時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
1,177 / 1,197
第三十九節「神冀詩 命が生を識りて そして至る世界に感謝と祝福を」

~双 界 剣~

しおりを挟む
 いつか誰かが望んだものだ。
 世界が元に戻る日の事を。
 魔剣だとか機械だとか、そんな非現実的なモノが消え去る事を願って。

 でも気付けば、人はそれさえも受け入れていて。
 新たな摂理として認識し、共に歩む事を選んだ。
 そうして手を取り、今までに見えもしなかった別の明日を共に描こうとしている。

 それが非現実性を帯びて歪でも、今の彼等にとっては何より正しくて。
 例えいつか元に戻って泡沫の夢となろうとも、可能性があるから築かずにはいられない。

 それは人が欲したのがモノではないから。
 モノを創る上で掴めるキッカケを欲したからだ。
 閃きと、革新と、発展という次世代への可能性を。

 新たなる世界の形と、進むべき未来の形を想像して。

 その意味は今だけを生きる者にはわからないかもしれない。
 これからを生きる者でも知り得ないかもしれない。

 でも、過去に生きた者達には見えていたのかもしれない。
 いつかこの様な戦いが訪れる日の事を。
 だから可能性へのキッカケを幾つも残し、来たるべき時に備えた。

 それは単に願ったからだ。
 尾を引く自らの罪がいつか断ち切れる事を。
 更にその先の未来にて不幸が続かない事を。
 
 そう、人々はもうその時から未来に目を向けている。
 なら今を生きる者も、これからを生きる者も、いつかきっと未来に目を向け始めるだろう。
 誰かが示すその時を待ち焦がれて。

 いつか、そのキッカケを更なる形へと昇華させる為に。
 それを出来るのが人という生き物なのだから。

 

 だからこそここまで来た。
 未来を示す為の、絶対に乗り越えるべき戦いへと。



 故に今、勇が空を睨み付ける。
 顕現した邪神へ叛意を示す為に。

 この戦いの勝敗に全宇宙の命運が掛かっている。
 【セカイ輪廻】という継承の系譜さえもが。

 負けられない。
 負ける訳にはいかない。
 その想いが光と成って迸る。
 右手に輝き伸びる虹光と共に。
 
『この姿を晒させた今、お前に勝つ道理は存在し得ない。 なればいっそ嘆け。 愛する者ごと貫いてしまえば良かったと。 自らの手でかの首を刎ね、磨り潰した方がずっとマシだったのだと』

「それはどうかな? 貴様の論理はもう破綻している。 俺が今無事に立っていて、貴様自身がこうして出て来た時点でな!!」

 その身を包む力が波動さえ打ち放つ。
 辺り一帯を浸す海水でさえ大海へと返す程に。
 触れた飛沫が弾け、蒸発する程に激しく強く。

 一語一句に気迫さえ乗せ、鬼気混じる悪声を押し返しながら。



「つまりそれは、貴様も所詮世界の摂理の一つに過ぎないって事だ! なら俺がその歪んで狂った摂理を今、断ち切ってみせるッ!!」

 

 その一声は邪神の怒りを煽るには十分だった。
 これだけの強い希望が当てられたのならば。

『やれるものかあッ!! この屑肉如きがあーーーーーーッッ!!!』

 故に焚き付けられた怒りや憎しみはもはやとめどない。
 無限の力を際限無く、何一つ躊躇い無く放ててしまう程に。

 突如として、四手上に黒光球が形成されていく。
 それも、二~三人分は有ろうかという大きさの。
 破滅の輝きを轟々と放ち、棘の如き閃光を尖らせ震えながら。
 
 その黒光球が直後にはアルトラン・アネメンシーの手より解き放たれる事に。
 しかも瞬時にして勇へと着弾する程に速く。

ドッガァァァーーーッッッ!!!

