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第九節「人が結ぶ世界 白下の誓い 闇に消えぬ」
~善意と悪意と定められぬモノ 恥~
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四時間ほどを消費して、勇達がようやく東京へと戻って来た。
しかし悠長に昼食を食べている暇などは無い。
マヴォの無事をその目で確認するまでは。
マヴォが目を覚ました事は既に福留を通して聞いている。
勇達が北海道を発つ頃にはもう、自ら食事をするくらいの元気があったのだとか。
さすがアージと同じ強者、心身の強さは折り紙付きという事か。
ともあって心配はしていない。
でもやはり実際に会って話さねば。
そんなはやる気持ちを抑える中で、遂にヘリコプターが着陸を果たす。
すると福留が察したかの様に扉を開き、勇とアージを外へ誘っていて。
その好意を汲み、二人が颯爽と飛び出しては塔屋へと駆けていく。
さながら、プレゼントを前に我慢出来ず破り開く子供の様に。
ただし、世の中そう簡単に上手く行くとは限らないが。
最初の関門を前に、また再びアージが唸る。
立ち塞がる銀壁を前にすれば、困惑の表情さえ浮かべもしよう。
「ぬ、行き止まりでは無いか」
「いや、これ自動昇降機です。 上下階移動が出来る装置なんですよ」
「な、なんだとォ……!?」
そう、エレベーターでさえアージにとっては驚異だ。
しかも建物が大きいだけに、スマートフォンよりも衝撃が大きいという。
招致ボタンを押すだけで、「チーン」と音が鳴るだけでビクリと震える程に。
更に銀壁が左右に開けば、首を引かせずにはいられない。
「確かマヴォさんは二階だったかな」
「は、入るのか?」
「入りましょう?」
そして自然に入っていく勇を前にしてもなお、アージは躊躇する。
このビビりっぷりはどうにも新鮮だ。
いっそこの隣に隠れた階段を使えばいいのだろうが。
どことなく勇も楽しそうなので、そこは敢えて目を瞑るとしよう。
何事も恐れては変われない。
こうして触れさせるのも馴染む為に大事な事だから。
「うおおッ!? 喰われたあッ!? 」
とはいえいささか驚き過ぎか。
先日は随分と慣れたものだったのだが。
どうやら気持ちが落ち着き過ぎて威勢を忘れてしまったらしい。
いざ筐体が下降を始めれば、腰を深く落として身構えていて。
こうなるともはや檻中の虎―――いや熊だった。
チーン
その間も無く扉が再び開き、先とは全く別の内装が目の前に。
こうなるともうアージもただただ息を殺し、周囲を伺うばかりで。
「で、出ても平気なのか?」
「大丈夫です」
そう問う声は何故か小声に。
もちろん、勇も釣られて同様に。
そう応えを受け、アージが腰を落として摺り足で行く。
腰に添えた小斧に手を添え、完全警戒状態で。
戦いの中で身に付いた警戒心が存分に働いているのだろう。
なにもそんなにビビらなくてもいいのに。
すると遠くから微かな声が聴こえて来る。
低い声と高い声の喋り合う声が。
「ッ!! この声は―――」
そう、その声の一つは紛れも無くマヴォのもの。
ならばもう、アージが警戒する必要は無い。
今目前の、廊下へと光を零す部屋の中にマヴォが居る、その事実があるだけで。
「マヴォッ!! 無事なんだなぁ!!」
故に、そう気付いた時にはもう飛び出していた。
一時も早く再会したい、その想いの一心で。
だがその時、アージは絶望する事となる。
マヴォの凄惨な姿を前にして。
仰向けに倒れ、腹を露わにし。
腕脚をこれでもかという程に曲げ縮ませて。
だらしなく舌を剥き出しにし、興奮のままに悦び喘ぐ、その情けない姿を。
「俺のカワイイ女神ちゃあん、本当にあっりがとぉ!! 大好きだよォン!!」
その姿、もはや犬である。
飼い主に異常な愛嬌を振り撒く駄犬である。
その様な羞恥の欠片さえ無い姿を隣に座るちゃなへと見せていた―――のだが。
勇もアージもただ唖然とする他無かった。
ついでに言うと、ちゃなとマヴォ自身も。
それはまるで全員が凍り付いたかの様だった。
なお、マヴォが痴態丸出しの姿のままで。
「―――マヴォ、お前は一体何をしてるのだ……?」
その時、建物が揺れる。
