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第九節「人が結ぶ世界 白下の誓い 闇に消えぬ」
~力を奮うという事への決意 送~
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勇達が急ぎ本部へと向かっていたその頃―――
特事部本部、医療棟では。
「ウゥウ~~~!! グゥ、ウゥォォォ……ッ!!」
「しっかりしろマヴォーッ!!」
剣聖の言っていた事が既に現実となっていた。
マヴォが激痛に苛まれ、苦悶の唸りを上げていたのだ。
下腹部が体毛の上からでもわかる程に真っ黒と染まり上がっていて。
一部では毛を滲ませる程に出血しているという。
その影響は主に切開部から周囲へ、網目状に僅かと広がっている。
接合部からの細胞崩壊が始まっているのだろう。
まさに痛々しいとしか言いようがない。
患部からもたらされる激痛は想像を絶しよう。
ただ一概にそれが全てとは言えない様だが。
応援するかの様に添えたアージの手からは光が動いていて。
まるで皮下を通る血液の様に、マヴォへと移っていく。
命力だ。
命力が肌を通してマヴォに伝っているのだ。
その伝達が何を意味するのかは二人にしかわからない。
少なくとも、見る事しか出来ない医者達には。
ただそのお陰で意識を飛ばす事も無く、痛みにでも耐える事が出来ていて。
「グゥゥゥ、クッソォ! ウヌゥオォオォ~~~!!」
マヴォがベッドの縁を掴み、自らの身体を固定させる。
歯を噛み締め身体を震わせながら必死に堪え続けながら。
少しでも気を緩めれば、あっという間に気を失いかねないから。
もし意識を失えば、その時点で死が決まる。
その事を二人はもう理解しているのだろう。
だから苦痛に耐えながら傷が癒えるまで踏ん張っているのだ。
そう。
マヴォは今、自己治癒を行っている。
勇が傷を治すのにも使っているのと同じ技術を。
「マヴォ、いけるかッ!?」
「あ、当たり前、よぉ! 女神ちゃんが、繋いでくれたこの、命! このまま、消しちまったら、グッ、泣かせちまうからなぁ……!! あの子は、良い子なんだよォ……!!」
全てはちゃなの好意を無駄にしない為に。
マヴォは勇達がこっちに向かっている事を知らない。
むしろ来る事は無いと思っている。
だからだ。
次に会う時、何事も無かったと言って再会したいから。
ちゃなが傷を癒した時、マヴォには命力を通して想いが伝わっていたのだろう。
何としてでも、絶対に助けたいという決意が。
そんな優しさを貰った事なんて、人間はおろか魔者からさえ無かった。
だからちゃなが慈悲深い女神にさえ見えた。
なら、男であればこう思いさえするものだ。
そんな子を絶対に悲しませたくない、と。
今のマヴォの原動力はまさにそれ。
その一心で痛みに堪え、患部を治そうと必死になっている。
アージもその想いに応え、協力しているのである。
「アージさん、マヴォさんッ!!」
するとその時、予想していなかった声が部屋に木霊する。
勇達が辿り着いたのだ。
ヘリコプターが着地を果たす前に強引と飛び出し、階段フロアをも飛び下りて。
もちろんちゃなも一緒だ。
勇に抱えられたまま訪れるも、すぐさま床へと足を降ろす。
そうして間も無くマヴォへと駆け寄っていて。
「ごめんなさいっ!! ごめんなさいっっ!! こんな事になるなんて知らなくてッ!!」
ただただ思いのままに懺悔を声とする。
その目に大粒の涙を浮かべたままに。
きっと、ヘリコプターの中でもずっと泣いていたのだろう。
頬も目も赤く染まり、顔も歪みで生まれたシワの跡が残っていて。
それだけ事実を辛く重く受け取っていたに違いない。
でもそんなちゃなを前にして、マヴォはあろう事か笑顔を向けていた。
「ま、待っててね、俺の女神ちゃん……ッ! 俺、君が治してくれた、この体をッ! 俺自身が治して、正しかったって証明、しでッ! みせるがらッ!!」
これがマヴォの生き様である。
これこそが女神を想う者の心意気である。
そんな漢を前にして、ちゃなは更なる涙を呼ばずにはいられない。
自分の為に必死になってくれている者への想いの雫を。
ただその雫は決して悲哀の結晶などではない。
己の内に秘めた決意を昂りとして吐き出した―――猛りの結晶である。
「アージさん教えてくださいッ!! 私に出来る事を! どうしたら力になれますか!?」
