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第九節「人が結ぶ世界 白下の誓い 闇に消えぬ」
~白が燃ゆる山 対~
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件の魔者達が突如として勇達の前に姿を現した。
それも、気配を悟らせないという妙技まで駆使して。
そんな相手がなんと二人も居る。
かつてない強敵と匂わせる相手達を前にして、勇もちゃなも動揺を隠せない。
前に立ってくれているドゥーラが今はどれだけ頼もしい事か。
しかし歩んでいたそのドゥーラも、もう歩を止めている。
これ以上の無暗な接近は危険だと察したのだろう。
なおその身体を煌かせ、戦意を露わにしたままではあるが。
「やはり、目的は我等の様だな」
「兄者、紫の奴はなかなか手強そうだぜ?」
「うむ。 だが―――それが我々の負ける道理とはならぬッ!!」
ならばと魔者達もまた、戦意を露わにする。
兄と呼ばれた大柄の方は、身の丈程もある巨大な物体を。
こう呼んだ僅か小柄の方は、腰に下げた二つの得物を手に取って。
そうして陽光を弾きながら素早く身構える。
その戦意溢れた姿には迷い一つとて無し。
こうして自分達のスタイルを迷い無く示せるのは、戦い慣れているという証拠だ。
すなわち、この二人は相当な手練れだという事に他ならない。
今この時、太陽が微かな雲に隠れて陽射しを弱らせて。
それがとうとう魔者二人の姿を浮き彫りとさせる。
白熊だ。
まさに白熊の様な魔者だったのだ。
どちらも白い体毛に覆われ、ツンと突き出した赤鼻を見せつけていて。
背の高さは共に二メートル越えと、人よりずっと高い。
似た様相、似た体躯、それでいて左右対称の様にして立つ姿はまさに兄弟か。
大柄な方はまるで武将髭を模した様な猛々しい髪型を。
両肩と胸に鉄革複合の重鎧を着込み、腰にも局部を守る様に薄鉄板が下がっている。
武器も巨大な両手斧と、全体的に重武装寄りの明らかな剛健一撃型だ。
対する小柄な方は鋭く尖り跳ねる様に荒々しい髪型を。
胸甲と腰蓑は革製で身軽に、代わりに肘膝には擦り減った保護具が。
その手に持つのも小さな双斧と、速さを重視した高速戦闘型に違いない。
そして有するどちらの武器も、特殊な意匠を誇っているという。
両手斧はまるで蛇腹の様にして短い刃が幾つも連なり、円状を象っていて。
半月斧と双刃斧、二つの特徴を合わせた様な形状となっている。
双斧は鋭利形のモノと流線形のモノとで意匠の源流が違うのだろう。
例えるならば雷と風、どちらも素早い戦闘に持って来いの軽量片刃斧だ。
そのどちらも、どう見ても普通の武器では無い。
何せ命力の輝きをハッキリと纏っているのだから。
「ま、まさかあれは魔剣なのかッ!?」
「当然よ。 我等が振るいしは伊達でも酔狂でも無いッ!! 信念と志を以て貴様等魔剣使いを屠る、其が為の力だあッ!!」
そう、彼等が手にしているのは紛れも無く魔剣。
それも初歩的な魔剣とは違う、れっきとして力に見合った代物だ。
加えて、相当に扱い慣れているはず。
なれば故の気迫。
なれば故の気概。
これ程の二人にはもはや、撤退の二文字など有り得はしない。
「我が名はアージ!!」
「我が名はマヴォ!!」
「「我等【白の兄弟】!! 魔剣使いよ、この力を前に頭を垂れよ!!」」
故に大地を蹴る。
勇達へと向けて一直線に。
こうなった以上、生半可な事では二人を止められない。
「ま、待ってくれ! 俺達はただ戦いに来た訳じゃないんだッ!!」
「問答無用ッ!! 魔剣使いは全て滅するッ!!」
もはや聞く耳も無し。
戦意・敵意を露わにして力を迸らせるのみ。
しかしそんな迫り来る二人の間へと、突如として一閃が突き抜ける。
ピュインッ!!
ドゥーラが銀色の刃物を投げ付けていたのだ。
命力を籠めたメスの様な小さな刃物を。
ただ、この投擲は攻撃の為では無かったのだろう。
迫る二人の魔者の勢いは止められず、二手に分けただけで。
いや、これがドゥーラの目的だ。
二人を分断し、戦闘を有利に運ぶ為の。
「私は、速い方とやる。 貴方達は、遅い方を」
すると空かさず雪の上へと飛び跳ね、マヴォと名乗った魔者へと飛び掛かっていく。
それも先程までのノロさが嘘かと思える程に素早く。
そうして間も無く、二人の激しい攻防が繰り広げられる事に。
打ち合う度に光が弾け飛ぶ程の凄まじい戦いだ。
どちらも退く事無く斬り合い、躱し、受け流している。
これが本当の魔剣使いの戦いなのだと示さんばかりに。
その激しさ故に、斬り合いの場は一箇所のみに収まりはしない。
景色の先へと跳び去り、二人の姿はあっという間に彼方へ。
だが、そんな二人に視線を向けていた勇の背筋に―――悪寒が走る。
ドバシャァ!!
