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第十節「狂騒鳥曲 死と願い 少女が為の青空」
~少女が為の蒼~
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時は少し遡り、ちゃなが落とされた直後―――
この時、ちゃなも思う限りの人の顔を脳裏に浮かべていた。
勇がこの後見るものと同じ様に。
ただただ無力だった事が悔しくて、無念に苛まれて。
もう皆に、勇にも愛希にも会えないという諦念に包まれながら。
「ごめんね勇さん、私やっぱり駄目だったみたい……」
遂にはその身体が雲へと放り込まれて。
そんな最後の声も、インカムが飛ばされてしまったからもう届かない。
それが諦めを呼び、視界の失った中でそっと目が閉じられていく。
今までずっと、勇と一緒だった。
ずっと力になりたくて、怖い心を押し留めて付いていった。
でもいつか自分自身の力が追い付けなくなって、置いて行かれるかもしれない。
そんな想いが心の片隅にあったから。
だからきっと、こんな日が来るのだろうとも思っていて。
今までの彼女ならきっとこれでも上出来だっただろう。
何もかも後ろ向きで、何もさせて貰えなかった昔と比べたら。
お陰でいい夢も見る事が出来て、少しだけ変わる事が出来た。
その感謝で一杯で、それだけで満足だったから。
なのでもう悔いは無い―――そう思っていたのだけれど。
「―――やだ、やっぱりこんなので終わりたくない。 私、まだ生きたいよ……勇さん……ッ!」
人はおのずと、欲を求めるものだ。
今ある事よりもずっと嬉しい事を求めたがる生き物だ。
ちゃなだって、本当はもっともっと幸せになりたいって思うのは当然の事なのだ。
例えその幸せの度合いが人より小さくても。
例え些細な幸せで良いのだとしても。
今望む願いは、決して大き過ぎはしない。
生きたいと願う想いは、人が持つ当たり前の意識なのだから。
ならばその願いから生まれた意思は、何事をも跳ね退ける力を呼び起こそう。
この時、ちゃなの脳裏にはもう人の顔は映っていなかった。
色んな人達から伝えられた情報が無数に飛び交っていたのである。
〝必ずしも殺傷する必要は無いんだけどね〟
〝炎弾である必要はありますか?〟
〝燃費度外視でいいなら―――〟
その情報が瞬時にして組み上がっていく。
まるでパズルの自動解答生成の様にテキパキと。
そして最後のピースが合わさった時、ちゃなはその眼を見開く事となる。
〝私もいっそあのドローンみたいになりたいな〟
自身が以前ぽろりと呟いた、何気ないこの一言を思い出したからこそ。
この時、魔剣が雲の中で大きく振り回される。
ただ想いのままに、考え付いたままに。
杖先足を掛け、杖にしがみついて。
後はただ願おう。
生きる事を、その術を。
自分が知るありったけのイメージを。
ボボウッッ!!
ドドドッドボウッ!!!
ズオオオオ!!!!
その願いを、魔剣が聞き入れてくれた。
炎が吐き出されたのだ。
しかも一直線では無く、まるで身体を支えんと不規則な方向に。
ただそれでも姿勢が整わず、落下は収まらない。
このままでは雲から抜けて地上へ真っ逆さま、命は無いだろう。
雲の直下はもう山岳部、もう猶予は殆ど残されていないのだから。
だからこそ必至だ。
必死で炎を吐き出し、身体を支えようとする。
けれど勢いが収まるどころか、ズレ動いていくという。
前後左右、杖が向くままに暴れ始めたのだ。
その勢いは凄まじく、足でも支えるのがやっとで。
「うっ、ううーっ!! お願い、言う事を聞いて【ドゥルムエーヴェ】!」
地面の場所がわからないというのもあるのだろう。
ちゃなもどこに向けて飛んでいるか理解していない。
それでも落下する方だけはわかるから、その感覚に逆らうしかなくて。
でも何となく、わかってきた。
炎がどうしてこうやって不規則に放たれているのかが。
重心だ。
ちゃなのしがみつく姿勢がバランスを崩しているのだ。
ならもしその姿勢を直せるなら。
正しい形に整えられたなら。
もしかしたら魔剣が望むべき形に導いてくれるかもしれない。
そう察した時、ちゃなは再び炎を抑える。
その上で素早く足場を整え、杖に抱き着くのではなく手腕で掴み挟んで。
後は自分の今の姿をイメージして魔剣へと伝えるだけ。
魔剣の力を信じるままに。
ボッボボ―――
ズオオオッッッ!!
