赤い花を手折る

ブリリアント・ちむすぶ

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喜劇の道化は

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地下室を下がるのがこんなに心躍るなんて今までなかった。
バグダスの足取りは軽い。
鼻歌を歌いながら地下室の階段を下るバグダスの脳裏には先ほどの国の重鎮共の会議があった。
 もちろん国家魔法技術総監督のバグダスもその会議には参加したが、何度吹き出してしまうかと思うほど、バグダスにとっては愉快な物だった。

――まだ見つからないのか! 反逆者カイラスを!
――早く見つけて処刑をしろ!
――まったく、生かしてやったのになんという仕打ち!
――これだから平民の子は!

 何度笑い声を堪えた事だろう。
 いや、仮に耐え切れず笑い出したにしてもあの醜い豚たちはバグダスのことなど気にとめないのかもしれない。

 前王を退位させたはいいものの、今の王の政治基盤が固まりきる前にカイラスのクーデターを許してしまった現王権の焦りはとてつもないものだ。
 前王が気まぐれで平民の女に手を出した結果生まれたカイラスを今まで厄介払いとして軍に入れていたのが仇となった。

 内乱、出兵の際には先陣をきって戦場に赴くカイラスは民衆の人気も高い。
 王が何度カイラスを反逆者と罵ってもカイラスを「王」にと望む民衆の声は断ち切ることが出来なかった。
王としては早くカイラスを捕え、殺したいのだが肝心のカイラスは見つからない。
 その反面民衆の止まらぬカイラスを支持する声に王とその側近たちの焦りは強まるばかりだった。

「…あぁ愉快」

 バグダスは独り言る。
 この国はもう終わりなのだ。
 王が腐敗し、民衆は重税に苦しみ続けている。
以前のように戦争を起こそうにも様々な要因により、続けても消耗するだけ。
 王の顔は日に日に焦燥が目に見え始め、王が発するとは思えない下品かつ下劣な言葉でバグダスたち側近をなじるようになった。

 所詮、前王を無理矢理退位させただけの仮初の王。

 ……無論、王の焦りの中にはいつまでたっても結果をださない魔法技術への苛立ちももちろん含まれているのだが。
 そんなことより、今のバグダスには重要なものがある。

「そう、貴方が本当の王。私だけの王…」

 バグダスはそう言って地下の階段を下りた先にある扉を開けた。
 そして、その部屋に拘束され、横たわる人物ににこやかに答えた。
 
 血すら劣る赤い髪、褐色の肌、赤い宝石の瞳

「ご機嫌麗しゅう、カイラス様」

 反逆者カイラス。
 彼は今、バグダスの手の中にいる。
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