アージを震源として、微弱な振動を伝わらせたのだ。
そして光が、灯る。
堪らぬ怒りが、迸る。
その武人が如き猛り顔に陰りをも浮かばせながら。
歯軋りさえ響くその中で。
「ウゲェ!? 兄者ァ!?」
「どうやらお前は、今一度鍛え直す必要が、ある様だな。 その乱れきった心をなぁ……!」
「あばばばば」
その足が一歩踏み出す度に、床が軋む。
怒りが近づく度に、マヴォが狼狽える。
そこにもはや勇とちゃななど視界にすら映らない。
ちゃなが怯えて離れ行く中、とうとうアージがマヴォの前に。
たちまち熱く滾る巨大な掌が、痴態を見せた男の頭をむんずと掴み取る。
「ぎゃあああ兄者ァ!! 許してぇーーー!!」
「許さいでかあッ!! この痴れ者めえッ!!」
しかも頭蓋をミシミシと軋ませ、その巨体を持ち上げる事に。
渾身のアイアンクローである。
これは痛い、相当痛い。
命力付きだから死ぬほど痛い。
このまま無かった事にして引導を渡すつもりかアージよ。
一方のマヴォももう懇願する事しか出来はしない。
ただただ情けなく、目から口から鼻から体液駄々洩れのままに。
きっと兄であるアージは抵抗叶わぬ存在なのだろう。
こうなればもはや当人にとっては地獄でしかない。
「ゆ、勇さん、これほっといていいんですか……?」
「さ、さぁ?」
「ま、まぁ入院している人は他に居ませんし構いませんが……部屋だけは壊さないで欲しい所ですねぇ」
更には福留も加えた傍で、阿鼻叫喚はなお続く。
その叫びを野外にまで響かせながら。
「いっそこの役立たずの棒を引き抜いてくれようかぁ!!」
「あッ!! それはダメェェェーーーーーーッッッ!!!!」
その騒動は遂には更なる痴態を招く事に。
ちゃなが思わず顔を掌で覆ってしまう程の辱めを。
ちゃっかり頬を赤らめながら指の間から見てしまっていたけれども。
「アアッ!! ちょ、やめ……アッ、ア"ッーーーーーーッッッ!!!!」
何があったかは敢えて語るまい。
しかしその後、外に居た警備員はこう報告したという。
それは別室に居ても聴こえるくらい、とてもとても大きくて情けない叫びだったと。
こうやって東京の街に木霊するくらいに喘いだのだ。
心配して駆け付けた兄に対し、きっと当人も反省する事だろう。
きっと、たぶん。
しかし悠長に昼食を食べている暇などは無い。
マヴォの無事をその目で確認するまでは。
マヴォが目を覚ました事は既に福留を通して聞いている。
勇達が北海道を発つ頃にはもう、自ら食事をするくらいの元気があったのだとか。
さすがアージと同じ強者、心身の強さは折り紙付きという事か。
ともあって心配はしていない。
でもやはり実際に会って話さねば。
そんなはやる気持ちを抑える中で、遂にヘリコプターが着陸を果たす。
すると福留が察したかの様に扉を開き、勇とアージを外へ誘っていて。
その好意を汲み、二人が颯爽と飛び出しては塔屋へと駆けていく。
さながら、プレゼントを前に我慢出来ず破り開く子供の様に。
ただし、世の中そう簡単に上手く行くとは限らないが。
最初の関門を前に、また再びアージが唸る。
立ち塞がる銀壁を前にすれば、困惑の表情さえ浮かべもしよう。
「ぬ、行き止まりでは無いか」
「いや、これ自動昇降機です。 上下階移動が出来る装置なんですよ」
「な、なんだとォ……!?」
そう、エレベーターでさえアージにとっては驚異だ。
しかも建物が大きいだけに、スマートフォンよりも衝撃が大きいという。
招致ボタンを押すだけで、「チーン」と音が鳴るだけでビクリと震える程に。
更に銀壁が左右に開けば、首を引かせずにはいられない。
「確かマヴォさんは二階だったかな」
「は、入るのか?」
「入りましょう?」
そして自然に入っていく勇を前にしてもなお、アージは躊躇する。
このビビりっぷりはどうにも新鮮だ。
いっそこの隣に隠れた階段を使えばいいのだろうが。
どことなく勇も楽しそうなので、そこは敢えて目を瞑るとしよう。
何事も恐れては変われない。
こうして触れさせるのも馴染む為に大事な事だから。
「うおおッ!? 喰われたあッ!? 」
とはいえいささか驚き過ぎか。
先日は随分と慣れたものだったのだが。
どうやら気持ちが落ち着き過ぎて威勢を忘れてしまったらしい。
