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第三十八節「反旗に誓いと祈りを 六崩恐襲 救世主達は今を願いて」
~双蒼迅雷、隠邪を逐う アージ達 対 諦唯⑤~
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マドパージェの策略に嵌ったアージ。
その窮地を救ったのはエクィオとピューリーだった。
アージが落下する間も無く、二人の影がその隣を水平に真っ直ぐと突き抜けていく。
もう心配する事は無いと踏んだのだろう。
既にマヴォがその身を受け止めようと待ち構えていたのだから。
見えない壁はいつの間にか消えたらしい。
マヴォがアージを受け止め、ゆっくりと大地へ降りていく。
アージは息絶え絶えだが、どうやら何とか無事な様だ。
肩を抱えるマヴォにサムズアップを見せつけ、強い意思を見せつけていて。
「大丈夫な様だな」
「……あぁ、お前達の叫びのお陰だ。 あの言葉が諦める事の無意味さを教えてくれたのだ。 だから俺はもう諦めん。 死ぬその瞬間までな」
吹っ切れたお陰か、いつもの頑ななアージとは思えない程の笑顔が今ここに。
牙をも見せつけるその笑顔は、どこかアルバの筋肉スマイルに通ずる雰囲気も。
アージは救世同盟側のメンバーとも深い絆を結んでいた。
だからこそ受けた影響も大きかったのだろう。
エクィオとピューリーが助けに来てくれた事も嬉しかったのかもしれない。
普段は仲の悪いあの二人が協力して助けてくれたのだから。
「しかしまだ終わった訳ではない。 二人に伝えなければ。 今の最中に見えた可能性を」
「可能性? 何を見たんだ!?」
でもそんな想いも胸の奥へと仕舞い込み、彼方の蒼雷を見上げては眉を細める姿が。
更には、ながらゆっくりと降下する中で腰のポシェットにも手を伸ばしていて。
そうして中から取り出したのは、救世同盟時代に使っていたインカム。
それを素早く耳に充て、すぐさまその声を張り上げる。
「エクィオ、ピューリー、よく聞け。 二人が現れた時、奴等は紛れも無く動揺していた。 つまり、今の一瞬に何か奴等の正体を掴むヒントがあるはずなのだ。 それを見つけろ!」
『わかりました。 そういう事は僕の得意とする所です。 ここは任せて、アージさん達はしばらく息を整えていてください』
そう、アージはあの一瞬で気付いていたのだ。
自身を覆っていた者達が消え去る直前、今までに見ない動揺の声を上げていた事に。
あれだけ密着していたからこそ気付けた事なのだろう。
「すまない。 それと後一つ、今更意識する必要は無いと思うが……諦めるな。 諦めれば付け込まれるぞ。 そこに奴の不気味さの根源がある!」
『ったりめーだ!! お―――ワタクシ達が諦める訳がありませんワ!!』
それと同時に、マドパージェの謎の一部にも気付いた様だ。
あの無数に増える仕組みと、諦めの心との因果関係に。
こういった着眼点を逃さない所がアージの強みと言えよう。
その強みを知っているからこそ、エクィオ達も疑う事無く受け入れられる。
それだけ彼等は信頼し合っているのだ。
勇達が信じるのと同じくらいに。
「今言った事が本当なら、もしかしたらあの透明な壁にも何かしらヒントがあるかもしれない」
「ああ。 だからこそ少しづつ紐解いていく必要がある。 もしかしたら休んでる暇なんて無いかもしれんな」
その間も無く二人が大地へと辿り着き、マヴォがそっとアージの腰を落とさせて。
そんな強気な発言を宣いつつも、肩まで降ろして息を整え始める。
消耗したままでは戦うにも戦えない。
なら何がなんでも休まなければならない。
意識が高揚して明瞭な今だからこそ、こんな冷静な決断も出来るというものだ。
エクィオ達なら何とかしてくれると信じているのも大きいのだろう。
