58 / 83
58
しおりを挟む
「……ん……」
「ルイス!?」
僅かな呻き声が聞こえ、私は頭を上げてルイスの顔を見る。
ルイスは少し苦しそうに眉間に皺を寄せた後、うっすら瞳を開けた。
「……義姉上……? ……あっ!」
私の存在を認識した後、何が起きたのかすぐに思い出しただろうルイスは、私の身体を上から下まで眺めた。
「怪我は!?」
「私は別に……ルイスの方が重症だったでしょう……?」
「俺の事はどうでも良い!」
あんな大怪我した事を忘れたのか。
私を優先してくれるのは嬉しい。嬉しいけれど、それは違う。
「どうでも良くない……っ!」
死ぬかもしれないと。
あんな恐怖は要らない。
ルイスが生きていてくれないと駄目なのだ。
「ルイスが死んだらって、怖かった……!」
ぽろぽろと涙が顔を伝う。
驚き目を見開いたルイスだったけれど、目を伏せ、悔しさを噛みしめるように口を開いた。
「……ごめん」
「……うん。自分を大事にして……じゃないと私、生きられない」
「義姉上……それ……」
少し頬を赤らめて顔を上げたルイス。
だけれど、急に顔を顰めた。
「ここは……?」
「物置……かな? 埃が凄い」
暗いけれど、埃臭さは分かる。
咳き込む事はないけれど、何かが舞い上がって目に入るのも分かる。
それよりルイスが気がかりで気にもしていなかったのだけれど、安堵に包まれれば気になり始めてしまうものだ。
「こんな所に義姉上を閉じ込めるとは……」
ルイスは身体を動かして、拘束から解かれようと必死になっている。
私も何とか解こうとするけれど、何かで後ろ手に拘束されている為、上手く解く事が出来ない。というか無理やり動かせば動かす程、関節が痛い。
「……魔術封じか」
忌々し気にルイスが言った言葉に、私は目を見開いた。
魔術封じ。その名の通り、魔術を封じる道具だ。そんな高級な道具を使われるなんてと思ったけれど、そもそもセフィーリオ公爵家の者だから当たり前か。
「義姉上、こちらに背中を向けて拘束している所を見せて下さい」
言われて素直に、背中をルイスの方へと向ける。
「……義姉上は普通に縄ですね」
「……」
そうですね!
セフィーリオ公爵家、正当な血筋で後継者が魔術オンチなのは周知の事実ですものね!
そう高級な魔術封じを使う必要もないですよね!
悔しさが込み上げる中で、拘束されている縄が何かに引っ張られる感覚がした。
「……ルイス?」
「義姉上だけでも何とか脱出させます」
首だけ何とか後ろの方を向けると、ルイスの頭が私の手首辺りにある。
まさか、嚙みちぎろうとしている?
「ルイス! 良いから!」
「ルイス!?」
僅かな呻き声が聞こえ、私は頭を上げてルイスの顔を見る。
ルイスは少し苦しそうに眉間に皺を寄せた後、うっすら瞳を開けた。
「……義姉上……? ……あっ!」
私の存在を認識した後、何が起きたのかすぐに思い出しただろうルイスは、私の身体を上から下まで眺めた。
「怪我は!?」
「私は別に……ルイスの方が重症だったでしょう……?」
「俺の事はどうでも良い!」
あんな大怪我した事を忘れたのか。
私を優先してくれるのは嬉しい。嬉しいけれど、それは違う。
「どうでも良くない……っ!」
死ぬかもしれないと。
あんな恐怖は要らない。
ルイスが生きていてくれないと駄目なのだ。
「ルイスが死んだらって、怖かった……!」
ぽろぽろと涙が顔を伝う。
驚き目を見開いたルイスだったけれど、目を伏せ、悔しさを噛みしめるように口を開いた。
「……ごめん」
「……うん。自分を大事にして……じゃないと私、生きられない」
「義姉上……それ……」
少し頬を赤らめて顔を上げたルイス。
だけれど、急に顔を顰めた。
「ここは……?」
「物置……かな? 埃が凄い」
暗いけれど、埃臭さは分かる。
咳き込む事はないけれど、何かが舞い上がって目に入るのも分かる。
それよりルイスが気がかりで気にもしていなかったのだけれど、安堵に包まれれば気になり始めてしまうものだ。
「こんな所に義姉上を閉じ込めるとは……」
ルイスは身体を動かして、拘束から解かれようと必死になっている。
私も何とか解こうとするけれど、何かで後ろ手に拘束されている為、上手く解く事が出来ない。というか無理やり動かせば動かす程、関節が痛い。
「……魔術封じか」
忌々し気にルイスが言った言葉に、私は目を見開いた。
魔術封じ。その名の通り、魔術を封じる道具だ。そんな高級な道具を使われるなんてと思ったけれど、そもそもセフィーリオ公爵家の者だから当たり前か。
「義姉上、こちらに背中を向けて拘束している所を見せて下さい」
言われて素直に、背中をルイスの方へと向ける。
「……義姉上は普通に縄ですね」
「……」
そうですね!
セフィーリオ公爵家、正当な血筋で後継者が魔術オンチなのは周知の事実ですものね!
そう高級な魔術封じを使う必要もないですよね!
悔しさが込み上げる中で、拘束されている縄が何かに引っ張られる感覚がした。
「……ルイス?」
「義姉上だけでも何とか脱出させます」
首だけ何とか後ろの方を向けると、ルイスの頭が私の手首辺りにある。
まさか、嚙みちぎろうとしている?
「ルイス! 良いから!」
845
あなたにおすすめの小説
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
悪役令息の婚約者になりまして
どくりんご
恋愛
婚約者に出逢って一秒。
前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。
その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。
彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。
この思い、どうすれば良いの?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。
【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました
チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。
王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。
エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。
だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。
そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。
夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。
一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。
知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。
経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる