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第三十七節「二天に集え 剣勇の誓い 蛇岩の矛は空を尽くす」
~剣に識、夢に継承の礎と~
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両陣営が入り混じった珍騒動はアルバの筋肉によって無事解決(?)。
だがしかし、騒動自体はこれで収まりはしなかった。
「おぅ、おめぇがギューゼルの野郎に鍛えられたアルバとかいう奴かぁよぉ」
まさかの剣聖が登場である。
しかも何故かアルバの名前まで覚えている様で。
「おお、剣聖殿ォ!! 貴方の噂はかねがね聞いておりますぞぉ!! 素晴らしき筋肉であぁる!!」
「フホホッ!! そうだろう? そうだろぉう!?」
更には現れた途端に二人で筋肉を見せ合うまでに。
どうやら二人は似た者同士な様だ。
なお、摘まみ上げられていたはずの瀬玲とパーシィはもう手元には居ない。
現在落下済み、興奮のあまりに手放された模様。
揃って足元で「解せぬ」としかめっ面である。
「貴方の事はギューゼル殿から色々と!! まさに最強を張る筋肉であると伺っているゥ!!」
「ほぉ。 ギューゼルの野郎、言ってくれるじゃあねぇかぁよぅ」
ポーズを変えつつも、二人の筋肉会話は無駄に続く。
この空間だけは体感温度が急上昇中、やたらと暑苦しい。
「剣聖さん、ギューゼルの事知ってるんすか?」
すると、心輝がそんな二人の会話にそれとなく入り込む。
剣聖の言う事がそれとなく気になったらしい。
それもそのはず。
ギューゼルと面識があるという事自体が驚きだったのだから。
互いに強者で、どちらも戦いに飢えた様な存在で。
一度戦えばどちらかが死ぬまで戦い続けそうなものなのに。
「おぅ。 確か一六〇年前くらいか。 アイツとやりあう事になった時があってなぁ。 そりゃもう大激闘よ。 ギオにも負けねぇくらい長くやりあったもんよぉ。 ま、結果的にゃ俺が勝ったんだがな!! ガッハッハ!!」
「俺もギューゼル殿にそう聞いているゥ!! 忘れられぬ戦いであったとォ!!」
しかしそれでもなお、どちらもマッスルポーズをキメ続ける。
なんだか二人とも楽しそうだ。
剣聖に至っては、まるで当時の戦いを懐かしんでいるかの様で。
「だがあん時ゃ結局死ぬまでやり合う事は無かった。 そうする必要も無かったからなぁ。 互いに力を見りゃそれで充分だったのよ。 アイツぁ敵じゃねぇからな」
いや、実際に懐かしいのだろう。
そう語る剣聖の口元には「ニヤリ」とした笑みが浮かんでいて。
僅かに細めた瞳を虚空に向け、かつての記憶に耽り始める。
「……アイツは間違いなく俺達と同じだった。 世界の行き先に疎いを感じていたからな。 俺達よりもずっと長く生きて、その分悟る事も多かったんだろうよぉ。 だからデュゼローに協力したんだろうな。 人間でも魔者の為でもねぇ、今生きてる奴等の為に。 それを出来るのがギューゼルって野郎だ」
「そうねぇ、彼だけは特別だった。 誰も彼も理由なく襲ってくる世界だったけど、彼だけは理由も無く戦う事なんて無かったから。 ま、いざけしかけてみれば【輝羅氣鋼】を突破されて、私としてはもう関わりたくなくなったケド」
気付けば傍にはラクアンツェやレンネィの姿も。
ラクアンツェに至っては剣聖に次ぐ当事者なだけに、同様の思い出に耽る様子が。
あまり良い思い出ではなさそうだけれども。
【輝羅氣鋼】とは、かつて勇達にも見せた防御壁の事。
当時の勇の最強技だった【片翼の光壁】さえも完全に防ぎきったという、ラクアンツェ自慢の防御術だ。
しかしそれをあのギューゼルが破ったとあれば、茶奈達も驚かずにはいられない。
確かにあの攻撃力は尋常では無かった。
一撃で何もかもをも砕き、潰し、叩き伏せる程に。
命力の塊を纏った拳は茶奈達をも苦しめ、窮地に追い込んだものだ。
でも茶奈達は実際、何度かあの拳を喰らっている。
トリックこそ用意はしていたが、死なずに立ち上がって戦う事が出来ていて。
誰一人欠ける事無く、なんとか討ち倒す事が出来た。
