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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」
~すまんな、現金な奴だと笑ってくれ~
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「勇さん、ちょっといい?」
カプロ達も送り出し、一山越えた所でふとこんな一声が。
すると愛希が何やらこっそりと、勇の背後から現れて。
「ん、何? 愛希ちゃん」
「ちょっと気になった事があってさ」
その声は僅かに小声。
周りに意識する辺り、あまり口外したくない話らしい。
「あんまり突っ込みたくなかったんだけど、もしかして勇さんの興行ってあの子達と交流してたって事?」
「あー、うん。実はそうなんだ。ちょっと出会いに縁があってね。だから福留さんにも任せられて。世代の近い子も多いし」
「なるほどねぇ、だからかぁ」
全てを知らないとはいえ、愛希も勇の秘密を一つ知る人物で。
だからこうしてデリケートな部分も配慮してくれる。
普通のギャルと言えども、どうやらそこまで愚かではない様だ。
それに本人もこれで知りたい所はわかったから充分だったのだろう
これ以上は訊く事も無く、そっと勇から離れていく。
勇もこう訊かれる事はわかっていた。
なので対応する為の答えも既に用意済みで。
それに嘘は言っていない。
ただ端的に端折っただけで。
本当の事を語ればいいだけだから、罪悪感も演技力も必要無い。
愛希との一件にて、福留から学んだ会話力が活きた瞬間である。
お陰で今はもう落ち着いたものだ。
新たな来客に笑顔で応えられるくらいには。
ただし、今度の来客はそんな笑顔も頑なになりそうな相手だったけれども。
「おじいちゃん来たよ」
莉那である。
福留の孫、再び。
ミズニーランド事件で騒動の発端となった彼女だ。
もちろん鉄面皮は健在。
無表情で福留を見上げる姿は、本当に仲が良いのかさえ怪しく見える。
「おぉ莉那ちゃん来ましたか。ところであの二人は?」
「仕事」
「はぁ……全く、あの二人ときたら」
しかもこう交わしてる最中に見せたのはなんと、福留の憤る顔だ。
普段余り見せない珍しい表情である。
〝二人〟というのは恐らく、莉那の両親の事。
その二人が来られないのがよほど気に食わなかったのだろう。
ただこれは勇も同意見だ。
莉那はまだ中学生で、しかも背が低いから小学生にさえ見えてしまう。
だから一人で街を出歩くのは少し危ない。
なのに両親が同伴しないなどあっていいのかと。
そんな境遇の所為か、莉那の無表情が怒面にさえ見えてならない。
「あっ、莉那様、お久しぶりでございます」
「やほ」
その表情はエウリィが来ても変わらない。
まるで怒ったまま挨拶している様にも見えてくる。
そのはずだったのだけれども。
「おや莉那ちゃん、とても嬉しそうですねぇ。エウリィさんとの再会がよほど待ち遠しかったのでしょう」
「これ嬉しがってるの!?」
それはどうやら勇の想い過ごしだったらしい。
鉄面皮から表情を読み取るにはまだまだ経験が足りない様だ。
そもそも読み取ろうとする事自体が間違いなのかもしれないが。
フィーリング、とても大事である。
「ここで良かったのかしら――あらぁ、勇君と福留さん」
そんな悩ましいやり取りの中、またしても厄介な来客がやってくる事に。
レンネィだ。
しかも現代の私服を着込んでの登場という。
ただ、もの凄く露出度が高い。
夏服かと思えるくらいに。
袖の短い黒ジャケットに、ボディラインの浮かぶピンクシャツ一枚。
デニムの短パンからは薄手の黒タイツに黒ブーツと、雰囲気はお姉様そのもの。
余りにも現代に馴染み過ぎてて、とても異世界人とは思えない。
なんだかモデルでもやってそうなプロポーションだ。
「関係者以外はお断りです」
「ちょっと! 扱い酷いじゃなぁい!!」
おまけに相変わらずのノリの軽さから、勇もついついこうして弄りたくもなる。
なのでこれには当人も突っ込まざるを得ない。
「久しぶり過ぎて忘れてました」
「それ天然? 冗談?」
「はは、冗談ですよ。海外研修だったんでしたっけ」
「まぁそれもあるけれど。基本的にはこの世界の事を知る為に必死に勉強よ。頭が痛くなるくらいにね」
とはいえ、扱い方を忘れそうになっていたのは事実。
なにせレンネィとの再会は本当に久しぶりで。