その途端、粉雪が空を白く染め上げんばかりに大量と打ち上がる。
それも、勇達の立っていた場所から激しく高く。
アージと名乗った魔者が、その巨大な大斧を叩き付けていたのである。
でも勇達は何とか無事だ。
咄嗟にちゃなを抱えて飛び跳ねた事によって。
あと一寸遅ければ叩き斬られていた、というギリギリの状況だったが。
「くうッ!?」
とはいえ慣れない地形に翻弄されるばかりだ。
着地は果たしたものの、半ば雪に腰を降ろす様な感じになっていて。
思う様に動けない状況で、焦りさえも滲み出て来る。
ちゃなを降ろす様子にさえ、余裕はもう何一つ感じられない。
「田中さん、例の事忘れないで!! ダメなら隠れているんだ!!」
「う、うんっ!」
下り去るちゃなをその背で隠し、勇がようやくアージと対峙する。
魔剣を鞄から強引に千切り取り、颯爽とその力を籠めながら。
もう戦う以外に道は無い。
話し合う余地など見当たらない。
そんな後ろ向きな思考が過り、勇の顔に苦悶の表情が浮かぶ。
オンズ戦の時の苦渋を思い出してならなくて。
「でも、やられる訳にはいかないッ!! もうあんな想いは二度と御免だッ!!」
「……ほうッ!?」
そんな思い出が、勇に再び力を与える。
白銀の世界にもう一つの太陽の輝きを与える程に。
その輝きがアージの表情に強張りを呼んだ。
どうやら勇の持つ力の本質に気付いたらしい。
「なるほど。 若いナリをしているが、死線は幾つも潜っているという訳か。 並みの魔剣使いではないな?」
「そんな事が俺にわかるもんか。 ただ、アンタを放っておけないなら全力を尽くすだけだッ!!」
「その意気や、良し……ッ!!」
だからこそ二人が相まみえる。
互いに力を高め、渾身の一撃を見舞う為に。
その力が示す戦いの先は、まだ何もかもが不透明なままだ。
それも、気配を悟らせないという妙技まで駆使して。
そんな相手がなんと二人も居る。
かつてない強敵と匂わせる相手達を前にして、勇もちゃなも動揺を隠せない。
前に立ってくれているドゥーラが今はどれだけ頼もしい事か。
しかし歩んでいたそのドゥーラも、もう歩を止めている。
これ以上の無暗な接近は危険だと察したのだろう。
なおその身体を煌かせ、戦意を露わにしたままではあるが。
「やはり、目的は我等の様だな」
「兄者、紫の奴はなかなか手強そうだぜ?」
「うむ。 だが―――それが我々の負ける道理とはならぬッ!!」
ならばと魔者達もまた、戦意を露わにする。
兄と呼ばれた大柄の方は、身の丈程もある巨大な物体を。
こう呼んだ僅か小柄の方は、腰に下げた二つの得物を手に取って。
そうして陽光を弾きながら素早く身構える。
その戦意溢れた姿には迷い一つとて無し。
こうして自分達のスタイルを迷い無く示せるのは、戦い慣れているという証拠だ。
すなわち、この二人は相当な手練れだという事に他ならない。
今この時、太陽が微かな雲に隠れて陽射しを弱らせて。
それがとうとう魔者二人の姿を浮き彫りとさせる。
白熊だ。
まさに白熊の様な魔者だったのだ。
どちらも白い体毛に覆われ、ツンと突き出した赤鼻を見せつけていて。
背の高さは共に二メートル越えと、人よりずっと高い。
似た様相、似た体躯、それでいて左右対称の様にして立つ姿はまさに兄弟か。
大柄な方はまるで武将髭を模した様な猛々しい髪型を。
両肩と胸に鉄革複合の重鎧を着込み、腰にも局部を守る様に薄鉄板が下がっている。
武器も巨大な両手斧と、全体的に重武装寄りの明らかな剛健一撃型だ。
対する小柄な方は鋭く尖り跳ねる様に荒々しい髪型を。
胸甲と腰蓑は革製で身軽に、代わりに肘膝には擦り減った保護具が。
その手に持つのも小さな双斧と、速さを重視した高速戦闘型に違いない。
そして有するどちらの武器も、特殊な意匠を誇っているという。
両手斧はまるで蛇腹の様にして短い刃が幾つも連なり、円状を象っていて。
半月斧と双刃斧、二つの特徴を合わせた様な形状となっている。
双斧は鋭利形のモノと流線形のモノとで意匠の源流が違うのだろう。
例えるならば雷と風、どちらも素早い戦闘に持って来いの軽量片刃斧だ。
そのどちらも、どう見ても普通の武器では無い。
何せ命力の輝きをハッキリと纏っているのだから。
「ま、まさかあれは魔剣なのかッ!?」
「当然よ。 我等が振るいしは伊達でも酔狂でも無いッ!! 信念と志を以て貴様等魔剣使いを屠る、其が為の力だあッ!!」
そう、彼等が手にしているのは紛れも無く魔剣。
それも初歩的な魔剣とは違う、れっきとして力に見合った代物だ。
加えて、相当に扱い慣れているはず。
なれば故の気迫。
なれば故の気概。
これ程の二人にはもはや、撤退の二文字など有り得はしない。
「我が名はアージ!!」
「我が名はマヴォ!!」
「「我等【白の兄弟】!! 魔剣使いよ、この力を前に頭を垂れよ!!」」
故に大地を蹴る。
勇達へと向けて一直線に。
こうなった以上、生半可な事では二人を止められない。
「ま、待ってくれ! 俺達はただ戦いに来た訳じゃないんだッ!!」
「問答無用ッ!! 魔剣使いは全て滅するッ!!」
もはや聞く耳も無し。
戦意・敵意を露わにして力を迸らせるのみ。
しかしそんな迫り来る二人の間へと、突如として一閃が突き抜ける。
ピュインッ!!
ドゥーラが銀色の刃物を投げ付けていたのだ。
命力を籠めたメスの様な小さな刃物を。
ただ、この投擲は攻撃の為では無かったのだろう。
迫る二人の魔者の勢いは止められず、二手に分けただけで。
いや、これがドゥーラの目的だ。
二人を分断し、戦闘を有利に運ぶ為の。
「私は、速い方とやる。 貴方達は、遅い方を」
すると空かさず雪の上へと飛び跳ね、マヴォと名乗った魔者へと飛び掛かっていく。
それも先程までのノロさが嘘かと思える程に素早く。
そうして間も無く、二人の激しい攻防が繰り広げられる事に。
打ち合う度に光が弾け飛ぶ程の凄まじい戦いだ。
どちらも退く事無く斬り合い、躱し、受け流している。
これが本当の魔剣使いの戦いなのだと示さんばかりに。
その激しさ故に、斬り合いの場は一箇所のみに収まりはしない。
景色の先へと跳び去り、二人の姿はあっという間に彼方へ。
だが、そんな二人に視線を向けていた勇の背筋に―――悪寒が走る。
ドバシャァ!!
その途端、粉雪が空を白く染め上げんばかりに大量と打ち上がる。
それも、勇達の立っていた場所から激しく高く。
アージと名乗った魔者が、その巨大な大斧を叩き付けていたのである。
でも勇達は何とか無事だ。
咄嗟にちゃなを抱えて飛び跳ねた事によって。
あと一寸遅ければ叩き斬られていた、というギリギリの状況だったが。
「くうッ!?」
とはいえ慣れない地形に翻弄されるばかりだ。
着地は果たしたものの、半ば雪に腰を降ろす様な感じになっていて。
思う様に動けない状況で、焦りさえも滲み出て来る。
ちゃなを降ろす様子にさえ、余裕はもう何一つ感じられない。
「田中さん、例の事忘れないで!! ダメなら隠れているんだ!!」
「う、うんっ!」
下り去るちゃなをその背で隠し、勇がようやくアージと対峙する。
魔剣を鞄から強引に千切り取り、颯爽とその力を籠めながら。
もう戦う以外に道は無い。
話し合う余地など見当たらない。
そんな後ろ向きな思考が過り、勇の顔に苦悶の表情が浮かぶ。
オンズ戦の時の苦渋を思い出してならなくて。
「でも、やられる訳にはいかないッ!! もうあんな想いは二度と御免だッ!!」
「……ほうッ!?」
そんな思い出が、勇に再び力を与える。
白銀の世界にもう一つの太陽の輝きを与える程に。
その輝きがアージの表情に強張りを呼んだ。
どうやら勇の持つ力の本質に気付いたらしい。
「なるほど。 若いナリをしているが、死線は幾つも潜っているという訳か。 並みの魔剣使いではないな?」
「そんな事が俺にわかるもんか。 ただ、アンタを放っておけないなら全力を尽くすだけだッ!!」
「その意気や、良し……ッ!!」
だからこそ二人が相まみえる。
互いに力を高め、渾身の一撃を見舞う為に。
その力が示す戦いの先は、まだ何もかもが不透明なままだ。
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