故に今、最も信頼する弟に背を任せて心身を整える。
間も無く訪れるであろう逆転の一手に自身の力を加える為にも。
世界の敵を必ずや打倒する為にも。
一方その頃、空では―――
ピューリーがエクィオを背に乗せて、空を縦横無尽と突き抜ける。
無数に襲い掛かって来るマドパージェ達を撃ち払いながら。
元々、ピューリーの背負う魔剣【ネラヴィーユの激情】には一人分の足置きが備わっている。
とはいえ性格上、この機能を使った事など今まで一度として無かったが。
しかし今この時、ピューリーはその背を預けた。
今が我儘を言っていられない状況だと、彼女なりに理解したからこそ。
その決断が、エクィオにも大きな力を与える事となる。
「ピューリー! 君の命力を僕に貸してくれ!」
「全く仕方ありませんワねッ!! お返しは高くつきますワよっ!!」
「ありがとう! あと今その口調は必要ない!」
「―――っしゃあ!! アイツら纏めて全部ブチ殺してやれよエクィオーーー!!」
エクィオが足を置くスタンドには、命力導通機構が備わっている。
つまり、ピューリーの圧倒的たる容量の命力を搭乗者に供給する事が可能なのだ。
ならばその命力をエクィオの様な技巧者が操ればどうなるか。
その真価は間も無く露わとなる事だろう。
「見通せ、先のその先まで! 敵の正体を掴むんだッ!! その為に、僕の【十二感覚】は存在するのだからッ!!」
今この時も、無数のマドパージェ達がエクィオ達に向けて飛び掛かってきている。
それを二人が僅かな隙も与えず、討ちながら空を突き抜けて。
間も無く、弧を描く軌道上に赤の霧もが取り巻く事に。
それでもなお止まらない。
攻撃も、エクィオの視線も。
周囲に命力波さえも張り巡らせて。
全ての知覚を行使して、音・匂い・振動の感覚さえも余す事無く感じ取る。
それを成せるのがエクィオの誇る【十二感覚】。
しかもそれは、人ではない存在だからこそ真価を発揮出来よう。
相手は人間でも魔者でもない、意思はあろうと紛れも無く人外。
ならば優しさを与える必要は無いという事だ。
天地動転を繰り返す猛突飛行の中でもエクィオの姿勢は変わらない。
全てを受け入れる体と、全てを見通すその眼が、勢いをも見切っていたから。
それどころか、悠然と立ち上がってさえみせる。
超高速で空を突き抜ける中であろうとも。
凄まじい圧力を受けていようとも、まるで動じる事も無く。
そして胸元に構えよう。
その手に掴みし蒼の双銃を。
十字に象り、命力珠を輝かせて。
「今こそ示せッ!! 世界を守る為の力をッ!! ワトレィィィーーース!!!」
その叫びが、猛りが、魔剣【ワトレィス】を変える。
突如として銃上部スライダーが持ち上がり、隠し砲塔が姿を現したのだ。
更には銃剣がくるりと返り、その底部からももう一つ。
二丁の銃に各三つの砲塔。
その全てが蒼雷を走らせ、眩い光を迸らせる。
今こそ、その真なる力を撃ち放つ為に。
「うおおおーーーーーーッッ!!!」
そうして銃弾を撃ち放ったのはなんと、自らの正面。
無数の蒼雷弾がエクィオ達の正面へと一挙にして軌跡を描く。
だがしかし、その直後に銃弾が急転身を始めたではないか。
まるで弾に意思があるかの様だった。
それだけ正確に、速く、雷を纏って突き抜けて。
たちまち網の様に広がり、迫るマドパージェ達を一発一発外す事無く貫いたのである。
もはや見る必要など無い。
どこから敵が来るのかなど、今のエクィオには全て手に取る様にわかるのだから。
しかも銃弾は無尽蔵に放つ事が可能。
ピューリーの命力供給が有るからこそ、その弾数に限りは無い。
例え何人のマドパージェが襲い来ようが、今の二人を止める事は不可能だ。
蒼の千尾を引いて、二人が空を突き抜ける。
直下の街を囲わんばかりに長い残光を引いて。
