強くて転生わからせ魔戦王!~最強魔力を得た私は最年少で女帝を目指す。もう大人?いいえ三歳児です。ざぁこな大人どもを逆に蹴散らし屈服無双!

日奈 うさぎ

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第17話 「私」を取り戻してもトラブルはやってくる

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 かつての恩人ユートピー……いえ、ひいおばあちゃまとの出会いが私を変えた。
 魔戦王の生まれ変わりではなく、ミルカ自身として生きたいと。

 その変化がどうやらすぐに言動として現れたみたい。
 あの後家に帰ってから、ママ上に「あらミルカちゃん、なんだか雰囲気変わったわねぇ」って言われちゃったし。

 まぁ女の子らしさを取り戻しただけで、本来の目的は変わらないけれど。
 この村や今の生活を守りたい事も、邪悪を滅したいと思う気持ちも。

「……ふぅ。今の私だと力はまだこれくらいしか引き出せないか」

 だから気持ちを切り替えられた記念に、少し全力を出してみたいと思った。
 なので今日はちょっと村から離れた山岳地帯に来ている。

 で今、さっそく山をひとつ消し飛ばしてみたトコ。

 心がミルカ一筋になったから、逆に少し魔力が下がったみたいだ。
 全力を引き出せるようになるのはまだまだ先になりそうかな。

「あ、ああ……」
「ほら、ちびってないで帰りますよエルエイス君。私は魔術を使って疲れたので、ちゃんと抱えて帰るのです。腰を抜かしている暇なんてないのです」

 ひとまず今日はここまで。
 なので無理矢理ついて来たエルエイスを酷使する事にした。
 今ならお姫様だっこも抵抗ない――というかなんか嬉しい。

 ……という訳で、ひいおばあちゃまの来訪からもう二ヵ月。
 あの出会いのおかげで今やっと私は忙殺業務から解放される事となった。

 というのも、ペェルスタチア王国が魔力増幅炉の素材を提供してくれたから。
 その結果、魔導人形の大量生産計画が前倒しで進んだのだ。

 それで村の空き地に工場設備を整え、今も生産の真っ最中。
 街からも労働者を都合してもらったので、人の手も間に合っている。
 安全地帯での安定した仕事だから、求人倍率は相当だったらしい。

 まぁそのせいで村の聖護防壁の事も明るみとなってしまったが、そこは領主ラギュースが制御してくれるというので任せる事にした。
 変な奴等が集まって来られるのだけは勘弁してほしいからね。治安第一。

 とはいえ、今はその治安も回復傾向にある。
 ヴァルグリンドナイツ率いる魔導人形軍団が魔物を片っ端から駆逐した事で。
 成果は上々、近い内に魔物はすべて人里から消え去る事だろう。
 そうなればかつての賑わいを見せるのも時間の問題だ。

 そこまでやりきる事で、当初からの私の計画はひとまず完了する。
 あとは穏やかな日々の生活を満喫するだけね。

 ま、何も事が起きなければ、だけど。

「ご主人殿、あれを見て」
「……やっぱり、何も起きない訳にはいかないか」

 そう考え込みながらシルス村に帰って来たのだけど。
 実家の前に人だかりができている。
 さっそく私の下にトラブルが舞い込んできていたみたいね。

 ――集まっているのはどうやら冒険者集団らしい。
 国へ属さずに力を行使できるライセンスを持った者達だ。

「そんなに集まってどうしたのかしら?」
「お、アンタが噂の魔導人形の管理者だな?」

 そんな者達の一人が颯爽と帰還した私達へ近づいて来る。
 なので私もエルエイスから飛び降り、差し出された手へ握手でこたえた。

「噂通り、本当に子どもだったのだな」
「まったく、一体どこでそんな噂を知り得たのかしら。家まで教えたつもりはないのだけれど」
「押しかけてすまないとは思っている。俺の名はジーナルス。アウスティア王国冒険者ギルド所属のパーティ『蒼閃の眼エストビュア』のリーダーをやっている」