あの剣聖とのひと悶着以来、会っていなかったのだから。
大体三ヶ月半ぶりといったところか。
でもその間に、レンネィなりに変化した所もある。
「あれ、そういえば今日魔剣持ってきてないんですね」
「えぇ、『こちら側』じゃ帯刀するのはご法度らしいじゃない。だから合わせる事にしたの。【ウヴレカ・ビャラーセ】ってね」
どうやら魔剣を手放す事に抵抗が無くなったらしい。
これは魔剣使いにとってはとても大きな一歩と言えよう。
なんだかんだで現代に順応してくれている。
もしかしたら、そんなレンネィこそが異世界人の中で最も先に進んでいるのかもしれない。
少し扱いにくいけど、そういった意味では頼りになる。
異世界のお姉さんはどうやら、知らぬ間に世界の架け橋の一人になってくれた様だ。
「相変わらず人気者だな、藤咲氏」
「あ、杉浦さん!」
そんなレンネィを送り出して間も無くの事。
続いて現れたのは、先日も世話になった杉浦だった。
それも三人ほどの仲間達も引き連れての。
ジョゾウ達の輸送を手伝ってくれた人も一緒だ。
「皆個人の都合があってな、これだけしか集められなかった。許せ」
「いえ、充分ですよ。来てくれただけで嬉しいです」
皆大人だから個人的な用もあるだろう。
そんな中で来てくれたのは嬉しいに違いない。
例え他に用事が無かったからなのだとしても。
「あれ、でも杉浦さんも家族居ますよね?」
「それがだな……妻に、高額景品をもぎ取ってこいと言われた。招待状と共に送られてきたパンフに『豪華景品が貰えるかも』という走り書きがあったもので」
「OH……」
「すまんな、現金な奴だと笑ってくれ」
人には色々事情がある。
ツッコミ所が多くても突っ込んではいけない事柄が。
先のレンネィだってそう。
個人的な事情とは決して触れてはいけない所なのだ。
だからこそ勇もそっと杉浦の肩を叩く。
羞恥で震えた肉体くらいは触れても構わないだろうから。
「なら是非当ててください。自信の逸品ばかり用意しましたから」
「恩に着る。仮に当てたとしても、売る様な事は俺が断固として防いでみせよう」
救いは杉浦本人がまだまともな事か。
例え妻に頭が上がらなくとも、こうして律儀だから頼れるというもの。
さすがに軍人ともなれば精神面では誰よりも強いだろうから安心だ。
――多分。
こうして招待客が次々と入場を果たしていく。
気付けば料理も並べられ始め、皆の好奇心をそそる事に。
勇達の渾身のクリスマスパーティがもうすぐ始まる。
そう思わせるには充分な装いがこの場に生まれ始めていた。
カプロ達も送り出し、一山越えた所でふとこんな一声が。
すると愛希が何やらこっそりと、勇の背後から現れて。
「ん、何? 愛希ちゃん」
「ちょっと気になった事があってさ」
その声は僅かに小声。
周りに意識する辺り、あまり口外したくない話らしい。
「あんまり突っ込みたくなかったんだけど、もしかして勇さんの興行ってあの子達と交流してたって事?」
「あー、うん。実はそうなんだ。ちょっと出会いに縁があってね。だから福留さんにも任せられて。世代の近い子も多いし」
「なるほどねぇ、だからかぁ」
全てを知らないとはいえ、愛希も勇の秘密を一つ知る人物で。
だからこうしてデリケートな部分も配慮してくれる。
普通のギャルと言えども、どうやらそこまで愚かではない様だ。
それに本人もこれで知りたい所はわかったから充分だったのだろう
これ以上は訊く事も無く、そっと勇から離れていく。
勇もこう訊かれる事はわかっていた。
なので対応する為の答えも既に用意済みで。
それに嘘は言っていない。
ただ端的に端折っただけで。
本当の事を語ればいいだけだから、罪悪感も演技力も必要無い。
愛希との一件にて、福留から学んだ会話力が活きた瞬間である。
お陰で今はもう落ち着いたものだ。
新たな来客に笑顔で応えられるくらいには。
ただし、今度の来客はそんな笑顔も頑なになりそうな相手だったけれども。
「おじいちゃん来たよ」
莉那である。
福留の孫、再び。
ミズニーランド事件で騒動の発端となった彼女だ。
もちろん鉄面皮は健在。
無表情で福留を見上げる姿は、本当に仲が良いのかさえ怪しく見える。
「おぉ莉那ちゃん来ましたか。ところであの二人は?」
「仕事」
「はぁ……全く、あの二人ときたら」
しかもこう交わしてる最中に見せたのはなんと、福留の憤る顔だ。
普段余り見せない珍しい表情である。
〝二人〟というのは恐らく、莉那の両親の事。
その二人が来られないのがよほど気に食わなかったのだろう。