力の限りに旋回する姿はもはや、雷を呼び込む災いたる古の龍が如し。
その龍の上顎たるエクィオが、眼を輝かせて先の先を見通しきる。
エクィオにはもう見えていたのだ。
マドパージェ達の襲う軌道も、現れたその瞬間も、出現の規則性さえも。
まるで塵が集まって生まれたかの様に出で来る者達の姿をハッキリと。
それだけではない。
エクィオは更にその先をも見通そうとしていた。
現れる規則性がわかるなら、その先を予測し追えばいいのだと。
そして遂にその時が訪れる。
その先が―――見えたのだ。
謎多き存在、マドパージェの根源が。
「ッ!! 見えたッ!! ピューリーーーッ!!!」
「わかったぜえッ!! 一気にブッ飛ばすッッッ!!!」
これ以上はもう言わなくてもわかる。
それだけ二人は繋がっていたから。
目指す意思が絡み合い、心が並んだから。
だからこそ今、二人は最大速力で彼方へと突き抜ける。
目指す先は地上、在るのは砂大地。
何も無い、何も存在しないはずのその先へと迷う事無く。
疑わない。
諦めない。
真っ直ぐな二人だから。
「逃げても無駄だッ!! 僕にはもう、貴様が見えているーーーッッ!!」
己の力を信じて。
二人の力を合わせて。
今ここに成りしは蒼雷の極閃光。
何者をも覆い尽くさんばかりの稲妻を迸らせて、敵を穿つ為の槍矢となろう。
【極雷命槍砲】。
エクィオが誇る最大の攻撃手段である。
その槍矢が撃ち放たれた時、瞬時にして彼方の大地が青く輝き迸る。
それ程までの速度で解き放たれたが故に。
その威力、以前撃ち放たれたものよりもずっと―――強烈。
大地が光る。
稲妻が迸る。
大地に呑まれきれず、弾け飛んだ事により。
更には充填し、駆け巡り、砂塵をも焼き尽くして。
蒼光の塊となった爆心地が、遂には幾閃光を放って炸裂する。
ズゴゴゴゴーーーッ!!
まさしく雷の如く、大気を揺らす程の轟音を打ちながら。
「やったのかあッ!?」
間も無く迸りも収まり、あっという間に夜闇が周囲を覆って。
今見えるのは舞い上がった粉塵と白蒸気だけだ。
その光景を前にして、ピューリーが思わず笑みを零す。
「―――いやッ!! 転身だピューリーーーッ!!」
だがその直後、そんな彼女の首が不意に持ち上がった。
エクィオが焦る余り、自慢のツーテールを引っ張り上げたのだ。
するとたちまち二人の飛行姿勢が大きく崩れ、共に宙へと投げ出される事に。
しかしその次の間にはエクィオがピューリーを抱え、何かを足蹴に跳ね上がる。
そう、エクィオが蹴ったのは見えない壁。
エクィオだけには見えていたからこそ、こうして回避出来たのだ。
もし先のままの速度で突っ込んでいれば、二人とて無事ではいられなかったからこそ。
ただ何が起こったかわかっていないピューリーとしては相当お冠の様子。
今の行為がよほど気に食わなかったらしい。
大地に降りて間も無く、自身を抱いたエクィオの顔をパンパンと殴る姿が。
「てっめぇ!! なにしやがんだあッ!!」
「助けられたと思って忘れて欲しい。 どうやら今の力じゃ貫くには至らなかったらしいからね……!」
「なっ!?」
どうやらこう言われて初めて、ピューリーもが気付いた様だ。
エクィオが真剣に睨みつける、見えない壁の存在に。
そう、この見えない壁こそがエクィオの探し出したマドパージェ攻略の鍵。
ならばその鍵を前にして、更なる力を籠めずには居られない。
エクィオが、ピューリーが、再びその手に命力の輝きを灯す。
アージからの助言を無駄にしない為にも。
何としてでもこの壁を突破し、未来を掴んでみせるのだと。
「行くぞピューリー!! 僕達がこの壁を砕くんだッ!!」
「アッハァ!! それなら俺に任せやがれッ!! 俄然やる気が出てきたぜーーーッ!!」
故に戦士達がまた咆える。
命力のみならず、その戦意をも迸らせて。
二人の希望も、兄弟の希望も、まだ何一つ絶えてはいないのだから。
