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第十一節「心拠りし所 平の願い その光の道標」
~もはやこれで終わり也て~
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剣聖が突如として復帰し、勇達の窮地を救った。
決して負けた訳では無かったのだ。
ただ復帰するのに時間が掛かっただけで。
だからか、今の剣聖に疲労や消耗は無い。
精々服が破れ、風で今にも千切れそうになっているというくらいだ。
たった今【グリュダン】が倒れた事で起きた突風によって。
その地響きもが場を騒がせる中、剣聖がその先へ見据える。
もう起き上がる事さえ困難な勇を前にして。
「ここまで持ち堪えた褒美だ。おめぇに俺のとっておきを見せてやる」
「えっ……?」
しかしもうその眼に普段の緩さは一切無い。
完全に【グリュダン】を仕留めるつもりなのだ。
それも手心一つ加える気さえ無く。
最中、彼方の巨人が再び立ち上がる。
今度は今まで通りに素早く、それでいて剣聖へと敵意を撒き散らして。
恐らくもう完全に気配を捉えているのだろう。
それも当然か。
剣聖から立ち上る命力はそれだけの強大さとなっていたのだから。
まるで「こっちに来い」と誘っているかの如く。
そんな剣聖が衣服を破り捨てていて。
間も無く、左右に魔剣を拡げて空高く飛び上がる。
【グリュダン】が地響きを立てて走り来る中で。
そしてその時、勇は目の当たりにする事となる。
空高く舞い上がる者の輝きを。
その両手に掴む光翼で羽ばたき舞う剣聖の姿を。
その様相はまさしく光の翼だった。
それ程までに濃く、輪郭を持った命力が両魔剣から迸っていたのだ。
しかもその大きさは尋常ではない。
なにせ、あの【グリュダン】の体幅にさえ匹敵する程の巨大さなのだから。
その全てが命力。
なんという圧倒的な放出量だろうか。
そんな光翼が更に形を大きく変えていく。
余りの出力ゆえか、剣聖の体を宙へと固定したままに。
そうして空に刻まれしは無限の光輪。
まるで剣聖の力を体現するかの様な凄まじい輝きだった。
空に光が走る。
閃光が弾けて火花散る。
剣聖より放たれ、返り、循環しながら。
【グリュダン】の右拳が迫る、その中で。
ギャリリリリッッッ!!!!
すると突如、場にけたたましいまでの音が鳴り響く。
まるで金属を切り裂いた様な甲高い激音が。
なんとあろう事か。
【グリュダン】の右腕が剣聖の前で――千切れ跳んでいた。
それもバラバラに刻まれながら。
更には余りの衝撃でその巨体が怯み、退き下がる。
走り込んで来た勢いさえ無にする強固さが今の剣聖にはあったのだ。
だが剣聖は何もしていない。
その両手より迸る無限環を体現したまま。
剣も振るっていないし、只浮いていただけで。
その無限環に触れただけで引き裂かれただけに過ぎない。
「もはやこれで終わり也て――ぬぅうううんッッッ!!!!」
それに、何かをするのは――これからだ。
きっと退いた事が【グリュダン】の最大のミスだったのだろう。
押し切れなかった事が敗北を助長する事になるのだと。
いや、そんな事などもはや関係なかったのかもしれない。
何故ならば――
この剣技を前には、もはや耐えられる者など居ないのだから。
「かあああッッ!!! 【二 天 剣 塵】ッッッ!!!!!」
眩しいまでの光が迸る中、遂にその時が訪れる。
剣聖が叫びと共に両魔剣を幾度と無く振り払ったのだ。
するとどうだろう。
たちまち無限環が変形していくではないか。
光が弾け、割れて、破片が更に変わって。
