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金色ニート②
しおりを挟む「金髪が落っこちてました」
食堂でマリネさんが、ノンカフェインのワインと俺には1ヶ月働いても買えないようなお皿にチーズが3つしかない軽食をおごってくれた。
「ヤヨイたんがある日、行ったの。会社のロビーに、本当に金髪のショウたんが座ってて、行く場所がないって言うから、拾っちゃった♪」
拾っちゃった♪って捨て猫じゃないんだから・・・。
「高校出てから、燃え尽きてニートになって、親にも見放されて、ホームレスになって、行き着いたのが、うちの会社の誰もいないロビー」
マリネさんは、上品にチーズを食べながら話す。
「ショウたんに働く?って聞いたら嫌ですって言ってさすがの私も困ってたら・・・ヤヨイたんが、彼に一目惚れしたので私が養います!って言って、今にいたるの♪」
一目惚れの結婚前提の彼なのか・・・本当にこの会社は何でもありだ。
食堂の窓から、マリネさんがぼんやり秋から冬になりそうな、高くなりはじめた空を見上げた。
「ケンたんは、まだ不思議でしょ?いろんな人がいて、この会社。むふふ」
思わず、ストレートなボールが投げられて、飲んでいたワインをむせる。
「まあ・・・はあ・・・」
我ながら情けない声がでる。
「実はね、ルリが高校生の時に不登校になって、今で言う社会不適合者だから、ルリが入社できる会社を作っちゃえって思ったの♪まあ、結局、私の兄の・・・ルリのパパの会社を希望になっちゃったんだけどね♪むふふ♪」
え?っと思った瞬間、ノンアルコールのワインを吹いた。
「ブガハッゲホッ、ご、すみまぜん」
目の前が、服がまるで吐血したようになった。
「やだあ♪ケンたん、かわいい♪むふふ」
目の前で笑うマリネさんに動揺しながらも、あの彼氏が途切れない、友達たくさんのルリが不登校なんて微塵も知らなかった・・・。
「ルリ、有名な電化製品の社長の娘のわりには意地っ張りで私立じゃなくて、公立の進学校に行くってきかなくてね。行ったら行ったで、妬みからイジメられたのよ・・・」
マリネさんが、また高くなった空を見上げた。
「ケンたんには、黙っててくれって言われてるんだけどね♪ルリ、ケンたんの事を1番信頼してるみたいで、叔母さん安心しちゃった♪大学で1人でもそんな友人ができて♪」
意外な話を意外な流れで聞いているせいか、現実とは思えなかった。
「ルリに助けられたのは、ぼっちだった俺のほうです・・・」
やっと出てきた一言に、初雪のような汚れのない笑顔でマリネさんが微笑むので、思わず目をそらした。
「私は、そんな会社を作りたかったの。今も試行錯誤で失敗だらけだけど、この国は、1度ルールや人間社会から離れたら、戻ることも難しい。だから、人生や人間関係やルールが楽しみで働いてくれる会社にしたいし、今の全国にいる4000人の社員に感謝しかないわ♪」
ルリさんは、うんとのびをすると、最後の一口のワインを飲み込んだ。
「だから、ケンたんも、来年から楽しんで働いて♪仕事のためじゃなく、人生と人間関係を楽しむための仕事だから♪」
マリネさんは、ルリと同じ白いスラッとした手をひらひらふりながら仕事へと戻って行った。
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