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第三十七節「二天に集え 剣勇の誓い 蛇岩の矛は空を尽くす」
~直に物、荷に随伴の栗鼠~
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各々の興奮が冷めやらないまま、二陣営による決議会が遂に解散する。
となれば今日の予定の残す所はあと夜の懇談会のみ。
―――と思っていたのだが。
どうやら、デュランはやれる事を出来るだけ早く済ませたかった様だ。
会議終了からおおよそ一時間もすれば、再びデュランからのコンタクトが。
そんな訳で勇がまた浮遊エレベータで降りてみれば―――
「おいおい、気が早いな……」
その先には、荷物を積載した小型の貨物船が。
当然デュランも同伴で、勇の登場に手を振って応えていて。
「いきなりすまない。 会議で話していた戦闘用物資は出来るだけ早く搬入したかったんだ。 手をこまねいていると政府の強硬派に持っていかれてしまいそうだったからさ」
デュラン側にも色々と複雑な事情があるのだろう。
というよりもフランス政府内部と言った方が正しいか。
当然、政府と言っても一枚岩では無く、多様な考えを持つ議員達が居る。
その中でも「強硬派」と呼ばれる一派は、なお以前の救世同盟の在り方を推しているのだとか。
もちろん今では勢力こそ衰えたが、軍部にも通じてるとあって油断は出来ないそうな。
特に、戦術・戦略物資となれば彼等が喉から出るほど欲しがって止まない物で。
何せデュラン達が独自開発した装備ばかりとあって、宝の山の様なものなのだから。
その中には当然、デュラン達が使用していた魔剣も含まれている。
それだけ強力な装備であれば接収を強行したくなるのも無理は無いだろう。
「だとするとこのエレベーターじゃきっついな。 搬入用エレベーター運んでくるからちょっと待っててくれ」
それもこうして勇達へと渡されれば、もう政府も手出しは出来ない。
ならば早い方が良いと、こうして会議に合わせて持ってきたという訳だ。
それはもちろん、移籍させる予定だった人員も一緒に。
「いきなりなんだと思ったらとんでもない量の荷物が来たッスね」
カプロ達や整備班の力も借りて、その貨物もようやく全て機内へ。
何せコンテナ二つ分と、勇達が運ぶにも少し厄介な容量だったもので。
そしていざそのコンテナを開いて見れば―――
「ひゃー、これまたとんでもないモンばかりッスね。 貰っていいんスかコレ」
―――中にはぎっしりと詰められた装備の山が。
パッと見る限り、勇の見た事ある装備が幾つも見える。
デュランが着ていたあの【魔導鎧装】や、アルバの【ダーナガン】らしき防具が壁部に括られていて。
他にもケースが無数に積まれており、この調子だと他の武装もちゃっかり含まれてそうだ。
「ああ、構わない。 基本的に専用装備ばかりでそのままでは使えないがね。 ただこれから造る装備へのアイディアにも使えないかなと思って、彼に断って持ってくる事にしたんだ」
そんな貨物が全て書かれたリストをカプロが受け取れば、その重さだけでもズシリと。
掴むのも大変な程に厚い紙束が思わずその顔をしかめさせる。
「それに私達にはもうこれ以上の装備は不要だからね。 今ある武装だけで充分さ」
一方のデュランとしては、よほど自分達の戦力に自信があるのだろう。
たちまち、妙に輝かしいサムズアップを見せつけていて。
しかしあのカプロが調子を合わせるなどと思っていたのだろうか。
ただいまデュランの腕の直下でマイペースにリスト物色中である。
いまいちノリの悪い毛玉を下に、デュランも思わず苦笑気味だ。
「……なかなか彼は個性的だね」
「デュランに負けず劣らずな」
デュランとしてはキメたい所だったらしく、ちょっと残念そう。
こうも見ると、どうにも心輝と似ている節を感じさせてならない。
さすがの似た者同士というだけに。
「さて、荷物の受け渡しも済んだ事だし。 次は彼の紹介をしておくとしようか」
「そういえば、その〝彼〟って誰の事だよ」
「この方の事さ」
すると、まるでその言葉を待っていたかの様に、サムズアップの拳がゆるりと動く。