そんな相手の拳がまさかあのラクアンツェの防御をも貫いていたなどとは思いもせずに。
もしかしたら茶奈達はその攻撃に耐えられる程の急激な成長を遂げていたのかもしれない。
ラクアンツェに出会った時から【東京事変】に至るまでに。
そう、実感せざるを得なかったのだ。
「ガッハッハ!! おめぇは魔剣に頼り過ぎるトコがあんだぁよぉ!! 同じ防御力持ってる相手じゃあ体格差で負けるに決まってるだろうがぁ」
「うるさいわねぇ、だから【光破滅突】を身に付けたんじゃないの」
そんな驚愕を見せる茶奈達を前にしても二人は相変わらずで。
いつの間にかマッスルポージングも落ち着き、しみじみとした懐かしい話題に華を咲かせる。
アルバも充分に満足したのだろう、静かに筋肉スマイルを見せつけながら耳を傾け中だ。
「……まぁでも話を聞く限り、もしかしたら私なんてもうとっくに超えてしまったのかもしれないわねぇ。 それだけ貴方達の成長はとても著しいもの。 悔しいわぁ、この体がもっと自由に使えれば一緒に戦えるのに」
ただ、やはりラクアンツェとしてはどこか寂しそう。
不自由なその拳を握り締めては震えさせていて。
剣聖やデュゼローと共に生きてきて三二〇年。
共に強くなり続け、世界を救う為に世界を渡り歩いてきた。
剣聖に負けない様に、置いて行かれない様に。
でも今はこうして戦う事さえままらない。
ようやく車椅子生活からは脱せたが、まだ一人で動くのがやっとで。
いざ以前の様に動かせば、いつどこのパーツが分解するかもわからない。
だから精々命力を放出する事くらいしか出来ず、先日の様なバッテリー代わりが関の山といった所だ。
見た目ではわからないが、相当に悔しいはず。
こうまで戦う事が出来ないのかと。
それはまるで今までの人生をふいにされた様で。
「馬鹿野郎。 無理して戦う必要なんざねぇだろうが。 それにおめぇは戦えなくて悔しいだろうがな、生きて来た意味が無いって訳じゃねぇんだからよぅ」
だがそんな思い詰めたラクアンツェの頭頂部を、剣聖が突如としてワシャリと撫でまわす。
掴んで潰してしまいそうな大きな手で、そっと優しく。
まるでその胸中を察して慰めるかの様に。
「俺達が生きてきた人生は無駄なんかじゃあねぇ。 おめぇの【光破滅突】を【灼雷】が受け継いだ様に、俺達の経験と技術がこいつらに受け継がれて、こうして著しい成長を促したんだろうよ。 だから無駄なんて思うな。 おめぇは充分成すべき事を成したんだ。 その成果が今を作ってるんだってむしろ誇りやがれ」
そう、無駄では無い。
ラクアンツェが勇達に与えたキッカケは決して。
確かに、彼女が勇達と関わった期間はそれ程長くは無いだろう。
でも、その実力を指標として示し、勇達の弱点などの分析も具体的に示してくれて。
アルクトゥーンに訪れてからは、身体が動かないからと様々な技術や知識を教え続けた。
更にはその知識の粋を心輝に叩き込み、究極拳を伝授するまでに至る。
こうして伝えた事が花開いたからこそ、勇達はデュラン達を退ける事が出来たのだ。
もちろん、ラクアンツェだけではない。
デュゼローやギューゼルの培った技術もがデュラン達に著しい成長を促していた。
強く鍛えられた勇達と互角に戦い合える程の実力となるまでに。
そして今、その二人の弟子達とも言える存在がこうして手を取り合ったのである。
これこそ、剣聖達が何よりも望んで止まなかった事。
力を付けた戦士達が世界を救う為にこうして一同に集まる事こそ、彼等が始まった頃から思い描いて来た夢なのだから。
それも、彼等が認める程の実力者と成って。
「そう……そうね、そうよね。 喜ばなきゃダメね。 だって私達の夢が叶ったんですもの。 世界の融合を止めてこの世を救う……その準備が出来たのだから。 私はその礎になれたって事なのよね」
「おう。 それにおめぇ自身も諦めが早過ぎらぁ。 まだ修復のチャンスは残ってるだろうがよぅ。 あの毛玉を信じてやりやぁがれ」
「あの毛玉って。 ボクここに居るんスけど?」
世界はもう間も無く終わろうとしている。
それほど猶予は残されていないかもしれない。
でも今、世界を救いたいと願って立ち上がった者達が揃った。
