時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ

文字の大きさ
1,184 / 1,197
第三十九節「神冀詩 命が生を識りて そして至る世界に感謝と祝福を」

~攻防、その先に見える不安とは~

しおりを挟む
 仲間達が見守る中、勇と茶奈が死力を尽くす。
 執拗な攻撃を躱し続け、何度も隙を突いて。

 仲間達の応援が明らかに効いている。
 お陰で【双界剣】が更に強く光を迸らせているのだ。
 崩力領域内でもその輝きを失わない程に。

 故に放たれる斬撃は邪神の身体をも容易に斬り裂けよう。
 アルトラン・アネメンシーもその強さ勢いを前には余裕さえ消える。
 なお攻撃手段を進化させ続け、勇達を徹底的に近づけさせようとはしない。

 だからか自然と勇の求める力も際限無く上がり続ける。
 それは茶奈の飛行能力も例外ではない。

「もっとだ!! 俺の身体の事なんて気にせず、思いっきり飛ばしてくれッ!!」

「はいッ!!」

 茶奈の飛行能力だけは彼女自身の匙加減で決まる。
 加えて魔剣による制御を失った今、この加減は徐々に慣らしていくしかない。
 その所為で今でもまだ星力解放状態にも至っていないという。

 それでもなんとか戦えてはいるが、このままでは追い付かれかねない。

 アルトラン・アネメンシーも高まっているのだ。
 世界の絶望を吸収する事で今なお。
 もしそのバランスが上回られた場合、勇達はまた飛行前の劣勢に戻るだろう。

 そうなる訳にはいかない。
 そんな意志が茶奈の脳裏に駆け巡り、光翼を更に強くする。
 鳴動音さえ掻き鳴らし、魔剣の装甲間からも光を打ち放つ程に。

 その中で一度空へと突き抜ければ、無数の光線が空を裂いて追ってくる。
 しかしタネが明かされた今なら回避も可能だ。
 全周囲から迫る崩烈閃を無軌道ジグザグに避けきる姿が空に。

「学習出来るのがお前だけだと思うなよッ!!」

『余計な知恵を付けた所で変わりはせん!! その事に今すぐ後悔するだろうッ!!』

 更には【創世甲】が弾き、烈閃が幾つも鋭角軌道を描いて彼方へ。
 例え捉えられたとしても、神壁がこうして確実に防いでくれるから。

 時間は無い、けど慣れるまでならある。
 余裕は無い、けど安心なら出来る。
 だからこそ二人の戦いにもう不安は見えない。

 攻撃の雨嵐を掻い潜り、隙を縫って斬り掛かるくらいに。

 それをアルトラン・アネメンシーが幽霊の如き浮遊転向で躱してみせる。
 更にはそんな二人を捉えようと、幾度と無く【崩力】がバラ撒かれる事に。
 崩力球や崩烈閃だけではなく、更に新しい攻撃手段バリエーションまでをも加えて。

 崩力球から破裂分散して襲い掛かる崩散弾。
 崩烈閃を細かく連続で放つ、速射型の崩連閃。
 しかも崩烈閃自体もまさしく光線レーザーの如く連続照射し、着弾した全てを焼き切っていく。

 その様子はもはや破壊の限りだった。
 
 崩力球、崩散弾の影響は限定的でも凄まじい。
 海に着弾すれば間も無く一帯の海水が吹き飛び、海底をも抉り潰す。
 それも広域であるが故に、海洋への悪影響は計り知れないだろう。
 
 崩連閃は見境無しに全周囲へと打ち放たれていて。
 その所為で瀬玲達の居る島にさえ影響は及び、消し飛ばさんばかりに削り取っていく。
 デュランが防がねばもう誰も立って居られなかったに違いない。

 崩烈閃が一度地を走ればたちまち海が割れ、海底が裂かれて果てまで抉る。
 その先に島があれば地盤ごと真っ二つだ。
 丘陵でさえ赤熱溶断され、地の底にまで続く谷が生まれるという。

 まるで地球そのものを砕かんばかりの勢いだ。
 実際の所、攻撃が見える諸島領域一帯はもはや八つ裂きである。
 さすがの二人もそこまでに気を回せられる程の余裕は無い。

