一度全てを諦めた王が全てを手に入れる話 -王を見守り続けた男-

甘糖むい

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その後の彼の話

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彼が気づいた時には全てが終わっていました。

「あなたで最後です」

そう言って微笑むのは彼が唯一の王と慕うシュラウドでした。
彼は馬鹿ではありません。
数少ない王族の記録係です。
幼い頃から王に仕える者として教育され、数ある試験とライバル達と戦い抜いた末に勝ち取った仕事をしているのです。
だからこそ、彼はシュラウドの言う最後が何かを全て言われなくても理解しました。

――シュラウドの復讐はまだ終わっていなかったのだと。

「殿下は私も恨んでらっしゃったのですか?」
「いいえ、私は貴方に感謝しています。あの日、友としての貴方が居なければ私はシェラを手に入れられなかった」

そう言われて、彼は西陽で陰る微笑んだままのシュラウドを初めて見たような目で見つめました。

「心のままに動いた結果、私は諦めた筈の王座も、初恋相手のヘスティアも、全てが手に入った」
朗々と話すシュラウドはまるで知らない人のようでした。

彼はその時初めて、自分が引き金を引いたと気が付きました。

共に過ごした月日が全てまがい物だと知った時、彼はシュラウドの本当の恐ろしさを知りました。

「私が言ったから……」

その後の言葉を彼はつづける事が出来ませんでした。


前王が暗殺された時
シュラウドは驚くことなく報告を聞いていました。
シュラウドの世話をしていたメイドが二人服毒で死亡した時
シュラウドはそうかと一言告げただけでした。
皇后が火炙りにされた時
シュラウドはじっと部屋からその様子を見ていました。
イシュバール公爵夫人が死罪に合い、娘が命乞いに来た時
シュラウドは慰め程度の貴金属を手渡し微笑んでいました。
彼の親友である画家と護衛の騎士が二人が事故に遭った時
シュラウドは弔いの祈りをささげていました。
第一王子アレクが病に倒れた時
シュラウドは手紙を1通送りました。
ヘスティアを貶めようとした令嬢二人が不審死を遂げた時
シュラウドは早々に捜査を打ち切りました。
ずっと気が付かないようにしていた違和感が全てつながった時
シュラウドが全て黒幕だったのだと彼は気が付きました。
全ての死が彼の一言が招いた出来事だったのです。

「貴方は私の友だ、そしてずっと見ていただけの男でもある」

シュラウドの言葉は静かで、それでいて身が凍るような冷たい声でした。
彼は震える声で尋ねました。

「見ていた事が悪いというのでしょうか」

その問いに答える人はいませんでした。
それが答えでした。
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感想 7

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みんなの感想(7件)

m‥·*"
2024.09.13 m‥·*"
ネタバレ含む
2024.09.16 甘糖むい

コメントありがとうございます!
最後まで応援ありがとうございました。

彼についてはあえて名前を出さないで進めておりました。
おっしゃる通り彼女の方は、彼にとっては他のキャラクターと同様な立場という意味で使っていましたが彼女だけでは特別感が出てしまうのなら表記を変更してもいいかもしれません。
その辺はまたおいおい考えてみます。

たくさんのコメントありがとうございました。
この作品を愛してくださりとても嬉しく思います。

解除
turarin
2024.09.11 turarin
ネタバレ含む
2024.09.16 甘糖むい

コメントありがとうございます。

このお話はかなり気に入っているので、何か気になるシーンなどありましたら書きたいと思うので、お気軽にコメントください。

毎日追いかけて頂きありがとうございました。

解除
m‥·*"
2024.09.08 m‥·*"

 ざまぁ回、よ〜い、スタート!?
 袋綴じページの御開帳!?
 ぷぷぷ〜
 

解除

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