三〇〇年余りの人生を懸けて世界を練り歩いて来た者達の力を受け継いで。
その彼等よりもずっと強く成れる可能性さえも持ち得て。
「まぁでも俺だけはおめぇらに負けるつもりはねぇがなぁ!! クハハッ!!」
「お、言うっすねぇ!! なら今度は俺に稽古つけてくださいよぉ? まっ、俺の【灼雷咆哮】を受けて同じ事言えるといいんだけどなッ!?」
「いいですね! 剣聖さんの稽古って実はあんまり受けた事無いからどんな風に勉強出来るか興味ありますっ!」
そんな可能性を前にすれば、あの剣聖とて昂らずにはいられない。
戦友として、先輩として。
戦士として、強者として。
もう目の前に居る者達は子供ではない。
指で小突いただけで消える様な雑魚ではない。
己の力を存分に奮わねば倒せぬ、同じレベルへと至った強者なのだから。
気付けば剣聖を中心として、仲間達が揃って囲む。
茶奈達が、アルバ達が。
皆が皆、剣聖のやる気を前に「よぉし!」と気合を見せていて。
その前向きさこそ、剣聖が何よりも欲していた姿だからこそ。
「ホホッ!! いいぜぇ、掛かってきやぁがれ!! 皆纏めて叩き潰してやらぁ!!」
もうこの男が留まる理由などありはしない。
「せめて艦の外でよろしく頼むッスね。 アンタらが大暴れしたら修理とか関係無く沈むッスから」
この忠告さえ無ければ、であるが。
この一言で、カプロが全員の据わった注目を浴びる事になったのは言うまでもないだろう。
相変わらずのマイペースなカプロ、こういう時でも現実は忘れない。
ただ、時には空気を読む事も忘れないでいて欲しいものである。
なお後日、茶奈達やアルバ達が剣聖と激戦を繰り広げたのは言うまでも無い。
勇が別件で出掛けてる間、フランスのとある地にて。
だがしかし、剣聖の圧倒的な強さを前にして、誰しも歯が立たなかったという散々な結果に。
ほんの少し戦地の地形が変わった、というオマケ付きで。
やはり剣聖の実力は相変わらず底知れない。
でも、その実力が明らかになる日はきっと早い内に訪れることだろう。
勇とデュラン、そして剣聖。
この三人が同じ志の下に戦う事となったからこそ―――いつか必ず。
だがしかし、騒動自体はこれで収まりはしなかった。
「おぅ、おめぇがギューゼルの野郎に鍛えられたアルバとかいう奴かぁよぉ」
まさかの剣聖が登場である。
しかも何故かアルバの名前まで覚えている様で。
「おお、剣聖殿ォ!! 貴方の噂はかねがね聞いておりますぞぉ!! 素晴らしき筋肉であぁる!!」
「フホホッ!! そうだろう? そうだろぉう!?」
更には現れた途端に二人で筋肉を見せ合うまでに。
どうやら二人は似た者同士な様だ。
なお、摘まみ上げられていたはずの瀬玲とパーシィはもう手元には居ない。
現在落下済み、興奮のあまりに手放された模様。
揃って足元で「解せぬ」としかめっ面である。
「貴方の事はギューゼル殿から色々と!! まさに最強を張る筋肉であると伺っているゥ!!」
「ほぉ。 ギューゼルの野郎、言ってくれるじゃあねぇかぁよぅ」
ポーズを変えつつも、二人の筋肉会話は無駄に続く。
この空間だけは体感温度が急上昇中、やたらと暑苦しい。
「剣聖さん、ギューゼルの事知ってるんすか?」
すると、心輝がそんな二人の会話にそれとなく入り込む。
剣聖の言う事がそれとなく気になったらしい。
それもそのはず。
ギューゼルと面識があるという事自体が驚きだったのだから。
互いに強者で、どちらも戦いに飢えた様な存在で。
一度戦えばどちらかが死ぬまで戦い続けそうなものなのに。
「おぅ。 確か一六〇年前くらいか。 アイツとやりあう事になった時があってなぁ。 そりゃもう大激闘よ。 ギオにも負けねぇくらい長くやりあったもんよぉ。 ま、結果的にゃ俺が勝ったんだがな!! ガッハッハ!!」
「俺もギューゼル殿にそう聞いているゥ!! 忘れられぬ戦いであったとォ!!」
しかしそれでもなお、どちらもマッスルポーズをキメ続ける。
なんだか二人とも楽しそうだ。
剣聖に至っては、まるで当時の戦いを懐かしんでいるかの様で。