そして見る見るうちにそれぞれが無数の小さな光輪へと変化して。
それが今、目前の巨体へ向けて飛び掛かっていく。
いずれも光の筋を濃く強く描いたままに。
そうやって刻まれた閃筋はまるで流星雨だった。
あの【グリュダン】の巨体を覆い尽くさんばかりの。
それも、全身を瞬時にして突き抜ける程の速さで。
途端、降り注いだ先の大地が突如として激しく打ち上がる。
無数の光輪が打ち、削り、炸裂破砕した事によって。
遂には抉り跡が幾つも走り、背後一帯の大地を破壊し尽くす事に。
それでその【グリュダン】本体はと言えば――
大地の破壊と共に、巨大な身体が崩壊していく。
無数の不規則ブロック状へと切り崩されながら。
一切の部位が元の形を残さなかった。
その末端に至るまでが全て切り刻まれ、砕かれ、大地へ落ちて。
遂には跡形も無く崩れ去り、巨人だった破片が静かに転がり行く。
全て、あっという間の出来事である。
この圧倒的な戦闘力を前に、勇はただただ絶句するばかりだった。
息をする事さえ忘れてしまうほど凄すぎて。
何より、美しかったのだ。
見惚れて見入ってしまうくらいに。
特に、最初の光翼はまさしく究極たる凄みがあった。
天高く舞い上がり、何者にも抗じず、全てを薙ぎ払う。
そう成せると思えるだけの神々しさを感じてならなくて。
だから今、勇は剣聖を涙目で仰いでいた。
倒れながらも、意識を朦朧とさせながらも。
それは感謝の想いで一杯だったから。
「よし、まぁこんなとこだろぉな」
そんな中で剣聖が降り立ち、ニタリと笑って見せていて。
勇もそれに釣られ、ついつい笑みが零れる。
余りにも疲弊し過ぎて、とても喜んでいる様には見えないけれど。
「わ、笑い事じゃ、無いですよ……もう、ダメかと……」
「へっ、その程度の力でよくまぁあんなのと戦おうなんて気が起きたなぁ。おめぇら、頭おかしいのかぁ?」
ただ、その剣聖の視線は勇だけに向けられたものではなく。
それに気付いた勇がふと、身体を起こして裏を見てみれば。
その先にはなんと倒れたちゃなの姿が。
恐らく逃げる力も残っていなかったのだろう。
先の一撃は彼女の命力を使い尽くす程に消耗が激しかったから。
とはいえ死んでいる訳では無い。
もう動けなくて、ただただ辛くて泣き崩れていただけで。
剣聖がこうして笑っている辺り、大事には至っていないのだろう。
「田中さん、殆ど動けて無かったんだな……」
「ごめん、なさい……勇さん……」
でも勇はそんな姿を見せられたら黙ってはいられない。
湧き出た力を振り絞り、震えた身体を起こさせる。
それでちゃなの傍へ歩み寄り、そっと尻餅を突いていて。
「ごめんなさい……逃げて、ごめんなさい……!」
そんなちゃなは後悔に苛まれて、勇に振り向く事も出来ない。
ただ辛くて、唸る事しか出来なくて。
弱った身体を震わせ、ただただ許しを懇願するばかりだった。
「ううん、いいんだ。あれで良かったんだよ」
だからだ。
だから勇はそっと、ちゃなの頭を撫でていた。
石の様に硬くてボロボロで、とても気持ちのいいものじゃなかったけれど。
それでも出来る限りに優しく、ちゃなのくすんだ心を慈しむ様に。
これが、勇にとっての感謝の証だったから。
決死の想いに従ってくれた事への感謝に。
「帰ろう、家に」
「うん、うんっ……!」
そのおかげでちゃなも救われたのだろう。
報われたのだろう。
それでやっと振り返り、勇の手をそっと掴み返していて。
また、互いに笑い合う事が出来たのだ。
こうして、岩巨人【グリュダン】との戦いは終わった。
色々と失う物も多かったけれど。
だけど今度は本当の意味で笑い合えた事だろう。
それは決して、やりきったからではなくて。