この時ちゃなはこう咆えていた。
その目に浮かんだ涙を弾かせる程に強く。
ただただ二人の力になりたくて。
何としてでも、正しい形でマヴォを救いたくて。
例え付け焼刃でも構わない。
少しでも助けになればそれだけでいい。
その一心でちゃなは必死に訴える。
僅かな可能性に縋ってでも、マヴォの想いに応えたいから。
「……わかった。 なら俺の言う通りに。 俺の手に両手を添え、命力を俺へと流すイメージを浮かべるのだ。 その後は俺が導いてみせる」
「わかりましたッ!!」
だからこそ想いのままに、その小さな手を据えられたアージの拳へと乗せる。
するとどうだろう、ちゃなの身体がたちまち強い輝きを放ち始めて。
余りの強い光であるが故に、部屋の壁へとゆらゆらとした明かりが映り込む。
まるで湖面を反射した光を受けたかの様に。
とてつもない命力だ。
アージだけでなく、勇達もが驚愕する程の。
これがちゃなの力の秘密の形なのだろう。
数々の圧倒せし砲撃を行える力の源。
その秘密が今、目の前でハッキリと具現化している。
その様相は勇が見せる煙の様な姿では無く、まるで水玉。
それでいて濃度が濃いのか、境界がしっかりと見てわかる程だ。
しかもその光が早速、アージを通してマヴォへ流れていくという。
それでも光はなお一向に縮まらない。
暗くなった外へ強く差す様な光をもたらし続けられる程に。
一体どれだけの容量を誇っているというのだろうか。
「命力を、人に送る……!? そんな事が出来るのか!?」
「うむ。 だが、今は一人でいい。 集中させてもらう」
しかしその命力を送るという技術は一筋縄ではいかないものらしい。
その一言を最後に、アージはもう黙り込む事に。
きっとちゃなの命力を送るだけで必死なのだろう。
故に勇が医者と看護師を誘いつつ静かに部屋を離れていく。
二人の邪魔をしてはいけないと。
後からやってきた福留達へも、そっと口元に人差し指を立てていて。
経緯を伝える為にと、部屋からも離れていく。
少しでも喋り声を伝わらせない様に。
マヴォが助かるかどうかはまだわからない。
命力を送る手段が進行中の細胞崩壊にどれだけ有効かなど見当も付かないから。
それでも、ちゃなは必死に送り続ける。
何としてでもマヴォを救わんが為に。
その意志にもはや一切の迷い無し。
絶対に殺させたりはしない。
その切実な想いが彼女の心をただひたすらに突き動かし続けたのだった。
特事部本部、医療棟では。
「ウゥウ~~~!! グゥ、ウゥォォォ……ッ!!」
「しっかりしろマヴォーッ!!」
剣聖の言っていた事が既に現実となっていた。
マヴォが激痛に苛まれ、苦悶の唸りを上げていたのだ。
下腹部が体毛の上からでもわかる程に真っ黒と染まり上がっていて。
一部では毛を滲ませる程に出血しているという。
その影響は主に切開部から周囲へ、網目状に僅かと広がっている。
接合部からの細胞崩壊が始まっているのだろう。
まさに痛々しいとしか言いようがない。
患部からもたらされる激痛は想像を絶しよう。
ただ一概にそれが全てとは言えない様だが。
応援するかの様に添えたアージの手からは光が動いていて。
まるで皮下を通る血液の様に、マヴォへと移っていく。
命力だ。
命力が肌を通してマヴォに伝っているのだ。
その伝達が何を意味するのかは二人にしかわからない。
少なくとも、見る事しか出来ない医者達には。
ただそのお陰で意識を飛ばす事も無く、痛みにでも耐える事が出来ていて。
「グゥゥゥ、クッソォ! ウヌゥオォオォ~~~!!」
マヴォがベッドの縁を掴み、自らの身体を固定させる。
歯を噛み締め身体を震わせながら必死に堪え続けながら。
少しでも気を緩めれば、あっという間に気を失いかねないから。
もし意識を失えば、その時点で死が決まる。
その事を二人はもう理解しているのだろう。
だから苦痛に耐えながら傷が癒えるまで踏ん張っているのだ。
そう。
マヴォは今、自己治癒を行っている。
勇が傷を治すのにも使っているのと同じ技術を。
「マヴォ、いけるかッ!?」
「あ、当たり前、よぉ! 女神ちゃんが、繋いでくれたこの、命! このまま、消しちまったら、グッ、泣かせちまうからなぁ……!! あの子は、良い子なんだよォ……!!」
全てはちゃなの好意を無駄にしない為に。
マヴォは勇達がこっちに向かっている事を知らない。
むしろ来る事は無いと思っている。
だからだ。