その窮地を救ったのはエクィオとピューリーだった。
アージが落下する間も無く、二人の影がその隣を水平に真っ直ぐと突き抜けていく。
もう心配する事は無いと踏んだのだろう。
既にマヴォがその身を受け止めようと待ち構えていたのだから。
見えない壁はいつの間にか消えたらしい。
マヴォがアージを受け止め、ゆっくりと大地へ降りていく。
アージは息絶え絶えだが、どうやら何とか無事な様だ。
肩を抱えるマヴォにサムズアップを見せつけ、強い意思を見せつけていて。
「大丈夫な様だな」
「……あぁ、お前達の叫びのお陰だ。 あの言葉が諦める事の無意味さを教えてくれたのだ。 だから俺はもう諦めん。 死ぬその瞬間までな」
吹っ切れたお陰か、いつもの頑ななアージとは思えない程の笑顔が今ここに。
牙をも見せつけるその笑顔は、どこかアルバの筋肉スマイルに通ずる雰囲気も。
アージは救世同盟側のメンバーとも深い絆を結んでいた。
だからこそ受けた影響も大きかったのだろう。
エクィオとピューリーが助けに来てくれた事も嬉しかったのかもしれない。
普段は仲の悪いあの二人が協力して助けてくれたのだから。
「しかしまだ終わった訳ではない。 二人に伝えなければ。 今の最中に見えた可能性を」
「可能性? 何を見たんだ!?」
でもそんな想いも胸の奥へと仕舞い込み、彼方の蒼雷を見上げては眉を細める姿が。
更には、ながらゆっくりと降下する中で腰のポシェットにも手を伸ばしていて。
そうして中から取り出したのは、救世同盟時代に使っていたインカム。
それを素早く耳に充て、すぐさまその声を張り上げる。
「エクィオ、ピューリー、よく聞け。 二人が現れた時、奴等は紛れも無く動揺していた。 つまり、今の一瞬に何か奴等の正体を掴むヒントがあるはずなのだ。 それを見つけろ!」
『わかりました。 そういう事は僕の得意とする所です。 ここは任せて、アージさん達はしばらく息を整えていてください』
そう、アージはあの一瞬で気付いていたのだ。
自身を覆っていた者達が消え去る直前、今までに見ない動揺の声を上げていた事に。
あれだけ密着していたからこそ気付けた事なのだろう。
「すまない。 それと後一つ、今更意識する必要は無いと思うが……諦めるな。 諦めれば付け込まれるぞ。 そこに奴の不気味さの根源がある!」
『ったりめーだ!! お―――ワタクシ達が諦める訳がありませんワ!!』
それと同時に、マドパージェの謎の一部にも気付いた様だ。
あの無数に増える仕組みと、諦めの心との因果関係に。
こういった着眼点を逃さない所がアージの強みと言えよう。
その強みを知っているからこそ、エクィオ達も疑う事無く受け入れられる。
それだけ彼等は信頼し合っているのだ。
勇達が信じるのと同じくらいに。
「今言った事が本当なら、もしかしたらあの透明な壁にも何かしらヒントがあるかもしれない」
「ああ。 だからこそ少しづつ紐解いていく必要がある。 もしかしたら休んでる暇なんて無いかもしれんな」
その間も無く二人が大地へと辿り着き、マヴォがそっとアージの腰を落とさせて。
そんな強気な発言を宣いつつも、肩まで降ろして息を整え始める。
消耗したままでは戦うにも戦えない。
なら何がなんでも休まなければならない。
意識が高揚して明瞭な今だからこそ、こんな冷静な決断も出来るというものだ。
エクィオ達なら何とかしてくれると信じているのも大きいのだろう。
故に今、最も信頼する弟に背を任せて心身を整える。
間も無く訪れるであろう逆転の一手に自身の力を加える為にも。
世界の敵を必ずや打倒する為にも。
一方その頃、空では―――
ピューリーがエクィオを背に乗せて、空を縦横無尽と突き抜ける。
無数に襲い掛かって来るマドパージェ達を撃ち払いながら。