皆が生き残る事が出来たから。
もう誰も死なずに済んだから。
そして、きっとまた友人達と遊ぶ事が出来るだろうから、と。
決して負けた訳では無かったのだ。
ただ復帰するのに時間が掛かっただけで。
だからか、今の剣聖に疲労や消耗は無い。
精々服が破れ、風で今にも千切れそうになっているというくらいだ。
たった今【グリュダン】が倒れた事で起きた突風によって。
その地響きもが場を騒がせる中、剣聖がその先へ見据える。
もう起き上がる事さえ困難な勇を前にして。
「ここまで持ち堪えた褒美だ。おめぇに俺のとっておきを見せてやる」
「えっ……?」
しかしもうその眼に普段の緩さは一切無い。
完全に【グリュダン】を仕留めるつもりなのだ。
それも手心一つ加える気さえ無く。
最中、彼方の巨人が再び立ち上がる。
今度は今まで通りに素早く、それでいて剣聖へと敵意を撒き散らして。
恐らくもう完全に気配を捉えているのだろう。
それも当然か。
剣聖から立ち上る命力はそれだけの強大さとなっていたのだから。
まるで「こっちに来い」と誘っているかの如く。
そんな剣聖が衣服を破り捨てていて。
間も無く、左右に魔剣を拡げて空高く飛び上がる。
【グリュダン】が地響きを立てて走り来る中で。
そしてその時、勇は目の当たりにする事となる。
空高く舞い上がる者の輝きを。
その両手に掴む光翼で羽ばたき舞う剣聖の姿を。
その様相はまさしく光の翼だった。
それ程までに濃く、輪郭を持った命力が両魔剣から迸っていたのだ。
しかもその大きさは尋常ではない。
なにせ、あの【グリュダン】の体幅にさえ匹敵する程の巨大さなのだから。
その全てが命力。
なんという圧倒的な放出量だろうか。
そんな光翼が更に形を大きく変えていく。
余りの出力ゆえか、剣聖の体を宙へと固定したままに。
そうして空に刻まれしは無限の光輪。
まるで剣聖の力を体現するかの様な凄まじい輝きだった。
空に光が走る。
閃光が弾けて火花散る。
剣聖より放たれ、返り、循環しながら。
【グリュダン】の右拳が迫る、その中で。
ギャリリリリッッッ!!!!
すると突如、場にけたたましいまでの音が鳴り響く。
まるで金属を切り裂いた様な甲高い激音が。
なんとあろう事か。
【グリュダン】の右腕が剣聖の前で――千切れ跳んでいた。
それもバラバラに刻まれながら。
更には余りの衝撃でその巨体が怯み、退き下がる。
走り込んで来た勢いさえ無にする強固さが今の剣聖にはあったのだ。
だが剣聖は何もしていない。
その両手より迸る無限環を体現したまま。
剣も振るっていないし、只浮いていただけで。
その無限環に触れただけで引き裂かれただけに過ぎない。
「もはやこれで終わり也て――ぬぅうううんッッッ!!!!」
それに、何かをするのは――これからだ。
きっと退いた事が【グリュダン】の最大のミスだったのだろう。
押し切れなかった事が敗北を助長する事になるのだと。
いや、そんな事などもはや関係なかったのかもしれない。
何故ならば――
この剣技を前には、もはや耐えられる者など居ないのだから。
「かあああッッ!!! 【二 天 剣 塵】ッッッ!!!!!」
眩しいまでの光が迸る中、遂にその時が訪れる。
剣聖が叫びと共に両魔剣を幾度と無く振り払ったのだ。
するとどうだろう。
たちまち無限環が変形していくではないか。
光が弾け、割れて、破片が更に変わって。
そして見る見るうちにそれぞれが無数の小さな光輪へと変化して。
それが今、目前の巨体へ向けて飛び掛かっていく。
いずれも光の筋を濃く強く描いたままに。
そうやって刻まれた閃筋はまるで流星雨だった。
あの【グリュダン】の巨体を覆い尽くさんばかりの。