するとどうだろう。
安定したのだ。
しかも業炎を吹き出し、瞬く間に落下の勢いが収まっていく。
そしてなんと、浮遊停止したのである。
ちゃなの体が、魔剣ごと。
「やった! これなら私でも戦える!」
だからといって、どう戦うかなど考えてはいない。
空に浮かべるとわかっただけで、攻撃手段なんて閃いてないから。
でも、それでもいい。
勇の力に少しでもなれるなら、自分自身がドローンの様になるだけで。
その想いが新たな欲となり、今度は空へ羽ばたく翼となろう。
この時ちゃなは見上げ仰いでいた。
空に待つであろう勇へと向けて。
「今行きますからね、勇さんッ!!」
ならその想いのままに炎を猛らせよう。
そうすれば出来ない事は無いのだから。
そんな強い想いが、ちゃなを遥か上空へと打ち上げる。
自身が思っても見なかった程の速度を以て。
思わずその身を固まらせてしまう程に勢い良く。
そして今その頭上が光に包まれた時―――ちゃなは咄嗟に手を伸ばす。
今まさに落ち来る勇へと向けて。
「勇さぁぁぁーーーーーーんッッ!!!」
「田中さんッ!?」
それは余りに突然の事だった。
何せ突然ちゃなが雲の中から現れたのだから。
しかもとてつもない速度で上昇しながら。
ただそれは、勇にとっても大きな希望だ。
半ば諦めていたちゃながこうして窮地に救いの手を差し伸べてくれたのだから。
だからこそ勇は今、その手を取る。
ちゃなが差し延ばしてくれた最高の希望を。
キャッチ成功である。
ちゃなの細腕が勇をしっかり捉えたのだ。
しかも上昇の勢いは留まる事無く。
凄まじい速度のままで二人に重圧を与え続ける。
だからか、ちゃなの表情はこれまでに無いほど険しい。
「勇さんッ!! お願いッ!! 自分で杖に!! 足かけてえッ!!」
「わかったッ!!」
その重圧に加えて勇の体重を支えていたのだ、当然だろう。
しかしそうもうわかれば行動は速い。
勇がすぐに片手で【ドゥルムエーヴェ】を掴み、航行を邪魔しない様にしがみつく。
少し重心は変わるが、今のちゃななら制御は出来るだろう。
もうここまでで充分仕組みは理解出来たから。
「よし、このままロゴウの所まで行ける!?」
「行けません!! 制御できません!!」
「ええー!?」
ただし垂直上昇の手段だけに限り。
そう、今のちゃなはまさしくロケットなのだ。
空中での方向転換方法もわからないし、ドローンのローターを造れる訳でも無い。
だから上昇一辺倒、このままでは宇宙まで行きかねない。
故に、遂にはジョゾウ達の戦うすぐ傍を抜けて大空の中へ。
突如過ぎ去った何かに、ジョゾウ達もロゴウ達もただただ驚くばかりだ。
何が飛んできたのかさえ理解する間も無かったらしい。
「そうだ! 確か飛行機は翼があって―――フラップ、そうフラップだ! 上下に動く羽根があるんだ! 田中さん、まずヒートフィールドの形は変えられる!? 飛行機の翼をイメージするんだ!」
「あッ!! やってみます!!」
その最中、勇が出した案を素にちゃなが【常温膜域】を発動させて。
たちまち二人を僅かに赤く暖かな空間が包み込む。
おまけに二人へ掛かる突風の勢いも弱まって一石二鳥だ。
更にはフィールドがその形を変えていく。
それはまるで餅の様にやんわりと、でも不格好ながらちゃんと翼を象っていて。
きっとそれが早速効果を示したのだろう。
自然と、ちゃな達の体が水平線に対して平行となっていく。
空気の層がフィールド翼を捉え、押し込んだのだ。
「やった!」
「次は翼の後ろを上下に伸ばす様にイメージするんだ! 上に向ければ下降、下に向ければ上昇って感じになるはず!」
「はいッ!!」
こうなれば調子にも乗ろう。
言われたままにフィールドの形を変えれば、早速効果を実感する事に。
ちゃなの思うがまま、上昇下降が繰り返されるという。
しっかり言われた通りに動けている。
「よし、なら左右に動くのは、左右の翼を上下逆に向ければいい! 出来る!?」
「やれますッ!! ジョゾウさん達の所に戻りますね!!」
