輝操士は儚き虹色世界にX(ジクス)を刻む

日奈 うさぎ

文字の大きさ
108 / 148
第三章

第100話 友として猛る

しおりを挟む
 まさかフィーとニペルがこの神とやらの作った生命体だったとは。
 となるとさしずめ神の遣いって所だな。

 冗談と思っていた事がこうも現実になるとは思ってもみなかったよ。

「神と人の血を混ぜて生まれたのがオリジナルのフィーとニペルだ。今の二人はその末裔――というより〝コピー品〟だね。この街の一部に精製装置があって、時が来たら産出ロールアウトされる様になっているよ。記憶もコピー時のを受け継いでいる」
「なん、だと……!?」

 ただ、その扱いに関しては一切納得出来んな。
 不遇とも言える境遇を平然と他人事ひとごとの様に言ってのける辺りが。

 ――故に堪らなく不快だ。

 それも怒りを抑えきれなくなりそうなくらいに。
 二人をこうも物としか例えられない言い草が気に食わん……!

「それで時が来たら新たなフィーを送り込み、適合者を探す。そしてニペルと共にこの地へ案内させ、僕の下へ連れて来させるんだ。これから成したい事の為に」
「何故二人なんだ……!」
「普通の人には僕が見えない。適合者は滅多にいない。それに僕はここを離れられない。だから代行が必要だったんだ。そこで人集めをフィーに任せる事にしたのさ。彼女ならとても便だからね、適合者に信用させるには持って来いの子だったよ」

「キサマァ……ッ!!」

 しかし、もう我慢の限界だ……ッ!

 故に俺は今、身体に闘氣功を纏っていた。
 これまでに無いほど身を震わせながら。
 余りに激昂していたからこそ歯をも軋ませて。

「フィーとニペルをそれ以上侮辱してみろ……例え神だろうが消してやるッ!! 死ぬと言うなら死以上の苦痛を味合わせてから殺してやるぞッッッ!!!」
「ア、アークィン、お、おちついーてー!」

 許せる訳が無いッ!!

 フィーはここまでに何度も死力を尽くして俺達を助けてくれたんだ。
 そんな彼女が弱いなどと、口が裂けても言える訳が無いだろうッ!!

 ニペルは逢って日が浅いからよくわからん存在だが。
 だけどこうして意思はあるし、根が良い奴なのは知っている!
 ただ口下手で自己表現力の弱い、俺と同じ様な存在なんだってな!

 その二人を物扱いだと!?

 これは例え神だろうが許すまじき侮辱、越権行為である。
 全知全能で無いのならば尚更にッ!!

 なら俺の仲間は誰一人として、貴様如き無知者になど咎めさせはせんッ!!!

 どうした神め、先に無く驚いた顔をして。
 想定外の反応に声も出せんか?
 逆らわれないとでも思っていたのかァ!?

「……そうか、君はそれだけ二人の事を想っていてくれたんだね」
「当たり前だッ!! 二人は掛け替えの無い友なのだからッ!!」
「友、か……申し訳なかった。まさか君達がここまで二人に愛着を抱いていたなんて思いもしなくて。なにせ今まで、二人を扱いした者達は居なかったものだったから、それが普通だと思っていたんだ」
「何……!?」

 ――いや、違ったんだ。
 おかしかったのは俺達側だったんだよ。

 厳密に言えば原生体ヒト側、その倫理観が歪んでいたから。

 そうだよな、二人は混血の様相だものな。
 だから虐げられたり、存外に扱われたりしてきたのだろう。
 もしかしたら人とさえ扱われていなかったかもしれない。

 そんな姿を見せ続けられたからコイツも勘違いしてしまって。

 そう気付いたからか、昂りがいつの間にか消えていた。
 それに申し訳なさそうに頭も下げていたものだから。
 神でも至らないとこうして真摯に謝罪するもんなんだな。

「……そんな事情があったなら仕方ない。こちらも謝ろう。殺気立って悪かった」
「いや、構わないよ。むしろ僕はとても嬉しい。二人をここまで想ってくれていたのが何よりも。二人とも良かったね。でとても良き人に出会えて」
「よかーたー! みんなやさしーい人ー! ふんす!」
「フフッ、まさかワタクシまでそう大事に扱われるとは思ってもみませんでしたが」

 それ程までに純然たる存在、それが神か。
 今ならコイツを信じてもいい、そんな気がする。
 そう思わせる穏やかな笑顔をフィーとニペルに向けていたから。

 それに二人が抱き合って喜ぶ所と言ったら、微笑ましいくらいだからな。

「所で気になったのだけれど、〝最期〟とは一体どういう意味なんだい?」
「私もそこが引っ掛かった。何か不穏な理由があるんじゃないかって」
「そうだね、そこも話しておかないといけないか」

 けど、もしかしたらこの喜び様は彼等が実情を知る存在だからで。
 もし事情が事情でなければここまででは無かったかもしれない。
 只の一個体が受けた小さな幸せに過ぎないのだと。

 ただ、こんな些細な事でも幸せに思えるくらい――世界は儚かったから。



「もうすぐこの虹空界は滅ぶんだ。少なくとも、あと三年くらいでね」



 決して人でもなく、秩序などでもなく。
 世界そのものが歪み、壊れかけていた。

 そんな実情を聞かされた時、俺達はまた絶句するしかなかったんだ。
 守ろうとした世界がもう限界だったって事に気付いてしまったからこそ。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...