そして天に向いていた親指がそのままデュランの背後へと向けられると―――
その先、床の方に何やら見慣れない毛玉の姿が。
それもかなり小さい。
カプロでさえも見下ろしてしまう程に。
おおよそ一〇〇センチメートル程だろうか、子供だと思える程に背が低く。
耳もが長毛で覆われていて大きく見え、今までの魔者よりも少し動物的だ。
でも鼻は突くほど高くは無く、ほお袋もある辺りは人間とリスを足して二で割った様な感じ。
体自体もそこまでは大きく無く、毛で膨らんでいる様に見える程度で。
そんな身体を白衣で覆えば、ちょっとばかしふっくらとすら見えなくもない。
そして何より特徴的なのは、大きな尻尾。
身丈ほどもある大きく膨らんだ尻尾はまさにリスそのもの。
シマ模様が縦に三つ伸びている所がもうそっくりで。
先がクルリとくるまっているのはお約束である。
「彼の名はピネ。 私達の武装を造ってくれた心強いパートナーさ」
「……彼?」
だが、そんな紹介があってもなお勇達はただただ疑問を浮かべるばかりだ。
それだけ、目の前の人物が紹介にそぐわない姿だったから。
「ピネがピネなのネ。 デュランが言うから仕方なく来てやったのネ。 存~分に喜ぶといいのネ」
そうして放たれたのは、まさに紹介に相応しくない甲高い声。
見た目はリスみたいな幼女、声色も幼女、どう見ても幼女。
なのに『彼』。
これは一体どういう理由なのだろうかと頭を傾げずにはいられない。
これでも股間に男らしいアレがついているのだろうか。
「デュラン、この人は―――」
「ああ。 ピネは素晴らしいよ。 いつも私達の為に全力で装備をあつらえてくれていたんだ。 それに賢くてね、参謀らしき一面もあったのさ。 彼に出会えた事が私達にとっての幸運でもあったと言えるだろうなぁ」
でもデュラン当人はもう半分自分の世界に没入中だ。
よほどこのピネという人物に思い入れや思い出があるのだろう。
勇とカプロの関係と似た様に。
「いやでもこの人女ッスよね」
「―――え?」
だが、空かさず漏れた一言がデュランの没入思考を止める事となる。
カプロの容赦無き鋭い一言が。
いや、厳密に言えばそれは一言では済まされない。
「しかも多分デュランより年上ッスよね」
「なッ!?」
「つか見た目でわかるだろ? 俺も歳まではわからないけど」
待っていたのは総ツッコミの嵐。
勇達のみならず、周囲の整備兵達もが揃って頷きを見せていて。
顔をしかめさせたデュランがそっと下へと覗き込んでみれば―――
―――そこには小さな拳でサムズアップを見せつけるピネの姿が。
見た目とても可愛らしいサムズアップだ。
キラキラと輝いて見えてしまう程に。
それに本人も何故か妙に誇らしげでノリノリである。
「そ、そうだったの……!? ピネは女の子だったのか……ッ!? 気付か……なかったッ!!」
たちまちデュランがその場に崩れ込み、床に肘を突く。
ピネの性別を間違えていたのがよほどショックだったのだろう。
「一緒にお風呂入った事あったのに……洗ってあげたのに……気付かなかったあ……ッ!!」
「それで気付かないってアンタよほどッスね」
「デュランはそういうヤツなのネ」
更には二人の毛玉からの容赦の無い追撃を受け、頭もが床を突く事に。
肩も頭も震え、今にも意識を落としてしまいそうだ。
なんだかんだで女の子の裸をまさぐった事になるのだから。
知らない事だったとはいえ、気付いてしまえば恥ずかしくて堪らなくもなるだろう。
「ま、ピネは性別なんてどーでもいいのネ。 魔剣さえ造れれば他に何も要らないのネ」
「これまた随分と偏った考えをお持ちで……」
しかしピネには崩れ落ちたデュランなどもはや眼中に無い様だ。
ピョコピョコと勇の傍へと歩み寄り、その小さな腕を精一杯に頭上へと伸ばしていて。
これが背の低い彼女なりの精一杯の挨拶の仕方なのだろう。
口調は生意気そうだが、礼儀はとてもしっかりしている。
「アータがニュザシキとかいうヤツなのネ。 これからよろしく頼むのネ」
「いや、全然違うから。 俺の名前は藤咲勇だから」
「わかれば何でもいいのネ。 ピネにとってはどうでもいいコトなのネー」
ただし、この酷い適当っぷりであるが。
どうやらこのピネという少女、相当癖がある人物な様だ。
