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第三十九節「神冀詩 命が生を識りて そして至る世界に感謝と祝福を」
~創世の鍵と現宇宙法則の位相互換理論~
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遂にあのアルトラン・アネメンシーが本当の姿を現した。
しかも全世界にその醜悪なまでの正体をも晒して。
故に人々は恐怖するだろう。
その姿に、声に、そして存在感に。
それ程までの畏怖を放っていたのだから。
ただ目に耳にして認識しただけで思わず震撼してしまう程に。
しかしたった一人だけ例外が居た。
そんな邪神が露わになろうとも意思一つ向けぬ者が。
「普段からこれくらい静かだと良かったんだがネ」
ピネである。
どうやら彼女の様に好奇心が一辺倒だと気にもならないらしい。
なお、ピネが居るのはアルクトゥーン居住ブロックだ。
避難にも参加せず、たった一人ひっそりと残って。
切り離された居住ブロックは防御機能を有していない。
つまり邪神の眷属が乗り込んでくる可能性もあるだろう。
それでも残ったのは何かを成すべきだと思ったからに違いない。
さしずめカプロを探して、と言った所か。
そんな彼女が魔導技術開発室へと足を踏み入れる。
もはや電灯さえ消え、闇と静けさに包まれた場所へと。
つい先日まではここも活気と使命感に溢れていたのだが。
今となってはもう随分と閑散としたものだ。
「ここにも居ない。 全くあの毛玉、一体どこに行っちまったのネ」
ついでにカプロの部屋へと首を伸ばすも、ひと気は一切無い。
宛が外れて気に入らなかったのか、思わず眉間が寄る事に。
するとそんな時、とある事に気が付く。
カプロのパソコンが起動したままだったのだ。
今なおディスプレイが光を放ち、開きっぱなしのデータファイルさえ覗き見えていて。
「アイツ、ホント不用心なのネ。 ま、邪神がパソコンを盗み見するなんて事は無いから平気だろうけどネ。 ったく世話が焼けるのネー」
堪らず「ハンッ」と荒い溜息が零れる事に。
そんな彼女にも親切心が―――いや、やはり好奇心か。
気付けばピネはもう画面の前に居た。
颯爽と椅子の上に飛び乗り、前のめりで食い入る様にして。
きっとカプロの個人研究が何なのかずっと気になっていたのだろう。
班長を押し付けてまで成したい事が何だったのか、と。
「何々、『【創世の鍵】構造と現宇宙法則の位相互換理論について』、こ、これって……!?」
だがその直後、タイトルを見ただけでその眼が見開かれる事となる。
しかも夢中になる余り、データを最初から見始めるという。
データ上に刻まれた論文と数列が気になって仕方なかったのだろう。
それだけ見出しから好奇心を限り無く煽りに煽っていたから。
「『天力転送が一種の光子移動と見立て、限り無く物質に影響されない。 つまり質量が無い、あるいは影響を受けない次元越的指向性を有している。 ならば宇宙そのものをフォノン的として仮定した場合はどうだろうか』。仮定から始まる論説なのネ。 けどこれは……!?」
カプロは『探究者』を名乗るビーンボールと仲が良かった。
それはカプロ自身も根本的に同類であり、無から有を導き出す事に意欲的だったから。
だから新魔剣開発もアルクトゥーン復元も何もかも夢中で進め続けたものだ。
でももし、その仮定に〝確信〟が籠められていた場合はどうなるだろうか。
答えは簡単だ。
真理しか生まれない。
しかも全てが全て新たな真理として。
革新的閃きばかりが生まれる事となるだろう。
だからこそ書かれた仮定文には真実ばかりが刻まれている。
何一つとして間違いの無い、斬新な閃きばかりが羅列していたのだ。
