妖精の取り替え子として平民に転落した元王女ですが、努力チートで幸せになります。

haru.

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~第一章~

シスター セレナ

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「ねぇ、もう仕事も終わったから先に帰っても良いんだよ?  ちょっと孤児院に行くだけだから。」

「いえ、私も一緒に参ります。」

  本当は治癒院に住み込みで働いて欲しいとギルマスから頼まれたが、しばらくオリヴァーさんの家にいるって約束したし、リエラさんとまだ打ち解けられてない内に出ていくのはちょっと心苦しい。

  だから朝の8時から夕方の5時までを勤務時間としてそれ以外の緊急事態は申し訳ないが直接知らせてもらう事になった。

  今は仕事終わりで、ちょっとだけ子供達に差し入れしようかと思って孤児院に向かっていた。

  トロイも1日中護衛をして疲れていると思ったから帰っていいと言ったのに頑固者め。

  もう25歳なんだし、仕事ばっかしてないでプライベートも大事にしなよ。
  私が知る限りトロイは私の側に付きっきりで、女の影なんて感じた事がなかったので少し心配していた。

  一時期トロイは恋愛に興味がないのか、不能なのか、それとも恋愛対象が男とか?  などあれこれ他の護衛騎士と考えてみた。だがどれもピンとこなくて皆は私の考えを焦って否定して「嬢ちゃんはそんな事考えなくていいんだ!  あの人は自分の気にくわない事は死んでもしない!  だから大人しく騎士をしてるって事はこの状況に満足してるんだよ!」と言って誤魔化し続けていた。

  案外子供好きで、私の事を放っておけなかったって事かな?  孤児院の子供達の扱いも上手かったし。

  そんな事を考えながら出店で唐揚げのような衣あげを買って孤児院のお土産にした。


「あー!  アクア様だぁーー!」

「アクア様、いらっしゃーい!」

「トロイアス様もいるー!」

「シスター!  シスター!  アクア様来たよーー!」

「わぁ!  いい匂いぃ~。」

「お肉?  お肉だよね!  この匂い!」

「お肉っ!?」

「お肉だ!  お肉っ!!」

  神殿で軽く祈りを捧げた後、隣の孤児院に行くと子供達が私達の存在にすぐ気がつき、あっという間に囲まれた。元気いっぱいに はしゃぐ子供達は私やトロイの手をグイグイと引っ張りながら室内へと連れていった。

「皆、今日も元気ね~。」

「走り回るな。転ぶぞ。」

「あのね、あのね、アクア様!  街の人達がね、アクア様が作ってくれた畑や鶏小屋見て凄いって驚いてたよ!」

「え?  あれを見たの?」

「うん!  此処で治療を受けられるって思ったみたいで、神殿や孤児院に来てたの!」

「へ、へぇ~。」

  一応冒険者ギルドからも、神殿からも、新しい治療院の事は説明して貰ってるんだけど、まだ勘違いして此方に来ちゃう人がいるのか……
  それも私が魔法の練習兼ねて作ったなんちゃって畑と鶏小屋を見たなんて。

  あれは私が覚えている限りの知識と王城の本の知識を合わせた地球と異世界の合作なのよね。土魔法でそれなりに耕して、育てやすいって定評のある芋を植えた。その際に土に成長促進の魔法を放って。

  鶏小屋もトロイに近所で余ってる廃材を貰ってきてもらった木材で見よう見まねで作っただけの小屋だ。よくある、鶏が卵を生んだらコロコロと転がって外のレーンに溜まるようにしただけの。

  まぁそのお陰で子供達でも卵を回収出来るようになったと喜ばれはしたけど。

「……アクリアーナ様っ!」

  自由に遊戯できるリビングのような広間で子供達と楽しくお喋りしていると、瞳を潤ませたシスターが駆け寄ってきた。

  シスター セレナ、確か今年で45歳になる、優しくて誰にでも分け隔てなく接する聖職者の鏡のような慈悲深い女性だ。
  初めて挨拶した時も私がお荷物で厄介者の第二王女だと言っても「貴女がどなたでも構いません。お好きな時に来て大丈夫ですよ。」と言ってくれた、私の大切な人だ。

  私にとってお母様やお姉様以外に身近な女性といったらシスターしかいなかった。何か女として困った事や相談したい時は何だかんだでシスターに話していた。

  私が家族と話そうとすると周りが嫌がるから頼りづらかったし、私が困ってると頼んでもないのにトロイが強引にシスターと会わせた「アクリアーナ様の相談に乗ってほしい。」と勝手に言ったりして。
そんなこんなでシスターや王城内の噂や情報に精通している神殿長達は割りと私の事情に詳しかったりする。

  駆け寄ってくるシスターを前に私も立ち上がって挨拶をした。

「シスター、ご無沙汰しております。先日は私のせいで子供達を騒ぎに巻き込んでしまいました。申し訳ございません。」

「……ッ……いえっ……そんな……」

  泣くのを堪えるように肩を震わし、そして首を横に振ったシスター。

「もう聞いているかと思いますが、私は第二王女の座を辞する事になりました。今は冒険者ギルドの向かい側の治癒院で働いております。」

  心配かけてごめんなさい。と気まずそうに微笑む私をシスターはぎゅっと抱きしめてきた。

「お疲れ様でございます、アクア様。本当に……お疲れ様でございました。……今までは身分がございましたからこういった事は出来ませんでしたが、今日からは違います。これまで第二王女として頑張ってきたアクア様を私は知っております。よく頑張りましたね、アクア様。とても立派でございました。」

  そっと髪を撫でながら何度も、よく頑張りました、立派でございました、もう大丈夫ですよ。と何度も言ってくれた。

  じんわりと涙が瞳に溜まっていくのがわかった。
  でも王族としての癖なのか、グっと涙を堪えるように息を止めてしまった。そんな私の考えが読めたのか、トロイがさっと私の視界に入ってきて、ゆっくりと頷いた。

  もう我慢なんてしなくていいと許可して貰った気がした。

「……ッ……シ、シスター、わたし……第二王女をちゃんとやれてましたか?……ッ……」

  ポロポロと涙が零れ落ちるのを感じながら、私はシスターの体にしがみついた。

「勿論でございますよ!  アクア様以上に立派な王族はおりません!  国に尽くし、民を想ってくれる立派な第二王女様でした!  間違いございません!」

「そっか。……私頑張りました。とても、本当にとても頑張りました。」

  普段は穏やかな口調のシスターがちょっとだけ強い口調で私を肯定してくれるのが嬉しかった。

  肩の荷がまた一つ降りたそんな気がした。

 
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