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サナの場合
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最初は「厚化粧」だった
それから学年が上がると
非常識
八方美人
そして
男好き
淫乱
淫売
娼婦
教師から同級生、はては下級生までありとあらゆる男性に媚を売っている女。
こそこそと、ときには聞こえよがしに、語られる陰口。
学園に入学した時から、悪口陰口を浴びてきた。
まあ、あながち間違いではない。
それがサナ・リットナーの学園での評価。
それがどうした、である。
たとえば今めそめそと目の前で醜態を晒している女。
わざわざ呼び出して、一対一かと思いきや仲間の女子生徒をゾロゾロと連れてきて
「婚約者を返して」
ときたものだ。
「あら、婚約者がいらしたのね。お相手はどなた」
と聞いてあげればいきなり周りが騒ぎ始める。
しらじらしい
自分が何したかわかってるの
ヨハン様はマリー様の婚約者よ
お二人は美男美女の婚約者ですのよ
周りが煽るから、だんだんマリー様の目に涙が湧いてきます。
そして、婚約者を返しての発言でクライマックス。
よくあるパターン。
貴族のご令嬢って、芸がないわね。
扇子を閉じて、かたちばかり口元を隠してマリー様の顔を覗き込みます。
「まあ、ヨハン様には婚約者がいらしたのですね。それなのに花街で遊び回って、ひどい方ですね」
予想外の切り返しだったのでしょう。
ポカンと口が空いて、マリー様何だか間抜けずら晒してますよ。
「あのかたは、友人としては楽しいですが、妻となる人は大変ですね」
頑張ってくださいねと告げて立ち去る事にする。
わたしが背を向けてやっと馬鹿にされていることに気がつかれたようです。
何やら罵っておられますが、知ったことではありません。
全寮制の貴族学校。
この国の貴族の子弟は須くここを卒業しなくてはならない。
ここを卒業して初めて貴族と認められるのである。
冠婚葬祭以外では外泊は認められない五年間完全な寮生活。
閉ざされた環境で、未来のために勉学と人脈作りをするいわば貴族としての学舎。
この学園での立ち振る舞いで、貴族としての将来が決まると言う。
という気の抜けない場所。
しかも平民ではもう結婚が始まるそれなりのお年頃の男女が一つのところにいるというのに、男女交際は絶対禁止なのだ。
目の前に婚約者がいて、卒業と共に結婚する事になっていても、ダンスで乗馬で体を密着させることもあるというのに。
高ぶるものは高ぶるのである。
だから、ちょっと隙を見せるだけで、体に触れるだけで、それ以上何もしないというのにわたしに靡いてくるのだ。
そんな方には花街を教えるのだ。
ちゃんと優良なお店を紹介するから、好評なのです。
全寮制ゆえ泊まりはできないのですが、それゆえにはまり過ぎず皆様適度に楽しんでおられます。
お金も持っておられますし、花街も優良顧客をゲットできて喜んでもらえてます。
最近は私の紹介だけでなく、男性同士のつながりでお店を紹介されたり、後輩を連れて行ったりされているみたいですよ。
人によってはお話しただけで、私にテストの予想問題を作ってきてくれた方もいましたね。
すごく役に立ちました。
面白いくらい喜んで、言いなりになってくれる男子生徒の多いこと。
もちろん相手は慎重に選んでいるし、最上級生になるまでは学園中の噂になることはしなかった。
我が身を大切。
先に卒業した人からわたしの噂が広がるのは避けたいのだ。
ペナルティだめ、絶対。
さて、卒業まであと二月。
男性の花街通いは今まで女性の知るところではありませんでした
婚約者の女性たちはどう動くのでしょうか。
卒業式。
視線が痛いですわ。
昨日は女衒と言われてしまいました。
失礼な。
女子生徒と、おそらく手紙で事情を知らされているであろう一部のその親たちが睨んでいます。
サラは伯爵令嬢ですので、そうそう直接言葉を浴びせる親はいないのですが、平等を謳う学園の同級生はちまちま嫌がらせをしてきます。
今髪を引っ張ったのは誰かしら。
サナ・リットナーの貴族令嬢としてのこれからは明るくない。
今はまだ学園内に留まっている悪評もこれからは一気に広がる。
一昨年卒業した婚約者に学園の噂が伝わるのも時間の問題だ。
半年後の結婚は、無事に行えるのだろうか。
