ピクトグラム君とバーチャルヘルパーちゃん ~異世界転生した底辺絵師ですが自由気ままに世界の常識を描き直そうと思います~

日奈 うさぎ

文字の大きさ
37 / 59
第三章

第36話 精神文明を築くエルフという種族

しおりを挟む
 身を乗り出していた女王様がふと我に返り、自席へと再び座る。
 仕舞いにはまた「ふふっ!」と微笑みを見せながら。
 ギネスの話がよほど楽しかったようだ。

「なるほどなるほど。確かに百年ほど昔に不可侵条約は交わしましたが、まさかそのような伝承にまで発展しているとは露にも思いませんでした」

「やはり百年は人間にとっては長すぎたのかもしれませんな」

「ええ、あの時はただかつての王と親密な約束を取り交わしただけで、そのような風に流布するするとは思いもしませんでしたね」

 なんだろうこの人たちは。考えていることがよくわからないな。
 まるで自分たちが直接百年前に約束を交わしたみたいなことを言っているが。

 彼らにとっても二~三代くらい前の話だろうに。
 リディスさんはともかく、女王様はまだ二十代行くか行かないか、ってくらいだし。

「やはり森で暮らしていると時が流れるのは早く感じます。だからこそ外の世界の変化が面白く感じてなりませんね」

「女王陛下は好奇心旺盛であられますしな。もう十数年で齢七百にもなりますし、少しは抑えては如何か」

「いえいえ、この御年だからこそますます好奇心が溢れるというものです」

 ……は?
 なな、ひゃく?

 目の前の美少女が、ななひゃくさい……?

 はあああああああああああ!!!!!?????

「あらピクト様、そのお顔は一体どういう意図なのかしら? ワクワク」

「驚愕しているようにしか見えませんな」

「ピクト、アンタまさか本当にエルフ様のことを知らないのン……?」

 し、知るものかよ!
 俺はほんの一ヵ月前まで地球の日本人だったんだ、そんな異世界種族のことなんて知る訳がねーっ!

「エルフ様は超長寿で有名な種族なのよ?」

「ええそうですね。長き者ですと千歳を超える者もいらっしゃるとか」

「じょ、冗談だろ……!? じゃあセリエーネとウルリーシャは!?」

「あの子たちももう百歳は越えていると思いますが……」

 ひゃく!
 あのアホの子とメンヘラっ子が百歳!

 や、やべぇなエルフ。
 若作りなんてレベルの話じゃないぞ!?
 そもそもエーフェニミスさんはあの二人より若く見えるし!!!!!

「ちなみにピクト様はおいくつで?」

「え、二六歳っすけど……」

「では我々から見たらまだ幼児ですね、ふふっ!」

 すると女王様が身を乗り出し、俺の頭をナデナデしてくれた。
 何だろうな、この気分は。

 超絶美少女に頭を撫でられた嬉しみと、相手が超絶年増だったという哀しみ。
 その二つの感情のせめぎ合いで素直に喜べないんですが?

 ……ああもう、彼等の年齢について深く考えることはやめようと思う。
 今ここに一緒にいる時間こそが何より大事なのだと。

 ――と自分の気持ちを誤魔化し、女王様の好意に頭を下げておく。

「それにしても、今の人間がどのような目でわたくしたちを見ていたのかがよくわかりました。なるほど、それならばそこの御方が恐れるのも無理はありませんね」

 しかし女王様はそんな些細なことなんて気にも留めずに話を続ける。
 ただ、あいかわらず彼女は笑顔のまま。何一つ不快とすら思っていないようだ。

「ですが実際は異なります。わたくしたちはこうしてあなた方と大差がなく、あるのは寿命の長さや魔法適正の差くらい。自然との共存の仕方を知る、ごく普通の人間の亜種でしかありません。決して恐れるような存在ではないのですよ」

 他にも美貌など見た目もかなり違いがあるとは思う。
 ただその点に言及しない辺り、外観にはそれほどの執着はないのだろう。

 だからか一切の嫌味を感じない。
 自分たちの存在をぼやかそうとするような意図が一切見えないからだ。

 おかげで今はもうギネスが女王様に顔を向けられている。
 伝承が所詮伝承でしかないのだと気付かされたんだ。

「それでは、今度はわたくしたちの話を致しましょう」

 そう注目される中で、女王様が机に腕を乗せて視線を返してくる。

「今お話した通り、わたくしたちは自然との共存を第一に考えた種族であり、文明を築くことを選んだ人間とは生き方や観点が異なります。例えばわたくしたちは発展を望まないので、何かを造り上げるという能力に乏しいのです」

「それ故に我らは長い年月を昔からある文化のままに利用し続けている。この聖殿もそう。いつまでも姿を変えずに、壊れたならば直して、延々と同じことを繰り返し続けているのだ」

「しかし一方で、精神文明においては非常に発達していると言えるでしょう」

「精神文明……?」

 またよくわからない言葉が出てきたな。
 これもエルフ独特の文化の形なのだろうか。

「精神文明とは所謂、星神様と呼応するための力。自然を理解し、受け入れ、彼らの声を聴くために魂を進化させること」

「魂の進化……」

「そうして魂をより高みへと引き上げることでこの世界との交信が可能となります。その結果、世界の力を借り得ることが叶い、その大いなる力が肉体にも影響を与えます」

「その末に我らは長寿となった」

「それがエルフという種族。文明を得ない代わりに世界と交信し、時には今降り注ぐ雨のように天候を操ることもできましょう」

「もっとも、それは女王陛下にしか成せぬことではあるがな」

「ただしそれはエルフの長という立場であるが故。本来ならばエルフであれば誰しもが成し得ることです」

 要はエルフなら世界に色々と融通が利く、ということか。
 天候を変えたりするくらいなら余裕って訳だ。

 ただその力は人間にとっては脅威になり得る。
 自然の力も過ぎたものであれば、文明を簡単に流し去ってしまいかねないから。
 だからあの野盗たちはそれを狙って女王様を攫おうとしたのかもしれない。

 そうも思い付くと俺は思わずウンウンと頷いてしまっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...