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 ――心機一転。

 終わった事をグダグダ後悔しても仕方がない。とりあえず、目先の事に集中しよう。
 今日から学院生活が始まるのだ。
 私は、魔術式を組み合わせて、カメラなるものを今日こそ完成させようとしていたのだけれど……。

 ――ドッカーン!

「ミアぁあああ!!」
「義姉上、大丈夫ですか?」
「……修理費……」

 見事に術式が爆発した瞬間、三人分の足音が部屋へと到達した。
 部屋……といっても、そこは既に壁というものはなく、扉を開けなくても中が丸見えな状態だ。
 私のプライバシーよ……。
 母は怒り、ルイスは心配してくれ、父は悲しみにくれているけれど、寝ている姿が丸見えというのはよろしくない。

「倉庫でも良いから、帰ってくるまでに、人目につかず眠れる場所を用意してもらえるかな?」

 コランに言えば、呆れた表情で溜息をつかれた。

「倉庫はよろしくないでしょう」
「牢に入れるわよ!?」

 未だに怒りが冷めやらないお母様は、周囲が驚くような言葉を放った。
 ……てか、牢だったら寝ている姿が丸見えじゃないか。御免こうむりますって!

「壁は欲しいです!」
「その壁を破壊した人の言う言葉ではないでしょう!」

 うぅうう……。
 カメラは出来上がらなかったし、お母様は怒り心頭だし、踏んだり蹴ったりだー!
 ルイスのこれから……イベントのスチルを目と写真に焼き付けたかったのに!!

「義姉上、そろそろ出ないと遅れますよ」

 ルイスが私の手を握って、そのまま玄関の方へと向かう。
 さすがに学院へ遅れるのは駄目だと思ったのか、お母様もそれ以上追及する事なく、大きな溜息だけ背後から聞こえた。……お父様の嘆きと共に。
 あ~。もう完全にタイムリミットかぁ……。
 ビデオカメラにGPS、盗聴器……作りたいものは沢山あるのに、完成させられなかった後悔が襲う。
 どうしてミアは魔術オンチなんだ! そんな設定くつがえせたら良いのに!
 むしろゲームで出ていない設定なんて働かなくて良いんだよ!
 怒り心頭でルイスに手を引かれ、馬車に乗り込む時、ふと違う香りが漂った事に気が付いた。

「……ルイス、香水つけてる?」
「流石、義姉上。気が付きましたか?」

 照れるようにはにかむルイス。
 そして香水とルイスの匂いが合わさった、ルイスによる独特のブレンドがされた香り。

「リラックス効果がある香りを纏っているのです。義姉上の緊張が少しでも和らげばと思いまして」

 ――神!

 気遣いが出来るルイスも、また良い!
 他人なんて知らないと孤独だったルイスも良かったけれど、この優しさは萌える! 推せる!
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