元々、ピューリーの背負う魔剣【ネラヴィーユの激情】には一人分の足置きが備わっている。
とはいえ性格上、この機能を使った事など今まで一度として無かったが。
しかし今この時、ピューリーはその背を預けた。
今が我儘を言っていられない状況だと、彼女なりに理解したからこそ。
その決断が、エクィオにも大きな力を与える事となる。
「ピューリー! 君の命力を僕に貸してくれ!」
「全く仕方ありませんワねッ!! お返しは高くつきますワよっ!!」
「ありがとう! あと今その口調は必要ない!」
「―――っしゃあ!! アイツら纏めて全部ブチ殺してやれよエクィオーーー!!」
エクィオが足を置くスタンドには、命力導通機構が備わっている。
つまり、ピューリーの圧倒的たる容量の命力を搭乗者に供給する事が可能なのだ。
ならばその命力をエクィオの様な技巧者が操ればどうなるか。
その真価は間も無く露わとなる事だろう。
「見通せ、先のその先まで! 敵の正体を掴むんだッ!! その為に、僕の【十二感覚】は存在するのだからッ!!」
今この時も、無数のマドパージェ達がエクィオ達に向けて飛び掛かってきている。
それを二人が僅かな隙も与えず、討ちながら空を突き抜けて。
間も無く、弧を描く軌道上に赤の霧もが取り巻く事に。
それでもなお止まらない。
攻撃も、エクィオの視線も。
周囲に命力波さえも張り巡らせて。
全ての知覚を行使して、音・匂い・振動の感覚さえも余す事無く感じ取る。
それを成せるのがエクィオの誇る【十二感覚】。
しかもそれは、人ではない存在だからこそ真価を発揮出来よう。
相手は人間でも魔者でもない、意思はあろうと紛れも無く人外。
ならば優しさを与える必要は無いという事だ。
天地動転を繰り返す猛突飛行の中でもエクィオの姿勢は変わらない。
全てを受け入れる体と、全てを見通すその眼が、勢いをも見切っていたから。
それどころか、悠然と立ち上がってさえみせる。
超高速で空を突き抜ける中であろうとも。
凄まじい圧力を受けていようとも、まるで動じる事も無く。
そして胸元に構えよう。
その手に掴みし蒼の双銃を。
十字に象り、命力珠を輝かせて。
「今こそ示せッ!! 世界を守る為の力をッ!! ワトレィィィーーース!!!」
その叫びが、猛りが、魔剣【ワトレィス】を変える。
突如として銃上部スライダーが持ち上がり、隠し砲塔が姿を現したのだ。
更には銃剣がくるりと返り、その底部からももう一つ。
二丁の銃に各三つの砲塔。
その全てが蒼雷を走らせ、眩い光を迸らせる。
今こそ、その真なる力を撃ち放つ為に。
「うおおおーーーーーーッッ!!!」
そうして銃弾を撃ち放ったのはなんと、自らの正面。
無数の蒼雷弾がエクィオ達の正面へと一挙にして軌跡を描く。
だがしかし、その直後に銃弾が急転身を始めたではないか。
まるで弾に意思があるかの様だった。
それだけ正確に、速く、雷を纏って突き抜けて。
たちまち網の様に広がり、迫るマドパージェ達を一発一発外す事無く貫いたのである。
もはや見る必要など無い。
どこから敵が来るのかなど、今のエクィオには全て手に取る様にわかるのだから。
しかも銃弾は無尽蔵に放つ事が可能。
ピューリーの命力供給が有るからこそ、その弾数に限りは無い。
例え何人のマドパージェが襲い来ようが、今の二人を止める事は不可能だ。
蒼の千尾を引いて、二人が空を突き抜ける。
直下の街を囲わんばかりに長い残光を引いて。
力の限りに旋回する姿はもはや、雷を呼び込む災いたる古の龍が如し。
その龍の上顎たるエクィオが、眼を輝かせて先の先を見通しきる。
エクィオにはもう見えていたのだ。
マドパージェ達の襲う軌道も、現れたその瞬間も、出現の規則性さえも。
まるで塵が集まって生まれたかの様に出で来る者達の姿をハッキリと。
それだけではない。
エクィオは更にその先をも見通そうとしていた。