 たちまち着弾地点が黒光の爆発に包まれる。

 しかしそれでも攻撃は止まない。
 二波・三波と黒光球が放られ続け、なお爆発が激しさを増させていて。

 岩礁が砕け、抉られて。
 石片が弾かれ、消し飛んでいく。
 海水さえも吹き飛び、海さえ押し潰すまでに。
 なれば空に暗雲さえ呼び、うねるが如く荒れ狂おう。

 圧倒的な破壊力だった。
 島そのものが跡形も無くなる程に。
 余波だけで地盤そのものが吹き飛んでしまったのだ。

『ハ ハ ハ!! 潰れろ! 消し飛べ! 天力子の欠片一つ残さずにィ!!』

 これ全てが【崩力】である。
 それも炸裂した途端に周囲を包む程に濃い。
 これでは天力転送さえままならないだろう。

 つまり、勇は逃げられないという事だ。
 この爆発を受けた今となってはもう。

『これが神の慈悲だ!! 苦しみも悲しみも残さず消えよ!! ハ ハ ハ―――ッ!?』

 いや、逃げるつもりなど無かった。
 例えどれだけの強大な力で撃たれようとも。
 己の力が【崩力】の反性質を有している限り。

 その力を信じ抜けば、崩力領域と同様に弾く事が出来るのだと。

 故にこの時、アルトラン・アネメンシーは目の当たりにする事となる。
 黒の粉塵舞う爆発の中にて輝く虹光を。



 全てを押し退け掲げ立つ、閃緑光放ちし輝剣の姿を。



 その姿は【創世剣】では無い。
 だがそれでいて天力を纏う姿は同様に神々しい。

 まるでかつての【翠星剣】を模したかの如く、刃は翡翠色に輝き放ち。
 リフジェクトライトを彷彿とさせる緑水晶が刀芯を構築しているという。
 そんな刀身から流れる様に鍔が象られ、中心には十二の輝石が煌めき魅せよう。
 羅針盤、そう彷彿とさせる意匠と共に、まさしく時を刻むかの様に輝きて。

『そ、そんな馬鹿な!? 有り得るはずが無い!? 【創世の鍵】があるなどおッ!?』

 アルトラン・アネメンシーにはこの剣がそう見えていたのだろう。
 視覚ではなく感覚的に見ているからこそ。

 唯一無二のはずだった【創世の鍵】が―――二つ、あるのだと。

 これがカプロの託した最後の希望ピースだった。
 勇が茶奈を救う手段に迷っていた時に預けられた、信じられもしない可能性。



 その名も【双界剣グランディーヴァ】。
 気高き魂を犠牲に創り上げた、この世界に産まれし天士の為の一振りである。



 いや、犠牲と言うのは少し違うか。
 何故なら、カプロは今も生き続けているから。
 この剣の中で己の力を吹き出し続けながら。

 カプロはその命を【双界剣】へと注いだのだ。
 かつてア・リーヴェが世界を分断しようとして、【創世の鍵】と一体化したのと同様に。
 それがつまりどういう事かわかるだろうか?

 そう、カプロは天士となっていたのである。
 しかもア・リーヴェ達さえも想定していない、魔者からの天士に。

 魔者は只の礎のはずだった。
 人間が天士に成る為の指標で、そのものに天士へ至る可能性は無いのだと。
 しかしその可能性さえ千切り、己を信じ抜き、そして進化を果たした。
 その上で力を全てこの【双界剣グランディーヴァ】へと注ぎ、託したのだ。

 茶奈を救う為に。
 世界を救う為に。
 そして未来に生きる者達の為に。

 自分がここまでに置いて来たキッカケを誰かに継いでもらう為に。

 その事を勇も知った。
 剣を通して教えて貰った。
 だからこそ、悲しくとも辛くは無い。

 今、二人は共に居るのだから。
 共に戦ってくれているのだから。

 故に翳そう。
 右手に【双界剣】を。
 左手に【創世剣】を。
 今こそ刃を重ね、世界の希望とならんと。
 かつてより手を取り合って来た親友カプロの心と共に。



 ならばもう、恐れる事など何も無い。
 今こそ二対の神剣を存分に奮ってみせよう。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...