「だがあん時ゃ結局死ぬまでやり合う事は無かった。 そうする必要も無かったからなぁ。 互いに力を見りゃそれで充分だったのよ。 アイツぁ敵じゃねぇからな」
いや、実際に懐かしいのだろう。
そう語る剣聖の口元には「ニヤリ」とした笑みが浮かんでいて。
僅かに細めた瞳を虚空に向け、かつての記憶に耽り始める。
「……アイツは間違いなく俺達と同じだった。 世界の行き先に疎いを感じていたからな。 俺達よりもずっと長く生きて、その分悟る事も多かったんだろうよぉ。 だからデュゼローに協力したんだろうな。 人間でも魔者の為でもねぇ、今生きてる奴等の為に。 それを出来るのがギューゼルって野郎だ」
「そうねぇ、彼だけは特別だった。 誰も彼も理由なく襲ってくる世界だったけど、彼だけは理由も無く戦う事なんて無かったから。 ま、いざけしかけてみれば【輝羅氣鋼】を突破されて、私としてはもう関わりたくなくなったケド」
気付けば傍にはラクアンツェやレンネィの姿も。
ラクアンツェに至っては剣聖に次ぐ当事者なだけに、同様の思い出に耽る様子が。
あまり良い思い出ではなさそうだけれども。
【輝羅氣鋼】とは、かつて勇達にも見せた防御壁の事。
当時の勇の最強技だった【片翼の光壁】さえも完全に防ぎきったという、ラクアンツェ自慢の防御術だ。
しかしそれをあのギューゼルが破ったとあれば、茶奈達も驚かずにはいられない。
確かにあの攻撃力は尋常では無かった。
一撃で何もかもをも砕き、潰し、叩き伏せる程に。
命力の塊を纏った拳は茶奈達をも苦しめ、窮地に追い込んだものだ。
でも茶奈達は実際、何度かあの拳を喰らっている。
トリックこそ用意はしていたが、死なずに立ち上がって戦う事が出来ていて。
誰一人欠ける事無く、なんとか討ち倒す事が出来た。
そんな相手の拳がまさかあのラクアンツェの防御をも貫いていたなどとは思いもせずに。
もしかしたら茶奈達はその攻撃に耐えられる程の急激な成長を遂げていたのかもしれない。
ラクアンツェに出会った時から【東京事変】に至るまでに。
そう、実感せざるを得なかったのだ。
「ガッハッハ!! おめぇは魔剣に頼り過ぎるトコがあんだぁよぉ!! 同じ防御力持ってる相手じゃあ体格差で負けるに決まってるだろうがぁ」
「うるさいわねぇ、だから【光破滅突】を身に付けたんじゃないの」
そんな驚愕を見せる茶奈達を前にしても二人は相変わらずで。
いつの間にかマッスルポージングも落ち着き、しみじみとした懐かしい話題に華を咲かせる。
アルバも充分に満足したのだろう、静かに筋肉スマイルを見せつけながら耳を傾け中だ。
「……まぁでも話を聞く限り、もしかしたら私なんてもうとっくに超えてしまったのかもしれないわねぇ。 それだけ貴方達の成長はとても著しいもの。 悔しいわぁ、この体がもっと自由に使えれば一緒に戦えるのに」
ただ、やはりラクアンツェとしてはどこか寂しそう。
不自由なその拳を握り締めては震えさせていて。
剣聖やデュゼローと共に生きてきて三二〇年。
共に強くなり続け、世界を救う為に世界を渡り歩いてきた。
剣聖に負けない様に、置いて行かれない様に。
でも今はこうして戦う事さえままらない。
ようやく車椅子生活からは脱せたが、まだ一人で動くのがやっとで。
いざ以前の様に動かせば、いつどこのパーツが分解するかもわからない。
だから精々命力を放出する事くらいしか出来ず、先日の様なバッテリー代わりが関の山といった所だ。
見た目ではわからないが、相当に悔しいはず。
こうまで戦う事が出来ないのかと。
それはまるで今までの人生をふいにされた様で。
「馬鹿野郎。 無理して戦う必要なんざねぇだろうが。 それにおめぇは戦えなくて悔しいだろうがな、生きて来た意味が無いって訳じゃねぇんだからよぅ」
だがそんな思い詰めたラクアンツェの頭頂部を、剣聖が突如としてワシャリと撫でまわす。
掴んで潰してしまいそうな大きな手で、そっと優しく。
まるでその胸中を察して慰めるかの様に。
「俺達が生きてきた人生は無駄なんかじゃあねぇ。 おめぇの【光破滅突】を【灼雷】が受け継いだ様に、俺達の経験と技術がこいつらに受け継がれて、こうして著しい成長を促したんだろうよ。 だから無駄なんて思うな。 おめぇは充分成すべき事を成したんだ。 その成果が今を作ってるんだってむしろ誇りやがれ」