でも気にしない。
だって私、サナではないのですもの。
サナを名乗り、学園生活を送っただけ。
契約通り、良き成績は取りました。
私はサナ・リットナーの9つ年上の姉マリサ。
もともとリットナー家の家政婦だった母。
当主の手がついて私が生まれた。
嫁いで来たサラの母は私達母子を追い出した。
それはまあ、わからなくはない。
母も私も了解していた。
婚約者がいるのに家政婦に手を出して妊娠させた父親の方に明らかに問題があったから。
そのくせサラが学園に入学出来なくなったら顔はよく似ている私に替え玉を強要したのはどうかと思うのだ。
貴族は学園を卒業しないといけないから、ですってよ。
サラの姉として協力する義務があるんですって。
怪我の治療をきっかけに薬物依存性って。
平民はそうそう医者になんてかかれないのに。
だからきちんと契約しました。
9つも歳をごまかすの大変なの。
毎朝1時間かけて顔を作ってました。
生活全般にかかる費用プラス月々のお手当。
向こうからは入れ替わりがバレないよう特定の友人を作らないこと。
おかげでいつもひとりぼっちだが、約ひと回りも年下ばかりだからそれはいい。
高成績を取ること。
ちゃんと優良な成績を収めました。
問題ない。
きちんと契約は果たしたもの。
お手当は貯めておいたから、ちょっとした店でも始めようと思っている。
卒業式を持って契約終了。
ここに私のものは何もないから、式が終わったらその足でここを出ていきます。
卒業後も周りと話を合わせるための校内見学を兼ねて、夜の卒業記念パーティーには、本物のサラが出席します。
夜なら化粧を濃くしたら顔が分かりにくいし、父親がエスコートしていますから入れ替わりはバレないでしょう。
婚約者がいるのに、卒業記念パーティーのエスコートは父親と決まっています。
卒業までは子供ということなのでしょう。
そこから出たら大人として扱われる。
貴族はいろいろな決まりがあって、めんどくさいですね。
まあその頃には私はとある公爵領についているでしょう。
リットナー伯爵とは派閥が違い、爵位差もあってリットナー伯爵からは連絡も取れないところです。
先に生活を始めた母が待っています。
それから学年が上がると
非常識
八方美人
そして
男好き
淫乱
淫売
娼婦
教師から同級生、はては下級生までありとあらゆる男性に媚を売っている女。
こそこそと、ときには聞こえよがしに、語られる陰口。
学園に入学した時から、悪口陰口を浴びてきた。
まあ、あながち間違いではない。
それがサナ・リットナーの学園での評価。
それがどうした、である。
たとえば今めそめそと目の前で醜態を晒している女。
わざわざ呼び出して、一対一かと思いきや仲間の女子生徒をゾロゾロと連れてきて
「婚約者を返して」
ときたものだ。
「あら、婚約者がいらしたのね。お相手はどなた」
と聞いてあげればいきなり周りが騒ぎ始める。
しらじらしい
自分が何したかわかってるの
ヨハン様はマリー様の婚約者よ
お二人は美男美女の婚約者ですのよ
周りが煽るから、だんだんマリー様の目に涙が湧いてきます。
そして、婚約者を返しての発言でクライマックス。
よくあるパターン。
貴族のご令嬢って、芸がないわね。
扇子を閉じて、かたちばかり口元を隠してマリー様の顔を覗き込みます。
「まあ、ヨハン様には婚約者がいらしたのですね。それなのに花街で遊び回って、ひどい方ですね」
予想外の切り返しだったのでしょう。
ポカンと口が空いて、マリー様何だか間抜けずら晒してますよ。
「あのかたは、友人としては楽しいですが、妻となる人は大変ですね」
頑張ってくださいねと告げて立ち去る事にする。
わたしが背を向けてやっと馬鹿にされていることに気がつかれたようです。
何やら罵っておられますが、知ったことではありません。
全寮制の貴族学校。
この国の貴族の子弟は須くここを卒業しなくてはならない。
ここを卒業して初めて貴族と認められるのである。
冠婚葬祭以外では外泊は認められない五年間完全な寮生活。
閉ざされた環境で、未来のために勉学と人脈作りをするいわば貴族としての学舎。
この学園での立ち振る舞いで、貴族としての将来が決まると言う。
という気の抜けない場所。
しかも平民ではもう結婚が始まるそれなりのお年頃の男女が一つのところにいるというのに、男女交際は絶対禁止なのだ。