いざ筐体が下降を始めれば、腰を深く落として身構えていて。
こうなるともはや檻中の虎―――いや熊だった。
チーン
その間も無く扉が再び開き、先とは全く別の内装が目の前に。
こうなるともうアージもただただ息を殺し、周囲を伺うばかりで。
「で、出ても平気なのか?」
「大丈夫です」
そう問う声は何故か小声に。
もちろん、勇も釣られて同様に。
そう応えを受け、アージが腰を落として摺り足で行く。
腰に添えた小斧に手を添え、完全警戒状態で。
戦いの中で身に付いた警戒心が存分に働いているのだろう。
なにもそんなにビビらなくてもいいのに。
すると遠くから微かな声が聴こえて来る。
低い声と高い声の喋り合う声が。
「ッ!! この声は―――」
そう、その声の一つは紛れも無くマヴォのもの。
ならばもう、アージが警戒する必要は無い。
今目前の、廊下へと光を零す部屋の中にマヴォが居る、その事実があるだけで。
「マヴォッ!! 無事なんだなぁ!!」
故に、そう気付いた時にはもう飛び出していた。
一時も早く再会したい、その想いの一心で。
だがその時、アージは絶望する事となる。
マヴォの凄惨な姿を前にして。
仰向けに倒れ、腹を露わにし。
腕脚をこれでもかという程に曲げ縮ませて。
だらしなく舌を剥き出しにし、興奮のままに悦び喘ぐ、その情けない姿を。
「俺のカワイイ女神ちゃあん、本当にあっりがとぉ!! 大好きだよォン!!」
その姿、もはや犬である。
飼い主に異常な愛嬌を振り撒く駄犬である。
その様な羞恥の欠片さえ無い姿を隣に座るちゃなへと見せていた―――のだが。
勇もアージもただ唖然とする他無かった。
ついでに言うと、ちゃなとマヴォ自身も。
それはまるで全員が凍り付いたかの様だった。
なお、マヴォが痴態丸出しの姿のままで。
「―――マヴォ、お前は一体何をしてるのだ……?」
その時、建物が揺れる。
アージを震源として、微弱な振動を伝わらせたのだ。
そして光が、灯る。
堪らぬ怒りが、迸る。
その武人が如き猛り顔に陰りをも浮かばせながら。
歯軋りさえ響くその中で。
「ウゲェ!? 兄者ァ!?」
「どうやらお前は、今一度鍛え直す必要が、ある様だな。 その乱れきった心をなぁ……!」
「あばばばば」
その足が一歩踏み出す度に、床が軋む。
怒りが近づく度に、マヴォが狼狽える。
そこにもはや勇とちゃななど視界にすら映らない。
ちゃなが怯えて離れ行く中、とうとうアージがマヴォの前に。
たちまち熱く滾る巨大な掌が、痴態を見せた男の頭をむんずと掴み取る。
「ぎゃあああ兄者ァ!! 許してぇーーー!!」
「許さいでかあッ!! この痴れ者めえッ!!」
しかも頭蓋をミシミシと軋ませ、その巨体を持ち上げる事に。
渾身のアイアンクローである。
これは痛い、相当痛い。
命力付きだから死ぬほど痛い。
このまま無かった事にして引導を渡すつもりかアージよ。
一方のマヴォももう懇願する事しか出来はしない。
ただただ情けなく、目から口から鼻から体液駄々洩れのままに。
きっと兄であるアージは抵抗叶わぬ存在なのだろう。
こうなればもはや当人にとっては地獄でしかない。
「ゆ、勇さん、これほっといていいんですか……?」
「さ、さぁ?」
「ま、まぁ入院している人は他に居ませんし構いませんが……部屋だけは壊さないで欲しい所ですねぇ」
更には福留も加えた傍で、阿鼻叫喚はなお続く。
その叫びを野外にまで響かせながら。
「いっそこの役立たずの棒を引き抜いてくれようかぁ!!」
「あッ!! それはダメェェェーーーーーーッッッ!!!!」
その騒動は遂には更なる痴態を招く事に。
ちゃなが思わず顔を掌で覆ってしまう程の辱めを。
ちゃっかり頬を赤らめながら指の間から見てしまっていたけれども。
「アアッ!! ちょ、やめ……アッ、ア"ッーーーーーーッッッ!!!!」
何があったかは敢えて語るまい。
しかしその後、外に居た警備員はこう報告したという。
それは別室に居ても聴こえるくらい、とてもとても大きくて情けない叫びだったと。
こうやって東京の街に木霊するくらいに喘いだのだ。
心配して駆け付けた兄に対し、きっと当人も反省する事だろう。
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