魔剣を造れる者となると、いずれもこの様な変人の域に達してしまうものなのだろうか。
これには勇もどこか不安を抱かずにはいられない。
となれば今日の予定の残す所はあと夜の懇談会のみ。
―――と思っていたのだが。
どうやら、デュランはやれる事を出来るだけ早く済ませたかった様だ。
会議終了からおおよそ一時間もすれば、再びデュランからのコンタクトが。
そんな訳で勇がまた浮遊エレベータで降りてみれば―――
「おいおい、気が早いな……」
その先には、荷物を積載した小型の貨物船が。
当然デュランも同伴で、勇の登場に手を振って応えていて。
「いきなりすまない。 会議で話していた戦闘用物資は出来るだけ早く搬入したかったんだ。 手をこまねいていると政府の強硬派に持っていかれてしまいそうだったからさ」
デュラン側にも色々と複雑な事情があるのだろう。
というよりもフランス政府内部と言った方が正しいか。
当然、政府と言っても一枚岩では無く、多様な考えを持つ議員達が居る。
その中でも「強硬派」と呼ばれる一派は、なお以前の救世同盟の在り方を推しているのだとか。
もちろん今では勢力こそ衰えたが、軍部にも通じてるとあって油断は出来ないそうな。
特に、戦術・戦略物資となれば彼等が喉から出るほど欲しがって止まない物で。
何せデュラン達が独自開発した装備ばかりとあって、宝の山の様なものなのだから。
その中には当然、デュラン達が使用していた魔剣も含まれている。
それだけ強力な装備であれば接収を強行したくなるのも無理は無いだろう。
「だとするとこのエレベーターじゃきっついな。 搬入用エレベーター運んでくるからちょっと待っててくれ」
それもこうして勇達へと渡されれば、もう政府も手出しは出来ない。
ならば早い方が良いと、こうして会議に合わせて持ってきたという訳だ。
それはもちろん、移籍させる予定だった人員も一緒に。
「いきなりなんだと思ったらとんでもない量の荷物が来たッスね」
カプロ達や整備班の力も借りて、その貨物もようやく全て機内へ。
何せコンテナ二つ分と、勇達が運ぶにも少し厄介な容量だったもので。
そしていざそのコンテナを開いて見れば―――
「ひゃー、これまたとんでもないモンばかりッスね。 貰っていいんスかコレ」
―――中にはぎっしりと詰められた装備の山が。
パッと見る限り、勇の見た事ある装備が幾つも見える。
デュランが着ていたあの【魔導鎧装】や、アルバの【ダーナガン】らしき防具が壁部に括られていて。
他にもケースが無数に積まれており、この調子だと他の武装もちゃっかり含まれてそうだ。
「ああ、構わない。 基本的に専用装備ばかりでそのままでは使えないがね。 ただこれから造る装備へのアイディアにも使えないかなと思って、彼に断って持ってくる事にしたんだ」
そんな貨物が全て書かれたリストをカプロが受け取れば、その重さだけでもズシリと。
掴むのも大変な程に厚い紙束が思わずその顔をしかめさせる。
「それに私達にはもうこれ以上の装備は不要だからね。 今ある武装だけで充分さ」
一方のデュランとしては、よほど自分達の戦力に自信があるのだろう。
たちまち、妙に輝かしいサムズアップを見せつけていて。
しかしあのカプロが調子を合わせるなどと思っていたのだろうか。
ただいまデュランの腕の直下でマイペースにリスト物色中である。
いまいちノリの悪い毛玉を下に、デュランも思わず苦笑気味だ。
「……なかなか彼は個性的だね」
「デュランに負けず劣らずな」
デュランとしてはキメたい所だったらしく、ちょっと残念そう。
こうも見ると、どうにも心輝と似ている節を感じさせてならない。
さすがの似た者同士というだけに。
「さて、荷物の受け渡しも済んだ事だし。 次は彼の紹介をしておくとしようか」
「そういえば、その〝彼〟って誰の事だよ」
「この方の事さ」
すると、まるでその言葉を待っていたかの様に、サムズアップの拳がゆるりと動く。
そして天に向いていた親指がそのままデュランの背後へと向けられると―――
その先、床の方に何やら見慣れない毛玉の姿が。
それもかなり小さい。
カプロでさえも見下ろしてしまう程に。
おおよそ一〇〇センチメートル程だろうか、子供だと思える程に背が低く。