ならもう自由に動き回る事さえ可能だ。
たちまちちゃな達が旋回を始めていく。
そうして空を突き進む姿はまさしく飛行機そのものである。
ただ、飛行機の仕組みが勇の言った通りであるかどうかと言えば―――間違いだ。
本来ならば尾翼というものが無ければこれほ自由自在に動く事は叶わない。
それ無しで翼を動かした所で、自軸旋回したりするのが関の山だろう。
しかしそれでも動けるのは、魔剣の炎が制御しているから。
魔剣【ドゥルムエーヴェ】がちゃなのイメージに合わせて炎の向きを微調していて。
勇から伝えられたイメージを実現しようとして補正してくれている。
まるで飛行機の操縦補助システムと同じ様にして。
つまり、この制御システムの構築によって自由に空が飛べる様になったという事だ。
そう、ちゃなは今、単独で空を飛ぶ事が出来る様になったのだ。
上昇のみならず、飛行機の様に自由自在と。
これは人類史上類を見ない快挙である。
むしろ人単体による飛行など、これより先にも現れるかどうか。
まさしくちゃなの底力が見せる、常識を遥かに超えた偉業と言えよう。
惜しむらくは、当人達がその事実に全く気付いていない事か。
こうしてちゃながまさかの飛行能力を物にした。
かつての魔剣使いの歴史においても類を見ない能力である。
この力を以てジョゾウ達の下へと急ぎ向かう。
なんとしてでもこの戦いに勝つ為に。
ミゴやライゴの死を無駄にしない為にも。
その想いを、今抜ける大気の如く貫くのみ。
この時、ちゃなも思う限りの人の顔を脳裏に浮かべていた。
勇がこの後見るものと同じ様に。
ただただ無力だった事が悔しくて、無念に苛まれて。
もう皆に、勇にも愛希にも会えないという諦念に包まれながら。
「ごめんね勇さん、私やっぱり駄目だったみたい……」
遂にはその身体が雲へと放り込まれて。
そんな最後の声も、インカムが飛ばされてしまったからもう届かない。
それが諦めを呼び、視界の失った中でそっと目が閉じられていく。
今までずっと、勇と一緒だった。
ずっと力になりたくて、怖い心を押し留めて付いていった。
でもいつか自分自身の力が追い付けなくなって、置いて行かれるかもしれない。
そんな想いが心の片隅にあったから。
だからきっと、こんな日が来るのだろうとも思っていて。
今までの彼女ならきっとこれでも上出来だっただろう。
何もかも後ろ向きで、何もさせて貰えなかった昔と比べたら。
お陰でいい夢も見る事が出来て、少しだけ変わる事が出来た。
その感謝で一杯で、それだけで満足だったから。
なのでもう悔いは無い―――そう思っていたのだけれど。
「―――やだ、やっぱりこんなので終わりたくない。 私、まだ生きたいよ……勇さん……ッ!」
人はおのずと、欲を求めるものだ。
今ある事よりもずっと嬉しい事を求めたがる生き物だ。
ちゃなだって、本当はもっともっと幸せになりたいって思うのは当然の事なのだ。
例えその幸せの度合いが人より小さくても。
例え些細な幸せで良いのだとしても。
今望む願いは、決して大き過ぎはしない。
生きたいと願う想いは、人が持つ当たり前の意識なのだから。
ならばその願いから生まれた意思は、何事をも跳ね退ける力を呼び起こそう。
この時、ちゃなの脳裏にはもう人の顔は映っていなかった。
色んな人達から伝えられた情報が無数に飛び交っていたのである。
〝必ずしも殺傷する必要は無いんだけどね〟
〝炎弾である必要はありますか?〟
〝燃費度外視でいいなら―――〟
その情報が瞬時にして組み上がっていく。
まるでパズルの自動解答生成の様にテキパキと。
そして最後のピースが合わさった時、ちゃなはその眼を見開く事となる。
〝私もいっそあのドローンみたいになりたいな〟
自身が以前ぽろりと呟いた、何気ないこの一言を思い出したからこそ。
この時、魔剣が雲の中で大きく振り回される。
ただ想いのままに、考え付いたままに。
杖先足を掛け、杖にしがみついて。
後はただ願おう。
生きる事を、その術を。
自分が知るありったけのイメージを。
ボボウッッ!!
