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この友は存外酒に弱い。
酔えばいつも、硬い口が柔くなる。
今も上機嫌に酒を飲んでいる友に私は長年の疑問を問いかけた。

「どうして女一人の為に世界を壊してしまったんだ?」

私の問いに友は首を傾げた。
「そんなことしたっけ?」
本当に心当たりがないのだろう、気分よく酔った友は鼻歌をやめて考え込む。

「…とうとう老耄したのか」
世界を作った男が世界を覚えていないとは。
予想しなかった反応に私はついふざけて返した。

恐らくここが引き際だ。
友は嘘がつけない男だが、誤魔化すことは出来る。
神のみぞ知る何かがあったと私は悟った。

「酷いっ!自分だって私とそう変わらないのに……サシェ…」

大袈裟に反応して、友は妻が新しい酒を持ってきたタイミングで私に虐められていると泣きついた。
幼い子供か?
呆れて私は鼻白んだ。
どこに夫婦のダシになりたい奴がいるか。

神の妻は慣れているのか神を邪険に扱って、
立ち上がる際に顔が近づいた時、私にだけ聞こえるようにそっと、囁いた。

『この人は私以外はどうでも良いのです』
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