【完結】全て切り捨てて自分の幸せを掴みます~都合良い駒として生きるのはやめてやる~

かずきりり

文字の大きさ
102 / 122

102

しおりを挟む
 遠ざかる二つの足音。
 一つは確実におばさんで、お風呂の用意に行ったのだろうと考えると、背筋が凍る思いだ。
 嫌だ、嫌だ。
 逃げないと。
 大地に触れられたくなんかない。
 大地の子どもを妊娠したくもない。

 ――私の赤ちゃん。

 思い出すのは前回の人生、この手に抱く事が出来なかった、大切な私の赤ん坊。
 また会えるかもしれない、なんて儚い思いと共に、お腹の中から居なくなった悲しみも一緒に思い起こされる。
 妊娠して? 今度はどうなる?
 素直に産ませてくれるのか?
 否、すり替えられる危険性は?
 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。
 大地になんて触れられたくもない!

(いっそ隼人なら良いのに!)

 ふと脳裏に過った言葉で、ハッと気が付く。
 ……そういえば、最後に生理が来たのは、いつだっただろうか。
 あの日、25年の歳月を経て時を戻ってきた私は隼人と出会い、一緒に一晩を過ごした。
 そして……それから……。
 ガタガタと身体が震える。
 何で今まで気が付かなかったのだろうかと思うと、自分の迂闊さに嫌気がさす。
 無意識に手を下腹部へと這わせ、私は身体の痛みに耐えて丸まるような体制になる。
 まるで、お腹を守るように。

(血……血は出てないよね……? まだ居るよね……?)

 切実なる願い。
 子宮は必要だからと、主に狙われていたのは胸や背中、そして顔だ。
 そこだけは助かったと思うけれど、絶望的な状況は変わっていない。
 主に精神面で一つ安堵するものが出来ただけだ。

 ――隼人……。

 子どもが出来たかもしれない、あの夜に。
 だけれど、隼人は……美和と……。
 痛みが身体中に走っている事が気にならない位、思考が回る。
 考え、そして不安になって、全てに押しつぶされそうな感覚で苦しくなる。
 けれど、もし子供が本当に居るのならと思うと、諦めてはいけないとも思うのだ。
 どうしよう、どうしたら……そんな風に考えていたら、一人分の足音が部屋へと近づいてきてビクリと身体が跳ねた。

「大地!」
「……何だ、美和かよ」

 ヒュッと喉の奥が鳴る。
 そういえば、去った足音は二人分だった。
 まだ大地がそこに居たのかと思う反面、今一番聞きたくない美和の声が聞こえ、上手く息が吸えなくなる。
 どうしよう、どうしよう。
 この子は要らない子?
 隼人は美和と……また美和に殺される?
 私は……私と子どもは、どんな状態であっても必要とされないの?
 それが末路なの?

「何しに来たんだよ」
「何それ。状況を確かめに来ただけよ」

 どんどん悪い方向へと思考が動く中、二人は少し険悪な口調で話し出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。 「さっさと死んでくれ」 フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。 愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。 嘘つきな貴方なんて、要らない。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 11/27HOTランキング5位ありがとうございます。 ※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。 1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。 完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

〈完結〉ここは私のお家です。出て行くのはそちらでしょう。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」マニュレット・マゴベイド男爵令嬢は、男爵家の婿である父から追い出される。 そもそも男爵の娘であった母の婿であった父は結婚後ほとんど寄りつかず、愛人のもとに行っており、マニュレットと同じ歳のアリシアという娘を儲けていた。 母の死後、屋根裏部屋に住まわされ、使用人の暮らしを余儀なくされていたマニュレット。 アリシアの社交界デビューのためのドレスの仕上げで起こった事故をきっかけに、責任を押しつけられ、ついに父親から家を追い出される。 だがそれが、この「館」を母親から受け継いだマニュレットの反逆のはじまりだった。

白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
商人であった父が、お金で貴族の身分を手に入れた。私というコマを、貴族と結婚させることによって。 でもそれは酷い結婚生活の始まりでしかなかった。悪態をつく姑。私を妻と扱わない夫。夫には離れに囲った愛人がおり、その愛人を溺愛していたため、私たちは白い結婚だった。 結婚して三年。私は流行り病である『バラ病』にかかってしまう。治療費は金貨たった一枚。しかし夫も父も私のためにお金を出すことはなかった。その価値すら、もう私にはないというように。分かっていたはずの現実が、雨と共に冷たく突き刺さる。すべてを悲観した私は橋から身を投げたが、気づくと結婚する前に戻っていた。 健康な体。そして同じ病で死んでしまった仲間もいる。一度死んだ私は、すべてを彼らから取り戻すために動き出すことを決めた。もう二度と、私の人生を他の人間になど奪われないために。 父の元を離れ計画を実行するために再び仮初の結婚を行うと、なぜか彼の愛人に接近されたり、前の人生で関わってこなかった人たちが私の周りに集まり出す。 白い結婚も毒でしかない父も、全て切り捨てた先にあるものは――

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

【追加】アラマーのざまぁ

ジュレヌク
恋愛
幼い頃から愛を誓う人がいた。 周りも、家族も、2人が結ばれるのだと信じていた。 しかし、王命で運命は引き離され、彼女は第二王子の婚約者となる。 アラマーの死を覚悟した抗議に、王は、言った。 『一つだけ、何でも叶えよう』 彼女は、ある事を願った。 彼女は、一矢報いるために、大きな杭を打ち込んだのだ。 そして、月日が経ち、運命が再び動き出す。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

処理中です...