現れる規則性がわかるなら、その先を予測し追えばいいのだと。
そして遂にその時が訪れる。
その先が―――見えたのだ。
謎多き存在、マドパージェの根源が。
「ッ!! 見えたッ!! ピューリーーーッ!!!」
「わかったぜえッ!! 一気にブッ飛ばすッッッ!!!」
これ以上はもう言わなくてもわかる。
それだけ二人は繋がっていたから。
目指す意思が絡み合い、心が並んだから。
だからこそ今、二人は最大速力で彼方へと突き抜ける。
目指す先は地上、在るのは砂大地。
何も無い、何も存在しないはずのその先へと迷う事無く。
疑わない。
諦めない。
真っ直ぐな二人だから。
「逃げても無駄だッ!! 僕にはもう、貴様が見えているーーーッッ!!」
己の力を信じて。
二人の力を合わせて。
今ここに成りしは蒼雷の極閃光。
何者をも覆い尽くさんばかりの稲妻を迸らせて、敵を穿つ為の槍矢となろう。
【極雷命槍砲】。
エクィオが誇る最大の攻撃手段である。
その槍矢が撃ち放たれた時、瞬時にして彼方の大地が青く輝き迸る。
それ程までの速度で解き放たれたが故に。
その威力、以前撃ち放たれたものよりもずっと―――強烈。
大地が光る。
稲妻が迸る。
大地に呑まれきれず、弾け飛んだ事により。
更には充填し、駆け巡り、砂塵をも焼き尽くして。
蒼光の塊となった爆心地が、遂には幾閃光を放って炸裂する。
ズゴゴゴゴーーーッ!!
まさしく雷の如く、大気を揺らす程の轟音を打ちながら。
「やったのかあッ!?」
間も無く迸りも収まり、あっという間に夜闇が周囲を覆って。
今見えるのは舞い上がった粉塵と白蒸気だけだ。
その光景を前にして、ピューリーが思わず笑みを零す。
「―――いやッ!! 転身だピューリーーーッ!!」
だがその直後、そんな彼女の首が不意に持ち上がった。
エクィオが焦る余り、自慢のツーテールを引っ張り上げたのだ。
するとたちまち二人の飛行姿勢が大きく崩れ、共に宙へと投げ出される事に。
しかしその次の間にはエクィオがピューリーを抱え、何かを足蹴に跳ね上がる。
そう、エクィオが蹴ったのは見えない壁。
エクィオだけには見えていたからこそ、こうして回避出来たのだ。
もし先のままの速度で突っ込んでいれば、二人とて無事ではいられなかったからこそ。
ただ何が起こったかわかっていないピューリーとしては相当お冠の様子。
今の行為がよほど気に食わなかったらしい。
大地に降りて間も無く、自身を抱いたエクィオの顔をパンパンと殴る姿が。
「てっめぇ!! なにしやがんだあッ!!」
「助けられたと思って忘れて欲しい。 どうやら今の力じゃ貫くには至らなかったらしいからね……!」
「なっ!?」
どうやらこう言われて初めて、ピューリーもが気付いた様だ。
エクィオが真剣に睨みつける、見えない壁の存在に。
そう、この見えない壁こそがエクィオの探し出したマドパージェ攻略の鍵。
ならばその鍵を前にして、更なる力を籠めずには居られない。
エクィオが、ピューリーが、再びその手に命力の輝きを灯す。
アージからの助言を無駄にしない為にも。
何としてでもこの壁を突破し、未来を掴んでみせるのだと。
「行くぞピューリー!! 僕達がこの壁を砕くんだッ!!」
「アッハァ!! それなら俺に任せやがれッ!! 俄然やる気が出てきたぜーーーッ!!」
故に戦士達がまた咆える。
命力のみならず、その戦意をも迸らせて。
二人の希望も、兄弟の希望も、まだ何一つ絶えてはいないのだから。
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下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
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