの? 試しにお風呂入らないで生活してみる?」

 ちなみにリッダは半魚人系の魔者で、当然水分無しでは生きられない身体だ。
 本人すら叶えられない言い分は理不尽としか言いようが無い。
 そんな事を宣ってしまえばアネットの愛の抱擁スリーパーホールドが待っているのは当然で。

 間も無くリッダが沈黙化ブラックアウトさせられたのはもはや言うまでもないだろう。

「アネットさんありがとうございます。 これで話が進められそうです」

 いつも冷静沈着な莉那が堪らず溜息を零す。
 リッダのテンションは彼女にとっても悩みの種な様だ。

「早速ですが……これからアルクトゥーンは急遽カナダへ向かいたいと考えています」

「カナダ? 確か予定では明日ヨーロッパに戻る手筈じゃ」

 突然の予定変更とも言える采配に、勇も思わず首を傾げさせる。

 勇を筆頭とした作戦会議では既にフランス攻略に向けたスケジュールが立てられていた。
 本来であれば、予定物資が全て揃い次第、北半球を渡ってドイツへと向かう予定で。
 これは既に仲間達へ周知済みの予定であり、誰しもが知る所だ。

 しかし計画実行の直前での予定変更。
 それが勇達に思わぬ不安を呼び込んでならない。

「実はつい先ほど、カナダ政府より要請が入ったのです。 『至急調査して欲しい事がある』と」

 莉那に続いてそう答えたのはミシェル。
 キーボードを素早く叩き、間も無く上部モニターにアメリカを中心とした世界地図を表示させる。
 すると―――アメリカの北、カナダの中腹部にたちまちマーキングの光が灯り始めた。
 
「カナダ政府曰く、丁度私達がアメリカ軍と交戦していた頃、この場所でとある出来事が起きたそうなのです」

「マジかよ、戦ってる最中かよぉ」

 戦いに集中している最中の出来事。
 それはすなわち、あの三時間の中で何かが起きたという事だ。

 まるで狙って行われたと言わんばかりのタイミング。
 そこに【救世同盟】とは違う不穏な意思を感じさせずにはいられない。

「とある事……?」

「ええ。 実際に見た方が早いとの事です。 というよりも、彼等ではわかりかねる……と言った方が正しいのかもしれません」

 含みのある言い方に勇達の不安は募るばかり。
 そう不安を抱かせてならなかったのは、何よりも示された場所が彼等には特別だったから。

 勇達はマーキングが示していた場所を知っていたのだ。
 そしてズーダーがその中で誰よりも、その場所をよく知っている。
 
 示されていたのは彼の故郷【グーヌー族】の里が佇む土地なのである。

「そうか、グーヌーの里に何かが起きたのか……」

 ズーダーのそう語る口は唸る様にも聴こえて。
 彼の心象に誰しもが心配する様子を見せる。

 ズーダーと故郷の確執は【東京事変】以降も変わらぬまま。
 あれ以降、彼は故郷との連絡を絶ち続けている。

 グーヌー族はいわばデュゼロー達【救世】の協力者。
 当時その事を知らないズーダーを欺き、彼を盾として旧魔特隊へ間者スパイを潜り込ませた。
 その結果、勇達を苦戦に追い込み、同胞であるはずのズーダー自身の命をも危機に追いやったのだ。

 当時のズーダーの憤りは相当なものだっただろう。
 彼と同じく事情を知らない友人二人も【東京事変】において間者達に殺されてしまったのだ。
 あろう事か友人だと思っていた者に、である。

 この事実はもはや誰でも知る所。
 だからこそ当事者の誰もがズーダーに心配の顔を向けていて。

 だがズーダーはそんな彼等に微笑みで返す。
 その事実は拭い去る事こそ出来ないが、彼の中ではもう整理の付いた出来事なのだから。

「皆、心配してくれてありがとう。 だが私の事は気にしないで欲しい。 何があろうと私は事実を受け止めるつもりだ。 私も皆と同じグランディーヴァの一員なのだ、何があろうと耐えてみせよう」

 そう語りながらその身を振り向かせ、両手で力の籠ったダブルサムズアップを見せつける。
 真面目ながらもどこかヌケている彼らしい仕草だ。
 その動きはどこかぎこちなく、きっとそうして見せたのも強がりなのだろう。

 でもそう言い切った気持ちは変わらない。
 その姿が強がりでも、虚勢でも。
 グランディーヴァの一員として負けず強く在ろうとしているのだ。

 勇達もまた彼の強い意思を汲み取れたからこそ、頷きを返す事が出来る。

「わかった。 じゃあ予定を二日先送りにして、カナダ政府の要請に応える事にしよう」

「了解しました。 ではスケジュール調整しつつ、本艦をカナダ中腹部へと向けて転進。 その後、現地で起きた事象の調査活動を行う事とします」

 勇達の合意の下、間も無く莉那を筆頭にした発進準備が整えられていく。
 この時操縦桿を握るのは、今やこの艦の操舵士となったズーダー当人だ。

 その覚悟、決意を言葉に換える事が出来たから―――その姿にもう迷いは無い。





 こうして強い決意を胸に、勇達が一路カナダへと向かう。

 しかしそんな彼等を待ち受けていたのは―――

 ア・リーヴェですら予想しえない、とてつもない事態の片鱗であった……。


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