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第三章
第35話 好奇心旺盛な女王様
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リディスに連れて来られたのは森の中心にある聖殿と呼ばれる領域。
彼らエルフが祭事――里の政治を執り行う場所だという。
その名の通り神秘的な雰囲気が漂う場所で、石造りの建造物が緑のツタに覆われていて年代観を感じさせてくれる。
それでもしっかりとエルフたちが利用できるようになっている所は、自然との調和を根差す彼ららしい文化の表れだと思えた。
そんな自然と一体化した聖域へと足を踏み入れ、奥へと進む。
今は大雨のせいか、表にはほとんど人の姿は無い。
シトシトとした雨の中でさらに奥へ進むと、地下に降りる階段へと案内される。
その螺旋状の階段は少し深く、屋根はあるもののジメジメとした雰囲気は否めない。
しかしある程度まで降りると、途端にひんやりとした空気が暖気を帯びた。
それと共に僅かに黄色がかった明かりが現れ、地下の様子が見え始める。
地下空間は想像を越えて広大だった。
天井も人十人分はありそうなほどに高い。見栄えのある凄い壮観な空間だ。
しかも壁面には幾つも扉のようなものも見え、地下空間だけが全てではないと悟らせてくれる。
奥も見きれないほどに広いし、もしかして森全域がこのような地下空間を有しているのかとさえ思えてならない。
「こっちだ、来てくれ」
俺が案内されたのはそんな扉の先にあった小さな部屋。
中には誰かがいる訳でもなく、机と椅子がワンセットあるくらいだ。
まるで警察の取り調べ室のようにも見えるが、まさかな。
「まさかここで尋問、とかないですよね?」
「そんなまさか。里を助けてくれた恩人にそのようなことが出来る訳もない。ただあまり里の者に聞かれたくない話でもあるのでな、このような部屋で話す方が良いということになったのだ」
「なるほど、割とデリケートな話題なんだな」
「しばし座って待っていてくれ。もうすぐ女王陛下がやってくるはず」
そう言われ、遠慮なく椅子へと腰を掛ける。
ただギネスには少しこの部屋は狭そうで、椅子もボリュームが足りそうにないからと地べたへ座り込むことに。
それにしたって筋肉野郎がちょこんと体育座りとは少し遠慮が過ぎないか?
そんな座り方で俺たちが四苦八苦していた時だった。
突然ノックの音が聞こえ、返事をする前に人が入ってくる。
女王様といつぞやの剣士だ。
「大変お待たせいたしました。そしてこの数日ご無沙汰してしまい申し訳なくもあります」
「あ、いや平気ですよぉ! なかなか有意義に過ごせましたし! な、ギネス?」
「え!? あ! ハイ! 素敵な毎日でございましたっ!」
「ふふっ、そうでしたか。それは良かった」
ダメだ、ギネスの奴はもうガッチガチで首を回すことさえ出来ていない。
机の対面に女王様が座るもずっと扉の方を向いたままだ。仕方のない奴め。
「それでは、と大事なお話をしたい所なのですが……その前に少しだけ軽くおしゃべりをなさいませんか?」
「えっ? おしゃべり……?」
「ええ。そちらの方が御緊張なされているようですし、少々妙な誤解もありそうですから。緊張ほぐしのためにお互いのことを知れれば良い、と思いまして」
それにしても女王様は先日会った時と同じで、とても物腰が柔らかい。
優しく微笑んでくれているし、ついさっきまであの二人に付き合わされていたから新鮮味も感じる。
女王っていうと仮面を付けて鞭を持っていそうなイメージがあるだけに意外だ。
そう、例えば今視界端で準備しているへるぱみたいにな。
『バ、バレたッ!? チィッ!?』
どさくさに紛れて妙な格好になろうとするんじゃないよ。
素敵な女王様との会話の邪魔をしたら承知しないからな。
「そうですね、例えばですが……あなた方人間が今、わたくしたちをどのような存在として捉えているのか、とても興味がありますね」
