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第三十六節「謀略回生 ぶつかり合う力 天と天が繋がる時」
~Ma mère bien-aimée <愛しき母よ> ナターシャとエクィオ②~
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大地へ倒れたナターシャの顔へと、二丁の銃口が突き付けられる。
陽光を受けて輝きを放つ対蒼銃が容赦無く。
ただ、エクィオの敵意の中に垣間見えるのは―――慈悲。
敵へと向けるには優し過ぎる程の。
その感情を露わとする姿がナターシャには不思議でならなくて。
たちまち生まれた疑問が、またしても思わぬ声となる。
「君はそんな優しいのに……どうして戦う事を望んだの? 戦わない道だってあったはずなのに……」
その慈悲は自然と彼の本質を覗かせていて。
リデルから聞いたデュランよりもずっと強く感じさせる程に。
だからこう訊きたくもなった。
ナターシャもまた戦う事を真には望んでいないから。
「そうだね。 戦わない道があればそれが一番だと思う。 僕もそれを願って止まないよ」
エクィオもこうして人を慈しむ事が出来る程に優しいのだろう。
だからこうして、嘘偽り無くこう返す事が出来るのだ。
「そう思うなら戦う必要なんてないじゃないかっ! ボクと一緒に戦いを見守る事だって―――」
「残念ながらそうはいかない」
「ッ!?」
でも今、彼は銃を手に取り、こうして容赦なく銃口を向けている。
それはすなわち、貫かなければならぬ信念がそこにあるという事。
例え優しかろうとも関係無く。
「君が戦わないと言うなら、僕はそのまま仲間を助けに行く。 君が抵抗するなら、殺した後に仲間を助けに行く。 それが僕の使命だから……ッ!!」
だからこそもう迷わない。
その意思一つで躊躇い無くトリガーを引くだろう。
使命を果たす為に、信念を貫く為に。
「僕を受け入れてくれたデュランの為にも、ここで止まる訳にはいかないんですッ!!」
エクィオの意思は硬い。
ナターシャの想いなど届くはずも無い程に。
あのデュランもが自分を押し殺して思想を貫こうとしているから。
「自分も彼の様に何かを犠牲にしなければならない」、そう思っているから。
例え魂が泣き叫ぼうとも。
そんな叫びが想いを乗せて。
ナターシャの小さな体に浴びせ掛ける。
まるで悲痛を訴えるかの様にして。
不意に零れた一雫の涙と共に。
「どうして、そこまで?」
でもその涙がナターシャの頬に落ちた時、エクィオは気付く。
彼女もまた、涙を流していた事に。
きっとエクィオの叫びが今までの何よりも想いが籠っていて。
自然と命力が内に秘めた重みまで届け、感情を共有してしまったのだろう。
感情に引かれてしまう程に、彼女は純粋で子供だから。
その心が持つ悲しみを理由を知らずとも関係無く。
ただその彼女の共感が、エクィオの胸を打つ。
何気無い一言が、今までに無い優しさを感じてしまったから。
その優しさがふと、エクィオの心の窓を少しだけ押し開く。
そんな開かれた心に順じて語り始めたのは自身の過去。
心の奥底に渦巻く怒りと悲しみと苦しみの根幹だった。
「……僕は『あちら側』の人間でね、血統主義の魔剣使い一族の生まれなんだ。 現代で言う所の貴族みたいなものさ」
貴族主義だと言えば聞こえはいいかもしれない。
でも、『あちら側』におけるその概念は想像を超えて醜悪だ。
彼の言う血統主義とは、いわば魔剣使いの才者を生むシステムの事を指す。
より強い力を持った者同士の血を掛け合わせ、より強い魔剣使いを産み出す為の。
少なからず、『あちら側』においてはその様な考えが一部に存在していて。
一部の魔剣使いが集まり、その様にして子孫を増やし、鍛え、次世代に繋げているのだという。
あのバロルフもその考えを持つ者の一端で、茶奈に執拗と迫ったのもそれが原因だ。
だが遺伝が命力の強さに通じるという事実は存在しない。
命力とは星から分け与えられる力であり、その量は生まれた時に決まる。