次に会う時、何事も無かったと言って再会したいから。
ちゃなが傷を癒した時、マヴォには命力を通して想いが伝わっていたのだろう。
何としてでも、絶対に助けたいという決意が。
そんな優しさを貰った事なんて、人間はおろか魔者からさえ無かった。
だからちゃなが慈悲深い女神にさえ見えた。
なら、男であればこう思いさえするものだ。
そんな子を絶対に悲しませたくない、と。
今のマヴォの原動力はまさにそれ。
その一心で痛みに堪え、患部を治そうと必死になっている。
アージもその想いに応え、協力しているのである。
「アージさん、マヴォさんッ!!」
するとその時、予想していなかった声が部屋に木霊する。
勇達が辿り着いたのだ。
ヘリコプターが着地を果たす前に強引と飛び出し、階段フロアをも飛び下りて。
もちろんちゃなも一緒だ。
勇に抱えられたまま訪れるも、すぐさま床へと足を降ろす。
そうして間も無くマヴォへと駆け寄っていて。
「ごめんなさいっ!! ごめんなさいっっ!! こんな事になるなんて知らなくてッ!!」
ただただ思いのままに懺悔を声とする。
その目に大粒の涙を浮かべたままに。
きっと、ヘリコプターの中でもずっと泣いていたのだろう。
頬も目も赤く染まり、顔も歪みで生まれたシワの跡が残っていて。
それだけ事実を辛く重く受け取っていたに違いない。
でもそんなちゃなを前にして、マヴォはあろう事か笑顔を向けていた。
「ま、待っててね、俺の女神ちゃん……ッ! 俺、君が治してくれた、この体をッ! 俺自身が治して、正しかったって証明、しでッ! みせるがらッ!!」
これがマヴォの生き様である。
これこそが女神を想う者の心意気である。
そんな漢を前にして、ちゃなは更なる涙を呼ばずにはいられない。
自分の為に必死になってくれている者への想いの雫を。
ただその雫は決して悲哀の結晶などではない。
己の内に秘めた決意を昂りとして吐き出した―――猛りの結晶である。
「アージさん教えてくださいッ!! 私に出来る事を! どうしたら力になれますか!?」
この時ちゃなはこう咆えていた。
その目に浮かんだ涙を弾かせる程に強く。
ただただ二人の力になりたくて。
何としてでも、正しい形でマヴォを救いたくて。
例え付け焼刃でも構わない。
少しでも助けになればそれだけでいい。
その一心でちゃなは必死に訴える。
僅かな可能性に縋ってでも、マヴォの想いに応えたいから。
「……わかった。 なら俺の言う通りに。 俺の手に両手を添え、命力を俺へと流すイメージを浮かべるのだ。 その後は俺が導いてみせる」
「わかりましたッ!!」
だからこそ想いのままに、その小さな手を据えられたアージの拳へと乗せる。
するとどうだろう、ちゃなの身体がたちまち強い輝きを放ち始めて。
余りの強い光であるが故に、部屋の壁へとゆらゆらとした明かりが映り込む。
まるで湖面を反射した光を受けたかの様に。
とてつもない命力だ。
アージだけでなく、勇達もが驚愕する程の。
これがちゃなの力の秘密の形なのだろう。
数々の圧倒せし砲撃を行える力の源。
その秘密が今、目の前でハッキリと具現化している。
その様相は勇が見せる煙の様な姿では無く、まるで水玉。
それでいて濃度が濃いのか、境界がしっかりと見てわかる程だ。
しかもその光が早速、アージを通してマヴォへ流れていくという。
それでも光はなお一向に縮まらない。
暗くなった外へ強く差す様な光をもたらし続けられる程に。
一体どれだけの容量を誇っているというのだろうか。
「命力を、人に送る……!? そんな事が出来るのか!?」
「うむ。 だが、今は一人でいい。 集中させてもらう」
しかしその命力を送るという技術は一筋縄ではいかないものらしい。
その一言を最後に、アージはもう黙り込む事に。
きっとちゃなの命力を送るだけで必死なのだろう。
故に勇が医者と看護師を誘いつつ静かに部屋を離れていく。
二人の邪魔をしてはいけないと。
後からやってきた福留達へも、そっと口元に人差し指を立てていて。
経緯を伝える為にと、部屋からも離れていく。
少しでも喋り声を伝わらせない様に。
マヴォが助かるかどうかはまだわからない。
命力を送る手段が進行中の細胞崩壊にどれだけ有効かなど見当も付かないから。
それでも、ちゃなは必死に送り続ける。
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