そう、無駄では無い。
ラクアンツェが勇達に与えたキッカケは決して。
確かに、彼女が勇達と関わった期間はそれ程長くは無いだろう。
でも、その実力を指標として示し、勇達の弱点などの分析も具体的に示してくれて。
アルクトゥーンに訪れてからは、身体が動かないからと様々な技術や知識を教え続けた。
更にはその知識の粋を心輝に叩き込み、究極拳を伝授するまでに至る。
こうして伝えた事が花開いたからこそ、勇達はデュラン達を退ける事が出来たのだ。
もちろん、ラクアンツェだけではない。
デュゼローやギューゼルの培った技術もがデュラン達に著しい成長を促していた。
強く鍛えられた勇達と互角に戦い合える程の実力となるまでに。
そして今、その二人の弟子達とも言える存在がこうして手を取り合ったのである。
これこそ、剣聖達が何よりも望んで止まなかった事。
力を付けた戦士達が世界を救う為にこうして一同に集まる事こそ、彼等が始まった頃から思い描いて来た夢なのだから。
それも、彼等が認める程の実力者と成って。
「そう……そうね、そうよね。 喜ばなきゃダメね。 だって私達の夢が叶ったんですもの。 世界の融合を止めてこの世を救う……その準備が出来たのだから。 私はその礎になれたって事なのよね」
「おう。 それにおめぇ自身も諦めが早過ぎらぁ。 まだ修復のチャンスは残ってるだろうがよぅ。 あの毛玉を信じてやりやぁがれ」
「あの毛玉って。 ボクここに居るんスけど?」
世界はもう間も無く終わろうとしている。
それほど猶予は残されていないかもしれない。
でも今、世界を救いたいと願って立ち上がった者達が揃った。
三〇〇年余りの人生を懸けて世界を練り歩いて来た者達の力を受け継いで。
その彼等よりもずっと強く成れる可能性さえも持ち得て。
「まぁでも俺だけはおめぇらに負けるつもりはねぇがなぁ!! クハハッ!!」
「お、言うっすねぇ!! なら今度は俺に稽古つけてくださいよぉ? まっ、俺の【灼雷咆哮】を受けて同じ事言えるといいんだけどなッ!?」
「いいですね! 剣聖さんの稽古って実はあんまり受けた事無いからどんな風に勉強出来るか興味ありますっ!」
そんな可能性を前にすれば、あの剣聖とて昂らずにはいられない。
戦友として、先輩として。
戦士として、強者として。
もう目の前に居る者達は子供ではない。
指で小突いただけで消える様な雑魚ではない。
己の力を存分に奮わねば倒せぬ、同じレベルへと至った強者なのだから。
気付けば剣聖を中心として、仲間達が揃って囲む。
茶奈達が、アルバ達が。
皆が皆、剣聖のやる気を前に「よぉし!」と気合を見せていて。
その前向きさこそ、剣聖が何よりも欲していた姿だからこそ。
「ホホッ!! いいぜぇ、掛かってきやぁがれ!! 皆纏めて叩き潰してやらぁ!!」
もうこの男が留まる理由などありはしない。
「せめて艦の外でよろしく頼むッスね。 アンタらが大暴れしたら修理とか関係無く沈むッスから」
この忠告さえ無ければ、であるが。
この一言で、カプロが全員の据わった注目を浴びる事になったのは言うまでもないだろう。
相変わらずのマイペースなカプロ、こういう時でも現実は忘れない。
ただ、時には空気を読む事も忘れないでいて欲しいものである。
なお後日、茶奈達やアルバ達が剣聖と激戦を繰り広げたのは言うまでも無い。
勇が別件で出掛けてる間、フランスのとある地にて。
だがしかし、剣聖の圧倒的な強さを前にして、誰しも歯が立たなかったという散々な結果に。
ほんの少し戦地の地形が変わった、というオマケ付きで。
やはり剣聖の実力は相変わらず底知れない。
でも、その実力が明らかになる日はきっと早い内に訪れることだろう。
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この三人が同じ志の下に戦う事となったからこそ―――いつか必ず。
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