まるで〝くじ〟の様に、遺伝や血統に拘らずランダムで定まるのだから。
勇が体を鍛えてていても豆粒の様な命力しか持っていなかった様に。
茶奈があれだけ貧弱でもアストラルエネマの特性を授かっていた様に。
だからいくら強い者同士が掛け合わさろうと、その子が同様に強くなるとは限らない。
そして長い歴史においてそれが証明される程に、幾度となく交配は続けられてきた。
なのにも拘らず、一族としてその血統主義を貫き続ける者達が居るのだ。
ただただ盲目的に、強き者を産み出す為だけに。
エクィオもまた、その運命に振り回された一人なのである。
「でも僕は落ちこぼれだった。 命力が小動物程度にしか無くて、魔者の餌にしかならないとこき下ろされたものさ」
そしてそんな世界において力無き者が晒される凄惨さは現代の比ではない。
命を命と思わない世界なのだ、例え血を分けた兄弟子息であろうとも容赦は無い。
「父や従妹、兄姉からは蔑まれて、足蹴にされて。 まるで家畜扱いだったよ。命力を高める為の的にされた事もあった程さ」
「ひどい……」
「でも母だけは僕を見捨てないでいてくれた。 いつも微笑んでくれて、隠れて力の使い方とか命の大切さも教えてくれたんだ。 強くて優しくて、そしてとても素敵な人だった」
でもその地獄の様な世界でも救いはあった。
最も頼れるであろう母という存在が。
『あちら側』において命を尊む者は極めて希少な存在と言える。
そしてその志は何よりも命力の強さに通じるからこそ、魔剣使いとしても優秀だったのだろう。
そんな母を持てたからこそ、エクィオは今の様に優しく成れたのかもしれない。
ただそんな幸せも長くは続かなかったが。
「けれどその母も僕が十の時に亡くなった。 過労死だったよ。 僕が生まれたという責任を取らされて、休む間も無く子供を産まされ続けて。 その上で子育ても強要されてね……!」
これこそが血族主義というものの忌むべき慣習。
現代ならばその様な事をしようとしても絶対に叶わないだろう。
倫理的な観点からも、心身的な観点から考えても。
人間の体はそれ程強くは出来ていない。
母体の健康状態は精神にも左右され易く、場合によっては身籠る事自体が困難にもなる。
それ故に現代でも母体は大切に扱われ、二児目をもうけるにも期間を空けるなどの身体管理が徹底されるのだ。
でももし母体が強靭な魔剣使いだとしたら。
体を管理する者が魔剣使いならばどうだろうか。
強靭な肉体だから、耐えがたい苦痛をもたらす出産にも耐えられてしまう。
なまじ命力という異常な力があるから、それを利用して強制的に身籠らせる事が出来る。
出生数を増やす為にそのスパンでさえも短くして。
秩序が無い世界なだけに、その様な鬼畜の所業が平然と行われていたのである。
「そんな母を看取ったのは僕だけさ。 弟達は父に連れていかれたからね。 日に日に弱っていくのがわかっていたから、何とか救おうと思って頑張ったんだ。 でも救えなかったんだ……ッ!!」
そしてその末路は悲惨だ。
忌み子も、忌み子を産んだ母も、もはやその血族においては不要な存在。
力を失った者はもはや人とすら扱われない。
「母は弔われる事も無く、僕と一緒に打ち捨てられたよ。 まるでゴミの様に。 でも復讐したくても出来なかった。 僕には力が無かったから。 父に敵う訳も無かったから―――だから僕は何もかも諦めたんだ……」
それからの人生はもはや言うに語れない。
壮絶だっただろう。
あらゆる負の感情が醸成される程に。
母を失った悲しみと、その母を救えなかった悔しさと、その忘れ形見である弟達を奪われた怒り。
それでも母から貰った優しさを失わないままで。
その渦巻く感情を抱いたまま、彼はずっと耐え忍んで生きて来たのだ。
そしてフララジカに遭遇した。
「それからこの世界に来て、デュランと出会った。 そして受け入れてくれたんだ。 力の使い方も教えてくれて、僕を信じてこの魔剣【ワトレィス】を託してくれた。 だから僕はその恩に報いる為にもあの人の背中を守りたい。 あの人が救おうとしている世界の為に!!」