ドドドッドボウッ!!!
ズオオオオ!!!!
その願いを、魔剣が聞き入れてくれた。
炎が吐き出されたのだ。
しかも一直線では無く、まるで身体を支えんと不規則な方向に。
ただそれでも姿勢が整わず、落下は収まらない。
このままでは雲から抜けて地上へ真っ逆さま、命は無いだろう。
雲の直下はもう山岳部、もう猶予は殆ど残されていないのだから。
だからこそ必至だ。
必死で炎を吐き出し、身体を支えようとする。
けれど勢いが収まるどころか、ズレ動いていくという。
前後左右、杖が向くままに暴れ始めたのだ。
その勢いは凄まじく、足でも支えるのがやっとで。
「うっ、ううーっ!! お願い、言う事を聞いて【ドゥルムエーヴェ】!」
地面の場所がわからないというのもあるのだろう。
ちゃなもどこに向けて飛んでいるか理解していない。
それでも落下する方だけはわかるから、その感覚に逆らうしかなくて。
でも何となく、わかってきた。
炎がどうしてこうやって不規則に放たれているのかが。
重心だ。
ちゃなのしがみつく姿勢がバランスを崩しているのだ。
ならもしその姿勢を直せるなら。
正しい形に整えられたなら。
もしかしたら魔剣が望むべき形に導いてくれるかもしれない。
そう察した時、ちゃなは再び炎を抑える。
その上で素早く足場を整え、杖に抱き着くのではなく手腕で掴み挟んで。
後は自分の今の姿をイメージして魔剣へと伝えるだけ。
魔剣の力を信じるままに。
ボッボボ―――
ズオオオッッッ!!
するとどうだろう。
安定したのだ。
しかも業炎を吹き出し、瞬く間に落下の勢いが収まっていく。
そしてなんと、浮遊停止したのである。
ちゃなの体が、魔剣ごと。
「やった! これなら私でも戦える!」
だからといって、どう戦うかなど考えてはいない。
空に浮かべるとわかっただけで、攻撃手段なんて閃いてないから。
でも、それでもいい。
勇の力に少しでもなれるなら、自分自身がドローンの様になるだけで。
その想いが新たな欲となり、今度は空へ羽ばたく翼となろう。
この時ちゃなは見上げ仰いでいた。
空に待つであろう勇へと向けて。
「今行きますからね、勇さんッ!!」
ならその想いのままに炎を猛らせよう。
そうすれば出来ない事は無いのだから。
そんな強い想いが、ちゃなを遥か上空へと打ち上げる。
自身が思っても見なかった程の速度を以て。
思わずその身を固まらせてしまう程に勢い良く。
そして今その頭上が光に包まれた時―――ちゃなは咄嗟に手を伸ばす。
今まさに落ち来る勇へと向けて。
「勇さぁぁぁーーーーーーんッッ!!!」
「田中さんッ!?」
それは余りに突然の事だった。
何せ突然ちゃなが雲の中から現れたのだから。
しかもとてつもない速度で上昇しながら。
ただそれは、勇にとっても大きな希望だ。
半ば諦めていたちゃながこうして窮地に救いの手を差し伸べてくれたのだから。
だからこそ勇は今、その手を取る。
ちゃなが差し延ばしてくれた最高の希望を。
キャッチ成功である。
ちゃなの細腕が勇をしっかり捉えたのだ。
しかも上昇の勢いは留まる事無く。
凄まじい速度のままで二人に重圧を与え続ける。
だからか、ちゃなの表情はこれまでに無いほど険しい。
「勇さんッ!! お願いッ!! 自分で杖に!! 足かけてえッ!!」
「わかったッ!!」
その重圧に加えて勇の体重を支えていたのだ、当然だろう。
しかしそうもうわかれば行動は速い。
勇がすぐに片手で【ドゥルムエーヴェ】を掴み、航行を邪魔しない様にしがみつく。
少し重心は変わるが、今のちゃななら制御は出来るだろう。