耳もが長毛で覆われていて大きく見え、今までの魔者よりも少し動物的だ。
でも鼻は突くほど高くは無く、ほお袋もある辺りは人間とリスを足して二で割った様な感じ。
体自体もそこまでは大きく無く、毛で膨らんでいる様に見える程度で。
そんな身体を白衣で覆えば、ちょっとばかしふっくらとすら見えなくもない。
そして何より特徴的なのは、大きな尻尾。
身丈ほどもある大きく膨らんだ尻尾はまさにリスそのもの。
シマ模様が縦に三つ伸びている所がもうそっくりで。
先がクルリとくるまっているのはお約束である。
「彼の名はピネ。 私達の武装を造ってくれた心強いパートナーさ」
「……彼?」
だが、そんな紹介があってもなお勇達はただただ疑問を浮かべるばかりだ。
それだけ、目の前の人物が紹介にそぐわない姿だったから。
「ピネがピネなのネ。 デュランが言うから仕方なく来てやったのネ。 存~分に喜ぶといいのネ」
そうして放たれたのは、まさに紹介に相応しくない甲高い声。
見た目はリスみたいな幼女、声色も幼女、どう見ても幼女。
なのに『彼』。
これは一体どういう理由なのだろうかと頭を傾げずにはいられない。
これでも股間に男らしいアレがついているのだろうか。
「デュラン、この人は―――」
「ああ。 ピネは素晴らしいよ。 いつも私達の為に全力で装備をあつらえてくれていたんだ。 それに賢くてね、参謀らしき一面もあったのさ。 彼に出会えた事が私達にとっての幸運でもあったと言えるだろうなぁ」
でもデュラン当人はもう半分自分の世界に没入中だ。
よほどこのピネという人物に思い入れや思い出があるのだろう。
勇とカプロの関係と似た様に。
「いやでもこの人女ッスよね」
「―――え?」
だが、空かさず漏れた一言がデュランの没入思考を止める事となる。
カプロの容赦無き鋭い一言が。
いや、厳密に言えばそれは一言では済まされない。
「しかも多分デュランより年上ッスよね」
「なッ!?」
「つか見た目でわかるだろ? 俺も歳まではわからないけど」
待っていたのは総ツッコミの嵐。
勇達のみならず、周囲の整備兵達もが揃って頷きを見せていて。
顔をしかめさせたデュランがそっと下へと覗き込んでみれば―――
―――そこには小さな拳でサムズアップを見せつけるピネの姿が。
見た目とても可愛らしいサムズアップだ。
キラキラと輝いて見えてしまう程に。
それに本人も何故か妙に誇らしげでノリノリである。
「そ、そうだったの……!? ピネは女の子だったのか……ッ!? 気付か……なかったッ!!」
たちまちデュランがその場に崩れ込み、床に肘を突く。
ピネの性別を間違えていたのがよほどショックだったのだろう。
「一緒にお風呂入った事あったのに……洗ってあげたのに……気付かなかったあ……ッ!!」
「それで気付かないってアンタよほどッスね」
「デュランはそういうヤツなのネ」
更には二人の毛玉からの容赦の無い追撃を受け、頭もが床を突く事に。
肩も頭も震え、今にも意識を落としてしまいそうだ。
なんだかんだで女の子の裸をまさぐった事になるのだから。
知らない事だったとはいえ、気付いてしまえば恥ずかしくて堪らなくもなるだろう。
「ま、ピネは性別なんてどーでもいいのネ。 魔剣さえ造れれば他に何も要らないのネ」
「これまた随分と偏った考えをお持ちで……」
しかしピネには崩れ落ちたデュランなどもはや眼中に無い様だ。
ピョコピョコと勇の傍へと歩み寄り、その小さな腕を精一杯に頭上へと伸ばしていて。
これが背の低い彼女なりの精一杯の挨拶の仕方なのだろう。
口調は生意気そうだが、礼儀はとてもしっかりしている。
「アータがニュザシキとかいうヤツなのネ。 これからよろしく頼むのネ」
「いや、全然違うから。 俺の名前は藤咲勇だから」
「わかれば何でもいいのネ。 ピネにとってはどうでもいいコトなのネー」
ただし、この酷い適当っぷりであるが。
どうやらこのピネという少女、相当癖がある人物な様だ。
魔剣を造れる者となると、いずれもこの様な変人の域に達してしまうものなのだろうか。
これには勇もどこか不安を抱かずにはいられない。
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