故にピネの好奇心が脳内でスパークする。
何もかもが一語一句として見逃せない程に。
そして最後の頁まで辿り着いた時、ピネは見るだろう。
その〝確信〟と〝核心〟が紡ぎ続けた先の、驚愕の結論を。
「『―――よって、【創世の鍵】の現宇宙法則における再現は理論上可能である』」
その後はもう絶句するしかなかった。
だらりと肩を落としてしまう程に。
何一つとして異論しようの無い理論構築だったからこそ。
「隠れて何やってたのかと思えば―――そうか、あの耳栓もこれで……。 やっぱりアータは天才なのネ。 いや、もうこれは天才だとかそういう次元を超えてる。 言わば、これはもう神の所業なのネ……!!」
けれど、読んでいる内に事実にも気付いてしまった。
構築された理論が決して楽な道ではないのだと。
その上で捧げなければならないモノがあるのだと。
「でもアータ自身が即身仏になっちまってどうするのネッ!! それでアータは良くても、他の奴が全く浮かばれやしないッ!! アータは神でも大馬鹿神なのネエッ!! ウッ、ウウゥ……!!」
遂にはキーボードに拳まで叩き付け、怒りを露にして。
蹲り、座り込み、ただただ泣き崩れて涙を流す。
その下腹部を静かに摩りながら。
こうしてピネは知った。
自分にはもうこれ以上何も出来ないのだと。
カプロ程に自らを犠牲と出来そうにもないから。
ただそれと同時に強い希望をも抱く事となる。
カプロが導いた答えが何よりもの強い力となるのだと知ったからこそ。
勇にとって、そしてこの世界にとっても。
だからこそ今は意思だけを受け継ごう。
論文の最後に書かれた〝遺言〟に従うままに。
同じ机に置かれたままの【グゥの日誌】をその手に取って。
背中に背負い、革紐で肩腰に括り付ける。
絶対にその身から離さない様にと。
その一刻後、邪神の眷属が居住区への侵入を果たした時の事。
一機の銀翼が外壁を突き破り、空へと高く舞い上がっていった。
共に悲しみに輝涙を舞わさせるも、その顔に覗く決意は固く。
今はただ生きる為に。
かの者の意志を絶やさぬ為にも。
しかも全世界にその醜悪なまでの正体をも晒して。
故に人々は恐怖するだろう。
その姿に、声に、そして存在感に。
それ程までの畏怖を放っていたのだから。
ただ目に耳にして認識しただけで思わず震撼してしまう程に。
しかしたった一人だけ例外が居た。
そんな邪神が露わになろうとも意思一つ向けぬ者が。
「普段からこれくらい静かだと良かったんだがネ」
ピネである。
どうやら彼女の様に好奇心が一辺倒だと気にもならないらしい。
なお、ピネが居るのはアルクトゥーン居住ブロックだ。
避難にも参加せず、たった一人ひっそりと残って。
切り離された居住ブロックは防御機能を有していない。
つまり邪神の眷属が乗り込んでくる可能性もあるだろう。
それでも残ったのは何かを成すべきだと思ったからに違いない。
さしずめカプロを探して、と言った所か。
そんな彼女が魔導技術開発室へと足を踏み入れる。
もはや電灯さえ消え、闇と静けさに包まれた場所へと。
つい先日まではここも活気と使命感に溢れていたのだが。
今となってはもう随分と閑散としたものだ。
「ここにも居ない。 全くあの毛玉、一体どこに行っちまったのネ」
ついでにカプロの部屋へと首を伸ばすも、ひと気は一切無い。
宛が外れて気に入らなかったのか、思わず眉間が寄る事に。
するとそんな時、とある事に気が付く。
カプロのパソコンが起動したままだったのだ。
今なおディスプレイが光を放ち、開きっぱなしのデータファイルさえ覗き見えていて。
「アイツ、ホント不用心なのネ。 ま、邪神がパソコンを盗み見するなんて事は無いから平気だろうけどネ。 ったく世話が焼けるのネー」
堪らず「ハンッ」と荒い溜息が零れる事に。
そんな彼女にも親切心が―――いや、やはり好奇心か。