 しかし水平線の先の惨状は空から目が届く。
 なまじ目が良いからこそ見えてしまうのだ。
 遂には北のアラスカにまで影響が及び、彼方で大地が高々と打ち上がっているのを。

「くっ!? 何もかも好き放題かッ!!」

「攻勢、出ましょう勇さん!! 私、応えるからッ!!」

「わかったッ!! こうなったら一気に攻めるッ!! フルパワーだあッッ!!!」

 その見境ない暴挙はもう見過ごせない。
 そんな想いが迸り、【双界剣】に強い光をもたらす事に。

 刃を包む虹光が伸び始めたのだ。
 彼等よりも長く、それでいて物質と思える程に濃く固着して。
 その姿は、まるで巨大な剣か槍か。

 その刃をアルトラン・アネメンシーへと向け、一気に突き抜ける。
 無数の破壊の嵐をも潜り抜けながら。
 小さい攻撃など打ち消し、光線さえも弾き、崩力球をも貫いて。
 
 でも相手も気付いている。
 だからこそ距離を取り、そう簡単には近寄らせない。
 なれば巨大な刃が突き抜けたとて掠る事も無く。

 直後、斬撃が一度二度と切り払われるが無駄だ。
 それでも巨大な身体が器用に避けてしまう。
 なんという回避能力か。

 それどころか反撃の崩力球・崩散弾までもが真正面から。

「くそおおおーーーッ!!」

 たちまち強引と後退を余技なくされる。
 隙間なく放射された弾丸を盾で受け止めた事で。
 
 そのまま大きく弧を描いて飛び抜けるも、相手はもう景色の先だ。
 高笑いを上げるままに、海上を抜ける勇達へと攻撃を見舞い続けていて。

ズズンッ!! バヴォヴォヴォーーーッ!!!

 海が喰われる。
 激しい衝撃波が撒き散らされる中で。

 高波が打ち上がる。
 勇と茶奈を襲わんとばかりに高々と。

 しかし残光がそんな波さえ切り裂き、再び空へと一直線に舞い上がる。
 無数の攻撃さえも乗り越え、先を行く様にして。

「もっと、もっと力を頂戴!! お願い【エフタリオン】ッ!!!」

 その軌跡はもはや今までをも凌駕する。
 通常状態よりもずっと大きな翼へと進化し、更なる推力を与えていたのだ。
 勇と茶奈に歯を食い縛らせる程の加速重圧を与えながら。

『どこへ行こうと言うのだァ?』

 だがその直後、突如にして二人を影が包む。
 空の彼方に居たはずのアルトラン・アネメンシーがすぐ背の先に居たのだ。

 空間転移である。
 天力転送と同じ力を使って見せたのだ。
 それも有ろう事か、自ら近付くという虚を突いて。
 
 たちまち巨大な拳が唸りを上げる。
 勇達を潰さんとばかりに突き合わせようとして。

 ただその一撃も、稲妻の如き高速機動が回避を許す。
 間一髪、翼の一部を削られての領域脱出により。

「転移予測出来る事も貴様が示した事だッ!! なら俺にだって出来るッ!!」

『フンッ、その程度が出来たからと浮かれる虫けらがッ!! だからお前達は肉の領域から出れはしないのだッ!!』

 そう、勇もここまでの戦いで学習し続けている。
 【崩力】を弾く事も、転移予測パターンも何もかも。
 例え敵が使った技術だろうと吸収し、使ってさえ見せよう。
 それを出来る器が今の勇にはあるのだから。

 その事実が戦いの様相をガラリと換えた。
 とうとう近接戦闘を繰り広げ始めたのだ。

 なればたちまち斬撃と巨拳が幾度と無く空を裂く事に。

 アルトラン・アネメンシーにはそれでも全てを回避出来る自信があるのだろう。
 勇の攻撃パターンも、茶奈の飛行能力も見切れたからこそ。

 だとしても勇達が抗えるのはなお進化し続けているからだ。
 読まれた動きのその先へ、予測加速値さえも上回って。

 故に拮抗している。
 まだまだ決着が着きそうとは思えない程に。

 ただ、この調子で戦えば勝機も―――そうとさえ思えてならなくて。



 しかしこの時、勇も茶奈も気付いてはいなかった。
 自分達が今の状況を狂わせる程の不安要素を抱いていたという事に……。


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...