幼馴染みに決闘を申し込むために手袋を投げつけたら拾ったのは想い人でした。

風季

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11.パーティーへ

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 翌日。

 レイモンドはキャンベル伯爵邸の前にいた。

 深夜に出て馬を走らせたが、それでも少し間に合わなかったようで門はすでに固く閉ざされている。

 レイモンドの姿といえば制服で、今開催されているパーティーに客として入るには向かないだろう。正面から入ろうとしても間違いなく門番に止められて追い返されるだけ。

 レイモンドは迷った末に不法侵入することにした。

 そこらへんで集めた大きめの石を投げて門番の視線を一瞬だけでも逸らす。その隙に塀を軽々と飛び越え、レイモンドは伯爵邸への侵入を果たした。


(幼い頃の遊びが活かされたな)


 レイモンドが変人と言われたことの原因の一つがこれだ。剣術を習う際に体を鍛えることが大事だと言われ、木に登ったり塀を飛び越え、時には屋根の上から飛び降りるといったことをやっていたのだ。

 大怪我をしていないことが奇跡である。


「さて、と。パーティーがあっている部屋は……あそこか」


 レイモンドは部屋の目星をつけ、その部屋のバルコニーに向けて突起物を利用しながら壁を難なく登った。

 窓は開けられており、中の様子は簡単に伺える。カーテンに隠れながら中を観察し、ステラを探す。


(それにしても、本当に男ばっかりじゃないか)


 ステラの婚約者の選択を目的とするため当然なのだが、レイモンドは不機嫌になる。


(選ぶってことはステラ嬢はここにいる男たちと話す、ということだよな)


 レイモンドはステラが一人になった時に会いに行こうと思っていた。しかし、招待された人たちを見て、その計画を変えることにした。これだけの数の男たちとステラが会話をするというだけではらわたが煮え返るのだ。

 誰一人として話させてなるものか。


「みなさん本日はお集まりいただき誠にありがとうございます」


 現れたのは中年の小太りな男だった。恐らくこのパーティーの主催者であるキャンベル伯爵だろう。

 主催者の挨拶に招待客の視線が向いたうちにレイモンドは部屋の中へと入る。制服と似たような服を着ている男の近くに立ち、周りの視線を気にしながら少しずつ前へと移動を始めた。


「娘はつい先日18となりました。こちらが娘です」


 そうしてキャンベル伯爵に紹介されたのは、瞳と同じ色の、レースがあしらわれたドレスに身を包んだステラだった。

 いつもとは異なり、どこか大人っぽい雰囲気を纏ったステラにレイモンドは見惚れた。いつもは可愛いが今は綺麗と表現するのが合っている。

 招待された男たちも、頬を染めて感嘆のため息を漏らす。

 周りから息が吐き出される音を聞いてレイモンドは我に返り、思わず周りにいる男たちを睨んだ。


(ステラ嬢を変な目で見るんじゃない! 俺が婚約する予定なんだからな!)


 レイモンドは、睨まれて肩を一瞬だけ震えさせた男たちを見てより一層決意を固めた。ここにいる男たちにはステラと話す機会もくれてやるものか。


 伯爵に紹介されたステラが挨拶を終えると、周囲の男たちはソワソワとし始めた。
 今からステラと話すことができるのだろう。

 誰もがステラに話しかける機会を今か今かと待ち望んでいる。


「ステラ嬢!」


 レイモンドは誰よりも早く前に出た。


「レイモンド様!」


 驚くステラの手を引いて肩を支える。そして、ステラの隣にいたキャンベル伯爵へと向けて言った。


「ステラ嬢は俺がもらいます! 謝罪はまた後日に!」
「は⁉︎ ちょ、待ちなさい!」


 言うだけ言って伯爵の引き止める声を無視してステラを連れ出す。


(あぁ、もう! 何を言っているんだ俺は!)


 外に出てから自分の言ったことに恥ずかしくなったレイモンドは、もっとマシな言葉があっただろうと少しだけ反省していた。ちなみに後悔は全くこれっぽっちもしていない。


「急に連れ出してごめん。でも、今日君が婚約者を決めると聞いて、我慢できなかったんだ。……俺は悪いやつになってしまったな」


 もし。もしあの男たちの中にステラの好きな人がいたとしたら悪いことをしたと思う。せっかく婚約できる機会を奪ってしまったから。


——でも、その好きな人という立ち位置に俺がいたら。


(なんて、期待しすぎか?)


「ステラ嬢。伯爵には後日謝罪に向かうよ。そう伝えておいてくれないか?」
「いいえ、その必要はありません」
「え?」
「父は、知っていましたから」


 知っていたとはなんのことだろうか。


「レイモンド様、学園に戻りましょう?」


 レイモンドの手を離し、ステラはドレスを翻しながら振り返った。

 レイモンドは慌ててステラの手を取った。

 星空の下でレイモンドを見て微笑んだステラは美しく、人ならざる者が、そのままどこかへと連れ去ってしまうのではないかと、そう思ってしまったが故の行動だった。
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