 身なりは荒々しいが、対応はすごく丁寧。
 小さい私への握手もとても柔らかくて気遣いを感じた。
 さすが団体のリーダーだけの事はあるかな。

 なので握り潰さずに少女らしい握力で返す。
 かるいお辞儀も添えて丁寧に。

「知っていると思いますが、わたくしミルカと申します」
「よろしく頼む。……実は急用があってきたのだ。ここならば直談判ができると聞いてな」
「そう。でしたらできれば領主様にしていただければ良かったのに。ここには小さな子もいますので、怯えさせてはいささか機嫌も損ねましょう……?」
「うッ!? す、すまない……」

 ただし当人だけにわかるように眼光だけは飛ばしておく。
 威圧感を存分に乗せたので充分肝を冷やしたでしょうね。

 もしマルルちゃんが泣いているようならこの程度では済まさんがな……!

 ――おっと、また魔戦王の感情が出て来てしまった。
 順応にはまだまだ時間がかかりそう。

「実は領主殿にも掛け合った所、急ぐならこちらに来た方が良いと言われたのだ。必ず力になってくれるだろう、と」
「ハァ~~~まったく、あの方は。こういう時こそ役立つべきでしょうに」

 まぁ何か困っているようなので、助けるのはやぶさかじゃない。
 私の家に押し掛けるくらいなのだから、相当に焦っているのでしょうし。

「そこで頼む。魔導人形をできるだけ多く都合してもらいたいのだ。金に糸目はつけん!」
「あら心外ですね。冒険者というとお金にうるさいともっぱらの評判なのですが」
「仲間の命が掛かっているのでな」
「……話を聞きましょう?」

 冒険者は本来、金銭にとてもシビアだ。
 危険な仕事を請けおう職なために、割と高額な請求をする事が多い。
 魔物退治や道中護衛など、命がいくつあっても足りないようだから。

 でもまさかそんな団体が大枚をはたいて魔導人形を欲するなんてね。
 よほど大変な事態になっているのかしら。

「実は先日ヴァルグリンドナイツより協力要請があり、〝モンスターズダンジョン〟への侵入を決行したのだ」
「あら、遂にそこまで来たのですね」
「うむ。だが思った以上に苦戦し、仲間の部隊とはぐれてしまった。しかもあいつらはダンジョンに閉じ込められたまま。かといってこのまま犬死させたくはない」

 なるほど、ダンジョン攻略。
 だから彼等も手を焼いているという訳か。

 モンスターズダンジョンとは詰まる所の、魔物の生産所。
 定期的に魔物を産み出し、外界へ排出する邪悪な釜の事を指す。
 ここを徹底的に破壊しなければ、何度でも脅威は増え続けるのだ。

 この邪悪な釜は遥か昔から存在している。
 誰も近づく事の敵わない、恐るべき場所として。
 その畏怖から名付けたのだろうか、気付けば『邪界の通窟ダンジョン』と呼ぶようになっていたのだとか。

「その救出の為にも戦力が必要だが、俺達もヴァルグリンドナイツにも余裕は無い。今ここにいる者達が俺達の全戦力なのだ。だから頼む、魔導人形を貸してくれ!」

 そこを攻略するという事はつまり、完全破壊を目指しているのだろう。
 半端に塞いだだけでは、中で増え続けていつか大量噴出スタンピードに繋がるし。
 かといって人の手だけでは、行って帰ってくるだけでも困難を伴うでしょうね。

 それを今の十人程度の人数でなせるとは到底思えない。
 仲間の救出なんてもってのほか。

 魔導人形はその点、送り出すだけでいい。
 最後は人形そのものを爆弾と換えれば洞窟自体も塞げるし。
 殲滅する事が前提だから、仲間も生きていれば勝手に脱出できるでしょう。

「……ダメね。貴方達に魔導人形は渡せない」
「なッ!? なぜだ!?」

 ただし、それが叶うなら、だけど。

 世の中っていうのはそこまでうまくできてはいない。
 ただ魔導人形を送り込めば解決する――そう単純ではないのよ。
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