魔剣を掴む手が強く握り締められる。
「ギリリ」と唸る程に強く強く。
この世界に訪れてエクィオは知ったから。
世界の温かさが母の心ととても似ていた事を。
故にその想いが今、蒼雷となって迸る。
「だから僕は人を救う!! 母さんを救えなかった代わりにッ!! 例え犠牲を生む事になったとしても、その先に生きるべき人々を救う!! そして父に囚われた弟達も救う!! 今はまだ『こちら側』に来ていないけれど、来た時の為に力を蓄えて、いつか、必ず、救ってみせるッ!!」
エクィオは誓う。
例え母が望まぬ事だとしても。
救うべき者達を救う為に己の優しさを殺すのだと。
それが覚悟と決意。
デュランと仲間達にその身を捧げ、己の信念を貫く為の。
「そして今、君をも救ってみせるッ!! 生かそうとも殺そうともッ!! オゥイ か ノン か!? それ以外の答えはもう要らないッ!!!」
充填された蒼雷は既に臨界点だ。
今にも発射されんばかりに、絶えず魔剣から火花をもたらして。
語りで増幅された感情が気迫を呼び、見纏う雷光がエクィオの髪さえ逆立てさせる。
全てを次の一瞬に賭けて。
だがこの時、エクィオは垣間見る事となるだろう。
想像もし得なかったまさかの光景を。
「ごめんね……ならボクは、どちらも取る事は出来ない」
ナターシャが、優しく微笑んでいたのだ。
その微笑みは、かつての母が見せたものにも通ずる穏やかさで。
エクィオの内に秘めた優しさをかつてない程に掻き毟る。
でももう、決めてしまったから。
躊躇わないと決めてしまったから。
「う お あああーーーーーーッッッ!!!!!」
ドドギュッ!! ドドドッッ!! ドドドドッッッ!!!
不幸しか生み出さない世界の理への怒りの叫びと。
優しさを裏切るしかなかった悲しみの嘆きがその場に轟く。
銃声を掻き消す程に強く、強く。
弾丸は容赦無く撃ち込まれ。
ナターシャの細い腕が、腰が、脚が、幾度となく不自然に跳ね上がり。
その弾が切れようとも空かさず弾倉を換えて。
それさえも撃ち尽くすまでトリガーを引き続ける。
叫びが、嘆きが枯れるその時まで。
例え心が泣こうとも、苦しもうとも。
もう、指を止める事すら許されない。
これがエクィオの進むと決めてしまった道なのだから。
陽光を受けて輝きを放つ対蒼銃が容赦無く。
ただ、エクィオの敵意の中に垣間見えるのは―――慈悲。
敵へと向けるには優し過ぎる程の。
その感情を露わとする姿がナターシャには不思議でならなくて。
たちまち生まれた疑問が、またしても思わぬ声となる。
「君はそんな優しいのに……どうして戦う事を望んだの? 戦わない道だってあったはずなのに……」
その慈悲は自然と彼の本質を覗かせていて。
リデルから聞いたデュランよりもずっと強く感じさせる程に。
だからこう訊きたくもなった。
ナターシャもまた戦う事を真には望んでいないから。
「そうだね。 戦わない道があればそれが一番だと思う。 僕もそれを願って止まないよ」
エクィオもこうして人を慈しむ事が出来る程に優しいのだろう。
だからこうして、嘘偽り無くこう返す事が出来るのだ。
「そう思うなら戦う必要なんてないじゃないかっ! ボクと一緒に戦いを見守る事だって―――」
「残念ながらそうはいかない」
「ッ!?」
でも今、彼は銃を手に取り、こうして容赦なく銃口を向けている。
それはすなわち、貫かなければならぬ信念がそこにあるという事。
例え優しかろうとも関係無く。
「君が戦わないと言うなら、僕はそのまま仲間を助けに行く。 君が抵抗するなら、殺した後に仲間を助けに行く。 それが僕の使命だから……ッ!!」
だからこそもう迷わない。
その意思一つで躊躇い無くトリガーを引くだろう。
使命を果たす為に、信念を貫く為に。
「僕を受け入れてくれたデュランの為にも、ここで止まる訳にはいかないんですッ!!」
エクィオの意思は硬い。
ナターシャの想いなど届くはずも無い程に。
あのデュランもが自分を押し殺して思想を貫こうとしているから。