しかしどうやら女王様、好奇心だけでなくちょっとしたイタズラ心もありそうだ。
ギネスの方を向き、クスッと笑ってこんな話題を吹っかけてきたのだから。
とはいえ、そこは俺も気になる所だ。
ギネスからはまだちょっとしか事情を聞いていないし、エルフに関しては知らないことがあまりに多過ぎる。
そんな訳でギネスの肩を肘で突き、喋るようにと催促。
するとギネスは溜息を吐きつつ渋々語り始めた。
「え、ええと……ずっと昔から続く伝承で、エルフ様は絶対に会ってはいけない禁忌な存在でしたわン。自然の力を操り、天変地異を引き起こすこともできる存在だと」
「まぁ! それはなんて恐ろしい!」
「一応、一部は間違ってはいないな……」
「で、ですが聖域ウェヌアレムにさえ手を出さねば災いが降りかかることは無いと。そうして自らの武器を示したエルフ様は我々人間と約束を交わし、永きに渡る相互関係の断絶を誓ったという話ですわね……」
聞けば聞くほどエルフが恐ろしい存在だと示された伝承としか思えないな。
今目の前にいるのは俺らと何ら変わらない普通の人としか見えないのに。
ただ目の前の女王様はなんだかちょっと毛色が違うな。
今の話を聞いて怒るどころか、逆に目を輝かせているんだが?
「他にもこんな伝承もございますわン。エルフ様を見た者は呪いで目が潰れるとか」
「ひいっ! それは痛々しいっ!」
「話せば言霊に操られ、意識がありながらにして死霊と化すとか」
「あらぁ~!」
「それと森に近づけば引き込まれ、二度と出られなくなるという伝説も」
「おうちに帰れなくなるのは困りますねっ!」
結局どんな伝説も女王様の前には面白い逸話にしかならなかったようだ。
興奮のあまりに両手を握り合わせながらグイグイと身を乗り出して迫ってくる。
おかげで話しているギネスの方が呆気に取られてしまっていた。
彼らエルフが祭事――里の政治を執り行う場所だという。
その名の通り神秘的な雰囲気が漂う場所で、石造りの建造物が緑のツタに覆われていて年代観を感じさせてくれる。
それでもしっかりとエルフたちが利用できるようになっている所は、自然との調和を根差す彼ららしい文化の表れだと思えた。
そんな自然と一体化した聖域へと足を踏み入れ、奥へと進む。
今は大雨のせいか、表にはほとんど人の姿は無い。
シトシトとした雨の中でさらに奥へ進むと、地下に降りる階段へと案内される。
その螺旋状の階段は少し深く、屋根はあるもののジメジメとした雰囲気は否めない。
しかしある程度まで降りると、途端にひんやりとした空気が暖気を帯びた。
それと共に僅かに黄色がかった明かりが現れ、地下の様子が見え始める。
地下空間は想像を越えて広大だった。
天井も人十人分はありそうなほどに高い。見栄えのある凄い壮観な空間だ。
しかも壁面には幾つも扉のようなものも見え、地下空間だけが全てではないと悟らせてくれる。
奥も見きれないほどに広いし、もしかして森全域がこのような地下空間を有しているのかとさえ思えてならない。
「こっちだ、来てくれ」
俺が案内されたのはそんな扉の先にあった小さな部屋。
中には誰かがいる訳でもなく、机と椅子がワンセットあるくらいだ。
まるで警察の取り調べ室のようにも見えるが、まさかな。
「まさかここで尋問、とかないですよね?」
「そんなまさか。里を助けてくれた恩人にそのようなことが出来る訳もない。ただあまり里の者に聞かれたくない話でもあるのでな、このような部屋で話す方が良いということになったのだ」
「なるほど、割とデリケートな話題なんだな」
「しばし座って待っていてくれ。もうすぐ女王陛下がやってくるはず」
そう言われ、遠慮なく椅子へと腰を掛ける。
ただギネスには少しこの部屋は狭そうで、椅子もボリュームが足りそうにないからと地べたへ座り込むことに。
それにしたって筋肉野郎がちょこんと体育座りとは少し遠慮が過ぎないか?
