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「どうかしたの? 梨花」
家のリビングでくつろいでいる時間だったので、私の声に母が少し心配そうにしてこちらを伺ってきた。
「あ、うん。ちょっとね」
そう言いながらも私は、知らない連絡先だけれど大学名が書かれた件名だった為、特に疑いもせずメールを開いた。
最初こそ丁寧に書かれていた文章だが、それはただのフェイクに見せかけていたのだろう。読み進めると、そこに羅列されていた文字は嫌悪感を覚えるもので、誰からなのかすぐ理解した。
ようやくすると、課題を写させてくれというものだ。
「……うわ……」
折角ブロックしたというのに、わざわざアドレスを変えてまで接触を試みてきたという事か。
テストまであと一週間。
手伝ったとしても終わらないと判断したのか、完全に写させてくれとは一体……。
全くアテとならない人間相手に、こんな事をしている暇があるのであれば、自分で進めた方がいくらか効率良いというものだ。
どこまでいっても人の手を借りる事、人に寄生する事しか頭にないのだろうか。
そんな事を考えていれば、また違う知らないアドレスからもメールが届いた。
(美和の次は大地とか……?)
軽く考えつつ開くと、やはり中身は大地だろうもので、見事すぎる自分の感に嫌気が刺しそうだ。
こちらも要約すると課題を写させてくれ、レポートを手伝ってほしい、出来ればやって欲しいという、とてつもなく図々しい内容となっている。
「どうした?」
深い溜息をついてスマホを置けば、不信そうな顔をして父までも問いかけてきた。
言う程の事ではないのだろうけれど、それで色々と心配をかけてしまったし、以前は取り返しのつかない所まで行ってしまっている。
いや、今回もか。階段から落とされて入院までしてしまっているし。
「実は……」
どうしてもこの程度いう考えがこびり付いていて、両親に言うなんてあまり気乗りがしないものの、私は意を決して口を開いたその時だ。
けたたましくスマホが鳴り響き、両親も怪訝な顔をして私のスマホを見つめた。
私が開封したという通知がいくような設定でもされていたのだろうか。
ずっと鳴り続けるスマホに気味悪さを感じ、ゾッと背筋に鳥肌がたつ。
「梨花?」
「何があった?」
「大地と美和が……っ!」
どれだけ無視をしても、ここまで執着されるというのには恐怖を感じる。
大した事がないなんて思っていても、不気味だとか気味の悪いといった悍ましさは確かに私の中にあるのだ。
泣きつくように私は両親へと話すと、父は無言でスマホの電源をオフにした。
家のリビングでくつろいでいる時間だったので、私の声に母が少し心配そうにしてこちらを伺ってきた。
「あ、うん。ちょっとね」
そう言いながらも私は、知らない連絡先だけれど大学名が書かれた件名だった為、特に疑いもせずメールを開いた。
最初こそ丁寧に書かれていた文章だが、それはただのフェイクに見せかけていたのだろう。読み進めると、そこに羅列されていた文字は嫌悪感を覚えるもので、誰からなのかすぐ理解した。
ようやくすると、課題を写させてくれというものだ。
「……うわ……」
折角ブロックしたというのに、わざわざアドレスを変えてまで接触を試みてきたという事か。
テストまであと一週間。
手伝ったとしても終わらないと判断したのか、完全に写させてくれとは一体……。
全くアテとならない人間相手に、こんな事をしている暇があるのであれば、自分で進めた方がいくらか効率良いというものだ。
どこまでいっても人の手を借りる事、人に寄生する事しか頭にないのだろうか。
そんな事を考えていれば、また違う知らないアドレスからもメールが届いた。
(美和の次は大地とか……?)
軽く考えつつ開くと、やはり中身は大地だろうもので、見事すぎる自分の感に嫌気が刺しそうだ。
こちらも要約すると課題を写させてくれ、レポートを手伝ってほしい、出来ればやって欲しいという、とてつもなく図々しい内容となっている。
「どうした?」
深い溜息をついてスマホを置けば、不信そうな顔をして父までも問いかけてきた。
言う程の事ではないのだろうけれど、それで色々と心配をかけてしまったし、以前は取り返しのつかない所まで行ってしまっている。
いや、今回もか。階段から落とされて入院までしてしまっているし。
「実は……」
どうしてもこの程度いう考えがこびり付いていて、両親に言うなんてあまり気乗りがしないものの、私は意を決して口を開いたその時だ。
けたたましくスマホが鳴り響き、両親も怪訝な顔をして私のスマホを見つめた。
私が開封したという通知がいくような設定でもされていたのだろうか。
ずっと鳴り続けるスマホに気味悪さを感じ、ゾッと背筋に鳥肌がたつ。
「梨花?」
「何があった?」
「大地と美和が……っ!」
どれだけ無視をしても、ここまで執着されるというのには恐怖を感じる。
大した事がないなんて思っていても、不気味だとか気味の悪いといった悍ましさは確かに私の中にあるのだ。
泣きつくように私は両親へと話すと、父は無言でスマホの電源をオフにした。
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