「自分も彼の様に何かを犠牲にしなければならない」、そう思っているから。
例え魂が泣き叫ぼうとも。
そんな叫びが想いを乗せて。
ナターシャの小さな体に浴びせ掛ける。
まるで悲痛を訴えるかの様にして。
不意に零れた一雫の涙と共に。
「どうして、そこまで?」
でもその涙がナターシャの頬に落ちた時、エクィオは気付く。
彼女もまた、涙を流していた事に。
きっとエクィオの叫びが今までの何よりも想いが籠っていて。
自然と命力が内に秘めた重みまで届け、感情を共有してしまったのだろう。
感情に引かれてしまう程に、彼女は純粋で子供だから。
その心が持つ悲しみを理由を知らずとも関係無く。
ただその彼女の共感が、エクィオの胸を打つ。
何気無い一言が、今までに無い優しさを感じてしまったから。
その優しさがふと、エクィオの心の窓を少しだけ押し開く。
そんな開かれた心に順じて語り始めたのは自身の過去。
心の奥底に渦巻く怒りと悲しみと苦しみの根幹だった。
「……僕は『あちら側』の人間でね、血統主義の魔剣使い一族の生まれなんだ。 現代で言う所の貴族みたいなものさ」
貴族主義だと言えば聞こえはいいかもしれない。
でも、『あちら側』におけるその概念は想像を超えて醜悪だ。
彼の言う血統主義とは、いわば魔剣使いの才者を生むシステムの事を指す。
より強い力を持った者同士の血を掛け合わせ、より強い魔剣使いを産み出す為の。
少なからず、『あちら側』においてはその様な考えが一部に存在していて。
一部の魔剣使いが集まり、その様にして子孫を増やし、鍛え、次世代に繋げているのだという。
あのバロルフもその考えを持つ者の一端で、茶奈に執拗と迫ったのもそれが原因だ。
だが遺伝が命力の強さに通じるという事実は存在しない。
命力とは星から分け与えられる力であり、その量は生まれた時に決まる。
まるで〝くじ〟の様に、遺伝や血統に拘らずランダムで定まるのだから。
勇が体を鍛えてていても豆粒の様な命力しか持っていなかった様に。
茶奈があれだけ貧弱でもアストラルエネマの特性を授かっていた様に。
だからいくら強い者同士が掛け合わさろうと、その子が同様に強くなるとは限らない。
そして長い歴史においてそれが証明される程に、幾度となく交配は続けられてきた。
なのにも拘らず、一族としてその血統主義を貫き続ける者達が居るのだ。
ただただ盲目的に、強き者を産み出す為だけに。
エクィオもまた、その運命に振り回された一人なのである。
「でも僕は落ちこぼれだった。 命力が小動物程度にしか無くて、魔者の餌にしかならないとこき下ろされたものさ」
そしてそんな世界において力無き者が晒される凄惨さは現代の比ではない。
命を命と思わない世界なのだ、例え血を分けた兄弟子息であろうとも容赦は無い。
「父や従妹、兄姉からは蔑まれて、足蹴にされて。 まるで家畜扱いだったよ。命力を高める為の的にされた事もあった程さ」
「ひどい……」
「でも母だけは僕を見捨てないでいてくれた。 いつも微笑んでくれて、隠れて力の使い方とか命の大切さも教えてくれたんだ。 強くて優しくて、そしてとても素敵な人だった」
でもその地獄の様な世界でも救いはあった。
最も頼れるであろう母という存在が。
『あちら側』において命を尊む者は極めて希少な存在と言える。
そしてその志は何よりも命力の強さに通じるからこそ、魔剣使いとしても優秀だったのだろう。
そんな母を持てたからこそ、エクィオは今の様に優しく成れたのかもしれない。
ただそんな幸せも長くは続かなかったが。
「けれどその母も僕が十の時に亡くなった。 過労死だったよ。 僕が生まれたという責任を取らされて、休む間も無く子供を産まされ続けて。 その上で子育ても強要されてね……!」
これこそが血族主義というものの忌むべき慣習。
現代ならばその様な事をしようとしても絶対に叶わないだろう。
倫理的な観点からも、心身的な観点から考えても。
人間の体はそれ程強くは出来ていない。
母体の健康状態は精神にも左右され易く、場合によっては身籠る事自体が困難にもなる。