そんな座り方で俺たちが四苦八苦していた時だった。
突然ノックの音が聞こえ、返事をする前に人が入ってくる。
女王様といつぞやの剣士だ。
「大変お待たせいたしました。そしてこの数日ご無沙汰してしまい申し訳なくもあります」
「あ、いや平気ですよぉ! なかなか有意義に過ごせましたし! な、ギネス?」
「え!? あ! ハイ! 素敵な毎日でございましたっ!」
「ふふっ、そうでしたか。それは良かった」
ダメだ、ギネスの奴はもうガッチガチで首を回すことさえ出来ていない。
机の対面に女王様が座るもずっと扉の方を向いたままだ。仕方のない奴め。
「それでは、と大事なお話をしたい所なのですが……その前に少しだけ軽くおしゃべりをなさいませんか?」
「えっ? おしゃべり……?」
「ええ。そちらの方が御緊張なされているようですし、少々妙な誤解もありそうですから。緊張ほぐしのためにお互いのことを知れれば良い、と思いまして」
それにしても女王様は先日会った時と同じで、とても物腰が柔らかい。
優しく微笑んでくれているし、ついさっきまであの二人に付き合わされていたから新鮮味も感じる。
女王っていうと仮面を付けて鞭を持っていそうなイメージがあるだけに意外だ。
そう、例えば今視界端で準備しているへるぱみたいにな。
『バ、バレたッ!? チィッ!?』
どさくさに紛れて妙な格好になろうとするんじゃないよ。
素敵な女王様との会話の邪魔をしたら承知しないからな。
「そうですね、例えばですが……あなた方人間が今、わたくしたちをどのような存在として捉えているのか、とても興味がありますね」
しかしどうやら女王様、好奇心だけでなくちょっとしたイタズラ心もありそうだ。
ギネスの方を向き、クスッと笑ってこんな話題を吹っかけてきたのだから。
とはいえ、そこは俺も気になる所だ。
ギネスからはまだちょっとしか事情を聞いていないし、エルフに関しては知らないことがあまりに多過ぎる。
そんな訳でギネスの肩を肘で突き、喋るようにと催促。
するとギネスは溜息を吐きつつ渋々語り始めた。
「え、ええと……ずっと昔から続く伝承で、エルフ様は絶対に会ってはいけない禁忌な存在でしたわン。自然の力を操り、天変地異を引き起こすこともできる存在だと」
「まぁ! それはなんて恐ろしい!」
「一応、一部は間違ってはいないな……」
「で、ですが聖域ウェヌアレムにさえ手を出さねば災いが降りかかることは無いと。そうして自らの武器を示したエルフ様は我々人間と約束を交わし、永きに渡る相互関係の断絶を誓ったという話ですわね……」
聞けば聞くほどエルフが恐ろしい存在だと示された伝承としか思えないな。
今目の前にいるのは俺らと何ら変わらない普通の人としか見えないのに。
ただ目の前の女王様はなんだかちょっと毛色が違うな。
今の話を聞いて怒るどころか、逆に目を輝かせているんだが?
「他にもこんな伝承もございますわン。エルフ様を見た者は呪いで目が潰れるとか」
「ひいっ! それは痛々しいっ!」
「話せば言霊に操られ、意識がありながらにして死霊と化すとか」
「あらぁ~!」
「それと森に近づけば引き込まれ、二度と出られなくなるという伝説も」
「おうちに帰れなくなるのは困りますねっ!」
結局どんな伝説も女王様の前には面白い逸話にしかならなかったようだ。
興奮のあまりに両手を握り合わせながらグイグイと身を乗り出して迫ってくる。
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