ただこれは勇も同意見だ。
莉那はまだ中学生で、しかも背が低いから小学生にさえ見えてしまう。
だから一人で街を出歩くのは少し危ない。
なのに両親が同伴しないなどあっていいのかと。
そんな境遇の所為か、莉那の無表情が怒面にさえ見えてならない。
「あっ、莉那様、お久しぶりでございます」
「やほ」
その表情はエウリィが来ても変わらない。
まるで怒ったまま挨拶している様にも見えてくる。
そのはずだったのだけれども。
「おや莉那ちゃん、とても嬉しそうですねぇ。エウリィさんとの再会がよほど待ち遠しかったのでしょう」
「これ嬉しがってるの!?」
それはどうやら勇の想い過ごしだったらしい。
鉄面皮から表情を読み取るにはまだまだ経験が足りない様だ。
そもそも読み取ろうとする事自体が間違いなのかもしれないが。
フィーリング、とても大事である。
「ここで良かったのかしら――あらぁ、勇君と福留さん」
そんな悩ましいやり取りの中、またしても厄介な来客がやってくる事に。
レンネィだ。
しかも現代の私服を着込んでの登場という。
ただ、もの凄く露出度が高い。
夏服かと思えるくらいに。
袖の短い黒ジャケットに、ボディラインの浮かぶピンクシャツ一枚。
デニムの短パンからは薄手の黒タイツに黒ブーツと、雰囲気はお姉様そのもの。
余りにも現代に馴染み過ぎてて、とても異世界人とは思えない。
なんだかモデルでもやってそうなプロポーションだ。
「関係者以外はお断りです」
「ちょっと! 扱い酷いじゃなぁい!!」
おまけに相変わらずのノリの軽さから、勇もついついこうして弄りたくもなる。
なのでこれには当人も突っ込まざるを得ない。
「久しぶり過ぎて忘れてました」
「それ天然? 冗談?」
「はは、冗談ですよ。海外研修だったんでしたっけ」
「まぁそれもあるけれど。基本的にはこの世界の事を知る為に必死に勉強よ。頭が痛くなるくらいにね」
とはいえ、扱い方を忘れそうになっていたのは事実。
なにせレンネィとの再会は本当に久しぶりで。
あの剣聖とのひと悶着以来、会っていなかったのだから。
大体三ヶ月半ぶりといったところか。
でもその間に、レンネィなりに変化した所もある。
「あれ、そういえば今日魔剣持ってきてないんですね」
「えぇ、『こちら側』じゃ帯刀するのはご法度らしいじゃない。だから合わせる事にしたの。【ウヴレカ・ビャラーセ】ってね」
どうやら魔剣を手放す事に抵抗が無くなったらしい。
これは魔剣使いにとってはとても大きな一歩と言えよう。
なんだかんだで現代に順応してくれている。
もしかしたら、そんなレンネィこそが異世界人の中で最も先に進んでいるのかもしれない。
少し扱いにくいけど、そういった意味では頼りになる。
異世界のお姉さんはどうやら、知らぬ間に世界の架け橋の一人になってくれた様だ。
「相変わらず人気者だな、藤咲氏」
「あ、杉浦さん!」
そんなレンネィを送り出して間も無くの事。
続いて現れたのは、先日も世話になった杉浦だった。
それも三人ほどの仲間達も引き連れての。
ジョゾウ達の輸送を手伝ってくれた人も一緒だ。
「皆個人の都合があってな、これだけしか集められなかった。許せ」
「いえ、充分ですよ。来てくれただけで嬉しいです」
皆大人だから個人的な用もあるだろう。
そんな中で来てくれたのは嬉しいに違いない。
例え他に用事が無かったからなのだとしても。
「あれ、でも杉浦さんも家族居ますよね?」
「それがだな……妻に、高額景品をもぎ取ってこいと言われた。招待状と共に送られてきたパンフに『豪華景品が貰えるかも』という走り書きがあったもので」
「OH……」
「すまんな、現金な奴だと笑ってくれ」
人には色々事情がある。
ツッコミ所が多くても突っ込んではいけない事柄が。
先のレンネィだってそう。
個人的な事情とは決して触れてはいけない所なのだ。
だからこそ勇もそっと杉浦の肩を叩く。
羞恥で震えた肉体くらいは触れても構わないだろうから。
「なら是非当ててください。自信の逸品ばかり用意しましたから」
「恩に着る。仮に当てたとしても、売る様な事は俺が断固として防いでみせよう」
救いは杉浦本人がまだまともな事か。
例え妻に頭が上がらなくとも、こうして律儀だから頼れるというもの。
さすがに軍人ともなれば精神面では誰よりも強いだろうから安心だ。
――多分。
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