気付けばピネはもう画面の前に居た。
颯爽と椅子の上に飛び乗り、前のめりで食い入る様にして。
きっとカプロの個人研究が何なのかずっと気になっていたのだろう。
班長を押し付けてまで成したい事が何だったのか、と。
「何々、『【創世の鍵】構造と現宇宙法則の位相互換理論について』、こ、これって……!?」
だがその直後、タイトルを見ただけでその眼が見開かれる事となる。
しかも夢中になる余り、データを最初から見始めるという。
データ上に刻まれた論文と数列が気になって仕方なかったのだろう。
それだけ見出しから好奇心を限り無く煽りに煽っていたから。
「『天力転送が一種の光子移動と見立て、限り無く物質に影響されない。 つまり質量が無い、あるいは影響を受けない次元越的指向性を有している。 ならば宇宙そのものをフォノン的として仮定した場合はどうだろうか』。仮定から始まる論説なのネ。 けどこれは……!?」
カプロは『探究者』を名乗るビーンボールと仲が良かった。
それはカプロ自身も根本的に同類であり、無から有を導き出す事に意欲的だったから。
だから新魔剣開発もアルクトゥーン復元も何もかも夢中で進め続けたものだ。
でももし、その仮定に〝確信〟が籠められていた場合はどうなるだろうか。
答えは簡単だ。
真理しか生まれない。
しかも全てが全て新たな真理として。
革新的閃きばかりが生まれる事となるだろう。
だからこそ書かれた仮定文には真実ばかりが刻まれている。
何一つとして間違いの無い、斬新な閃きばかりが羅列していたのだ。
故にピネの好奇心が脳内でスパークする。
何もかもが一語一句として見逃せない程に。
そして最後の頁まで辿り着いた時、ピネは見るだろう。
その〝確信〟と〝核心〟が紡ぎ続けた先の、驚愕の結論を。
「『―――よって、【創世の鍵】の現宇宙法則における再現は理論上可能である』」
その後はもう絶句するしかなかった。
だらりと肩を落としてしまう程に。
何一つとして異論しようの無い理論構築だったからこそ。
「隠れて何やってたのかと思えば―――そうか、あの耳栓もこれで……。 やっぱりアータは天才なのネ。 いや、もうこれは天才だとかそういう次元を超えてる。 言わば、これはもう神の所業なのネ……!!」
けれど、読んでいる内に事実にも気付いてしまった。
構築された理論が決して楽な道ではないのだと。
その上で捧げなければならないモノがあるのだと。
「でもアータ自身が即身仏になっちまってどうするのネッ!! それでアータは良くても、他の奴が全く浮かばれやしないッ!! アータは神でも大馬鹿神なのネエッ!! ウッ、ウウゥ……!!」
遂にはキーボードに拳まで叩き付け、怒りを露にして。
蹲り、座り込み、ただただ泣き崩れて涙を流す。
その下腹部を静かに摩りながら。
こうしてピネは知った。
自分にはもうこれ以上何も出来ないのだと。
カプロ程に自らを犠牲と出来そうにもないから。
ただそれと同時に強い希望をも抱く事となる。
カプロが導いた答えが何よりもの強い力となるのだと知ったからこそ。
勇にとって、そしてこの世界にとっても。
だからこそ今は意思だけを受け継ごう。
論文の最後に書かれた〝遺言〟に従うままに。
同じ机に置かれたままの【グゥの日誌】をその手に取って。
背中に背負い、革紐で肩腰に括り付ける。
絶対にその身から離さない様にと。
その一刻後、邪神の眷属が居住区への侵入を果たした時の事。
一機の銀翼が外壁を突き破り、空へと高く舞い上がっていった。
共に悲しみに輝涙を舞わさせるも、その顔に覗く決意は固く。
今はただ生きる為に。
かの者の意志を絶やさぬ為にも。
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