追放チート魔道士、TS魔王と共に魔界で生活する

海道一人

文字の大きさ
8 / 37

8.背信者テオフラスを討伐せよ!

しおりを挟む
「取り逃がしただと!」
王の間にインビクト王の怒声が響いた。

「申し訳ありません!突如魔族が現れ、必死に追ったのですがあの魔道士が飛竜に乗りながら見た事のない魔法を使い、すんでのところで取り逃がしてしまいました」
近衛隊長が平謝りに謝っている。

「此度の失態は我が命に代えてでも必ず挽回してみせますので、今一度機会を!」

「当たり前だ!」
王の怒りは収まらない。

「国王陛下、怒りをお鎮めください」

そう言って王の間に入ってきたのは鎧兜に身を包めたアポロニオだ。
サラと魔道士モブランも後に続いている。

「これでテオフラスが魔族と通じているのははっきりしました。まはや私に何の迷いもありません。報告によると奴らはボーダーズにある屋敷を破壊した後に魔界へ向かっていったとか。ならば私たちが今一度魔界に赴き、きゃつめを打ち倒してきましょう」

「おお、行ってくれるか、アポロニオ殿!」
その言葉に王の表情が一気に明るくなる。

「しかし今回は流石に向こうも我々が追ってくるのを知っているでしょう。おそらく今回は魔王軍との戦争になると思われます。まず我々が先行し、追って軍を送っていただけますか?」

「よかろう、すぐにインビクト軍を差し向けよう。必ずやあの背信者テオフラスを打ち取ってくれ。くれぐれも我が娘、サラのことをよろしく頼みましたぞ」

王はアポロニオの肩を叩いた。
「今回の遠征が成功した暁には、サラとの婚約の件を進めなくてはな。そのためにもお主の円卓入りも考えておくぞ」

王の耳打ちにアポロニオは奮い立った。
インビクト王国の姫君と婚約、そして国の政治を担う円卓への参加、テオを倒せばその二つが一気に手に入るのだ。

「お任せください!このアポロニオ、必ずや裏切り者テオフラスを打ち取ってみせます!」

「あの……アポロニオ様、今一度考えなおしてはいかがでしょうか?」
後ろにいたサラが恐る恐る訪ねてきた。

「テオフラス様は魔族に着いていったのではなく連れ去られたという者もおります。今一度事態を正しく見極めてからでも遅くないと思うのですが……」

「何をおっしゃる!」
アポロニオはサラの肩をがっしと掴んだ。

「近衛隊長も言ったではありませんか、奴が魔法を使い魔族と共に遁走したと!」

「し、しかし……」

「それに時間がありません!奴はいかなる手を使ったのか既に魔界に入ったとの知らせもあります。ここから魔王城までは航続距離でグリフォンに勝る飛竜を使っても二週間はかかります。戦力を整えられてしまってからでは遅いのです!」

「そ、それは……」
しかしアポロニオはサラの言葉など一顧だにしない。

「モブラン!飛竜の準備は出来てるか!」

「は、はい!しかし飛竜調教師ワイバーンテイマーがまだなのでそれを待ってからの方が……」

「そんなもの待っていられん!今すぐ行くぞ!モブラン、君も魔道士として今回の遠征についてくるのだ!」

アポロニオはそう言ってずかずかと王の間から出ていった。
サラとモブランも慌てて後に続く。


    ◆


そしてその晩、三人は王城と魔界との国境の中間ほどの草原で野営をしていた。

「アポロニオ様、やはりこの辺には飛竜の餌となるものはないようです」
へとへとになりながらモブランが戻ってきた。

休憩なしで飛び続けたせいで遂に飛竜の体力が尽きてしまい、やむなくこんな何もない草原に野営する事になってしまったのだ。

「クソ!モブラン、君は魔道士なのだろう、飛竜位世話できないのか!?」

「無茶を言わないでください~。私は魔道士と言っても四大精霊専門なんですよ。魔獣の生態や調教は門外漢なんです」

「何を言っている!魔道士たるもの、魔法に関する全般は出来て当たり前ではないか!現にテオフラスは……」

そこまで言いかけてアポロニオは言葉を止めた。

前回の魔王討伐では飛竜の世話から餌に使う動物を狩ることまで全てテオフラスが担っていたのだ。
それに気づき、忌々しそうに舌を鳴らす。

「アポロニオ様、やはり我々は準備が足りなすぎると思います。飛竜も疲れ切っていてこのまま魔界まで行けるかどうか。今からでも遅くはありません、一旦戻ってもう一度準備を整えましょう。」

「サラ殿まで何をおっしゃるのです!ここまで来たのですよ!今更どんな顔をして帰るというのですか!」
サラの提案も聞こうとはしない。

「さあ、明日も早くから移動しなくてはならない。早く休みましょう」
アポロニオはそう言ってごろりと横になった。

もはや人の意見など聞く気はないようだ。
サラはため息をつき横になった。

こんな時、テオがいてくれれば理性的に説得できただろうに。


    ◆


「飛竜はどこだーーーー!!!」

翌朝、サラはアポロニオの怒鳴り声で目を覚ました。
真っ赤な顔で震えているアポロニオの向いている先にある木に留めていたはずの飛竜が……いなくなっていた。

「……これは……逃げたようですなあ」

同じように起きてきたモブランがのんきな顔で推測する。
その他人事のような口調にアポロニオの怒りに油が注がれる。

「モブラン!何をのんきなことを言っている!君が飛竜の係留をいい加減にしたからこんな事になったんだぞ!」

「いえいえ、飛竜を留めたのはアポロニオ様ですよ。私はアポロニオ様の命令で着いてすぐに飛竜の餌を探しに行ったんですから」

モブランの指摘にアポロニオは言葉を詰まらせる。

確かにその通りだった。

モブランに飛竜の餌を探しに行かせた後、サラとの会話で夢中になって手綱を留めるのをおざなりにしていたは記憶にあった。

それがわかっているだけになおさらやり場のない怒りがアポロニオの体内に積もっていく。

「で、どうします、これから?」
そんなアポロニオの気持ちを知ってか知らずか、モブランが無邪気に聞いてくる。

こいつは、人の気も知らないで。
アポロニオの怒りが更につのる。

「決まっているだろう」
アポロニオは苛々しながら言った。

「昨日、上空から近くに村があるのが見えた。そこまで徒歩で行って移動手段を確保するのだ。道まででれば馬車が来ることもあるだろう。さあ行くぞ!」

げっそりした顔のモブランとサラも渋々と後に続く。

こうなったのも全てあのテオフラスのせいだ。
自らの失態なのだがアポロニオの怒りはテオフラスへ向かっていた。

絶対に打ち取ってその首をインビクト王の前に持っていってやる!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...