全て切り捨てて自分の幸せを掴みます~都合良い駒として生きるのはやめてやる~

かずきりり

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「髪色は適度に明るく! セットしやすい流行りの髪型でお願いします!」

 私はまず美容室へと駆け込んだ。
 いきなり明るい色は抵抗があるし、髪の長さも肩までしかない。
 そこまで変える事は出来ないだろうと思いつつも、出来る事は全部やろうと。
 こんな地味な状態では男を捕まるどころではない。
 一晩……一晩だけで良いのだ。

「こんな感じでどうでしょうか?」
「うわぁ……」

 見せてもらったヘアカラーのカタログから、そこまで明るくもない茶色を選び、スタイリング剤でふわっとさせるだけの簡単なヘアスタイルが完成した。
 たったこれだけなのに、まるで自分ではないようだ。
 変わるキッカケとして髪型を変える。気分を変える為という理由がよく分かった。
 私の心も、どこか浮足だつ。

「お客様、可愛らしい顔立ちをされているので、可愛い感じに仕上げさせて頂きました!」
「そんな……」

 地味、ブス、ださい。
 そんな事を言われ続けていた私だからこそ、その言葉は客商売が紡ぐ適当なお世辞だろうと思ってはいたが、嬉しくて恥ずかしくもある。
 可愛い系……可愛い、か。
 美和は美人系だし、自分がそういう顔立ちでない事はよく理解している。
 ならば……可愛い清楚系というのはどうなのだろう?

「ありがとうございました!」

 方針を決めた私が、次に向かったのは百貨店だ。
 勿論、お目当てはデパコス! と言っても、どこのブランドが良いのかとか全く分からない……。

「こちら新しい口紅になります」
「何をお探しですか?」

 お客様達に向かって色々声をかけている人、接客している人。
 あまりに圧倒してキョロキョロとしている私の目に飛び込んだのは価格だ。結構値段がする……。
 これならいっそ、ヘアメイクサロンでメイクまでやってもらった方が良かったのでは? と一瞬脳裏によぎったが、すぐに首を振って、その考えを払う。
 これから自分で出来るようになりたい。何も分からないのだから、色々教えて欲しい。
 それに……肌に合うものをきちんと選びたい。
 大丈夫、ずっとお年玉やお小遣いを貯めていたのだから!

「……大丈夫ですか?」

 決意し、ふと顔をあげた瞬間、心配そうな表情をする知らない人の顔が飛び込んできた。

「真っ青な顔で立ち止まっていたので……少しこちらで休んでいかれますか? あ、販売をおすすめしません! お座りになっているだけで大丈夫ですよ」

 そんなに血の気が引いていたのかと、今度は顔に熱が集まって真っ赤になっている気がする。
 私は何も言えず、恥ずかしさから顔を俯かせ、言われるがままに座った。
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