年下セレブのわがまま事情

ブリリアント・ちむすぶ

文字の大きさ
69 / 106

最悪の目覚め

しおりを挟む
激しい情事のあとの目覚めは最悪だった。目を開けた途端、レンは今まで感じことの無い吐き気に襲われた。

「うっーー!!」

迫り上がってくる吐き気に思わず体を起こす。
それと同時に腰が悲鳴を上げた。

「ーー!」

言葉にならない悲鳴があがる。
腰に走る鈍痛にレンはうずくまり、その痛みが無くなるのを待つが体の所々が痛みを訴え始める。

「い、たい……ッ」

全身が痛い。頭も、身体中の関節も少し動くだけでギシギシと軋むような痛さだ。
だが、吐き気は止まってくれない。
今にも胃の中のものが口から出てきそうになるのを堪えながらレンは必死にベッドからはいでる。

「う、く……」

口元を抑え、目の前の扉に向かう。
吐き気はさらに増してくる。
すぐさま出したいのをこらえ、レンは部屋の扉に手をかけ、開き戸になっている扉を押すがーー、開かない。

「ーーッ!」

何度押してもビクともしない扉にレンは焦りを覚える。

「あ、開かない……、なんで……?」

何度押せど引いても扉は開かない。そうしているうちに吐き気がどんどん増していく。
もう限界だ、とレンはその場に胃の中のものをぶちまけた。

「うッーー」

 びしゃびしゃとした不快な水音が音を立てる。
 カーペットが敷いていない場所に吐いたのは幸いだった。
 大したものを食べていないおかげで胃液しかでなかった自分の吐瀉物を見て息を吐く。

「……」

 多少楽になった視界でレンは今いる部屋を眺めた。
 それなりに広さはある。置かれているのが寝かされていたベッドのみのせいでさらに広く感じる。
 扉は鍵がかかっている。外界に通じる手段はベッドのすぐ横にある窓のみだが、それも落下防止かはたまた逃走防止か――、人間の手では開けられそうもない鉄格子が嵌められているのがわかる。

「……」

 レンは力の無い手で部屋の脇にあった扉に手をかける。そこにはバスルームがあった。
もっと早くバスルームの存在に気がついていれば、こんな吐瀉物で部屋を汚すことは無かっただろうに。
 ひとまず、この気持ち悪さから開放されたいとレンはバスルームの洗面台で口をすすぐ。
 ふと、鏡に映った自分の姿にレンは息を呑む。

「なっ……」

 着させられていたシャツから覗く体には幾つもの赤い跡が残っていた。
 急いで全身を確認すると、足にも、腹にもついている。無事な部分は顔くらいだろうか。
 もはや情事のそれではなく毒かなにか飲んだのではないか、と思えるほどのおびただしい数のそれにレンは身震いをした。

「なん、なんだ……ッ」

 気持ち悪さを通り越し恐怖すら感じる。
 目覚める前の出来事が鮮明に脳裏によぎる。

「ーーっ!!」

 そうだ。自分はガランに抱かれた。衆人環視の中で、儀式だと言われて。

「う……っ」

 嘔吐感が再度湧き上がり、レンは洗面台に激しく嘔吐した。口から出てきたのは僅かな胃液だけだったものの、未だ吐き気は消えない。
 ひとしきり吐いたあと、レンはバスルームの壁に縋るように寄りかかったまま荒い息を吐く。

「はぁ……ッはぁ……」

 身体中が痛い。吐き気もまだある。喉も焼けつくように痛い。
 ここは恐らく、あの宗教の施設の中だろう。
 マークの言っていた近所に現れる宗教というのはこれのことか、なんてものを近所の人間に布教しようとしていたのだ。
 それに、ガランは重要人物の「祭司」だった。
 未成年に一体何をさせているのだ。こんなの、どう考えてもまともではない。

「クソッ……!」

 悪態を着きながらも、とにかくここから出なければ。ガランと共に。レンはそう決意する。
 一体どうすれば、とにかく、ガランと話をーー。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

水ノ瀬 あおい
BL
 若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。  昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。  年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。  リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。  

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
「普通を探した彼の二年間の物語」 幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。  そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。   最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

処理中です...