【完結】悪役令息の義姉となりました

かずきりり

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 しかし、そうも言ってられない現実があるのだ。
 馬車の中で存分にルイスの香りを堪能していれば、いつの間にか学院へと到着するわけで。

 ――何とかルイスとヒロインを接触させなければ!

 学院のクラス分けは、上位貴族と下位貴族で分けられる。
 おかげでヒロインは、ルイスや攻略対象達と同じクラスになる事はない。だからこそ、合間時間を駆使してイベントをこなして積極的に会わないといけないのだ。
 そう。昨日の出会いイベントを挽回する為にも、ルイスには積極的に教室の外へ出て、ヒロインと会ってイベントをこなしてもらう!
 と、意気込んでいたのに……。

「義姉上、次は移動教室ですね」
「義姉上、授業の見直しをしませんか?」
「義姉上、食堂に行きましょう」

 これだ。

「あの……ルイス……私にずっと付いてなくても。自由に動いて良いんだよ?」

 休憩時間の度に私の所に来て、ずっとくっ付いて居るのだ。
 こんな事をしていれば、ヒロインと出会えないままではないか!
 私はそれとなくヒロインの元へ行けるように声をかけるのだが、ルイスは悲しそうな顔をして私の顔を覗き込んできた。

「俺が一緒に居たくて居るのですが? 迷惑ですか?」

 ふと鼻腔に流れ込むルイスの香り。

「迷惑ではありません!」

 むしろ、ご褒美です! ごちそうさまです!
 ルイスの手を取り、食堂までエスコートされるのだが、距離が近ければ香りはしっかりと私に届くわけで。
 うん、素晴らしい。
 食堂で料理の匂いと混合されても、ルイスの匂いはしっかり分かるよ! むしろ匂いを覚えたよ!
 
「ランチを取ってきますね」

 窓際の良い席に座らされ、ルイスは昼食を取りに行ってくれた。
 ここの食堂はランチの種類を選べないのかー。なんて思っていれば背筋にゾクリと冷たいものが走り、周囲をキョロキョロ見渡せば、そこには鋭い目線で睨みつけるヒロインが居た。
 ……え? まさかここに座りたかったとか?
 でも、この場を離れたらルイスが私を探しそうだよなぁ。ルイスが迷子になっても困る。
 ヒロインには申し訳ないけれど、ルイスの為に気が付かなかったという事で……と視線を反らす。だけれど、視界の隅でヒロインがギリッと歯を噛みしめ、こちらを更に睨んで表情が歪んでいくのが見えた。
 ヒロインの! ヒロインの可愛い顔が! 般若です!
 攻略対象者達の好感度が下がりますよー!?

「あの女……」

 低く呟く声が耳に届き、私は顔をあげた。
 声だけで私は分かる。

「ルイス」
「義姉上、どうぞ」

 机の上にランチが乗せられた時、チラリとヒロインが居た方向へと視線を向ければ、そこにもうヒロインの姿はなかった。
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