それも、全身を瞬時にして突き抜ける程の速さで。
途端、降り注いだ先の大地が突如として激しく打ち上がる。
無数の光輪が打ち、削り、炸裂破砕した事によって。
遂には抉り跡が幾つも走り、背後一帯の大地を破壊し尽くす事に。
それでその【グリュダン】本体はと言えば――
大地の破壊と共に、巨大な身体が崩壊していく。
無数の不規則ブロック状へと切り崩されながら。
一切の部位が元の形を残さなかった。
その末端に至るまでが全て切り刻まれ、砕かれ、大地へ落ちて。
遂には跡形も無く崩れ去り、巨人だった破片が静かに転がり行く。
全て、あっという間の出来事である。
この圧倒的な戦闘力を前に、勇はただただ絶句するばかりだった。
息をする事さえ忘れてしまうほど凄すぎて。
何より、美しかったのだ。
見惚れて見入ってしまうくらいに。
特に、最初の光翼はまさしく究極たる凄みがあった。
天高く舞い上がり、何者にも抗じず、全てを薙ぎ払う。
そう成せると思えるだけの神々しさを感じてならなくて。
だから今、勇は剣聖を涙目で仰いでいた。
倒れながらも、意識を朦朧とさせながらも。
それは感謝の想いで一杯だったから。
「よし、まぁこんなとこだろぉな」
そんな中で剣聖が降り立ち、ニタリと笑って見せていて。
勇もそれに釣られ、ついつい笑みが零れる。
余りにも疲弊し過ぎて、とても喜んでいる様には見えないけれど。
「わ、笑い事じゃ、無いですよ……もう、ダメかと……」
「へっ、その程度の力でよくまぁあんなのと戦おうなんて気が起きたなぁ。おめぇら、頭おかしいのかぁ?」
ただ、その剣聖の視線は勇だけに向けられたものではなく。
それに気付いた勇がふと、身体を起こして裏を見てみれば。
その先にはなんと倒れたちゃなの姿が。
恐らく逃げる力も残っていなかったのだろう。
先の一撃は彼女の命力を使い尽くす程に消耗が激しかったから。
とはいえ死んでいる訳では無い。
もう動けなくて、ただただ辛くて泣き崩れていただけで。
剣聖がこうして笑っている辺り、大事には至っていないのだろう。
「田中さん、殆ど動けて無かったんだな……」
「ごめん、なさい……勇さん……」
でも勇はそんな姿を見せられたら黙ってはいられない。
湧き出た力を振り絞り、震えた身体を起こさせる。
それでちゃなの傍へ歩み寄り、そっと尻餅を突いていて。
「ごめんなさい……逃げて、ごめんなさい……!」
そんなちゃなは後悔に苛まれて、勇に振り向く事も出来ない。
ただ辛くて、唸る事しか出来なくて。
弱った身体を震わせ、ただただ許しを懇願するばかりだった。
「ううん、いいんだ。あれで良かったんだよ」
だからだ。
だから勇はそっと、ちゃなの頭を撫でていた。
石の様に硬くてボロボロで、とても気持ちのいいものじゃなかったけれど。
それでも出来る限りに優しく、ちゃなのくすんだ心を慈しむ様に。
これが、勇にとっての感謝の証だったから。
決死の想いに従ってくれた事への感謝に。
「帰ろう、家に」
「うん、うんっ……!」
そのおかげでちゃなも救われたのだろう。
報われたのだろう。
それでやっと振り返り、勇の手をそっと掴み返していて。
また、互いに笑い合う事が出来たのだ。
こうして、岩巨人【グリュダン】との戦いは終わった。
色々と失う物も多かったけれど。
だけど今度は本当の意味で笑い合えた事だろう。
それは決して、やりきったからではなくて。
皆が生き残る事が出来たから。
もう誰も死なずに済んだから。
そして、きっとまた友人達と遊ぶ事が出来るだろうから、と。
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