時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
1,081 / 1,197
第三十七節「二天に集え 剣勇の誓い 蛇岩の矛は空を尽くす」

~輸に密、業に安全徹底を~

しおりを挟む
 グランディーヴァの仕事は大統領との会合だけではない。
 勇と福留がブライアンと会っていた頃、アルクトゥーンもまた大忙しの様相を見せていた。

 その現場こそ、アルクトゥーン後部格納庫。

 そこは補給物資の搬入口も兼ねており、ちょっとした倉庫と化している。
 現在もデュランから寄せられたコンテナが隅に置かれており、時折カプロやピネ達が漁りに。
 以前は【ヴォルトリッター】の追加パーツもあったのだが、現在は分解されてお蔵入りである。

 そんな格納庫に物資を積載したエレベーターが戻って来れば、たちまち大賑わいだ。
 何せ久しぶりの大型物資搬入、しかも待望のアルクトゥーン用部品まで含まれればなおの事で。
 こぞって各担当班長が集まり、物資引き取りに奔走する事となるのだから。

 その中には茶奈の友人の風香と藍まで。
 二人は今や生活保障班の班長だ。
 安全帽をしっかりと被り、揃って品出しの指示まで行っている。
 福留直属の部下として随分と仕込まれてきたのだろう。

 搬入物資には食料品から日用品、装備開発用の素材から電子機器部品などがぎっしりと。
 他にも色々と仰々しい物々が詰まれ、山の様に聳え立つ。
 皆はそこから該当物を探し出し、積み木崩しの様に回収するという感じだ。

 なお、担当班長というのは当然、技術班長も含まれる。
 となれば新任班長であるピネも当然その場に居る訳で。
 そのとんでもない物資を前に、思わず顔をしかめさせる様子が。

「とてもめんどくちゃい仕事を引き受けてしまったかもしれないのネ」

 しかし引き受けた以上はしっかり責任を果たす。
 それを自然に成そうとする事もまた天才が故か。

 とはいえ初めてで、しかも周りがやたらと必死に動き回るもので。
 おまけに彼女の身体がとても小さいからか、とても動き難そうだ。
 そうして動き回る姿はまるでダンスを踊っているかのよう。
 遮る人影にくるくる~っと回されながら、物資へとジグザグに近づいていく。

「デュランの時は言えば持って来てくれたけどネ。 これはとってもしんどいのネ」

 それでようやく物資前に到達したのだが。
 物資のどれも大き過ぎて、彼女一人ではどうにもこうにも。
 周りはフォークリフトやらなんやらで軽快に分搬し続けているので、ほんのちょっと不満そう。

 いや、かなり不満そう。

 それでも負けじと、必死に一つの物資に抱き着きよじ登る。
 そしていざ貼られた伝票をよく見てみれば―――

「いっそあのフォークリフトで全部解体してくれればいいのネ。 さてこれは―――何でこんなモンがあるのネ!?」

 今度は目をひん剥いて驚く姿が。

 それもそのはず。
 その伝票、物資そのものに刻印されしは特殊印。
 それが示すは、物資がとある危険物質であるという事に他ならない。
 丸を中心にして三方に台形が伸びる、そんな形に描かれた印は知る人ぞ知るあの物質の証だ。

 そんな物を前にして慄かない訳が無い。

「なんちゅうとんでもないモンを積もうとしてるのネ。 ピネが思ってた以上にこの艦は危険なのかもしれないのネ」

 そんな危険物の上で静かに佇み、深刻な顔付きで顎を手に取る。
 思っていた以上にグランディーヴァがクリーンでは無かったという事に驚きだったから。
 世界を救う為とはいえ、こんな物を使おうとする意思があったのかと。

 するとそんな最中、ピネの下へとある人物が近づいていく。

「あら、ピネさん。 そんな所に乗っていると危ないですよ。 落ちてしまえば大変です」

 それはなんと莉那。
 まさかの艦長直々の登場である。
 しかも管制室では滅多に見せない笑顔で、ピネにそっと手を差し伸べていて。

 でもそのピネは差し出された手を前にしても腕を組み、膨れっ面を納めない。
 それどころか「キッ」と睨み付ける始末だ。

「落ちるっていうはどういう意味で言ってるのか詳しく訊きたい所なのネ」

「いえ、貴女がそこから落ちたら危ないと思っただけなのですが。 ……ちなみにその荷物の事なら心配いりません。 現状では使用出来ない様になっていますので」

 しかしそこはやはり莉那か。
 どうやらピネが足蹴にしている物資が何か、しっかり理解している模様。
 その仕組み、用途までも何もかも。

「ちなみにそれは私の担当です。 もしよろしければお譲り頂きたいのですが」

「どこに持っていくつもりなのネ?」

「おじいさまは隠す必要は無しと……いいでしょう。 【第一電脳室】です」

「開かずの部屋、【特禁室】行き、という事かネ……」

 そしてその搬入先は、【第一電脳室】という一室。
 アルクトゥーンを制御する各電脳室の中でも、入れる人物が特に限られている最重要室だ。
 入れるのは艦長である莉那を始め、勇と福留、それと中を知るカプロとビーンボールだけ。
 それ以外は例えどの様な立場であろうと立ち入れない【特禁室】となっている。

 だから中に何があるのかも、彼等以外は誰も知らない。
 知ってはいけない、という事になっているから。

「その部屋に関するものは一切触れてはいけないって言われてるのネ」

「ええ。 でも安心してください。 決して貴女が思う様な使い方はしませんから。 あくまでも世界救済の為。 それ以外に使うつもりはありませんので」

「……仕方ないのネ、なら今はアータを信じるのネ。 願わくばこんな物が使われない事を祈って」

「そうですね。 私もそう願いたい所です」

 でもだからと無暗に危険物を運び入れて良いという訳ではない。
 あくまでも必要だからこうして手に入れ、搬入したのだ。
 いつかこの様な武器でさえも必要になる日が来るかもしれないからこそ。



 相手がそれほど得体の知れない存在であるが故に。
 それに対して最善を尽くすのがグランディーヴァの在り方なのだから。



「ちなみにピネさん、搬送係にお願いすれば指定物を運び出してくれます。 そうやって自ら出向かなくても良いのですよ?」

「それを先に言って欲しかったのネェ!! あのタヌキ、やっぱり新型魔剣の的にすべきだったのネ!!」

 けれどもしかしたら、一番危険なのはこのピネという少女なのかもしれない。
 色んな意味で。

 物事には必ず何かしらのルールがあるので、しっかり確認しておこう。
 特にこういった場所だと、時には大事故にも繋がるので注意が必要だ。

 仕事は何でも、安全第一を忘れずに。



「何書いてあるかわからないけどヨシッ、なのネ」



 絶対にこんな事は言わない様にしよう。
 少なくとも、特級危険物の上では、決して。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...