もうここまでで充分仕組みは理解出来たから。
「よし、このままロゴウの所まで行ける!?」
「行けません!! 制御できません!!」
「ええー!?」
ただし垂直上昇の手段だけに限り。
そう、今のちゃなはまさしくロケットなのだ。
空中での方向転換方法もわからないし、ドローンのローターを造れる訳でも無い。
だから上昇一辺倒、このままでは宇宙まで行きかねない。
故に、遂にはジョゾウ達の戦うすぐ傍を抜けて大空の中へ。
突如過ぎ去った何かに、ジョゾウ達もロゴウ達もただただ驚くばかりだ。
何が飛んできたのかさえ理解する間も無かったらしい。
「そうだ! 確か飛行機は翼があって―――フラップ、そうフラップだ! 上下に動く羽根があるんだ! 田中さん、まずヒートフィールドの形は変えられる!? 飛行機の翼をイメージするんだ!」
「あッ!! やってみます!!」
その最中、勇が出した案を素にちゃなが【常温膜域】を発動させて。
たちまち二人を僅かに赤く暖かな空間が包み込む。
おまけに二人へ掛かる突風の勢いも弱まって一石二鳥だ。
更にはフィールドがその形を変えていく。
それはまるで餅の様にやんわりと、でも不格好ながらちゃんと翼を象っていて。
きっとそれが早速効果を示したのだろう。
自然と、ちゃな達の体が水平線に対して平行となっていく。
空気の層がフィールド翼を捉え、押し込んだのだ。
「やった!」
「次は翼の後ろを上下に伸ばす様にイメージするんだ! 上に向ければ下降、下に向ければ上昇って感じになるはず!」
「はいッ!!」
こうなれば調子にも乗ろう。
言われたままにフィールドの形を変えれば、早速効果を実感する事に。
ちゃなの思うがまま、上昇下降が繰り返されるという。
しっかり言われた通りに動けている。
「よし、なら左右に動くのは、左右の翼を上下逆に向ければいい! 出来る!?」
「やれますッ!! ジョゾウさん達の所に戻りますね!!」
ならもう自由に動き回る事さえ可能だ。
たちまちちゃな達が旋回を始めていく。
そうして空を突き進む姿はまさしく飛行機そのものである。
ただ、飛行機の仕組みが勇の言った通りであるかどうかと言えば―――間違いだ。
本来ならば尾翼というものが無ければこれほ自由自在に動く事は叶わない。
それ無しで翼を動かした所で、自軸旋回したりするのが関の山だろう。
しかしそれでも動けるのは、魔剣の炎が制御しているから。
魔剣【ドゥルムエーヴェ】がちゃなのイメージに合わせて炎の向きを微調していて。
勇から伝えられたイメージを実現しようとして補正してくれている。
まるで飛行機の操縦補助システムと同じ様にして。
つまり、この制御システムの構築によって自由に空が飛べる様になったという事だ。
そう、ちゃなは今、単独で空を飛ぶ事が出来る様になったのだ。
上昇のみならず、飛行機の様に自由自在と。
これは人類史上類を見ない快挙である。
むしろ人単体による飛行など、これより先にも現れるかどうか。
まさしくちゃなの底力が見せる、常識を遥かに超えた偉業と言えよう。
惜しむらくは、当人達がその事実に全く気付いていない事か。
こうしてちゃながまさかの飛行能力を物にした。
かつての魔剣使いの歴史においても類を見ない能力である。
この力を以てジョゾウ達の下へと急ぎ向かう。
なんとしてでもこの戦いに勝つ為に。
ミゴやライゴの死を無駄にしない為にも。
その想いを、今抜ける大気の如く貫くのみ。
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