それ故に現代でも母体は大切に扱われ、二児目をもうけるにも期間を空けるなどの身体管理が徹底されるのだ。
でももし母体が強靭な魔剣使いだとしたら。
体を管理する者が魔剣使いならばどうだろうか。
強靭な肉体だから、耐えがたい苦痛をもたらす出産にも耐えられてしまう。
なまじ命力という異常な力があるから、それを利用して強制的に身籠らせる事が出来る。
出生数を増やす為にそのスパンでさえも短くして。
秩序が無い世界なだけに、その様な鬼畜の所業が平然と行われていたのである。
「そんな母を看取ったのは僕だけさ。 弟達は父に連れていかれたからね。 日に日に弱っていくのがわかっていたから、何とか救おうと思って頑張ったんだ。 でも救えなかったんだ……ッ!!」
そしてその末路は悲惨だ。
忌み子も、忌み子を産んだ母も、もはやその血族においては不要な存在。
力を失った者はもはや人とすら扱われない。
「母は弔われる事も無く、僕と一緒に打ち捨てられたよ。 まるでゴミの様に。 でも復讐したくても出来なかった。 僕には力が無かったから。 父に敵う訳も無かったから―――だから僕は何もかも諦めたんだ……」
それからの人生はもはや言うに語れない。
壮絶だっただろう。
あらゆる負の感情が醸成される程に。
母を失った悲しみと、その母を救えなかった悔しさと、その忘れ形見である弟達を奪われた怒り。
それでも母から貰った優しさを失わないままで。
その渦巻く感情を抱いたまま、彼はずっと耐え忍んで生きて来たのだ。
そしてフララジカに遭遇した。
「それからこの世界に来て、デュランと出会った。 そして受け入れてくれたんだ。 力の使い方も教えてくれて、僕を信じてこの魔剣【ワトレィス】を託してくれた。 だから僕はその恩に報いる為にもあの人の背中を守りたい。 あの人が救おうとしている世界の為に!!」
魔剣を掴む手が強く握り締められる。
「ギリリ」と唸る程に強く強く。
この世界に訪れてエクィオは知ったから。
世界の温かさが母の心ととても似ていた事を。
故にその想いが今、蒼雷となって迸る。
「だから僕は人を救う!! 母さんを救えなかった代わりにッ!! 例え犠牲を生む事になったとしても、その先に生きるべき人々を救う!! そして父に囚われた弟達も救う!! 今はまだ『こちら側』に来ていないけれど、来た時の為に力を蓄えて、いつか、必ず、救ってみせるッ!!」
エクィオは誓う。
例え母が望まぬ事だとしても。
救うべき者達を救う為に己の優しさを殺すのだと。
それが覚悟と決意。
デュランと仲間達にその身を捧げ、己の信念を貫く為の。
「そして今、君をも救ってみせるッ!! 生かそうとも殺そうともッ!! オゥイ か ノン か!? それ以外の答えはもう要らないッ!!!」
充填された蒼雷は既に臨界点だ。
今にも発射されんばかりに、絶えず魔剣から火花をもたらして。
語りで増幅された感情が気迫を呼び、見纏う雷光がエクィオの髪さえ逆立てさせる。
全てを次の一瞬に賭けて。
だがこの時、エクィオは垣間見る事となるだろう。
想像もし得なかったまさかの光景を。
「ごめんね……ならボクは、どちらも取る事は出来ない」
ナターシャが、優しく微笑んでいたのだ。
その微笑みは、かつての母が見せたものにも通ずる穏やかさで。
エクィオの内に秘めた優しさをかつてない程に掻き毟る。
でももう、決めてしまったから。
躊躇わないと決めてしまったから。
「う お あああーーーーーーッッッ!!!!!」
ドドギュッ!! ドドドッッ!! ドドドドッッッ!!!
不幸しか生み出さない世界の理への怒りの叫びと。
優しさを裏切るしかなかった悲しみの嘆きがその場に轟く。
銃声を掻き消す程に強く、強く。
弾丸は容赦無く撃ち込まれ。
ナターシャの細い腕が、腰が、脚が、幾度となく不自然に跳ね上がり。
その弾が切れようとも空かさず弾倉を換えて。
それさえも撃ち尽くすまでトリガーを引き続ける。
叫びが、嘆きが枯れるその時まで。
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