目の前に婚約者がいて、卒業と共に結婚する事になっていても、ダンスで乗馬で体を密着させることもあるというのに。
高ぶるものは高ぶるのである。
だから、ちょっと隙を見せるだけで、体に触れるだけで、それ以上何もしないというのにわたしに靡いてくるのだ。
そんな方には花街を教えるのだ。
ちゃんと優良なお店を紹介するから、好評なのです。
全寮制ゆえ泊まりはできないのですが、それゆえにはまり過ぎず皆様適度に楽しんでおられます。
お金も持っておられますし、花街も優良顧客をゲットできて喜んでもらえてます。
最近は私の紹介だけでなく、男性同士のつながりでお店を紹介されたり、後輩を連れて行ったりされているみたいですよ。
人によってはお話しただけで、私にテストの予想問題を作ってきてくれた方もいましたね。
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面白いくらい喜んで、言いなりになってくれる男子生徒の多いこと。
もちろん相手は慎重に選んでいるし、最上級生になるまでは学園中の噂になることはしなかった。
我が身を大切。
先に卒業した人からわたしの噂が広がるのは避けたいのだ。
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さて、卒業まであと二月。
男性の花街通いは今まで女性の知るところではありませんでした
婚約者の女性たちはどう動くのでしょうか。
卒業式。
視線が痛いですわ。
昨日は女衒と言われてしまいました。
失礼な。
女子生徒と、おそらく手紙で事情を知らされているであろう一部のその親たちが睨んでいます。
サラは伯爵令嬢ですので、そうそう直接言葉を浴びせる親はいないのですが、平等を謳う学園の同級生はちまちま嫌がらせをしてきます。
今髪を引っ張ったのは誰かしら。
サナ・リットナーの貴族令嬢としてのこれからは明るくない。
今はまだ学園内に留まっている悪評もこれからは一気に広がる。
一昨年卒業した婚約者に学園の噂が伝わるのも時間の問題だ。
半年後の結婚は、無事に行えるのだろうか。
でも気にしない。
だって私、サナではないのですもの。
サナを名乗り、学園生活を送っただけ。
契約通り、良き成績は取りました。
私はサナ・リットナーの9つ年上の姉マリサ。
もともとリットナー家の家政婦だった母。
当主の手がついて私が生まれた。
嫁いで来たサラの母は私達母子を追い出した。
それはまあ、わからなくはない。
母も私も了解していた。
婚約者がいるのに家政婦に手を出して妊娠させた父親の方に明らかに問題があったから。
そのくせサラが学園に入学出来なくなったら顔はよく似ている私に替え玉を強要したのはどうかと思うのだ。
貴族は学園を卒業しないといけないから、ですってよ。
サラの姉として協力する義務があるんですって。
怪我の治療をきっかけに薬物依存性って。
平民はそうそう医者になんてかかれないのに。
だからきちんと契約しました。
9つも歳をごまかすの大変なの。
毎朝1時間かけて顔を作ってました。
生活全般にかかる費用プラス月々のお手当。
向こうからは入れ替わりがバレないよう特定の友人を作らないこと。
おかげでいつもひとりぼっちだが、約ひと回りも年下ばかりだからそれはいい。
高成績を取ること。
ちゃんと優良な成績を収めました。
問題ない。
きちんと契約は果たしたもの。
お手当は貯めておいたから、ちょっとした店でも始めようと思っている。
卒業式を持って契約終了。
ここに私のものは何もないから、式が終わったらその足でここを出ていきます。
卒業後も周りと話を合わせるための校内見学を兼ねて、夜の卒業記念パーティーには、本物のサラが出席します。
夜なら化粧を濃くしたら顔が分かりにくいし、父親がエスコートしていますから入れ替わりはバレないでしょう。
婚約者がいるのに、卒業記念パーティーのエスコートは父親と決まっています。
卒業までは子供ということなのでしょう。
そこから出たら大人として扱われる。
貴族はいろいろな決まりがあって、めんどくさいですね。
まあその頃には私はとある公爵領についているでしょう。
リットナー伯爵とは派閥が違い、爵位差もあってリットナー伯爵からは連絡も取れないところです。
先に生活を始めた母が待っています。
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