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目が覚めた先は

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目を開く。
目の前には見慣れた天井。自分の屋敷の寝室だと直ぐにわかった。
あの夢を見たのは久しぶりだった。
あの時から私は『モニカ』になった。
あの神がなぜ私だけ、そうしたのかわからない。
だが、神の言ったようにたまたま神は死ぬ間際の私を見ていて、面白いと思った。
それだけの事、なのだろう。

「目、覚めた…?」

声の方向を振り向くと、いたのはレベッカだった。
神にみせてもらった時のボロボロのレベッカではない。
あの時よりも成長し、身なりも清潔だ。
だが、愛らしいグリーンの瞳は真っ赤に腫れてしまっている。
少しでもレベッカが安心するように私は微笑んだ。
全身が痛い。
背中も、ナッシュに傷つけられた所がじくじくと傷んだ。

「ええ、ご心配、おかけしました」
「馬鹿ッ!!」

レベッカは涙混じりに私を詰る。
昔、私に駆け寄ろうとした時に転んでしまい、泣きながら私にすがりついた時のようだった。
私は比較的自由な腕をだし、レベッカの頬に触る。
柔らかで、滑やかな肌はそのままだった。

「…レベッカ様、私は後悔しておりません。貴女を守れたんですもの」
「だからって、だからって…」
「泣かないで」

『お母様、お母様』

そう言って私に駆け寄ってきたレベッカを思い出す。
いけない。今の私はモニカなのに。
私は涙を堪える。
レベッカは涙を拭い、言う。

「…お母様みたいだった」
「えっ?」

一瞬、聞き間違いかと思った。
この世界の私はレベッカを産んだ後すぐに亡くなっているからだ。
だから今のレベッカが母なんて口にするはずない。

「私の、私の想像していたお母様みたいだったの。貴女が。だから、あの時お母様が亡くなっちゃうんだと思った。おかしいわよね、もういないのに」
「…レベッカ様」
 「だから、貴女が亡くなると思って、私怖かったの。大切な人が私の手から漏れてしまう。それが一番」
「………」

レベッカ、私が貴女のお母さんよ、私がーー。

そう言いたくなるのを私は堪えた。
口を噤む。
その代わり、レベッカの顔を私は瞼に焼き付けた。

「レベッカ様、涙を拭いて。貴女は、笑顔でいるのが似合います」
「……、これでどう笑えって言うのよ」
「それも、そうですね。なら、一思いに泣いてください。そして、また貴女の笑顔を見せてください」
「………わかったわ」

私が寝るベッドに突っ伏してなくレベッカを私はレベッカの涙が収まるまでそのレベッカの背中を優しくさすり続けた。
愛しい私の娘、愛しいレベッカ。
望んですらいなかった想像以上の結果に、神は満足していただけただろうかと思いながら。
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