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運命の分かれ道
しおりを挟む「さて、考えはまとまったかい?」
王宮の中にある謁見の間に連れてこられたシャオは濁った瞳を部屋の中に敷かれた絨毯に向けていた。
太陽が昇り、光がシャオの瞼を刺す。屋敷のような柔らかさはないその日の光にシャオは身を焼かせた。
「……」
シャオは縛られたまま、王座に座るイースに跪いている。
無論、これはシャオの意志ではない。シャオの後ろにいるルカの従属魔法によって無理やりだ。
ルカは後方でシャオを見張っている。
シャオがイースに何かしでかそうものなら、昨日のような従属魔法でシャオをすぐに制圧してしまうことだろう。
本来、シャオにはこの場から逃げるチャンスがいくつもあった。
従属魔法は完璧ではない。主人側であるルカやアランが睡眠など寝ている時間などは、従者側であるシャオの従属魔法が一時的に解かれ、使えなかった魔法を使うことが出来るのだ。
ルカも一応、シャオが寝る時間を考慮して睡眠をとっているだろうが、寝ないなどできるはずもない。
だが――、今のシャオには逃げる気力がもうなかった。
――もう、どうでもいい。
アランも、ルカも、自分自身ですらも、今はどうでもいい。
もう、疲れてしまった。
アランはどこかに行ってしまった。自分は今後、どう生きるべきなのか。
イースに忠誠を誓うのも、一人で暮らすのも、もう何もかもしたくない。
このまま、消えてなくなりたい、そう自殺願望に近いことをシャオはずっと一人、考えていた。
「シャオ、薬について教えてもらおう」
「……」
濁った思考の中、イースの言葉が耳に入る。
他の人間の声が全く入らないのに、イースの声だけ聞こえるというのはやはり、アランと兄弟だから、同じ声質からなのだろうか。
そんな馬鹿らしいことを頭の隅で考えた。
シャオ以外の人間から見れば、シャオは無表情で何も答えない、そんな反抗的な態度に見えたことだろう。
「シャオ」
イースの苛立ったような声がシャオに降りかかり、シャオはここで、初めて顔をあげた。
王座に座る、険しい顔をしたイースと目が合う。
イースの銀の瞳は同じだ。
だが、やはりアランと違う、アランの方が、暗い。
イースはアランではない。
「……」
「……ルカ」
らちが明かない、そう判断したイースがルカの方に視線を向ける。
従属魔法をかけろ、と言いたいのだろう。シャオもそちらのほうが楽かもしれない、と思った。
だから、シャオは抵抗することなくルカから従属魔法がかかるのを待った。
だが、ルカは王の命令でもそれを遂行するのを戸惑っているようで、イースに聞こえないくらいの小声でルカがシャオの名を呼んだ。
「……シャオ様」
それでも、シャオはなんの反応もしたくなかった。
やるなら早くやれ、という気持ちでシャオはルカの問いかけを無視する。
ルカの深いため息が聞こえた。
「……」
息を吸う音。
シャオは体を強張らせた。
その時、後方の扉が勢いよく開かれた。
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